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P.L.A.M. PLAM プラム | 照明設計サポート設計知識とツール 照明設計資料

照明設計資料

工場の照明

1.工場照明の考え方

 工場照明の目的は生産性の向上にあることは明白なことですが、長い間安心して働くためには安全の確保が必須条件であり、作業者が能力を充分発揮できるためには快適な環境が大切となります。それ故、生産性の向上・安全の確保・快適な環境づくりが工場照明にとって最も大切なことと言えます。また、地球環境に配慮し、照明による環境負荷を低減することも重要です。以上を踏まえた上で、工場照明の計画にあたっては次の基本的な事項を充分に検討する必要があります。

1 工場照明の目的

 工場照明の目的は、製造中の製品や監視用の計器といった直接知りたい対象を認識できる環境を提供すること、及び通路や設備機器のような、自分が居る周囲の状態が適切に分かる環境を提供することであると言えます。
 視対象の見え方も重要ですが、環境設計を快適なものにするのも非常に重要です。

2 工場の照明要件

 工場の照明は、作業に必要となる明るさを確保するだけでなく、明るさの分布や、グレア(まぶしさ)、演色性、光の方向性、ちらつきなどについても配慮する必要があります。また、これら照明の要件は工場で行う作業の内容に合わせて適宜変更する必要があります。例えば、高い生産性が要求される精密作業では高い照度を必要としますが、粗雑な作業の場合は作業者の安全が確保できる照度レベルでも問題ないと考えられます。以下に工場照明に重要となる要件を述べます。
(1) 明るさ
 作業者がある視作業を行うために要求される視機能には、細かいものを見分ける能力(視力)、対象物とその背景などのわずかな明るさの差を見分ける能力(輝度対比弁別力)、物体の色のわずかな差を見分ける能力(色差弁別力)などがあり、これらの視機能は質の良い照明の下ではいずれも照度の増加と共に向上し、知覚に要する時間も短くなります。
 しかし、明るくすればするほどコストは高くなり、その上限は経済的条件によって決まってくると言われています。つまり照度の増加による生産性の向上と、それに要する費用のバランスのとれた点ということです。一方、最近は作業者に対する快適な生活環境の確保が重要視され、労働安全衛生規則などによって下限の照度が引上げられています。
(2) 明るさの分布
 工場全体が同じ明るさになるような照明が理想的ですが、省エネルギーの観点から、精密作業をする場所には補助照明によって高い照度を、通路部分には低い照度をと、明るさに変化をつけて照明するのが現実的です。また作業者は、仕事の終わったラインを消灯して、どこかに移動することもあります。この際、明るさの変化(輝度比)を余り大きくすると、疲れと事故の原因となるので注意しなければなりません。
 照明学会技術基準「オフィスの照明基準」によると、補助照明による最大照度は、室内の平均照度の3倍以下にすることが望ましいとされています1)
 ただし、輝度分布が一様になりすぎると、作業には最適の照明と言えるかも知れませんが、部屋全体が単調なものとなり、作業者にとっては、その単調さに耐えきれない環境となることがあります。作業能率を上げると同時に、作業者の快適さのために適当な明るさの変化をつけることも大切です。
(3) グレア(まぶしさ)
 視野内に露出した光源や窓など特に輝度の高いものがあり、その周辺との輝度対比が強すぎる場合には、視機能を低下させたり、作業者に不快感を与えます。このグレアは光源の輝度・光源の位置・光源の大きさと数、及び周囲の明るさによって決まってくるので、これらの要因を適切に制御することによって、グレアを防止することができます。
 また、これらのグレアは直接目に入ってくるだけでなく、光沢面に反射して目に入ってくるものもあるため、光源の輝度・作業面の特性・作業者の視線方向などを考慮して配置しなければなりません。特に作業対象物周辺の面については、つや消しにしたり、角度を変えるなどの注意を払う必要があります。
(4) 光源の光色と演色性
 光源の光色は、物理的尺度としては色温度(K)で表わされます。色温度が高くなると青みをおびた涼しい感じの光となり、色温度が低くなると赤みをおびた暖かい感じの光となります。一方、私達が通常白色光として使用する色温度3,000〜7,000Kの範囲の光では、その光のみの中でしばらくいると、目の色順応という働きで白色光にみえてきます。しかし、微妙な感覚は残るので光色は作業環境の雰囲気を変えるのに効果的です。
  光源の演色性は、その光によって照明された物体色の見え方を決定します。この演色性を評価するのに演色評価数が用いられていますが、これは数多くある基準光源の一つと全く同じ演色性のものを評価数100で表わしたものです。それより色ずれが多いほど評価数が低くなり、マイナスを示すものもあります。それゆえ工場照明においては、色再現の忠実性を重要視する作業(塗装・印刷など)では演色評価数の高い光源を使用する必要があります。しかし、一般の工場ではいたずらに演色評価数にこだわるよりは、視対象として重要な人の顔や工場内の表示色が充分に見えることがクリアできれば、効率の高い光源を使用するほうがよいといえます。
(5) 自然採光
 自然光を利用して質の高い照明をすることは、非常に難しいことです。側窓より天窓からの光の方が制御しやすいのですが、自然光を採り入れる場合には次の項目を特に注意しなければなりません。
   (a) 天候や時刻によって大幅に明るさの変化がないこと。
   (b) 作業を妨げるようなグレアを生じないこと。
   (c) 屋外の高輝度により強いシルエット効果を生じないこと。
   (d) 採光とともに熱の侵入が多くならないこと。

