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P.L.A.M. PLAM プラム | 照明設計サポート設計知識とツール 照明設計資料

照明設計資料

センサによる照明省エネ制御

1.はじめに

 現在、省エネ性の高いLED照明器具が普及しており、銅鉄式蛍光ランプ器具との交換であれば40%程度、Hf蛍光ランプ器具との交換であれば20%程度の省エネが可能となっています。しかしながら、近年の地球規模での環境意識の高まりや電力需給の逼迫から、より一層の省エネルギーを図ることが照明設備にも求められています。近年普及してきたセンサによる照明設備の制御技術は、利便性、快適性、経済性、安全・安心など照明が果たす役割を満たしながら、さらに省エネルギーを実現するものです。ここでは、このセンサによる照明設備の省エネ制御の概要とその活用事例について紹介します。

2.照明制御用センサの種類

1 ひと(熱線)センサ

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 ひと(熱線)センサは、人体から放射される赤外線を検知する方式のセンサで、一般に熱線センサあるいはPIR(Passive Infrared)センサと呼ばれているものです。その動作原理は、地球上のすべての物体がその温度と表面状態に応じた輻射熱を放射していることを利用したもので、人が検知エリアに入ったときに、センサに入射する赤外線の量が人体表面と背景との温度差に相当した量だけ変化すること、つまり、熱源である人体と、床や壁などの背景との温度差(約2〜3℃以上)に反応して、人の動作を捉えることができます。(図1

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 また、センサの検知範囲は、図2のように設定されています。

2 ひと(電波式)センサ

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 「ひと(電波式)センサ」はドップラーモジュールによる動体検知を行っています。このセンサはマイクロ波(24GHz帯)を発信します。センサから発せられた電波は、空間内の物体に面し、反射や透過しながら空間内を進行しますが、そのうち物体に当たり反射してきた電波をセンサ内蔵のアンテナにて受信します。この際、電波を反射させた物体が移動していた場合、発信した電波と受信した電波との間に物体の移動速度に応じた周波数の変化が生じます。(この現象をドップラー効果といいます。)
 このドップラー効果を応用したドップラーモジュールを用いたひと(電波式)センサは、この送信波と反射波との周波数差を利用して、ひとの移動、ドアの開閉を検知します。

※このセンサは、日本国内では電波法により移動体センサ用特定小電力無線局用途として認可されています。また、このセンサから発する電波は、無線LANと同等レベルの強度(10mW以下)のため、人体への影響はありません。

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 センサの検知範囲は、センサを頂点とする母線10/5/2.5mの円錐形の重ね合わせ内です。母線と鉛直/水平面への投影時の放射角については、図4のようになっています。

3 明るさセンサ

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 天井面に設置される明るさセンサの例を示します。センサの検知範囲内の床面や机上面などからの反射光を入射光量として記憶し、その光量が常に一定になるように照明器具の光出力を自動的に調節することによって、明るさを一定に保つ働きをします(図5及び図6)。

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 明るさセンサによる照明制御フローについては、昼光などの瞬時の変化や外乱光などに影響されないように、センサ入射光量の測定周期及び測定データ数を設定しています。制御フローを図7に、また、光出力制御の例を図8に示します。

4 画像センサ

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 画像センサは、画像素子を利用して人の存在や行動、または空間の明るさを検知して照明制御を行います。その動作原理は設置空間を画像で取り込み、その画像の時間変化を解析して人や明るさを検知します。検知範囲は以下の様になります。

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 人の検知アルゴリズムは以下の通りで、背景画像と現在の画像の差分から人を検知します。

 明るさ検知では、明るさ目標設定時の画像と現在の画像の平均輝度値を比較し、目標の明るさとの差分を検出するというアルゴリズムを 使用しています。

3.実際の器具事例

1 ひとセンサ点滅タイプ(セルコンNタイプ)

