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トンネルの照明

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トンネル照明の考え方

トンネル照明は昼間における照明を必要とし、入口照明や出口照明等も必要とするため、一般の道路照明とは異なったいくつかの特色をもっています。したがって、照明計画にあたっては路面の輝度などの基準を考慮して、設計速度、交通量、線形などに応じて必要とされる安全性と快適性を得るために、照明の内容を入念に検討しなければなりません。
トンネル照明については、国際照明委員会(CIE)において国際的な推奨基準1)が勧告されており、それは比較的ハイレベルなものとなっています。国内では、高速道路調査会から“トンネル照明設計指針”2) 、日本道路協会から“道路照明施設設置基準・同解説”3)などが発行されており、これらの中でトンネル照明についての基準が定められています。

トンネル照明の必要性

道路トンネルに照明設備が必要な理由として、次のことが考えられます。

  1. (a)道路トンネルにおける交通輸送機能の向上
  2. (b)トンネル内部の特殊な周囲条件による交通機能の低下の軽減
  3. (c)トンネル内または外部への移動時における運転者の視覚の平衡状態の維持
  4. (d)トンネル内における空気の汚濁による透過率低下のもたらす交通障害の防止

トンネルにおける視覚現象

昼間、野外の道路を走行してきた自動車の運転者は、トンネルに近づき、やがてトンネルに進入し、トンネルを通過した後、再び野外の道路に出るまでの間にいくつかの視覚的な現象を経験します。その時に生じるトンネル内外の視覚条件に応じた現象について解説します。

1.⾃動⾞がトンネルに接近しつつあるときに起こる現象

(1)ブラックホール現象とブラックフレーム現象

昼間、自動車の運転者が照明設備の不十分なトンネルに接近しながらトンネル内を見ると、トンネル出口が見えないような長いトンネルではトンネル内が暗黒の穴に見え、すでにトンネル出口が見えているような短いトンネルでは暗い枠のように見えます。このようにトンネルが暗黒の穴に見えることをブラックホール現象、暗い枠に見えることをブラックフレーム現象といいます。
このような現象によって、運転者はいずれもトンネル内の障害物の有無やトンネル内の状況などを知覚することができなくなります。(図1図2参照)

図1:ブラックホール現象

図2:ブラックフレーム現象

自動車が安全に走行するためには、走行速度に応じた距離(安全停止距離など)だけ前方の路面を十分詳細に識別できなければならないので、ブラックホール現象あるいはブラックフレーム現象などによって前方の路面がわからなくなることは危険です。このためトンネルの入口には適切な照明が必要です。
図3はブラックホール現象を考慮した実験から得られたトンネルに接近する運転者の眼の順応輝度の相対値(暗順応曲線)4)を示し、運転者がトンネルに近づくにつれてその順応輝度は低下します。これは運転者の眼球内の散乱光の影響によるもので、運転者の視野内が徐々に比較的暗いトンネル坑口で占められる面積が大きくなることで散乱光が減少し、順応輝度が徐々に低下します。トンネル入口部の路面輝度はこの暗順応曲線に基づいて設定されています。また、図4に示す実験から得られた運転者の眼の順応輝度と野外輝度との関係4)から、順応輝度の代わりに計算や測定が簡便な野外輝度を用いて入口照明曲線が設定されています。

図3:トンネルに接近する運転者の眼の順応輝度

図4:野外輝度と運転者の眼の順応輝度との関係

(2)トンネル⼊⼝から流出する排気ガスによる光幕現象

トンネルが長く、あるいは交通量が多くなると、トンネル内に自動車の排気ガスが充満し、これが徐々にトンネル入口から外へ流出します。この流出した排気ガスに太陽の直射光が当たると排気ガスが明るく輝き、トンネル内に接近しつつある自動車との間に光幕(現象)が生じ、トンネル内がよく見えなくなります。
このような光幕現象は、強制換気設備や、流出した排気ガスを太陽光が直接照明しないような全長10m前後の遮光ルーバなどを設けることによって軽減できます。

2.⾃動⾞がトンネルに進⼊した直後に起こる現象

一般に高輝度の野外から暗いトンネル内へ進入した直後は、室内の照明が突然停電した直後のようにトンネル内が極めて暗く見えることがあります。これをブラックアウト現象(停電現象)といいます。この原因はトンネル外の明るさに順応していた運転者の眼が、比較的暗いトンネル内の明るさに順応するのに時間がかかるためです。このような現象によってトンネル内の詳細がわからなくなるため、ブラックホール現象と同様に非常に危険です。
図5は、人間の眼に絶えず一定の知覚力を維持させるという条件に対して、許容し得る最も急速な視野輝度の低下率(はじめに順応していた輝度を100%として)と観測時間との関係を求めた実験結果5)を示したものです。

図5:順応曲線

3.⾃動⾞がトンネル内を⾛⾏する時に起こる問題

(1)⾃動⾞の排気ガスによる視認性の低下

トンネルを通過する自動車の交通量が増加するにつれ、トンネル内の排気ガスは増加します。トンネルが長く、排気ガスの換気が不完全であると、交通量が多くなるにつれて排気ガスがトンネル内に充満し、視認性が低下します。
トンネル内の排気ガスの濃度が高くなると、視認性が低下して、不快な環境になります。また、トンネル内装面の汚れも著しくなることから、一定以上の透過率を確保するためにトンネル内には換気設備が設置されます。トンネル内の路面輝度の設計値は100mあたりの透過率も考慮して設定されます。

