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特殊環境用照明設備:防爆器具

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防爆電気設備の関連法規及び基準

ガス蒸気・粉じん等による危険場所における電気設備に関しては、以下のような法的な規制があります(関係部分のみ抜粋)。

(1)労働安全衛生法:厚生労働省所管

・第42条(譲渡等の制限等)

政令で定める機械等(注:防爆電気機器を含む)は、厚生労働大臣が定める規格(注:電気機械器具防爆構造規格を含む)を具備しなければ、譲渡し、貸与し、または、設置してはならない。

(2)労働安全衛生規則:厚生労働省所管

・第27条(規格に適合した機械等の使用)

事業者は、防爆電気機器については、厚生労働大臣が定める規格(注:電気機械器具防爆構造規格)を具備したものでなければ、使用してはならない。

・第261条(通風等による爆発又は火災の防止)

事業者は、引火性の物の蒸気、可燃性ガスまたは可燃性の粉じんが存在して爆発または火災が生ずるおそれのある場所については、当該蒸気、ガスまたは粉じんによる爆発または火災を防止するため、通風、換気、除じん等の措置を講じなければならない。

・第280条(爆発の危険がある場所で使用する電気機械器具)

事業者は、第261条の場所のうち、同条の措置を講じても、なお、引火性の物の蒸気または可燃性ガスが爆発の危険のある濃度に達するおそれのある箇所において電気機械器具を使用するときは、当該蒸気またはガスに対してその種類及び爆発の危険のある濃度に達するおそれに応じた防爆性能を有する防爆構造電気機械器具でなければ、使用してはならない。

(3)電気事業法:経済産業省所管

・第56条(技術的基準適合命令)

経済産業大臣は、一般用電気工作物が経済産業省令で定める技術基準に適合していないと認めるときは、その所有者または占有者に対し、その技術基準に適合するように、一般用電気工作物を修理し、改造し、もしくは移転し、もしくはその使用を一時停止すべきことを命じ、またはその使用を制限することができる。

(4)電気設備技術基準:経済産業省所管

・第68条(粉じんにより絶縁性能が劣化することによる危険のある場所における施設)

粉じんの多い場所に施設する電気設備は、粉じんによる当該電気設備の絶縁性能または導電性能が劣化することに伴う感電または火災のおそれがないように施設しなければならない。

・第69条(可燃のガス等により爆発する;危険のある場所における施設の禁止)

次の各号に掲げる場所に施設する電気設備は、通常の使用状態において、当該電気設備が点火源となる爆発または火災のおそれがないように施設しなければならない。

  1. 可燃性のガスまたは引火性物質の蒸気が存在し、点火源の存在により爆発するおそれのある場所
  2. 粉じんが存在し、点火源の存在により爆発するおそれがある場所
  3. 火薬類が存在する場所
  4. セルロイド、マッチ、石油類その他の燃えやすい危険な物質を製造し、または貯蔵する場所

法的強制力はないのですが、労働安全衛生総合研究所からは、製造者のみならず、使用者(事業者)に対しても有用な情報を記述した工場電気設備防爆指針と、使用者に対象を絞り、より詳細に推奨基準を記述したユーザーのための工場防爆設備ガイドが発行されています。

また、関連するJISを以下に示します。

  • 電気機器の防爆構造総則・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ JIS C 0930
  • 電気機器の耐圧防爆構造・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ JIS C 0931
  • 電気機器の内圧防爆構造・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ JIS C 0932
  • 電気機器の安全増防爆構造・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ JIS C 0934
  • 電気機器の本質安全増防爆構造・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ JIS C 0935

危険場所の分類

(1)ガス蒸気危険場所の分類

工場や事業場でガス蒸気を取り扱っていて、それらが工程中、操作中または作業中に大気に放出や漏洩などされると、爆発性の雰囲気を形成します。爆発性雰囲気の量が無視できないレベルで存在すると同時に、そこに着火源としての電気設備が存在し、爆発事故を生じる可能性のある場所をガス蒸気危険場所と呼びます。