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 おすすめ用途は、化粧室、ロッカーなどです。
特長は

  • ・ 人を検知して点灯
  • ・ 消し忘れを防止し、確実に省エネルギーを実現
  • ・ 点灯保持時間:3分(人の動きが大きく、センサ検知範囲のカバー率が高い所:ロッカーなど)と6分(人の動きが小さく、センサ検知範囲のカバー率が狭い所:化粧室など)の切り替えにより、場所に応じた自然な制御の選定が可能(電波式は1分のみ)

2 ひとセンサ段調光タイプ(セルコンNTタイプ)

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 おすすめ用途は、見通しのできる、人の移動の少ない廊下などです。
特長は、

  • ・ 人を検知して100%点灯
  • ・ 人がいない時は25%に調光し、安全性を確保しながら省エネルギーを実現
  • ・ 点灯保持時間:10秒、1分、6分 3段階選択可能(電波式は1分のみ)

3 ひとセンサ(画像検知タイプ)

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 おすすめ用途は、離席率の高い執務室などです。
特長は、

  • ・器具最適個別制御による高省エネ率
    (グループ単位での制御ではなく、器具一台ずつ個別に制御)
  • ・滞在時、じっとしていても減光しない
  • ・不在認識後、すぐに減光
  • ・移動、滞在、不在を区別できるため、それぞれに応じた制御が可能
  • ・不在時調光率と移動時調光率を同じ設定にすることで周囲の在席者への煩わしさを防止
  • ・使用状況に応じた明るさセンサ機能への変更

4 明るさセンサ連続調光タイプ(セルコンAタイプ)

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 おすすめ用途は、人の移動の少ない執務室などです。
特長は、

  • ・まわりの明るさに応じて適正照度に調光します。この結果、
    • (a) ランプ交換時の照度アップを自動的に抑制し省エネルギーを実現
    • (b) 外光の明るさを検知して調光し、適正照度を確保しながら省エネルギーを実現
    • (c) ルーバなどのオプション取付時も自動的に出力アップして同じ明るさを確保
  • ・ 明るさの変化がゆるやかなので在室者に気づかれずに省エネルギーができ快適性を確保

5 ひとセンサ・明るさセンサ一体型連続調光タイプ(セルコンANタイプ)

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 おすすめ用途は、離席率の高い執務室などです。(4)の明るさセンサ連続調光タイプの特長に加えて、
・不在時は積極的に調光し、さらに省エネルギー
・調光下限設定:照明器具の調光範囲内で任意に設定可能

4.不在者エリアの照度目標値

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 執務室で、夜間に不在者のエリアの調光レベルをどの程度にするのが省エネルギーと快適性の見地で妥当かを、実験で求めた結果を図16に示します。作業している机上面照度に対して、調光比30%、50%の照度値を破線で併記しました。

 評価カテゴリーは、(a)最適(好ましい)、(b)下限(これ以下では暗すぎる)です。設定した机上面照度に対して、全体の何%の人が(a)および(b)の評価カテゴリーの周辺照度であると判断する比率を「累積出現率」で求めました。「最適」は「最適の累積出現率50%」、「下限」は「下限の50%」を採用しました。「下限の90%」を「節減値(快適性と省エネルギーの両面を調和させるために設けた区分)」としました。
 この結果より、目的に応じて、省エネルギーを追求する場合は調光比30%、快適性を併せて期待する場合は50%に選定するのが妥当といえます。

5.活用事例

1 事例A(テナントビル)(ひと(熱線)センサによる省エネ効果)

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使用器具:Hf32W×2灯用埋込下面開放型照明器具
    (連続調光タイプ)
センサ:ひとセンサ・明るさセンサ一体型ユニット