(2)ちらつき現象

トンネル内の灯具が不連続に取り付けられると、そのトンネルを通過する⾃動⾞の運転席は光源の直下付近では明るく、その中間では暗くなります。⾃動⾞が⾛⾏するとこの明暗の繰り返しから⼀種のちらつきが⽣じ、不快に感じます。実験結果6)から、光の明暗の繰り返しにより不快な感じが⽣じるのは、特定の周波数であることが明らかになっています。ちらつきによる不快感は、周波数が2.5Hzより低いか、25Hzより⾼い場合には問題とならず、5〜18Hzの間において⼤きくなります。トンネル照明の設計においては、このような不快な周波数をできるだけ避けるように照明器具の設置間隔を設定する必要があります。ちらつきによる不快感は周波数だけでなく、明暗輝度⽐や明暗時間⽐などによっても影響され、(a) ちらつきサイクル中の明暗輝度⽐が少ないほど不快感は少なく、明暗輝度⽐が10以下の場合には、不快な周波数の照明器具の設置間隔であっても問題はないこと(b) 明暗の時間率で明るくなる時間が1サイクル中の25%を占める場合を中⼼にして、それより⼤きく⼜は⼩さくなるほど不快感は減少することが明らかになっており、これらもあわせて検討することが必要です。

4.⾃動⾞がトンネル出⼝に近づいた時に起こる現象

(1)昼間における出⼝付近の⾒え⽅の低下

昼間、運転者がトンネル内を走行してトンネル出口に近づくと、トンネル出口開口部を通して野外が非常に明るく見え、その出口があたかも白い穴に見えるような現象が生じます。
この時に出口付近にある障害物は明るい野外の輝度を背景とした黒いシルエットとなって見え、その識別は容易であり特に問題はありません。しかしながら、交通量が多くなって車頭間隔が短くなると別の問題が生じます。つまり、図6のように自車とトンネル出口までの間に2台以上の先行車がある場合、開口部が走行車に覆われない部分の非常に高い野外輝度が一種のまぶしさを生じさせます。このため、先行する自動車はいずれも暗く見え、複数の例えば2台の車が一塊りのシルエットとなって見え、先行車の存在が分かっても先行車と自分の車との間の距離を判断することができなくなり、安全走行に十分な車頭間隔が得られず、危険な状態が起こります。この危険を防止するために先行車を識別でき、更に先行車との距離、速度差等を正確に知りえるだけの照明を先行車群の背面に与えねばならず、出口部にこの目的のための照明を設置する必要があります。

図6:トンネル出⼝部で視認性が低下する⾃動⾞の位置関係

(2)夜間時の出⼝部で起こる⾒え⽅の低下

夜間、トンネル出口に隣接した接続道路に照明がなく、トンネル内だけに照明がある場合や、接続道路に照明があっても極めて暗いような場合などには、昼間におけるトンネル入口とよく似たブラックホール現象が起こります。これは運転者が明るく照明されたトンネル内を走行している間にその明るさに順応し、暗い接続道路に走り出る直前、通常の前照灯の照明では明るさが不足する現象です。このような現象が起こると、トンネル接続道路上の障害物は勿論、その線形もわからなくなるので非常に危険です。このために出口部の接続道路にも路面が十分明るくなるような照明を設置するか、少なくとも線形の変化がわかるような対策を行います。

トンネル照明の種類

トンネル照明の種類は図7の構成例で示すように、基本照明、入口照明、出口照明に大別され、それぞれの設置目的および設置場所は以下のとおりです。

1.基本照明

トンネルを走行する運転者が、前方の障害物を視認するのに必要な明るさを与えるための基本的な照明で、トンネル全長にわたって設置します。

2.⼊⼝照明

昼間時に、トンネル入口部でトンネル内外の明るさの激しい差によって生ずる、見え方の低下を防止するために基本照明を増強する照明で、トンネル入口部に設置します。

3.出⼝照明(⼀⽅交通の場合のみ)

昼間時に、入口部と同様な理由でトンネルの出口部に設置するものと、夜間時、照明を設置したトンネルから暗黒の接続道路に出る時に起こる、見え方の低下を防ぐためにトンネルの出口部の接続道路に設置するものがあります。

4.停電時⽤照明

トンネル内部における停電時の危険を防止するために設ける照明で、一般的には基本照明の一部でまかなわれ、その平均路面照度は基本照明の1/4~1/10以上とされています。

図7:トンネル照明の構成

(a)一方交通の場合の構成図、(b)対面交通の場合の構成図

照明方式の種類

トンネル照明の照明方式は、照明の種類により表1のように分類されます。また、入口照明の照明方式は、トンネルの設計速度と設計交通量により図8に示すように分類されますが、入口照明方式の選定には、その他の要因も考慮して、十分検討する必要があります。各照明方式の特長は、次の通りです。

表1:トンネル照明の種類による照明⽅式の分類

照明の種類 基本照明 ⼊⼝照明

照明⽅式

対称照明⽅式
カウンタービーム照明⽅式
プロビーム照明⽅式

図8:⼊⼝照明⽅式の適⽤分類

1.対称照明⽅式

道路軸に対して対称な配光を持つ照明器具を使用した、従来から用いられている照明方式です。路上の障害物や先行車の視認性、壁面輝度の確保など、所要の照明環境を実現するためのバランスのとれた照明方式です。照明器具の設置位置により次の2つに分類されます。

