• 株式会社メガネスーパー
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商品を際立たせる照明を配した売り場スぺース

よみがえった企業が次の一歩を「光」に託す

「メガネやコンタクトレンズといったモノだけで、もう差別化は図れない。従来のイメージを払拭し、価格を超えた価値を訴求する必要があった」。メガネスーパー(東京都中央区)の持ち株会社ビジョナリーホールディングス(同)で企画開発を担当する吉野正夫さんは、6年ほど前の状況をこう振り返る。

メガネスーパーは、400近い店舗を有する全国有数のメガネチェーンだ。ディスカウンターから出発し、テレビ広告をからめた積極的な多店舗展開で知名度を高め、順調に成長してきた。

ところが2000年を過ぎたころ、暗雲が立ち込み始める。自社で商品を企画、生産、販売する製造小売という業態を武器に、低価格のメガネを提供する企業が相次いで登場。価格競争に巻き込まれたメガネスーパーは厳しい状況に直面した。

株式会社ビジョナリーホールディングス アイケア事業部 R&Dグループ ジェネラルマネジャーの吉野正夫さん

株式会社ビジョナリーホールディングス
アイケア事業部 R&Dグループ
ジェネラルマネジャーの吉野正夫さん

「この苦境から脱するにはどうするか。幸い、当社には長年蓄積したネームバリュー、そしてカウンセリングの実績を基盤とする技術力がある。それらの強みを生かしてモノ売りから脱し、『アイケア』すなわち眼の健康の提供というコト売りの先鋭化を目指した」(吉野さん)。

2013年に星﨑尚彦新社長を迎えた同社は、再生の道へと舵を切った。眼の健康寿命に配慮した商品・サービスやアドバイスを提供する「アイケアカンパニー」を掲げ、矢継ぎ早に改革を打ち出す。

社員の意識改革に加え、事業の在り方にもメスを入れた。俎上に載せられた1つが視力検査だ。

視力検査室

視力検査室

視力検査に「光」を持ち込む

メガネ業界では一般に、視力の検査はメガネやコンタクトレンズの販売に伴うサービスとして実施している。メガネスーパーは、視力検査の内容を充実させたうえで検査を有料化した。

「トータルアイ検査」と呼ぶ同社独自の検査は、屈折特性、視距離や色覚のチェックなどを行う眼体力検査と、眼年齢や調節力などをチェックする眼年齢検査で構成する。客のニーズに対応し、23項目の検査を行うライトコース(検査時間40~50分、2000円)から52項目の検査を行うプレミアムコース(60~70分、4000円)まで、3種類のコースを用意した(2019年7月時点)。

メニューの多彩化と並行して、さらに検査を進化させるためには何が必要か。吉野さんが着目したのは、業界で重視されていない「光」だった。

「モノの見え方は周囲の明るさによって変わる。暗い夜間は著しく視力が低下し、個人差も大きい。ところが眼科やメガネ店では長年、『距離』の遠近だけで視力検査を実施してきた。明るさに関する規定はごく大まかで、視力表は200~500ルクス、検査室内はおよそ50ルクスと定めている程度だ」(吉野さん)。そこでまずメガネスーパーは、昼と夜という2段階の明るさの下で視力を検査できるようにした。

ただし「日常の光環境に合わせ、より実態に即したメガネ選びをしてもらう」には、まだ十分ではない。そう考えた同社は、日常的な5つの光のシーンを再現して検査するシステムに挑戦した。

5つの光のシーンとはこうだ。
1つめは、明るい晴天時をイメージした「アウトドアモード」。屋外での作業やスポーツを想定した光に当たる。2つめは、一般的な仕事場でのデスクワークを想定した「オフィスモード」。3つめは、家庭の一般的なリビングルームで読書やテレビ鑑賞をする場合を想定した「リビングモード」。4つめは、夕方の屋外あるいは曇天時を再現した「サンセットモード」。そして全ての照明を消した状態が、夜間の屋外やナイトドライブでの使用を想定した5つめの「ナイトモード」になる。5つの光のシーンは、検査室の天井に設置した2種類の発光ダイオード(LED)照明の明るさ(照度)と色味(色温度)を組み合わせて調整する。

5つの光のシーン設定

5つの光のシーン設定

5つの光のシーンを演出する照明システムは、2019年5月23日にリニューアルオープンした「メガネスーパー溝ノ口本店」(川崎市高津区)に第1弾として導入した。同時に全国の店舗でも展開を始め、2019年度上半期に30店舗程度への採用を計画している。

検査室の「影」と「反射」を解消

5つの光のシーンは、パナソニックとの協業で実現した。

「当初パナソニックには、LEDを用いて自宅のリビングや会社のオフィスなどの明るさを再現できるかを相談した。『できる』という返事を得たので、そこから一気に実現へとこぎ着けた。検査実績を通してはぐくんできた技術力という当社の付加価値をうまく生かし、お客様の満足度を高める仕掛けができた」(店舗開発を担当する鈴木総一郎さん)

準備は迅速に進んだ。溝ノ口本店の現地調査から着手したパナソニックの担当者は、具体的な照明計画を1カ月後に提示した。

調光や調色とともに、検査室の光のシーン設定で重要になるのが照明の配置計画だ。実際の検査室内では、ダウンライトの影ができたり、視力表に照明が当たって反射したりといった状況がどうしても生じる。「設計時には、こうした不具合をいかになくすかという課題を常に抱えてきた。その悩みに対し、パナソニックは仮設の照明で実験しながらスピーディーにきめ細かな対応をしてくれた」と鈴木さんは評価する。

