巻頭インタビュー

宮古島VPP※1にみる地域循環型ビジネス 〜宮古島における島嶼とうしょ型スマートコミュニティの取り組み〜

株式会社ネクステムズ
株式会社宮古島未来エネルギー

代表取締役社⻑

⽐嘉 直⼈

1995年琉球⼤学⼯学部卒業。沖縄電⼒グループの㈱沖縄エネテックに⼊社。宮古島メガソーラー実証設備のシステム設計責任者、国内初の可倒式⾵⾞導⼊のシステム設計責任者、国内最⼤級の廃材由来の⽊質燃料ペレット製造設備の調査設計などを歴任し、JICA事業等でアジア‧⼤洋州への再エネ等技術調査‧導⼊などのプロジェクトを経験。宮古島スマートコミュニティ実証事業を推進中。エネルギー管理⼠。

SDGsやパリ協定といった世界を巻き込む国際的な潮流や複雑化する環境‧経済‧社会の課題を踏まえ、2018年4⽉に閣議決定した第五次環境基本計画において、「地域循環共⽣圏」が提唱されました。「地域循環共⽣圏」とは、各地域が地域資源を最⼤限活⽤しながら⾃⽴‧分散型の社会を形成しつつ、地域の特性に応じて資源を補完し⽀え合うことにより、地域の活⼒が最⼤限発揮されることをめざす考え⽅です。国内の先導的な事例として、沖縄において再⽣可能エネルギーの普及活動を続けてこられた株式会社ネクステムズおよび株式会社宮古島未来エネルギー 代表取締役社⻑の⽐嘉直⼈様に、宮古島における島嶼とうしょ型スマートコミュニティの取り組みについて、語っていただきました。

千年先も持続可能な島づくりを
エネルギー⾃給で⽬指す宮古島

宮古島市は、2008年の「エコアイランド宮古島宣⾔」に続く、「エコアイランド宮古島宣⾔2.0」を2018年3⽉に公表し、千年先も持続可能な島づくりに取り組み、将来⽬指すべき姿として5つのゴールを設定しました。2050年にはエネルギー⾃給率50%達成を⽬指しています。
宮古島は⼭川がなく、サンゴ礁が隆起した100%サンゴ礁の島です。⻑年、⽣活⽤⽔は地下に浸透した⾬⽔を利⽤してきました。表⼟の多くはさとうきび畑でおおわれており、⽣産効率を上げるため化学肥料を使い続けた結果、35年前に地下⽔が飲めなくなる⼀歩⼿前まで汚染してしまった経験があります。そのため宮古島では環境やエネルギーについて深く考えるようになり、約30年前から⾵⼒発電に取り組んだり、当時国内最⼤級のメガソーラー発電所をつくったりしてきました。しかしながら2003年の⼤型台⾵で⾵⼒発電機のすべてが倒壊‧破損するなど、宮古島という地域は台⾵被害を受けやすい環境であることを⽬の当たりにしました。
電⼒供給は従来よりディーゼル発電機による⽕⼒発電で、これには⾮常にコストがかかっています。こうした背景があって、太陽光発電の技術向上に早くから取り組み、進化させてきました。
資源の乏しい離島でも安⼼してエネルギーを使うためには、地産地消型のエネルギーで、エネルギー⾃給率を上げるしかありません。しかしながら再⽣可能エネルギーは発電量が天候に左右されるため、予備電⼒として⽕⼒発電を稼働しておく必要があり、発電コストが⾼くなるのが課題でした。そのため太陽光発電がピークを迎えるときの余剰電⼒を蓄える調整⼒として期待されたのが電気でお湯を沸かすエコキュートです。これにより負荷率※2を向上して電⼒単価を引き下げるという、再⽣可能エネルギーの有効利⽤が検討されました。
電⼒系統に巨⼤な蓄電池が接続されていれば⾃在に制御できるだろうと考えていたところに、IoT技術が急激に進化してきました。そこで各家庭の蓄電池、エコキュート、EV充電器等をつないでバーチャル蓄電池のように直接制御することができるのではないかと考え、取り組みを始めました。

宮古島市が⽬指す
エネルギー供給のビジョン

エコアイランド宮古島2.0「千年先の、未来へ。」

持続可能な島づくりのため、
より安定的で、より持続的で、
低コストなエネルギー供給により、
エネルギー⾃給率向上を⽬指している。

  • 宮古島市において必要な⼀次エネルギー量に占める地産エネルギーの割合とした。
  • 基準年に対して、省エネ対策が進み、技術的な対策により再⽣可能エネルギーの利⽤を拡⼤することを想定。
  • 環境モデル都市⾏動計画におけるCO2排出削減⽬標を達成することを前提とした。