図9:側壁配置形

図10:天井配置形

(1)側壁配置型

トンネルの天井側面に照明器具を設置し、反対側の車線に向けて照射する方式です。

(2)天井配置型

トンネル天井部に照明器具を設置し、その直下に向けて照射する照明方式です。設置された照明器具に近い壁面を積極的に照射することにより、壁面の輝度を高め視環境の改善を図ります。
対称照明方式は交通量、設計速度とも全般の条件に採用されています。

2.カウンタービーム照明⽅式

進⾏⽅向と向き合う⽅向に最⼤光度を持つ、⾮対称な配光の照明器具を使⽤した照明⽅式です。この照明⽅式により、次のような効果が期待できます。

  1. (a)同等の照度において、対称照明方式より高い路面輝度が得られます。
  2. (b)運転者に面する路上の障害物面への直射光の入射が少ないため、路面とのコントラストが増加し、視認性の向上が期待できます。
  3. (c)照明器具の位置・並びが視認しやすいため、対称照明方式に比べて視線誘導効果の向上が期待できます。

(a)、(b)の効果は、コンクリート路面に比べて鏡面性の高いアスファルト路面において高くなります。
一方、次のようなトンネルでは、カウンタービーム照明方式の採用が適さない場合があります。

  1. (d)太陽光の影響により、適切なコントラストが期待できないトンネル。
  2. (e)交通量が多く、短い車間距離で連続走行する交通形態が予想されるトンネル。(先行車の背面がその前を走行する車両の背面に重なり、先行車の認識が困難となります)
  3. (f)対面交通方式で入口照明区間が重複するようなトンネル。(対⾯側の⼊⼝照明により、運転者から⾒える障害物⾯が照らされて、適切なコントラストが得られなくなります)

図11:カウンタービーム照明⽅式

カウンタービーム照明⽅式の図:遮光される箇所を図の中で説明

カウンタービーム照明方式は、路面を背景にして認識することができる路上の障害物が主たる視対象物となるトンネル入口部の照明に適しています。

3.プロビーム照明⽅式

進行方向に最大光度を持つ、非対称な配光の照明器具を使用した照明方式です。先行車が、トンネルに突入するとその背面の明るさは急激に低下し、視認が困難になることから、追従する運転者に不安感を与えます。プロビーム照明方式は、先行車の背面を積極的に照射し、先行車の視認性の改善を図る方式で、交通量が多く、運転者の視野の大部分が先行車で占められ、設計速度の高いトンネル入口部の照明に適しており、明るさは、車間距離、野外輝度及び必要とする視認レベルによって決定されます。また、設計速度が高い場合やトンネル内に分合流部のあるトンネルの基本照明にも採用されています。

図12:プロビーム照明⽅式

プロビーム照明⽅式の図:照度が上がる箇所を図の中で説明

照明設計

1.トンネル照明⼀般

(1)トンネルの調査

照明の計画にあたっては、次のようなトンネルの諸状況を正しく把握することが必要です。

(a)トンネル付近の環境
トンネル野外輝度、照明のレベル、出口照明または出口接続道路の照明などを決定するために、トンネル付近の地形、方位、接続する道路の線形など。

(b)トンネルの構造
照明器具および光源の選択、照明器具の取り付け位置および照明率の算出のために、トンネル延長、幅員の構成、断面の形状、建築限界、線形など。

(c)交通の状況
照明のレベル、光源の種類および保守率の決定などに必要な交通量、設計速度、一方交通か対面交通かなど。

(d)付帯設備の状況
電気配線設計、照明器材の決定のために、道路標識その他の設置場所や、電源の状態など。

(e)維持管理の状況
照明レベルの確保のために、トンネル内面のよごれの程度、清掃方法や回数など。

(2)建築限界

道路上で車両や走行者の交通の安全を確認するために、ある一定幅、一定高さの範囲内に障害となるようなものはおいてはいけないという空間確保の限界があり、これを建築限界と呼び、照明設計を行う場合には設置場所の十分な検討が必要です。
「道路構造令」「高速自動車国道の構造基準令」に明記されている寸法に従い、一般に側壁上部隅角部に取り付ける場合は路上4m以上、天井部に取り付ける場合は路上4.5m以上の位置に取り付けられます。

(3)光源

トンネル照明用光源の選定の要件としては、照明効果が適切に得られ経済的であること、さらに、維持保守に際しては、ランプの互換性や入手が容易であることなどがあげられます。トンネル照明用光源としては、一般的には高圧ナトリウム灯、蛍光灯、メタルハライド灯、セラミックメタルハライド灯、低圧ナトリウム灯、蛍光水銀灯、発光ダイオードなどがあります。
これらの光源は、光束、効率、寿命など光源として具備すべき特性が安定しており、トンネルという使用場所の環境に適合しています。光源の選定にあたっては、光学的および電気的特性をよく検討するとともに、設置場所の環境条件、経済性、見え方および快適性などについても十分検討して選ぶことが必要です。

