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スタジオの照明

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スタジオ照明について

テレビは私達の⽇常⽣活になくてはならないものになっています。
衛星放送(BS)、地上デジタル放送、ケーブルテレビなどの普及による映像コンテンツの増加などにともない、スタジオがテレビ業界以外にも商業分野・教育分野などに普及してきています。
テレビを通じて、視聴者に情報を伝えるには、⾃然光、⼈⼯光にかかわらず光がなければなりません。その光を考えるのがスタジオ照明です。

1.スタジオ照明の考え⽅

ドキュメントな作品づくりならスタジオはいりませんが、ドキュメント以外ではスタジオが必要になります。そのスタジオには天候に左右されないように、⾃然光が⼊らないことを基本形とします。
スタジオの中で作りだす場⾯は⼀定していないのが普通で、そのあらゆる場⾯に対応した照明を常に準備して取り付けて置くことは、物理的に不可能です。場⾯を作るためにスタジオのどの場所、どれだけのスペースを使うかも定まっていないからです。
そのような使い⽅に対応するため、スタジオでは電源トランスからコンセント迄をスタジオに備え付けの設備とし、負荷の照明器具は場⾯を作るたびごとに設置することにしています。
スタジオで⼈⼯照明を⾏うには、舞台照明と同様に視覚・写実・審美・表現が必要です。(詳細は「舞台の照明」の項を参照)

2.スタジオ照明器具の役割と配置

スタジオにはスタジオ独特の照明名称が使われています。

(1)ベースライト

画⾯に収まる所を均⼀に照明するもので、フラットな配光の器具を使います。⼀般照明では机上を作業⾯と考えて⽔平⾯照度を問題にしますが、カメラでは画⾯に収まる所が主に鉛直⾯でありますので鉛直⾯照度を重要視しています。
光の⽅向は⽔平の⽅が効率よく照明できますが、⼈物などの影が背景のセットの上に出て、それが画⾯内に⼊らないようにするには30°程度の照射⾓度が必要になります。

(2)トップライト

ベースライトに加えて、真上からの光を与えるのがこのライトです。
私達の⽣活環境では、上からの光が普通なので、その環境づくりに使われます。
簡易的には、ベースライトとトップライトを兼⽤して上⽅45°程度の位置より⾏なう場合もあります。

(3)キーライト

スタジオ照明の主役で、⼈物等の主要被写体にハイライトを与え、画⾯の中で周囲から⽬⽴たせる役⽬をします。
被写体の正⾯より少し左右に振った斜めの位置よりスポットライトにて投光します。⼈物等の⽴体的な被写体は、その⽅がより⽴体感が得られます。
⼀⽅、この強い光は、30°以下の位置からの投光の場合には被写体の⼈物に眩しさを与え、バックに濃い影ができます。また、60°以上になると顎、⿐等の下に濃い影ができるので注意を要します。
また、スポットライトを使⽤していても、不必要な部分に光が届くことがありますので、バンドアを併⽤することが望ましいです。

(4)フィルライト

キーライトによる濃い影が不要なところに出て、⾒苦しい画⾯となることがよくあります。特に⼈物は動くので、思いも寄らないところに影を作ってしまいますので、その影の部分に光を当てて影を薄くする役⽬をするのがフィルライトです。
主にキーライトの補助照明としてフラットな配光のものを使います。
光量はキーライトの半分程度で効果があります。

(5)セットライト

スタジオの中に置いた各種のセットに適切な照明をする照明器具です。
セットが背景、⿊板、図等の場合には均⼀に照明することになります。この照明により画⾯の中にシルエット、背景の⾊変化、遠近感等を作ることができます。そのためには、主要被写体と混合しないように照明する必要があります。
⼀般には、上⽅や下⽅から斜めに均⼀に照らします。セット⾯の照度は、主要被写体よりやや低い照度にしますが、照明器具は効果に応じて、平⾯的な背景では、フラットな光のホリゾントライトを使⽤します。
しかし、⽊⽴、⼈物等のはっきりした影をつくるためには、スポットライトを⼀台使⽤します。効果と⼿法を以下に解説します。

(5)-1 シルエット

セットライトのみ(キーライト、ベースライト、フィルライト等の光は当てない)で背景を照らし、背景の前にいる⼈物に光を全く当たらないようにすれば、影絵のように⼈物を浮かび上がらせることができます。

(5)-2 背景の⾊変化

セットライトに⾊光を使い、その⾊を変えることにより、雰囲気の違う画⾯を作ることができます。

(5)-3 遠近感

主要被写体と背景の照度のコントラストを作ることにより画⾯に奥⾏きをつくり出すことができます。

(5)-4 セットへの影を消す

セットライト以外の光が、セットに当たると、セットの上に不要の影ができることになります。この影によって画⾯のリアル感等が完全にこわれます。このような場合にはセットライトはこの影を薄くする効果があります。

(6)バックライト

⼈物等の⽴体的な被写体を後ろから照明して、輪郭を明るくし、背景から浮き上がらせる効果です。
被写体にカメラの光軸の正反対の⽅向または、キーライトの正反対の⽅向で、上⽅45°の位置よりスポットライトで投光します。
その場合、カメラにスポットライトの直射光が⼊らないように注意すると同時に、⼈物の影がカメラ側に出るのでこの点にも⼗分な考慮が必要です。

(7)照明関連設備

配置例は、図1および図2に⽰します。

(7)-1 設備配置

⼀場⾯として使⽤する範囲で全ての電気回路が使えるようにコンセントを配置します。
実際にスタジオを使⽤し始めると、設計段階で考えなかった⾊々の要求が出てきて、とかく容量不⾜になりがちです。特に電源トランス及び配線は追加⼯事で増設するのが困難な部分ですので、余裕を⾒ることが望ましいといえます。
また、電線の引き回しが⻑くなりますので、電線サイズは安全電流を考慮した上に、電圧降下で決めるべきです。⽩熱灯回路の場合には、負荷配線の電圧降下の違いが、照明の⾊温度、照度に影響を与えるためです。
スタジオの電気設備の利⽤に当たっては、トランスに悪影響を与えないように常に相バランスを考えながら、コンセントに負荷の配分をして接続しなければなりません。

(7)-2 調光装置

照明の明るさやシーン転換を⾃由にコントロールしたい、または予め個々の照明レベルをセット(プリセットと云う)したい等のために設けるもので、回路数と容量は⼗分余裕をみることをお勧めします。

(7)-3 グリッドパイプ

スタジオの床は、カメラ、マイク等の設備や俳優、ディレクター等が⾃由に動けるように、照明器具はできるだけ天井より吊り下げる⽅が便利です。
そこで、簡易スタジオでは、天井⼀⾯に1m位の間隔で碁盤⽬状にパイプを組んでおき、照明⽤の電源としてパイプにコンセント(グリッドコンセントと云う)を取り付けておきます。
そして、天井⾯の必要な位置のグリッドパイプに照明器具を取りつけて、グリッドコンセントから電気の供給を受けるようにします。
本格的スタジオでは、上、下に昇降できるフライダクト(コンセント付パイプのことで照明バトンとも云う)を設けます。

図1:スタジオ内の照明⽤固定設備配置図例

図2:スタジオ照明の器具配置図例

もっとよいのは、バトンが横にも移動できるようになっていることです。
また、各種コンセント・コネクタ等を、使⽤しない壁の床際に設けることをお勧めします。
グリッドパイプに限りませんが、スタジオ内に設ける照明関連設備は、不要な光の反射を避けるため⿊⾊とすることが望ましいです。

図4:調光システム統合ネットワークソリューション「MLCCLINK」例

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