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(6) 光の方向性(かげと反射)
 照明によって生じるかげは、視作業の妨げになるものと、対象物の立体感を強調するものがあります。前者は手暗がりや頭暗がりなどで、肝心の対象物の面が影の下に入って照度が低下し、見えにくくなるものです(図1)。光源の配置を変えるか、局部照明を追加することによって解決することができます。後者は金属面の傷などに斜光線を当て、かげを強調して目視にて傷などを発見する検査照明などに用いられます。
 また、光沢のある製品や、ディスプレイの表面に高い輝度の光源(照明器具、窓など)が映り込むことがありますので、照明器具の選択、配置に留意します。
(7) ちらつき
近年、既存光源からLED光源への切り替えを皮切りに、「目が疲れる」、「気分が悪い」といった体調不良を訴える事例が報告されています。これは、フリッカと呼ばれる照明のちらつきが原因の1つであると推測されています。
 LEDは直流電源で点灯するため、商用電源を用いて点灯させる場合にAC-DC変換が必要になります。スイッチングレギュレータ等を用いて脈絡の少ない直流電源にした場合、フリッカが発生することはありませんが、交流の凹凸が残った脈流電源でLEDに入力すると、フリッカが生じる原因となります。蛍光灯のような放電灯も点滅を繰り返していますが、LEDは蛍光灯と違って残光時間がなく、明るさが瞬時に変わるため、ちらつきを感じやすくなります。当社のLED照明器具は電気用品安全法を満足し、ちらつきを感じないものにしています。
  こうした事例を受け、LED照明の規格や基準の法整備が進んでいます。電気用品安全法では、一般照明用として使用するLED光源のちらつき防止に関する基準が制定され、繰り返し周波数が100Hz以上で光出力に欠落部がない、あるいは繰り返し周波数が500Hz以上のものは「ちらつきを感じないもの」と解釈できると規定しています。
 工場では長時間作業を伴うことも少なくないため、作業員の健康に配慮し、フリッカレスの照明器具を使用しなければなりません。また、ちらつきに関連し、蛍光灯のような放電灯の光を商用周波数で点灯して、工作機械や製造機器の回転するものを見ると、回転状態を見誤ることがあります。これを、ストロボスコピック現象と言います。この現象は、平滑された波形で高周波点灯するタイプのインバータ安定器を使用することによって解決することができます。

2.工場照明の設計

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 工場の照明設計をするためには工場の内容を詳しく知る必要があり、ただ明るければ良いと言うものではありません。工場の建築構造とその配置、設備内容とその配置、作業内容と作業者の構成、作業環境、保守管理の状態などを把握しなければなりませんが、それ以上に施主の意向が重要です。見落しのないように表1の調査表の項目に従って調査すると便利です。