(4)照明器具

トンネル照明器具は、使用する光源の光束を効率よくトンネル内に照射するとともに、ランプを有害な煤煙や水から保護し、長くその性能を発揮させるためのもので、光源の種類やワット、取り付け場所、取り付け方法などによってその形状は異なります。
トンネルでの環境条件は、一般の明り部の道路より厳しいものであり、自動車の排気ガスにさらされる度合も大きく、ところによっては地下水の漏水に侵されたり、また、清掃は水の噴流による場合もありますので、その構造はこれらの条件に耐えうる材料を使用した防噴流構造とします。
器具の配光特性は、光を有効かつ適切に利用できる機能第一とした構造であり、光束は路面ばかりでなく、天井面、壁面にも適切に配分されて、良好な照明環境を作り出すようなものであることが必要です。
照明器具の取り付けは、一般にトンネルの両側壁上部(隅角部)または天井部であり、トンネル内の仕上に応じて埋込型と直付型とに大別され、それぞれトンネルの形状や構造によって使い分けられます。

(5)輝度と照度の関係

平均輝度と平均照度の関係は、配光・配列・配置・路面の反射特性及び経年変化等によって異なりますが、照明条件として輝度パターンが重なるよう灯具を配置したときに、現行では、

  • コンクリート舗装:13 lx/cd/m2
  • アスファルト舗装:18 lx/cd/m2

の平均照度換算係数により平均路⾯輝度から平均路⾯照度を求めることができます。(道路照明の場合とは値が異なります)

2.基本照明

運転者がトンネル内を走行している間の安全性や快適性を確保するために平均路面輝度、輝度均斉度、視機能低下グレアおよび誘導性の4つの性能指標が規定され、これらを満足するように照明設計を行います。また、壁面輝度、灯具配列およびちらつきによる不快感への影響なども考慮する必要があります。

(1)平均路⾯輝度

基本照明は、トンネル内の運転者が安全かつ快適に走行できるように、道路上にある障害物を走行速度に応じた視距から判別、視認できる路面輝度を確保することが必要です。
昼間の基本照明の平均路面輝度と、それに対応する照度は設計速度によって表2の値を基準としています。3)
表2は、トンネル内の透過率が100m当り50%以上の場合に、通常のトンネルに必要な平均路面輝度を設計速度別に示したものです。このため、交通量が少なく透過率が高い場合には平均路面輝度を低減できるとしています。つまり、トンネル1本当りの日交通量が10,000台/日未満の場合は、基本照明の平均路面輝度を表2の値の1/2まで低下させることができます。夜間の場合も同様の考え方ができ、平均路面輝度を低下させることができますが、その場合でも平均路面輝度は0.7cd/m2未満としてはならないことになっています。
また、トンネル内走行時間が135秒以後の部分の平均路面輝度は、表2の値の65%(設計速度が80km/hの場合、約3.0cd/m2)まで下げることができます。

表2:基本照明の輝度と照度

設計速度
(km/h)
平均路⾯輝度
(cd/m2)
平均⽔平⾯照度(lx)
アスファルト舗装 コンクリート舗装
100 9.0 162 117
80 4.5 81.0 58.5
70 3.2 57.6 41.6
60 2.3 41.4 29.9
50 1.9 34.2 24.7
40以下 1.5 27.0 19.5

(2)輝度均⻫度

路上障害物の視認性は、路面の明るさだけでなく、その均一性にも影響を受けることから3)、明るさのムラの少ない路面にする必要があります。そのため総合均斉度0.4以上とする必要があります。また、視覚的な不快感を緩和するために車線軸均斉度0.6以上を確保することが望ましいとされています。

数式:総合均斉度Uo=L―min/Lr

ここで、Lmin:最⼩部分輝度(cd/m2)、Lr:平均路⾯輝度(cd/m2

数式:総合均斉度Uo=Lmin(ℓ)/Lmax(ℓ)

ここで、Lmin(ℓ):⾞線中⼼線上の最⼩部分輝度(cd/m2)、Lmax(ℓ):⾞線中⼼線上の最⼤部分輝度(cd/m2

(3)視機能低下グレア

路上障害物の視認性はまぶしさ(グレア)の影響も受けることから、視機能低下グレアを抑制する必要があります。視機能低下グレアが数値化された相対閾値増加TIは15%以下とする必要があり、平均路面輝度に応じて次式から相対閾値増加を計算します。

数式:Lr≦5cd/㎡の場合 TI=65・Lv/Lrの0.8乗(%)、Lr>5cd/㎡の場合 TI=95・Lv/Lrの1.05乗(%)

ここで、Lr:平均路⾯輝度(cd/m2)、Lv:照明器具による等価光幕輝度(cd/m2

(4)誘導性

前述の道路照明と同様に平均路面輝度と総合均斉度が基準値を満たすように照明設計を行い、視覚的誘導効果を確保する必要があります。また、灯具の高さ、配列および灯具間隔を考慮して光学的誘導効果が得られるように配慮する必要があります。

(5)壁⾯の明るさ

閉鎖空間のトンネル内を走行する運転者の視認性や安心感には壁面の明るさも影響することから、路上1mの高さまでの壁面を対象に明るさが規定されています。内装のあるトンネルの壁面輝度は路面輝度と同等以上、コンクリート舗装などの白色系の舗装で比較的路肩が狭い場合は、路上障害物が壁面を背景に視認されることを考慮し、路面輝度の1.5倍以上とします。また、内装のないトンネルの壁面輝度は路面輝度の0.6倍以上とします。

