• 千年、出会えなかった表情がある。 平等院ミュージアム鳳翔館

施主:平等院ミュージアム鳳凰館 電気工事:光星エンジニアリング株式会社 調光工事:パナソニックESエンジニアリング株式会社

日本三名鐘の一つと言われる、平等院の国宝「梵鐘」。
住職の長年の想いであった、美と祈りの本質を引き出すために、
先進のライティング技術を駆使して
千年間、照らし出されたことのない表情を浮かびあがらせた。

国宝の本質を引き出す光 動画

LIGHTING POINT 国宝の本質を引き出す照明には製品と設計の技術に加えて現場での最終調整が欠かせない

青銅色を引き出す光を求めて

国宝:梵鐘

12世紀の制作とされる国宝「梵鐘」が、最新のLED照明によって、従来のハロゲンランプでは難しかった青銅の色合いを引き出した。今回、採用したLEDは、グレアを抑えた調光ユニバーサルダウンライト(UDL)に、「美光色(びこうしょく)」の機能を追加して開発した特注品。従来のLEDよりも黄色味を抑えるように波長を制御した美光色LEDが、くすみを軽減しつつ、青と緑の色味を引き出す。さらに複数の色温度で検証を重ね、一般のLEDでは引き出せない梵鐘の色合いを表現した。色温度3500Kの温白色の光によって、青銅色を再現している。

くすんで見える原因となる波長を制御

くすんで見える原因となる波長を制御

国宝:梵鐘

従来の照明では表現できなかった青銅の色味を引き出した

「美光色LED」とは?

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細部も梵鐘全体も引き立てるために

国宝:梵鐘

今回の照明では、展示物の「細部の表現」と「空間における演出」の両立を目指した。細部の表現では、陰影を利かせる照明によって、文様の立体感を際立たせた。一方、梵鐘の背景の輝度を抑えて、建築空間に梵鐘が浮かび上がるように演出している。これらの実現に向けては、独自の3次元シミュレーションソフトを設計に活用。さらに現場での最終調整を重視し、器具の取り付け位置や照射角度など、様々なパターンを目視で確認しながら最適なライティングを見出した。

梵鐘と背景の配光バランスを3次元照明シミュレーションソフトで検証

梵鐘と背景の配光バランスを
3次元照明シミュレーションソフトで検証

現場で様々なパターンを試行して最適な照明を追求

現場で様々なパターンを試行して
最適な照明を追求

国宝:梵鐘

文様細部の表現と浮遊感のある演出を両立した

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国宝:鳳凰

銅の鋳物や鍛製めっきで11世紀につくられた一対の鳳凰は、頭部の鶏冠や肉垂、胴体の魚鱗紋など全身に細かな意匠が施されている。今回の照明リニューアルでは、それぞれにカッタースポットを使い、意匠を鮮やかに表現する器具の位置や照射の角度を追求した。LEDの色温度は、青銅の梵鐘と同じ3500Kとしている。

国宝:鳳凰

全身に施された凝った意匠が
鮮やかに浮かび上がる照明を実現した

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国宝:雲中供養菩薩

顔の向きや表情、動作などがすべて異なる26体の木造菩薩像を、天井に設置したカッタースポットで照らしている。それぞれに2〜3台を使い、雲に浮かぶような陰影と、個々の豊かな表情や躍動感を描き出しつつ、全体として一つの“絵”にまとまるように、器具の位置や照射の角度などを現場で繰り返し調整した。対象物が木製のため、色温度を3000Kとして温かみを持たせている。

国宝:雲中供養菩薩

14体が会したガラスケースのほか、
単体で展示するガラスケースがある。

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将来の更新性も視野に入れた提案タブレットで照明を調整できる
シューティングスポットを採用

天井高が3m以上ある鳳翔館の企画展示コーナーでは、スマートフォンやタブレット端末で、光の照射方向や配光角度、明るさを操作できるシューティングスポットライトを取り入れている。専用のアプリケーションを使った操作で、フロア上で照明の状況を確認しつつ器具を調整できる。従来、展示の入れ替えや照明の微調整のたびに欠かせなかった高所作業が不要になり、利便性とともに安全性を確保した。

タブレット操作の様子 動画
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