1 照度の選定

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 工場の照度は、作業に直接必要な照度と、安全確保、及び快適な生活環境をつくるのに必要なものがあります。高い生産性が要求される精密作業では高い照度を必要としますが、工場の全般照明をそのレベルまで持って行くのは経済的に難しいので、局部照明を併用することで対応します。
  照度は、各国とも経済状況や生活レベルに応じて自国に最も適した照度基準が決められており、我が国では表2にあるJIS Z9110照明基準総則2)において、工場の作業別に照度が定められています。また、工場照明の最低基準照度については、表3の労働安全衛生規則 第604条にて規定されていますので、それらの値と施主の意向を考慮して決定するとよいでしょう。
 照度基準を用いて所要照度を決定する際、特に以下の点に留意する必要があります。
(1) 水平面照度
 一般の照明設計では、建物内に機械や設備のない状態で天井・壁・床の反射率のみ考慮に入れて設計します。しかし、実際の工場では背の高い機械や反射率の低い設備が数多く設置され、実際に得られる作業面照度は、設計照度に比してかなり低くなることがあります。予め機械設備の決まっている時は、その寸法・配置・反射率を考慮して照明設計をすると効率良く所要照度が得られますが、はっきり決定しておらず、全般照明のみで所要照度を得ようとするときは、設計照度を1.5〜2倍にするのがよいでしょう。
 一方で労働人口の高年齢化が進んでいますので、照明設計をする時は作業者の年齢も考慮しなければなりません。人間は年齢と共に視力が低下し、特に近距離の視力が著しく低下します。眼鏡をかけることによってこれを補いますが、充分とは言えません。年齢による視力の差は、精密作業において大きく現れてくるので特に注意が必要です。一般的には、高年齢者に対しては2倍〜数倍照度を高くすることが望ましいとされています。
(2) 鉛直面照度
 水平面照度だけでなく、視対象が鉛直面の場合は、鉛直面照度も重要です。
 例えば、自動化されたラインの監視用ディスプレイは、100〜500 lxの照度が推奨されています。ただし、照明器具等の高輝度物体の映り込みに配慮する必要があります。
 また、工場内の打合せスペースでは、相手の表情は意思の疎通をはかる上で、大切な視対象となりますので、顔の鉛直面照度を少なくとも100〜150 lx確保します。

2 光源の選定

 工場の全般照明には、古くは高輝度放電灯(HIDランプ)に反射傘を組み合わせた高天井用器具や、蛍光灯器具を用いるのが一般的でした。しかし、近年LED光源の高効率化、低価格化が進み、明るさも既存光源と遜色がなくなってきたことから、LED光源への切り替えが進んでいます。LED光源は既存光源に比べて消費電力が大幅に少なく、寿命が長いことから、導入することで光源の交換にかかる手間やランニングコストの大幅な削減を見込むことができます。また、LED光源は電源投入の瞬間に100%の明るさに達するため、作業時間のロスを削減し、生産性の向上を図ることができます。
 全般照明では、一般に天井面に規則的に等間隔で光源を配置するのが照明効果も良く経済的ですが、光源の選定要因として次の項目が考えられます。
(1) 光色と演色性
 屋内と屋外の行き来の激しい工場や、工場の一部がほとんど昼光によって照明され、隣り合わせた部分が人工光によってのみ照明されている場合は、なるべく昼光に近い光色の光源を使用した方が無難です。同じ敷地内の工場で全く光色の異なった光源で別々に照明すると、ある光色で照明された工場から他の光色で照明された工場に入ったり、窓越しに眺めた時に、作業者の目が他の色に順応しているため、他の光色がことさら強調されることがあります。隣り合わせた工場ではできるだけ光色の近い光源にした方が良いといえます。
 色の見え方の忠実性が重要視される作業場所では、演色性の高い光源を使用する必要があります。このとき、作業面の最小照度は、原則として、1000 lx以上とします。
  一般工場でも、快適性向上のためには、室内の物体や人の顔色が好ましく見えることが重要ですので、なるべく平均演色評価数(Ra)の高い光源を採用することが望ましいといえます。
(2) 作業環境
 光源は周囲環境によって耐久性や効率が変わるため、工場のように作業環境が種々多様である場合は、その環境に応じて光源を選定する必要があります。例えば、蛍光灯は周囲温度の影響を受ける代表的な光源ですが、一般的な蛍光灯は周囲温度25℃で最高の効率が得られ、実用的な使用範囲は5℃〜30℃の環境であるとされています。ゆえに、5℃以下の環境では、専用の低温用照明器具を使用する必要があります。また、工場では空調環境も厳密に管理されている場合があります。こうした環境で既存光源を用いると、光源や安定器から発生する熱によって空調環境が阻害される可能性があるので、発熱量の少ないLED光源を使用するといった配慮が必要になります。