(6)灯具配列

トンネル照明の灯具配列には、図13に示すように向合せ配列、千鳥配列、中央配列および片側配列の4種類があります。向合せ配列は輝度均斉度や誘導性が高く、平均路面輝度が高い条件のトンネルに採用されます。千鳥配列は、交通量が少ないことから平均路面輝度を低減するようなトンネルに採用されますが、設置間隔が長くなると壁面の輝度均斉度が低下し、快適性が損なわれる可能性があることから注意する必要があります。中央配列は、交通量が少なく、トンネル断面の小さな条件において採用されます。車道上に照明器具が配置されることから、安全性を考慮し、維持管理に十分配慮する必要があります。片側配列は比較的灯具間隔が短くなるため直線のトンネルでは誘導性が高くなりますが、曲線のあるトンネルでは、曲線の外縁に灯具を配列するなどの考慮が必要となります。

図13:照明器具の配列

(a)向合せ配列、(b)千鳥配列、(c)中央配列、(d)片側配列

(7)ちらつき

灯具間隔の検討では、ちらつきによる不快感を避けるために表3に示す灯具間隔を避ける必要があります。ただし、ちらつきによる不快感は灯具間隔による周波数だけでなく明暗輝度比の影響もあり、明暗輝度比が10以下であれば表3の灯具間隔を考慮する必要はありません。

表3:ちらつきによる不快感防⽌のための避けるべき灯具間隔

設計速度(km/h) 灯具間隔(m)
100 1.5〜5.6
80 1.2〜4.4
70 1.1〜3.9
60 0.9〜3.3
50 0.8〜2.8
40 0.6〜2.2

(8)減光

夜間時および深夜時に交通量が少なくなれば、排気ガスの濃度が低下し、透過率が向上すると考えられますので、このような場合には基本照明を減光することを検討します。減光は交通量の減少に応じて行うことができますが、第1減光は1/2、第2減光は1/4とすることを基本としています。ただし、両減光とも平均路面輝度が0.7cd/m2を割らないようにします。

3.⼊⼝照明

昼間のトンネルの入口部(トンネル内部)には、明るい野外に順応した眼で入口部にある障害物を視認できるように、野外輝度と設計速度に応じた入口照明を設置しなければなりません。ただし、延長が50m未満で出口部の見通せるトンネルや、周辺の状況で眼の順応輝度が非常に低い場合はその限りではありません。

(1)野外輝度の設定

野外輝度は、図14に⽰すようにトンネル坑⼝から150m離れた位置において路上1.5mから測定されたトンネル坑⼝を中⼼とした20度視野内の平均輝度です。野外輝度の設定には主に以下の3つの⽅法があり、原則的には①の計算による⽅法から野外輝度を求めます。

図14:野外輝度の測定条件

①計算による⽅法
野外輝度の測定範囲の20度視野内における天空や地物などの⾯積⽐に表4に⽰す部分輝度を乗じて求める⽅法です。

L20=As・Ls+Ar・Lr+Ae・Le+Ah・Lh(cd/m2

ただし、

  • Ls
    :天空輝度(cd/m2
  • As:天空の⾯積⽐
  • Lr
    :路⾯輝度(cd/m2
  • Ar:路⾯の⾯積⽐
  • Le
    :坑⼝周辺の輝度(cd/m2
  • Ae:坑⼝周辺の⾯積⽐
  • Lh
    :トンネル内空の輝度(cd/m2
  • Ah:トンネル内空の⾯積⽐

②表からの選択による⽅法
20度視野内に占める天空の⾯積率から表5を⽤いて野外輝度を設定する⽅法です。

表4:部分輝度

坑⼝⽅位 天空輝度
Ls
(cd/m2
路⾯輝度
Lr
(cd/m2
坑⼝周辺の輝度Le(cd/m2
擁壁 樹⽊ 建物
13,000 4,000 2,000 1,500 2,000 2,000
東・⻄ 8,000 3,500 2,000 1,500 3,000 2,000
7,000 3,000 3,000 2,000 4,000 2,000

備考

  1. a)坑⼝⽅位は坑⼝が向く⽅向を⽰します。交通⽅向とは逆⽅向です。
  2. b)
    坑⼝⽅位が、北東・北⻄・南東・南⻄の場合は、表4の各坑⼝⽅位に対応した部分輝度の平均値を⽤います。
  3. c)部分輝度は積雪時を考慮されていません。

表5:表からの選択による野外輝度

20度視野に占める天空の面積比Asに対する野外輝度
⾯積⽐ As<0.05 0.0≦As<0.15 0.05≦As<0.15 0.25≦As
野外輝度
(dc/m2
2,500 3,300 4,200 5,000

③現地測定による⽅法
現場のトンネルにおいて野外輝度を測定できる場合はこの⽅法が望ましいとされています。1年間に連続的に測定できる場合は、累積出現頻度95%に相当する野外輝度が設計に⽤いられます。また、短期間にしか測定できない場合は、6〜8⽉の晴天⽇の南中時の野外輝度が設計に⽤いられます。

(2)⼊⼝照明曲線

トンネルの⼊⼝部には、トンネルおよび接続道路の線形とトンネルの⻑さ、設計速度、交通量などを考慮して、これに最も適した⼊⼝照明を設けます。⼊⼝照明曲線の形状は図15のように境界部、移⾏部、緩和部の3つの部分から構成されます。