揮発性液体や爆発性ガスを滞留する可能性のある場所、ガスもれの可能性がある場所

ガス蒸気危険場所に対して、以前は、0種場所、1種場所、2種場所による分類が用いられていましたが、2008年10月から施行の改正「電気機械器具防爆構造規格」からは、特別危険箇所、第1類危険箇所、第2類危険箇所に分類することが定められましたが、以下に示す各危険箇所の内容を見れば分かりますように、名称が変わっただけであり、危険場所の内容そのものに対する変更はありません。

・特殊危険箇所(ゾーン0、旧0種場所相当)

爆発性雰囲気が通常の状態において、連続し長時間にわたり、または頻繁に可燃性ガスが爆発の危険のある濃度に達している場所。例えば、開放された容器内の引火性液体の液面付近などが相当します。

・第1類危険箇所(ゾーン1、旧1種場所相当)

通常の状態において、爆発性雰囲気をしばしば生成するおそれがある場所。例えば、換気が妨げられる場所で、ガス蒸気を滞留する可能性のある場所や、点検などの作業によりガス蒸気を放出する可能性のある開口部付近などが相当します。

・第2類危険箇所(ゾーン2、旧2種場所相当)

通常の状態において、爆発性雰囲気を生成するおそれが少なく、また、生成した場合でも短時間しか持続しない場所。例えば、容器類の破損や換気装置の故障などにより、ガス蒸気が漏洩する可能性のある場所などが相当します。

容器類の破損、換気装置の故障や、ドアから第1種場所のガスが第2種場所へガスもれをする場所など

(2)粉じん危険場所の分類

粉じんが空気中に浮遊し、危険な雰囲気になる可能性がある場所、粉じんの堆積があって、浮遊するおそれがある場所は粉じん危険場所と呼ばれます。そして、これら粉じん危険場所は、工場電気設備防爆指針により、粉じんの種類に応じて、次の2種類に分類されています。

・爆発性粉じん危険場所

爆発性粉じんとは、空気中の酸素が少ない雰囲気中、または二酸化炭素中でも着火し、浮遊状態では激しい爆発を生じる金属粉じんのことを指します。例えば、マグネシウムやアルミニウムの粉じんがあります。

・可燃性粉じん危険場所

可燃性粉じんとは、空気中の酸素と発熱反応を起こして爆発する粉じんのことを指します。さらには、可燃性粉じんの中には、小麦粉や砂糖、合成樹脂などの非導電性のものと、コークスや鉄、銅などの導電性のものがあります。

危険場所の判定

電気設備を設置する場所が危険場所となるかどうか、あるいは、危険場所になるとすれば、特殊危険箇所、第1類危険箇所、第2類危険箇所、あるいは、爆燃性、可燃性、いずれの分類に該当するのかをまず判定する必要があります。判定に当っては関連公的機関(消防等)のご指導によることは勿論ですが、工場電気設備防爆指針にはいくつかの考慮すべき事項が載せられていますので、これらを参考にして、事業場で専門的かつ総合的な検討を加えて最終判定をしてください。

防爆構造の種類定

(1)ガス蒸気危険場所

器具の防爆構造の種類として、次のようなものがあります。

・耐圧防爆構造(表示記号 d)

爆発性ガスが器具内部に侵入し万一爆発しても器具は爆圧に耐え、かつ外部のガスに引火しない構造で器具外面の温度上昇も低く設計しています。

・安全増防爆構造(表示記号 e)

爆発性ガスがたまたま発生しても器具内部に侵入しないように、又、器具の高温部にふれても爆発しないように、密閉性と温度上昇などに安全度を増した構造です。

(2)粉じん危険場所

器具の防爆構造の種類として、次のようなものがあります。

・粉じん防爆特殊防じん構造(表示記号 SDP)

粉じん防爆特殊防じん構造(以下特殊防じん構造という)とは全閉構造で、接合面の奥行を一定値以上にするか、又は接合面に一定値以上の奥行をもつパッキンを使用して粉じんが容器内部に浸入しないようにした構造をいいます。

・粉じん防爆普通防じん構造(表示記号 DP)