3 照明器具の選定

 工場は一般的な屋内空間に比べて天井が高く、空間が広いという特徴があります。そのため、工場の全般照明には高出力タイプの照明器具を選定する必要があります。また、工場照明には作業者が能力を発揮できる環境を構築することが求められますが、全般照明のみで作業環境の改善や作業の効率化が図れない場合は、適所適照のタスク・アンビエント照明方式を採用します。この照明方式を採用する場合は、作業工程の変化やレイアウト変更にも容易に対応できる照明設備とすることが重要になります。
 作業環境のみならず、地球環境に配慮した照明器具を選定することも重要です。我が国では、「エネルギーの使用の合理化に関する法律(省エネ法)」が改正されたことにより、これまで以上に省エネルギーに対して配慮することが求められています。ゆえに、明るさを維持しながら省エネを図るため、LED光源を用いた照明器具への切り替えが推奨されています。
 LED光源による照明設計が当たり前になった現代では、照明器具選定の段階で、メンテナンスにかかる費用を予め試算しておくことが望まれます。既存光源で工場照明を計画する場合、光源の経年劣化や球切れにより、光源交換等のメンテナンスが発生します。こうしたメンテナンス作業は専門の業者に委託するケースが多くを占めますが、工場は比較的高い位置に照明器具が設置されていることもあり、高所作業を伴うことで費用がかさむことがあります。一方、LED光源は寿命が長く、球切れの心配がないことから、光源交換時に生じる費用を大きく削減することができます。ゆえに、工場照明はLED化による費用対効果が大きく、このことが工場照明におけるLED光源への切り替えに拍車を掛けていると考えられます。
 既存光源からLED光源に切り替える場合、設計者は切り替え前と同等、あるいは同等以上の視環境が確保できるように配慮する必要があります。LED光源への切り替えによる空間品質の劣化は避けなければなりません。そこで、LED照明器具を検討するにあたっては、既存光源から容易に切り替えができるように、既存光源とほぼ同等の仕様を持つ代替器具が開発されています。天井の高さと施主の意向を考慮し、器具を選定すると良いでしょう。

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(1) 全般照明
 工場の全般照明に使用する器具は、天井高さを目安に選定するとよいでしょう。天井高さ別の照明器具の選定例を表4に示します。
 製鉄所や大型機械工場のように、天井の高さが10mを超えるような高天井空間の全般照明には、HID700〜1000形相当のLED高天井用照明器具が適しています。高天井用照明器具は、用途に応じて電源別置型と電源内蔵型、中角配光型と広角配光型を使い分けますが、一般的に天井が高い場合や高照度が必要とされる所には中角配光が適しており、床面が広い所で鉛直面照度が必要とされる場合や、強い影を防止したい所には広角配光の照明器具が適しています。極端に天井の高い工場(20m以上)の場合は、高天井用照明器具と、保守の容易な場所に設置した投光器の組み合わせにより設計するとよいでしょう。
 天井高さが8〜10mの中天井空間では、HID400形相当のLED高天井用照明器具を使用します。また、レースウェイ取付けが必要な場合は、HID400形相当の反射笠付一体型LEDベースライトを使用します。
 天井高さが6〜8mの空間では、HID200〜300形相当のLED高天井用照明器具が適しています。取り付け位置が低くなることで光源の発光部が視野に入りやすくなりますので、グレアが気になるようであれば、器具の発光面に拡散パネルや乳白パネルを取り付けるなどのグレア防止策を講じる必要があります。
 精密機械や生活家電製造工場のように、天井高さが6m未満の空間では、Hf32形相当のLEDベースライトを使用します。LEDベースライトは直付型、埋込型、反射笠付型等、豊富なラインナップが揃っているので、施主の要望に合わせて器具タイプを選定するとよいでしょう。

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(2)-1 一体型LEDベースライト
 従来器具からLED照明器具への切り替えを考える場合、省エネ法の観点から高効率・高出力タイプの照明器具が求められます。一体型LEDベースライトは発光効率(単位電力あたりの全光束)が従来器具を大きく超えるものも登場しており、蛍光灯の代替器具に最も適しています。また、人感センサやプルダウンスイッチとの組み合わせにより、作業者がいないときに消灯することで、さらなる節電を図ることができます。

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(2)-2 直管形LEDランプ搭載ベースライト
 直管形LEDランプ搭載ベースライトは、既設器具のボルトや電源位置がそのまま活かせるので、大掛かりな施工の必要がなく、気軽にリニューアルしたい方にお勧めです。また、交換用ユニット(図4)も充実しており、蛍光灯器具を用いて、直管形LEDランプに光源を交換することも可能です。

(2)-3 ディスプレイ対応照明器具(OAコンフォート)
 自動化された工場の生産ラインでは、監視用ディスプレイが工場内に数多く導入されています。ディスプレイ表示面への照明器具の映り込みは、目の疲れの大きな原因となるため、以下のことに配慮する必要があります。