(a)境界部
境界部は、トンネル⼊⼝直後にある障害物を、設計速度に対応した視距から⾒るための必要な背景を与える部分です。

(b)移行部
移⾏部は、⾃動⾞が境界部を過ぎた位置から進⾏して、トンネルに進⼊する⼨前までの間に、視距だけ前⽅にある障害物を⾒るために必要な輝度を与える部分です。トンネルに近づくにしたがって、運転者の⽬の順応輝度は漸減し、背景の所要輝度も減少するため、曲線は漸減する形となります。境界部および移⾏部は、ブラックホール現象を除去するための部分です。

(c)緩和部
緩和部は、⾃動⾞がトンネルに進⼊した後に、視距の分だけ前⽅にある障害物を⾒るために必要な背景輝度を与える部分です。⾃動⾞の進⾏とともに、暗順応曲線にしたがって必要な輝度も減少し、やがて基本照明に接続するようになっています。

図15:⼊⼝照明曲線

L1:境界部の路面輝度(cd/㎡)L2:移行部最終点の路面輝度(cd/㎡)L3:基本照明の平均路面輝度(cd/㎡)ℓ1:境界部の長さ(m)ℓ2:移行部の長さ(m)ℓ3:緩和部の長さ(m)ℓ4:入口部照明の長さ(m)

表6:⼊⼝部照明の路⾯輝度と⻑さ(野外輝度3,300cd/m2

設計速度
(km/h)
路⾯輝度(cd/m2 ⻑さ(m2
L1 L2 L3 1 2 3 4
100 95 47 9.0 55 150 135 340
80 83 46 4.5 40 100 150 290
70 70 40 3.2 30 80 140 250
60 58 35 2.3 25 65 130 220
50 41 26 1.9 20 50 105 175
40 29 20 1.5 15 30 85 130

備考

  1. a)
    L1は境界部、L2は移⾏部終点、L3は緩和部終点(基本照明)の路⾯輝度、ℓ1は境界部、ℓ2は移⾏部、ℓ3は緩和部、ℓ4は⼊⼝部照明の⻑さ(ℓ1+ℓ2+ℓ3)を⽰します
  2. b)
    野外輝度が本表と異なる場合の路⾯輝度L1、L2は野外輝度に⽐例して設定します。緩和部の⻑さℓ3は次式により算出します。
    数式:ℓ3=(log10L2ーlog10L3)・V/0.55(m)

    ただし、Vは設計速度(km/h)

  3. c)通常のトンネルでは、⾃然光の⼊射を考慮してトンネル⼊⼝より概ね10mの地点より⼈⼯照明を開始します。
  4. d)対⾯交通の場合は、両⼊⼝それぞれについて本表を適⽤します。短いトンネルで両⼊⼝の⼊⼝部照明区間が重なる場合は、路⾯輝度の⾼い⽅の値を採⽤します。

(3)トンネルが連続している時の⼊⼝照明

50m以上のトンネルが⼆つ以上連続していて、先⾏するトンネルの出⼝から後続するトンネルの⼊⼝までの距離が設計速度に対応した視距よりも短い場合、後続するトンネルの⼊⼝照明の平均路⾯輝度の設計値を坑⼝間距離に応じて低減することができます。
これは第1トンネルで順応低下した⽬が明るい区間を通り、すぐに第2トンネルに進⼊すると、トンネル間隔が短い場合には順応が完全に回復しないうちに第2トンネルに進⼊するからです。

表7:後続するトンネル⼊⼝照明の低減係数ka

坑⼝間距離d(m) 設計速度V(km/h)
100 80 60 40
d≦10 0.30 0.35 0.40 0.45
10<d≦15 0.40 0.45 0.50 0.60
15<d≦20 0.50 0.55 0.60 0.75
20<d≦35 0.60 0.70 0.75 0.95
35<d≦50 0.70 0.80 0.90 1.00
50<d≦70 0.80 0.90 1.00
70<d≦100 0.90 1.00
100<d 1.00

(3)-1 後続するトンネルの⼊⼝照明曲線の設計

(a)野外輝度
後続トンネルの野外輝度は、先⾏するトンネルが存在せず、単独で存在している状態を想定して求めます。

(b)境界部の設計

  • 路⾯輝度
    境界部の路⾯輝度L1は、単独で存在すると想定したトンネルの路⾯輝度L1表7に⽰す⼊⼝照明の低減係数kaから次式のように求まります。

    L1=L1×ka(cd/m2

  • 照明区間
    境界部の照明区間d1は、設計速度に対応した視距ds、障害物の背景⻑さdg、坑⼝間距離dから次式のように求まります。

    d1=ds-d+dg(m)