粉じん防爆普通防じん構造(以下普通防じん構造という)とは全閉構造で、接合面の奥行を一定値以上にするか、又は接合面にパッキンを使用して、粉じんが容器内部に侵入しにくいようにした構造をいいます。

〔参考〕

非危険場所に使用する器具の構造について、非危険場所には一般の電気機器が使用できますが、要注意場所や危険場所の周辺では、点火源のおそれがある部分を密閉ないし全閉とした密閉型器具を使用するか、電源しゃ断などの装置全体のシステム安全を講ずることが望ましいとされています。

防爆構造の選択

各々の危険場所に設置できる器具の防爆構造は、下表に従って選定してください。

表1:危険場所別選定例

d:耐圧防爆構造 e:安全増防爆構造

SDP:粉じん防爆特殊防じん構造

DP:粉じん防爆普通防じん構造

危険場所 ガス蒸気危険場所 粉じん危険場所
1種場所 2種場所 爆燃性 可燃性

電気機器

照明器具(定着灯) d d e SDP SDP DP
照明器具(移動灯) 〔d〕 d 〔SDP〕 〔SDP〕
電池付携帯電灯 d d 〔SDP〕 〔SDP〕
表示灯類(標示ランプ) d d e SDP SDP DP
差込接続器(コンセント) d d 〔DP〕
信号警報通信装置(ベル、ブザー) d d e SDP SDP 〔DP〕

開閉器具及び制御器具類※1

刃形開閉器 d d SDP SDP 〔DP〕
電磁開閉器 〔d〕 d
サーキットブレーカ 〔d〕 d
操作用押釦
タンブラスイッチ
マイクロスイッチ
d d
分電盤 〔d〕 d
接続箱 d d e SDP SDP DP
電線管 厚鋼電線管(JIS C8305) 厚鋼電線管(JIS C8305)

電線管付属品類

ボックス類 d JIS C8330
〜※2
JIS C8341
DP DP
カップリング類 d
シーリングスイッチ d d
フレクシブルスイッチング d d e
ロックナット 厚鋼電線管用(JIS C8333) 厚鋼電線管用(JIS C8333)

表中[ ]はなるべく選定を避けたいことを示す。

  1. は低圧用(交流600V以下、直流750V以下)を示す。
  2. は管用平行ネジ(JIS B0202)を施したものを示す。

危険物の危険等級

(1)ガス蒸気危険場所

爆発性ガスの危険等級は、爆発等級と発火度によって次のように分類されます。

(1)-1 爆発等級

爆発性ガスの燃焼する性質により、3つの等級に分類したもので1、2、3、と数が大きくなる程引火し易くなり危険なガスになります。

表2

爆発等級 1 標準容器で引火試験をしたとき、スキマが0.6mmを超えると引火するガス
爆発等級 2 標準容器で引火試験をしたとき、スキマが0.4mmを超え、0.6mm以下で引火するガス
爆発等級 3 標準容器で引火試験をしたとき、スキマが0.4mm以下でも引火するガス

(1)-2 発火度

爆発性ガスの発火点により、6つの等級に分類したものでG1、G2…G6と数が大きくなる程発火点が低くなり危険なガスになります。

表3

発火度 G1 発火点が450℃以上の爆発性ガス
発火度 G2 発火点が300℃を超え450℃以下の爆発性ガス
発火度 G3 発火点が200℃を超え300℃以下の爆発性ガス
発火度 G4 発火点が135℃を超え200℃以下の爆発性ガス
発火度 G5 発火点が100℃を超え135℃以下の爆発性ガス
発火度 G6 発火点が85℃を超え100℃以下の爆発性ガス