株式会社メガネスーパー 店舗営業本部 店舗開発グループ マネジャーの鈴木総一郎さん

株式会社メガネスーパー
店舗営業本部 店舗開発グループ
マネジャーの鈴木総一郎さん

設計マニュアル

今後の店舗展開を念頭に、検査室の大きさによって4つにパターン分けした設計マニュアルも作成した。

メガネスーパーの店舗開発は居抜きの新規出店や既存店舗の改装となるケースが多く、店舗面積や天井高はそれぞれ異なる。検査室の面積や形も違うため、個々の空間に合わせてLED照明の取り付け位置を設定する必要がある。パナソニックは、これまで蓄積してきた実証値に基づいて照明設計をマニュアル化し、メガネスーパーの現場の実態を踏まえた提案へと結実させた。

メガネスーパーは五感創出産業をうたうビジョナリーホールディングスの中核会社で、五感のうち視覚(メガネ)と聴覚(補聴器)の分野を担う。吉野さんは、メガネスーパーにとっての今回の取り組みの意義をこう総括する。「補聴器のデジタル化が進む一方で、メガネはいまだアナログな状態にある。いずれデジタルに移行するかもしれないが、それまではアナログな環境下で明るさに応じたメガネをきめ細やかに提供していくことが大切だ。パナソニックの力を借りることにより、そのために必要な技術を実現できた」

店舗づくりの進化は続く

溝ノ口本店では、メガネの展示ケースが並ぶ店舗スペースや「アイリラクゼーション室」の照明計画もパナソニックが担当した。

例えば売り場の天井照明では、商品を引き立たせることを意識している。ダウンライトのLEDは、直接見上げても不快感を与えないようまぶしさを80%カットした「TOLSOシリーズ」を使用。ややシャープな光をもたらす中角配光タイプを採用し、商品の見え方にメリハリを与えた。濃い色の木目を基調としたインテリアや年配客が中心となる客層に合わせて、色は落ち着いた電球色を用いている。

中央のダウンライトは、2つずつ組み合わせて配置することで天井デザインにリズム感をもたらす

中央のダウンライトは、2つずつ組み合わせて配置することで天井デザインにリズム感をもたらす

アイリラクゼーションは、メガネスーパー独自のサービスだ。首や顔まわりをほぐして眼の疲れを除去し、朝の起床時と同じ「その人が本来備えている視力」を取り戻した状態で精度の高い視力検査を行う。照度を抑えた小部屋には、鉢植えの緑を配するなどゆったりとくつろげる演出を施した。

アイリラクゼーションを施術する室内

アイリラクゼーションを施術する室内

リニューアル後の1カ月を経て、溝ノ口本店店長の加藤功さんは手応えを感じている。
「明るさによって視力が大きく左右されるという気付きをお客様自身が得る。その結果『詳細に検査して自分に合ったメガネをつくってもらえた』という納得感は確実に高まる。私たちスタッフはこの設備と環境を生かし、いかにお客様への具体的な提案に結び付けられるかを試行し続けていく」

 メガネスーパーとパナソニックの協業は、店舗への照明導入がゴールではない。今後は、光を活用した精度の高い検査を顧客満足度や客単価の向上、あるいはシーンに合わせた複数のメガネの販売促進へとつなげていくための検証作業が不可欠だ。店舗づくりという観点から店舗全体の照明設計の精度を高める作業も求められる。

「お客様にメガネスーパーを認知してもらい、店舗に導き入れ、効果的に商品に触れてもらうという流れを生み出すために、建物ファサードや駐車場などの外部環境を含めて照明が果たす役割は大きい。総合的な提案力を持つパナソニックのノウハウを得ながら、店舗の価値を高める『光の仕掛け』を備えたショップ展開を進めていきたい」と、吉野さんは将来を見据える。顧客対応に工夫を重ね、それに伴うエビデンスを収集して照明計画の質向上を目指すという思いを両社は共有している。

株式会社メガネスーパー溝ノ口本店 店長の加藤功さん(神奈川ブロックストアディテクター代行)

株式会社メガネスーパー
溝ノ口本店 店長の加藤功さん
(神奈川ブロックストアディレクター代行)

 2014年のアイケアカンパニー宣言以降、メガネスーパーは急激に業績を回復してきた。価格競争の過程で無料提供していたレンズを再び有料化したこともあり、売上高は2015年4月期に150億円弱で底打ちした後、右肩上がりに転換。18年4月期には200億円を超えるまでに伸長した。2016年4月期には2008年4月期以降続いていた単年度赤字を脱却し、9期ぶりの黒字を記録した。

同時に売上高全体に占める付加価値サービスの比率は、2016年4月期の12%から1年後の2017年4月期には22%まで増えた。モノ売りからコト売りへの変革は、着実に進んでいる。

売上高(品目別)
売上高推移

株式会社メガネスーパー 溝ノ口本店

メガネスーパー 溝ノ口本店

■建築概要
店舗名/メガネスーパー 溝ノ口本店
所在地/神奈川県川崎市高津区溝口1-12-17 豊田ビル
建物構造/鉄筋コンクリート・鉄骨造陸屋根6階建て
店舗の階/1階
店舗面積/171.03㎡
工事期間/2019年5月7日~ 5月21日
開業日/2019年5月23日
営業時間/10:00~19:30
定休日/年中無休

■企業概要
企業名/株式会社ビジョナリーホールディングス
設立年/2017年(メガネスーパー1980年)
本社所在地/東京都中央区日本橋堀留町1丁目9番11号NEWS日本橋堀留町6階
資本金/100百万円
年間売上高/26,485百万円(グループ連結業績 平成31年4月期)
主要な事業/メガネ、コンタクトレンズ及び付属品、補聴器等の販売および卸業
事業所数/382店舗(グループ連結店舗数 平成31年4月現在)
従業員数/1,820名(グループ連結人数 平成31年4月現在)