    設計速度Vと視距ds、および障害物の背景⻑さdgの関係は表8のようになります。

表8:設計速度と視距および障害物の背景⻑さとの関係

設計速度V(km/h) 100 80 60 40
視距ds(m) 160 110 75 40
障害物の背景⻑さdg(m) 55 40 25 15

(c)移⾏部及び緩和部の設計
理論的には移⾏部の⼊⼝照明曲線は“曲線”となるため、ここでは曲線の2本の接線を⽤いて直線におきかえる⽅法を説明します。(図16
⼊⼝照明曲線は、2本の接線の交点をt点とすると、境界部の終点、t点、緩和部の終点を変曲点とする3つの直線によって構成されます。境界部の終点からt点までの距離dtは設計速度V(km/h)と坑⼝間距離d(m)から決定されます。その関係をグラフに⽰したものが図17です。また、t点での路⾯輝度Lt(cd/m2)は、境界部の路⾯輝度L1(cd/m2)に低減係数Ktを乗ずることで求められます。
低減係数Ktは、設計速度V(km/h)と坑⼝間距離d(m)から決定されます。その関係を図18に⽰します。t点の位置と路⾯輝度が求まれば、図19よりt点の路⾯輝度を100%とした緩和曲線を引くことで、⼊⼝照明曲線が完成します。

図16:⼊⼝照明曲線の設計例

Y軸:平均路面輝度Lr(cd/㎡)、X軸:トンネル入口からの距離D(m)のグラフ、設計条件:設計速度:80(km/h)野外輝度:3300(cd/㎡)坑口間距離:70(m)

図17:境界部の終点からt点までの距離

Y軸:境界部の終点からt点までの距離dt(m)、X軸:坑口間距離d(m)のグラフ

図18:t点の路⾯輝度の低減係数K1

Y軸:t点の路面輝度の低減係数(Kt)、X軸:坑口間距離d(m)のグラフ

図19:緩和部の路⾯輝度の設定

Y軸:輝度比率(%)、X軸:緩和部の長さ(m)のグラフ

4.出⼝照明

昼間、運転者がトンネル内を⾛⾏してトンネルの出⼝付近に近づくと、出⼝開⼝部が⾮常に明るく⾒え、⼊⼝とは逆に“⽩い⽳”に⾒えるような現象が⽣じます。このとき、交通量が多くなり、⾞頭間隔が短くなりますと、⼤きな⾃動⾞の背後に追従する⾃動⾞や障害物の⾒え⽅が低下します。これを補うために、先⾏⾞の背⾯を明るくするためにトンネル出⼝部付近に増灯照明を設置します。
また、夜間においては、逆に明るいトンネルから暗い野外に出るときに、丁度昼間の⼊⼝で⽣じたような現象が⽣じます。このため坑外接続道路の出⼝側に道路灯による緩和照明を設ける必要が⽣じます。

(1)昼間における出⼝照明

  • 設計速度が80km/h以上であり
  • 出⼝部の野外輝度が5,000cd/m2以上であり
  • トンネル延⻑が400m以上である

上記の場合には、出⼝部に80mの⻑さにわたって出⼝照明を設置します。出⼝照明の鉛直⾯照度は、トンネル内から⾒た野外輝度が5,000cd/m2の場合は600 lxのように、野外輝度の12%の値とします。

(2)夜間時における出⼝側の坑外接続道路の照明

夜間のトンネル出⼝に差しかかった時にその接続道路に照明設備が設置されていないと線形や障害物の視認性が得られない恐れがあることから、必要に応じて道路照明設備を設置することとされています。

5.停電時照明

トンネル内で突然停電に遭遇しますと、前方を走る自動車との車頭間隔が十分にないと追突の恐れがあったり、また幅員の狭いトンネルで、対面交通の場合は対向車に衝突する危険性が生じます。このような危険な状態を未然に防止し、かつ自動車運転者に心理的な不安を与えないために、延長200m以上のトンネルには停電時用照明の設置が必要です。ただし、延長200m未満のトンネルであっても出口が見通せない場合は停電時用照明の設置が望ましいとされています。
停電時⽤照明の点灯⽅式には、⼀般的には次の3⽅式があります。

  1. 1)蓄電池とサイリスタ・インバータを組み合せた無停電電源装置による方式
  2. 2)自家発電設備などの予備電源による方式
  3. 3)電池内蔵型停電時用器具による方式

これらの3⽅式は、それぞれトンネル付帯設備との関連、停電時⽤照明の負荷容量の⼤⼩、維持保守⾯、経済性などによって適宜選定されることが必要です。

6.照明計算

照明設計における平均路⾯輝度の計算には、次に⽰す光束法の計算式を⽤います。

Lr=F・M・N・U/W・K・S
  • 但し、
    1. F:光束(lm)
    2. S:照明器具の間隔(m)
    3. W:車道幅員(m)
    4. K:平均照度換算係数(lx/cd/m2
    5. L:基準輝度(cd/m2
    6. N: 器具の配列による係数
      片側配列・千鳥配列は N=1
      向合せ配列は     N=2
    7. U:照明率
    8. M:保守率

(1)⾞道に対する直射照明率:U

照明器具の中の全光源または照明器具の光束のうち路面に直接到達する光束の比率を与える数値で、トンネルの断面と照明器具の取り付け位置と角度が定まれば、図21のような照明率曲線(照明器具の種類によって固有のもの)より次のように求められます。
図20のθ1、θ2を求め、図21よりθ1照明率とθ2照明率を求めます。
求めた2つの照明率の和が、⾞道に対する直射照明率Uとなります。