(1)-3 爆発性ガス分類例

表4

発火度 G1 G2 G3 G4 G5 G6

爆発等級

1 アクリロニトリル イソオクタン N-塩化ブチル アセルアルデヒト 亜硫酸エチル
アセトニトリル イソブタノール オクタン エチルエーテル
アセトン イソペンタン シクロヘキサン 1,4ージオキサン
アンモニア エタノール ジメチルエーテル ジプチルエーテル
イソプチルメチル エチル デカン
ケトン アクリレート テトラヒドロフラン
一酸化炭素 エビクロ プチルアルデヒド
エタン ムヒドリン ヘキサン
エチルメチル 酢酸n-アミル ヘプタン
酢酸イソアミル ℓーペンタノール
o-キシレン 酢酸ビニル ペンタン
m-キシレン 酢酸プチル 2ーメチルヘキサン
p-キシレン 酢酸プロピル 3ーメチルヘキサン
クロルベンゼン ジグロヘキサノン 硫化水素
酢酸 1,2ージグロルエタン ガソリン
(C9H10〜C9H20
酢酸エチル チオヘン
酢酸メチル 1ーブタノール
シアン化水素 ブタン
臭化エチル フラン
1.1ージクロルエチレン 2ープロパノール
スチレン 無水酢酸
1,2,4 ートリメチルベンゼン
トルエン
プロパン
ベンゼン
ベンゾトリフルキライド
メタノール
メタン
2 石炭ガス エチレン イソプレン
エチレンオキシド
1,3ーブタジエン
プロピレンオキシド
3 水素 アセチレン 二酸化炭素 硝酸エチル
水性ガス

例えば、プロパンのガス蒸気の危険等級は爆発等級1、発火度G1、ガソリンのガス蒸気の危険等級は爆発等級1、発火度G3。

(2)粉じん危険場所

粉じんの危険等級は粉じんの種類と発火点によって次のように分類されます。

表5

爆発性粉じん 空気中の酸素が少ないふん囲気や二酸化炭素中でも着火し、浮遊状態では激しい爆発を生じる金属粉じん
可燃性粉じん 空気中の酸素を利用して発熱反応を起こし燃焼する導電性粉じん、及び非電性粉じん
発火度 11 発火点が270℃を超える粉じん
発火度 12 発火点が200℃を超え270℃以下の粉じん
発火度 13 発火点が150℃を超え200℃以下の粉じん

注)空気中に浮遊した状態とたい積状態のいずれか近い方の発火点の値を採用するものとする。

表6:粉じんの分類例

粉じん 爆燃性粉じん 可燃性粉じん
導電性のもの 非導電性のもの

発火度

11 マグネシウム、アルミニウム、アルミニウムブロンズ 亜鉛、チタン、コークス、カーボンブラック 小麦、とうもろこし、砂糖、ゴム、染料、ポリエチレン、フェノール樹脂
12 アルミニウム(含有) 鉄、石炭 ココア、リグニン、米ぬか
13 硫黄

例えば石炭の粉じんの危険等級は可燃性粉じん、発火度12、導電性、という分類になります。

防爆器具の表示記号と使用可能な危険物の危険等級

器具の防爆等級は、防爆構造別に次のような表示記号を使用し、これらの記号は各々の使用可能な対象ガスや粉じんの危険等級範囲を示しています。

(1)耐圧防爆構造

右表例では、爆発等級1.2.発火度G1.G2.G3.G4.の何れの組み合せのガスでも使用できることを示しています。

表示例

d(耐圧防爆構造)2(爆発等級)G4(発火度)

使用できる対象ガスの範囲

発火度 G1 G2 G3 G4 G5 G6

爆発等級

1 × ×
2 × ×
3 × × × × × ×

(2)安全増防爆構造

なお、弊社蛍光灯器具のように安全増防爆構造容器の一部に、耐圧防爆構造のヒューズが内蔵された場合ed2G3の表示となりますが、対象ガスの範囲はeG3と同様です。

表示例

e(安全増防爆構造)G3(発火度)

使用できる対象ガスの範囲

発火度 G1 G2 G3 G4 G5 G6

爆発等級

1 × × ×
2 × × ×
3 × × ×

(3)粉じん防爆特殊防じん構造

表示例

SDP(特殊防じん構造)13(発火度)
粉じん 爆燃性粉じん 可燃性粉じん
導電性のもの 非導電性のもの

発火度

1
2
3

(4)粉じん防爆普通防じん構造

表示例

DP(普通防じん構造)13(発火度)
粉じん 爆燃性粉じん 可燃性粉じん
導電性のもの 非導電性のもの

発火度

1 ×
2 ×
3 ×

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