  (a) 照明器具の遮光角は少なくとも30°とする。
  (b) 反射板の輝度はディスプレイ表示面に映り込まないように低輝度にする。
 照明器具の輝度を低くするほど映り込みの防止効果は大きくなりますが、部屋が暗く感じることがあるので、部屋の目的、用途別に輝度の異なる器具を使い分ける必要があります。
(3) その他の器具
(3)-1 タスクライト

 切削油・切粉の飛散のきびしい作業環境の各種工作加工工場には、工作加工機械を操作するために効率的な局部照明が求められます。また、照明器具もきびしい環境に耐える仕様・安全設計でなければなりません。
超精密加工機械で、加工部への熱の影響を無視できない場合には、光ファイバーを用いたタスクライトが適しています。
(3)-2 点検作業用照明
 無人化(ロボット、自動機の導入)になると必ず定期的に保守点検が行われます。このような非定常作業時に事故が起こることが多いので、安全確保のために専用の照明を設けておくことが望ましいといえます。

4 その他、特殊環境用照明器具

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 工場で行う作業は多岐にわたるため、作業内容によっては粉塵や腐食性ガスが発生するといった、特殊環境になる場合があります。特殊環境下で一般用の照明器具を導入した場合、故障や落下事故等の原因になるため、専用の照明器具を選定する必要があります。
(1) 低温用照明器具
 低温倉庫などの低温環境下では、一般の照明器具だとランプがつきにくい、光が充分に出ないなどの問題が生じることがあります。低温用照明器具は、こうした問題点に応える照明器具です。低温環境に強いLED照明器具をはじめ、省電力設計の蛍光灯から白熱灯器具、高効率のHID照明器具など、様々な温度環境に適合した低温用照明器具が開発されています。図5に示した低温用倉庫別推奨器具を参考にしながら、用途に応じて器具を選定するとよいでしょう。
 これまでの低温用蛍光灯器具は、点灯してから明るさが最大になるまでに約20〜40分の時間を必要としました。一方LED光源は温度環境によらず点灯と同時に100%の明るさに達するため、こまめな消灯が可能になり、点灯時間削減による大幅な省エネが期待できます。

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(2) 高温用蛍光灯照明器具
 ボイラー室、鉄・非鉄関連の溶鉱炉付近、圧延引抜き、鋳鉄工場のように、周辺温度が60℃を超すような高温環境では、安定器・ソケット・リード線の耐熱性を向上させた高温用蛍光灯器具を選定します。
(3) 耐食型器具
 化学薬品を扱う工場や下水処理場といった、腐食性ガスの発生しやすい環境では、耐酸・耐薬品性に優れた耐食型器具を選定します。耐食型器具を選定することで、粗悪な環境においても一定の品質を保つことができます。
(4) 防爆型照明器具
 危険ガス、あるいは粉塵が発生する可能性のある場所の電気設備については、労働安全規則、電気設備技術基準、及び消防法などにより、防爆構造の仕様が義務付けられています。防爆型照明器具は、危険場所の種別、ならびに対象危険物の性質に応じて防爆構造を選定する必要があるため、図7、及び図8のフローチャートに基づき、器具を選定するとよいでしょう。