 基準階執務室における照明器具およびセンサの配置図を図17に示します。照明器具は3,600mmグリッドの建築モジュールに合わせてロの字型に配置。ひとセンサ・明るさセンサ一体型ユニットを設置することで、明るさセンサにより、外光による照度アップを検知して照明器具の出力を自動的に抑え、また、ひとセンサにより、一定時間在席しなければモジュール単位の照明器具の出力を自動的に落とすことによって、積極的に省エネルギーを図る設備となっています。
 不在時の調光の設定については、頻繁に照明が点滅したり、隣接するエリアが極端に暗いと執務者に不快感を与えるため、ひとセンサの出力保持時間を10分とし、最小出力は25%に設定しています。また、100%点灯から25%への出力低下は、在室者に違和感を与えないように30秒間でゆっくりと低下するようになっています。
【不在検知制御による省エネルギー効果】
 本施設において、テナント入居後にひとセンサによる不在検知制御による省エネルギー効果を検証するために、ひとセンサをONの場合とOFFの場合とで1日の消費電力量の測定を計5日間にわたって実施しました(明るさセンサはOFF)。測定の概要を以下に示します。
テナント業種:集合住宅を中心とする販売、管理、リフォーム等
執務エリア面積:512m2
在席者数:68人
測定時間:9:00〜17:00の8時間
 消費電力量の測定結果を図18に示します。この結果から、本施設における測定期間平均の不在検知制御による省エネルギー率の実測値は17.7%となっています。

2 事例B(自社ビル)(明るさセンサによる省エネ効果)

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使用器具:Hf32W×1灯用埋込下面開放型照明器具
    (連続調光タイプ)
センサ:ひとセンサ・明るさセンサ一体型ユニット
 基準階執務室の照明器具及びセンサの配置図を図19に示します。Hf32W1灯用照明器具を、小間仕切り対応と照明の均質性に配慮し、1,600mmピッチでライン配置し、間仕切り対応のモジュールを3,200mm×4,400mmとしています。
 照明制御システムは、ひとセンサ・明るさセンサ一体型ユニットをオフィス全面に設置しています。各センサユニットは、建築的な間仕切りのモジュールと合わせて、照明器具6台に1ユニットを設置しています。ひとセンサについては、人を検知していない場合には、ランプ出力を25%に落とすように設定しています。また、中央監視室のタイムスケジュール制御によって、昼休みや残業時間には、自動消灯できるようになっています。
【昼光利用制御による省エネルギー効果】
 本施設において、晴天時と曇天時における1日の基準階1フロアの照明消費電力量を、明るさセンサONとOFFの場合で測定しました。
測定条件を以下に示します。
基準階照明器具:Hf32W×1灯用 244台
定格照明消費電力量:49W×244台×8時間=96kWh
測定時間:午前9時〜午後5時までの8時間
測定結果を表1に示します。

3 事例C(自社ビル)(ひとセンサ(画像検知タイプ)による省エネ効果)

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使用器具:600グリッドシステム天井用LEDスクエア型照明器具
    (通信機能付)
センサ:ひとセンサ(画像検知タイプ)
 基準階執務室の照明器具及びセンサの配置図を図20に示します。照明器具は3,600mmグリッドの建築モジュールに合わせて1,800mmピッチで配置しています。
 照明制御システムは、ひとセンサ(画像検知タイプ)をオフィス全面に設置しています。各センサユニットは、照明器具4台もしくは2台に1ユニットを設置し、器具一台ずつ個別に制御を行っています。センサ調光率設定については、不在時待機調光率は調光率25%、移動時については、周囲在席者への煩わしさ防止のため待機調光率と同じ25%に設定、在席時には85%点灯するように設定しています。また、中央監視室のタイムスケジュール制御によって、昼休みには自動消灯する設定となっています。
【ひとセンサ(画像検知タイプ)による省エネルギー効果】
本施設において、28日間ひとセンサ(画像検知タイプ)を利用した際の照明消費電力を測定し、センサがない場合との比較を実施しました。
測定条件と比較条件を以下に示します。
基準階照明器具:スクエア型LED照明器具 168台
執務エリア面積:約300m2
在籍職種:研究者(高在席率)
在席者数:84人
照明器具消費電力:滞在時30.8W、移動時8.3W、不在時8.3W
測定時間:午前7時30分〜午後10時30分までの15時間(昼休み45分間は消灯)
測定結果を表2に示します。
 この測定結果は比較的在席率の高い場所での結果となっていますので、在席率の低い場所で実施した場合、更に高い省エネ率が見込めます。

〔参考文献〕
1) 田渕義彦:事務所照明の快適性に関する研究(執務エリア内の各面の好ましい照度と輝度)、1995.10

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