U=θ1照明率+θ2照明率

図20:トンネル断⾯と照明器具の取付状態

図21:照明率曲線

(2)相互反射の影響を考えた照明率計算

トンネルの車道の照明率は、照明器具から直接に車道に入射する光束と、天井・壁・路面などで1回もしくは何回か反射(相互反射)して車道に入射する光束との和によって得られます。“相互反射”の影響を計算にいれる方法は、道路照明施設設置基準・同解説(日本道路協会)に式及び数表が掲載されており、車道幅員Wに対する照明率Uは次式によって求められます。

U=U′4+W/W0(U′-U4)

ここでU=A1・U1+A2・U2+A3・U3+A4・U4

  1. U1:天井⾯に対する直射照明率
  2. U2:器具に近い方の壁面に対する直射照明率
  3. U3:器具から遠い方の壁面に対する直射照明率
  4. U4:路面全幅員に対する直射照明率
  5. U4:車道幅員に対する直射照明率
  6. U:路⾯全幅員に対する照明率(相互反射を含む)
  7. A1:照明率を求めるための係数(天井)
  8. A2,A3:照明率を求めるための係数(壁面)
  9. A4:照明率を求めるための係数(路⾯)
  10. W0:路⾯全幅員
  11. W:⾞道幅員

図22:トンネル断⾯と照明器具の取付状態

図23:照明率曲線

(3)保守率:M

設計照度は、保守管理を行っている期間中、常に維持しなければならない下限値です。したがって、使用中のランプの光束低下、器具の汚れ、壁面・天井面の汚れなどによる照度の減少を、最初から見込む必要があります。そのための係数が保守率です。保守率は、交通量、トンネルの状況、保守管理の体制などを考えて定めるもので、一例を表97)表108)に示します。

表9:保守率の標準値

⽇交通量 保守率
20,000台以上 0.55
10,000台以上20,000台未満 0.60
5,000台以上10,000台未満 0.65
5,000台未満 0.70

表10-1:保守率(⼀⽅通⾏トンネルの基本照明)

トンネル延⻑ 500m
未満
500〜
1,000m
未満
1,000〜
1,500m
未満
1,500〜
2,000m
未満
2,000〜
2,500m
未満
2,500〜
3,000m
未満
3,000〜
5,000m
未満
断⾯交通量 60,000台/⽇以上 0.70 0.70 0.70 0.65 0.65 0.65 0.65
40,000〜
60,000台/⽇未満
0.70 0.70 0.70 0.70 0.65 0.65 0.65
30,000〜
40,000台/⽇未満
0.70 0.70 0.70 0.70 0.70 0.65 0.65
20,000〜
30,000台/⽇未満
0.75 0.70 0.70 0.70 0.70 0.70 0.70
10,000〜
20,000台/⽇未満
0.75 0.70 0.70 0.70 0.70 0.70 0.70
5,000〜
10,000台/⽇未満
0.75 0.75 0.70 0.70 0.70 0.70 0.70
5,000台/⽇未満 0.75 0.75 0.75 0.70 0.70 0.70 0.70

表10-2:保守率(対面通行トンネルの基本照明)

トンネル延⻑ 500m
未満
500〜
1,000m
未満
1,000〜
1,500m
未満
1,500〜
2,000m
未満
2,000〜
2,500m
未満
2,500〜
3,000m
未満
3,000〜
4,000m
未満
4,000〜
5,000m
未満
断⾯交通量 15,000〜
20,000台/⽇未満
0.70 0.60 0.50 0.50
10,000〜
15,000台/⽇未満
0.70 0.65 0.60 0.55 0.50 0.50
5,000〜
10,000台/⽇未満
0.75 0.70 0.65 0.65 0.60 0.55 0.50 0.45
5,000台/⽇未満 0.75 0.75 0.75 0.70 0.70 0.70 0.65 0.65
  1. (1)⼀⽅通⾏トンネルの⼊⼝部照明の保守率は、0.75とする。
  2. (2)断⾯交通量は⽇平均交通量とし、計画交通量を採⽤する場合は最⼤値とする。

(4)照明設計⼿順

前述の性能規定の値を確保できるように照明設計を行います。下記はトンネル基本照明の設計手順3)を示し、各性能規定は所定の計算手法により求めるものとされています。また、入口部照明は野外輝度を設定した後、所要路面輝度を満足する必要光束を算出し、光源の組み合わせと数量を算出して光束法で路面輝度を確認するものとされています。

図24:設計⼿順(基本照明)

(参考文献)

  1. 1) CIE Publ. No.88,Guide for the lighting of road tunnels and underpasses (2004).
  2. 2)高速道路調査会:トンネル照明設計指針(1990).
  3. 3)日本道路協会:道路照明施設設置基準・同解説(2009).
  4. 4)K. Narisada, K. Yoshikawa and Y. Yoshimura:Adaptation Luminance of Driver’s Eyes Approaching a Tunnel Entrance in Daytime, Proceeding of CIE, Kyoto Session, PP. 409-413,(1980).
  5. 5)蒲山久夫:急激な明暗変化に対する緩和照明について,照学誌,Vol.47,No.10,pp.488-496 (1963).
  6. 6)斉藤, 成定:光のチラツキが不快感に及ぼす影響について, National Tech. Rept., Vol.14, No.1,pp.1-9(1967).
  7. 7)建設電気技術協会:電気通信施設設計要領・同解説(電気編)(2013).
  8. 8)東日本高速道路株式会社,中日本高速道路株式会社,西日本高速道路株式会社:設計要領 第七集 電気施設編(2013).

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