INTERVIEW 脈々と流れる水の景を演出したLED 森本 浩章氏 大木 修和氏 松下 進氏

コンセプトの“水の景”を脈々と流れる光で表現

建築設計を統括した森本浩章氏は、「インテリアも含め、“水の景”をコンセプトに掲げ、自然との共生する建築を目指しました」と語る。エントランスホールからロビーまでの共用部には、岩山を連想させる自然石の壁が巡り、ガラスの外皮を透かして外からもその様子を見ることができる。「仕上げを変えながら1種類の石材でダイナミックに表現した壁面を、しっかり照らす照明器具の選定をお願いしました」。その要望に応えて、パナソニックは素材の肌合いをリアルに演出する「美光色LED」を提案している。
また、水の景というコンセプトの表現について森本氏は、「脈々と流れていく水の様子を、時間とともに変わっていく光の流れで表現したいと考えました」と話す。その思いを象徴するのが、エントランスホールからロビーにかけての調光・調色制御や、それと連動して33階建ての頂部に流れる光の演出だ。「これらの光環境は、新宿南口の新しいランドマークに、多くのひとも流れてきて活気付くことにも通じます」。そう話す森本氏は、今回の照明計画を振り返って、「パナソニックさんは、設計の意図を的確にとらえ、非常に提案性の高い照明計画を出してくれました」と評価する。

コンセプトの“水の景”を脈々と流れる光で表現

働く人が心地よく感じる照明導入の先駆け

「建築計画の設計コンセプトを尊重して、新宿らしい品格やにぎわいをテーマに、LEDの特性を生かした照明を実現しました」。照明設計をとりまとめた大木修和氏は、そう振り返る。設計段階で複数の照明メーカーを対象にプロポーザルを実施し、コストバランスのとれたデザイン提案を求めた。「工事期間が長かったので、その間の技術革新を織り込んで、納入時期に提供できる技術を踏まえて提案してもらいました」(大木氏)。最終的に選定したのは、パナソニックの提案だ。太陽光の動きに合わせたオフィスロビーなどの調光・調色制御や、石張りの壁を鮮やかに表現する「美光色LED」、水の流れを表現するタワーの照明などを高く評価したという。
大木氏は、「出勤時と退社時とで移り変わる光環境を、オフィスのエントランスやロビーで採用した先駆けではないでしょうか。しかも、その移り行く光環境が、ガラスのカーテンウォールを通して前面の甲州街道を行き交う歩行者からも見えます」と語る。
水の流れをモチーフにしたタワーの外装照明は、多方面からの検証を重ね、都市景観としてふさわしいことを確認したという。「コンセプトに即した個性を表現しつつ、新宿の街に溶け込む光の演出が実現しました」と、手ごたえを口にする。

働く人が心地よく感じる照明導入の先駆け

協働のデザインで照明の品質を高める

照明デザイン監修という立場で携わったのが、光環境デザイナーの松下進氏だ。「様々な光が混在する新宿にあって、まわりの光に負けないけれども、オフィスとしての節度ある光にすべきだろうと考えました」と、照明デザインの意図を話す。松下氏は、施設全体を網羅する大きな方針として、高さやエリアに応じて建築を複数のレイヤーに分け、それぞれに照明コンセプトから導かれる光のボリューム感を持たせることを提案した。検討に長い時間を要したのは、地上33階建てのタワーの外装照明だった。松下氏は、「動・静」、「具象・抽象」をテーマに、時間帯や季節によって変化する光のパターンをデザインマップに落とし込み、入念に検証していった。「低層部の調光・調色制御や、エスカレーター下面に流れる照明は、外部からも見えます。それらの光との調和を図りつつ、外装としてふさわしい照明を模索しました」と振り返る。特に、夜の景観を特徴づけるタワー頂部の照明デザインでは、光の効果やLED光源の設置方法などを、模型やモックアップで繰り返し検討した。「互いの専門的見地からパナソニックさんともアイデアを出し合い、協働作業を重ねながら品質を上げていきました」と振り返る。

協働のデザインで照明の品質を高める

森本 浩章氏

PROFILE

  • 森本 浩章
  • 株式会社ジェイアール東日本建築設計事務所 建築設計本部 チーフアーキテクト

1967年2月24日生まれ。早稲田大学理工学部建築学科修了。
2009年ジェイアール東日本建築設計事務所入社。
主な実績は、JR新宿ミライナタワーなど。

大木 修和氏

  • 大木 修和
  • 株式会社ジェイアール東日本建築設計事務所 エンジニアリング設計本部 電気群 部長

主な実績は、ホテルメッツ駒込、JR南新宿駅ビル、仙台東口開発ビル、JR新宿ミライナタワー、
横浜駅西口開発ビルなど。

松下 進氏 光環境デザイナー・一級建築士

  • 松下 進
  • 松下進建築・照明設計室 代表

1966年3月25日生まれ。京都大学大学院工学研究科建築学第二専攻修了。
2000年松下進建築・照明設計室設立。
主な実績は、中尊寺金色堂照明改修、平等院鳳凰堂ライトアップ、JR新宿ミライナタワーなど。
第31回・第33回照明学会日本照明賞受賞。一級建築士。

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