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(5) クリーンルーム向け照明器具
 クリーンルームは、機械・電子工業などのインダストリアルクリーンルームと、医療・薬品関連などのバイオロジカルクリーンルームの2種類に分類されます。前者は、主に塵や埃の低減を目的とした清浄空間であり、室内加圧することで塵埃の侵入を防ぎます。後者はバクテリア・ウイルス・カビなどの低減を目的とした清浄空間であり、室内加圧して塵埃・細菌侵入を防ぐものと、室内減圧により室外に危険物質・細菌などの流出を防ぐものがあります。
 こうしたクリーンルームの清浄度(クラス)は、室内の塵埃数や細菌数によって定義されています。一般的に普及している規格は、米国連邦規格と米国航空宇宙局規格になりますが、我が国でも日本工業規格JIS B9920クリーンルームの空気清浄度の評価方法3)にて規格が制定されています。
 クリーンルームに使用される照明器具は、要求される清浄度クラスや作業内容によって異なりますが、主に次のような特徴を有する器具が適しています。
(5)-1 一般照明
 室内の気密性を維持するため、クリーンルーム用のベース照明には取り付け部分のパッキン構造に配慮した器具が適しています。また、天井裏からの塵埃を遮断できる密閉度の高い器具を選ぶことで、室内からの光源の交換、あるいは清掃などのメンテナンス作業が容易になります。
 高い空気清浄度が要求されるクリーンルームでは、照明器具への塵埃の付着や堆積についても考慮しなければなりません。器具下面パネルに塵や埃がつきにくいガラス、または同レベルの特殊帯電防止アクリルを使用した器具を選定すると同時に、塵埃が堆積しにくい形状の器具を採用します。
 また、高い空気清浄度が要求されるクリーンルームでは、フィルターを通過した清浄な空気が絶えず一定方向に流れています。その気流の分布や速さが照明器具の突起物などによって乱されると、空気の浄化が妨げられる恐れがあるため、器具を選ぶ際は気流の乱れが生じにくい形状のものを選択します。
 バイオロジカルクリーンルームでは室内消毒が頻繁に行われますが、その際使用される水や消毒剤によって照明器具が侵されると、錆などが発生することで発塵の原因になります。ゆえに、照明器具には表5に示す耐薬品性に優れた材料を使用していることが要求されます。
 クリーンルーム向けの照明器具には、上記に挙げた厳しい条件をクリアした直管形LEDランプ搭載ベースライトが開発されています。市場でよく活用されている米国連邦規格の定義に基づき、クリーンルームの用途別照明器具の選定例とクラス別推奨器具を、各々表6表7に示します。
(5)-2 純黄色蛍光灯
 半導体工場のクリーンルームでは、短波長域に高感度な感光材料を扱うため、照明光に500nm以下の波長成分の無いものが要求されます。そのため、ガラス内面に500nm以下の波長成分をほぼ完全にカットする黄色ポリエステルチューブを熱収縮加工により密着させ、その上に蛍光体を塗布した純黄色蛍光灯を光源に使用します。

5 食料品工場

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 食料品工場をはじめとするHACCP※の考え方に基づく工場の照明には、以下のような配慮が求められます。
(1) 一般照明
 富士型器具などは、光源上部に隙間があるので、静電気等によって埃がたまりやすく、衛生面においても照度を効率よく確保する上でも問題があります。そこで、衛生面で特に厳しい管理が求められる食料品工場には、光源上部に埃が入り込みにくい構造の照明器具が適しています。このとき、光源は強い衝撃による破損や落下時においても、ガラス片が飛び散ることがほとんどなく、人体や製品に対して安全性が確保できる飛散防止膜付蛍光灯が適しています。
 また、さらに厳しい衛生管理が求められる、清潔・準清潔作業区域には、カバーに帯電しにくい透明クリーンアクリルを採用し、埃が付着しにくい上、拭き取りやすい断面形状が求められます。イメージを図9に示します。

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(2) 殺菌灯
 工場内のクリーン度を向上させるためには、空気中の細菌を殺菌することが有効です。殺菌灯は、殺菌線(波長253.7nm)を強く放射することで、各種細菌を殺菌します。特に空気を浮遊する細菌に効果を発揮し、クリーンな清浄空間を実現します。
 また、殺菌灯は器具本体もクリーンに保つ必要があります。無機銀系抗菌材、及びフッ素系樹脂を含有した抗菌・撥油塗装を施し、直接殺菌線のあたらない器具表面もクリーンな状態を維持します。図11に塗装断面のイメージを示します。

※HACCPとは?
  • ・Hazard Analysis Critical Control Point system(危害分析・重要管理点方式)のことで、1960年代のアポロ計画で宇宙食の安全を確保するためNASAが中心となって開発されました。
  • ・これは原材料の生産から工場加工を経て私たちの手元に届くまでの間に発生する危害を調べ、その危害を防止するために、工程ごとの安全性を日常的に管理し、その結果を記録する手法です。
  • ・従来のシステムに比べ、監視ポイントが非常に多く、食料品の安全性・品質を確保するための有効な衛生管理手法として、すでに欧米では主流となりつつあります。
  • ・我が国でもO-157などの問題をきっかけに、安全な食料品に対する消費者の意識は非常に高まり、食料品業界でも、こうした時流に対応すべく、多く導入されています。

〔参考文献〕
1) 照明学会:JIEC-001 オフィス照明基準(1992)
2) 日本規格協会:JIS Z9110-2010 照明基準総則(2010)
3) 日本規格協会:JIS B9920-2002 クリーンルームの空気清浄度の評価方法(2002)

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