住まいは文化

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2010年8月10日更新

先人たちが遺してくれた住まいづくりの知恵 「住まいは文化」

京都府乙訓郡 「聴竹居」

和洋の長所を生かした環境共生住宅


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昭和初期に環境工学に着目して建てられた住宅「聴竹居(ちょうちくきょ)」。和洋の長所を巧みに取り入れた環境共生住宅の先駆けと評価され、換気や通風など快適で健康に暮らすための工夫が随所に見られます。

板の間の居室から食事室(右)を見たところ。食事室は一段高く設計され、独立性を持たせている。

環境工学に着目し建てられた
環境共生住宅の先駆け

歴史と景勝の地天王山のふもと、京都・大山崎に建つ「聴竹居(ちょうちくきょ)」は、大正から昭和にかけて、いち早く環境工学に着目した建築家・藤井厚二が、1928年に建てた実験住宅です。

藤井は自邸を実験住宅として次々と建設。自らも住んで改良を重ね、日本の気候や風土と西洋的な空間を融合させた住宅を完成させました。自然との調和を考えた建築デザイン、換気・通風への配慮など、快適で健康に暮らすための工夫が随所に見られる環境共生住宅の先駆けです。

造り付けのベンチが印象的な和洋が調和した客室。


居室を中心とした住まいの原型
耐震性、断熱性なども入念に計算

天王山南麓に建つ聴竹居は、木造平屋建ての本屋、上閑室、下閑室(茶室)の3棟から成ります。

家族が住んだ本屋は、東端の玄関から中央の居室を挟み南西に読書室、奥に寝室3室を並べ、東南に客室、北に食事室が配されています。東南端に位置する縁側は夏の強直射日光を避け、冬の日射熱を取り込むサンルームとして位置づけられ、居室などは温度差の少ない中央に集められています。居室を中心に連続した空間は、家族それぞれが居場所を確保しながら繋がり合う設計となっており、現代のリビング・インの原型と言えそうです。

本屋は、数寄屋建築に用いられる自然の建材を使用。耐震性を高めるため、土台はコンクリートで固めています。平屋建てにすることで耐風性にも配慮。外壁は、断熱性に優れた土蔵壁を採用しています。屋根は、裾の緩やかな勾配部分は銅板葺き、棟に向かう急勾配の部分は瓦葺きと使い分けることで、周辺環境との調和をはかっています。

縁側の横連窓は、東・南・西と3面に広がり風景を取り込む。椅子高の目線にガラス窓が配置されるようデザインされている。

居室に隣り合う小さな読書室。3つの机と本棚が造り付けられ、大人と子どもが一緒に使えるように工夫されている。

外壁は土蔵壁。屋根は銅板葺き、瓦葺きの使い分け。妻面に見える通風窓から排気口などから集められた屋根裏の空気が排気される。


和洋を巧みに統合したモダンデザイン
自然換気システムで室内環境を改善

「聴竹居」は、和風・洋風を比較し、それぞれの長所を生かした様式を取り入れています。

居室から連続する3帖の畳間の床は、腰掛式と座式の人の目線を合わせるため30cm余り高く設定。畳の床下には、夏の西風を取り入れる導気筒が組み込まれ、室温を下げるクーラー代わりにしています。室内環境は夏の過ごしやすさを重点的に考えて設計され、各所に快適に保つ工夫がされています。また、取り入れた空気は各室の排気口などを通じて屋根裏へ抜け、妻面の通風窓から排気されます。これは夏に高温になる屋根裏の換気システムも兼ねています。

約30cmの畳の段差に設けられた導気口。地中に埋設された導気筒を通って外気を取り入れる。


部屋の間仕切り上部に設けた欄間は障子にし、必要に応じて開閉することで新鮮な空気が建物全体を循環し、室内を常に清潔・快適に保てるようにしています。

自然との調和、共生を考えた「聴竹居」は、現代の環境共生住宅の先駆けとも言えます。

天井埋め込み形の照明。藤井自身のデザイン。

開け閉めが簡単にできる障子欄間を設け、部屋としての独立性と通風を両立させている。


●藤井厚二(1888〜1938)
広島県生まれ。環境工学というアプローチから日本の気候・生活・風土と西洋的な空間構成とを融合させる優れた手法を提示した。近年、環境工学の先駆者として多くの建築誌で取り上げられている。代表作に「村山邸」「大覚寺心経殿」「聴竹居」などがある。

■平面図(本屋)

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