太陽光発電と蓄電池の普及を実現した第三者所有モデル※3RESPレスプ事業」とは

再⽣可能エネルギーを普及させる上での最初の課題は、設備設置の際の初期費⽤です。住宅や事業所に太陽光発電や蓄電池などの設備を設置してもらいたくても、費⽤負担がハードルとなって、普及が進みません。そこで当社では、太陽光発電と蓄電池、エコキュート、EV充電器、HEMSなどの機器を事業者⽤設備として保有して、各ご家庭に無料で設置しエネルギーをお届けするという事業を⽴ち上げ、 これを「再エネサービスプロバイダー事業(Renewable Energy Service Provider)」と名付けました。略してRESP(レスプ)事業です。 2018年からこの事業⽅式で市営住宅に設置し、2019年から⼾建住宅や事業所に設置を進めています。
この事業⽅式のもう⼀つの特⻑は、⼀過性の制度や補助⾦に頼らず、社会コストを最⼩化できることです。また、この事業は新たなビジネスチャンスにもなります。宮古島には現在12社のプロパンガス事業者様がいます。そこで皆様に「RESP事業者になりませんか。同じエネルギーを届けるお仕事として、ガスや灯油を届ける⽴場から、今後は電気を届ける⽴場になりませんか」とお話をさせていただきました。
設備を無料設置としたもう⼀つの理由は、電⼒の制御のためです。各ご家庭は⾃⾝で購⼊あるいはリースしたエコキュートを外部から通信でコントロールされることに対しては抵抗があるのではないかと考えました。事業者側が所有することで、この問題は解決します。
そこでこれら第三者が所有する設備の電⼒を制御技術で整えてバランスを保つ事業を「エリアアグリゲーション事業(Area Aggregation)、略してAA事業と名付けて⽴ち上げました。島の中の⼩さな電⼒グリッドの中では、⽇々細やかな制御をする必要があります。1つの⼯場でちょっとした電⼒トラブルが起こっただけでも、島中の電⼒に影響するような現象が起こります。こうしたトラブルを防ぐためにも外部からのコントロールが有効です。第三者所有モデル※3で機器を外部に置き、太陽光発電と蓄エネ機器をセットすることで、これらの問題が解決するのです。
ではどのように投資を回収していくのか。第三者所有モデルを普及させながらサブスクリプションモデル※4として、サービス料で収益を⽣み出す事業に⾏き着いています。

2016〜2017年に実施された
島嶼型スマートコミュニティ実証事業

「エコパーク宮古」において
各社エコキュートで模擬運⽤実験を実施
「かたあきの⾥」の7棟にネットワーク型エコキュートを設置したVPP(Virtual Power Plant )の実証実験

再⽣可能エネルギー普及への課題と
スマートコミュニティがめざすもの

今後、再⽣可能エネルギーの⼤量普及は⽌まらないでしょう。太陽光、⾵⼒、⽔⼒、バイオマス、地熱、個々に特性があるのでうまく組み合わせて果敢に利⽤していくことが必要です。⼤量普及には蓄電池の価格低下が起爆剤になると思いますが、太陽光発電は昼間にどうしても余剰電⼒ができるので、EVを昼間に充電するとか、エコキュートを昼間に沸かすなど、24時間の需給バランスをどううまくコントロールできるかが課題です。宮古島で需給バランスが整うようにできることを証明して、それが全国へ⽔平展開できるようにと思いながら、取り組んでいます。

宮古島での成功をビジネスモデルに
各地域へ⽔平展開

ネクステムズは沖縄電⼒と実証協⼒協定を結んでおり、電⼒ネットワークと協⼒しながら、再⽣可能エネルギーをいかにうまく電⼒系統の中に⼤量に普及させていくかを考える舞台をつくりました。それが宮古島が評価される⼀番のポイントだと思っています。単に再⽣可能エネルギーを多く⼊れたいというわけではなく、電⼒系統あるいは電⼒ネットワークと協調をとれるモデルとして推進しようとしているところが特徴です。全国の各電⼒供給地域へ⽔平展開ができるのではないかと考えています。
各地域特性の中で、利⽤できる再⽣可能エネルギーと、必要とされる再⽣可能エネルギーが個々にあると思いますので、各地域に応じたエネルギーの組み合わせであれば良いと思います。離島や⼭間部、過疎集落など、とくに電⼒供給が困難な地域では利⽤価値が⾼まります。そこにどのような形でエネルギーを届けるかというのは、再⽣可能エネルギーの利⽤でもあるし、ネットワークとの連携でもあると思っています。

未来のため、
これからの電気⼯事会社様への期待

RESP事業はライセンス不要の事業です。電⼒系統に直接介⼊しなくてよいので、電気⼯事会社様が直接⾏う事業としてもお取り組みしやすいのではないでしょうか。これまでお客様と真摯に向き合いながら住宅に太陽光発電を設置して、信頼を獲得してきた電気⼯事会社様であれば、お客様も安⼼して無料で設置していただけるのではと思います。電気⼯事会社様には電⼒会社様と系統連携するための資格もあり、電⼒会社様からの信頼も厚いので、将来、電⼒会社様とご家庭の間に⼊ってRESP事業をやっていただけることが⼀番ふさわしいのではないかと期待しています。
今後も⾃家消費型太陽光発電は普及していくと思います。電気⼯事会社様には、再⽣可能エネルギーが将来的に主⼒電源となるよう、地域の電⼒会社様とも連携しながら地域を⽀えていただきたいですね。また、施⼯費のコストダウンにつながるよう、パナソニックと協⼒しながら施⼯の効率化に取り組まれることにも期待しています。

  1. Virtual Power Plant。⼤規模な発電所の代わりに家庭‧ビル‧⼯場など点在する複数の⼩規模な発電設備や蓄電設備をIoT技術でまとめて集約し、遠隔制御することで1つの発電所のように機能させること。
  2. ある期間における平均電⼒と最⼤電⼒の⽐を⽰したもの。年間を基準として⽉ごとや季節ごと、1⽇を基準として昼夜の変動の⼤きさを把握するために使われる。負荷率が⾼いほど需要設備が有効に稼働していることを⽰す指標となり、電気料⾦が割安になる。
  3. 事業者が建物の所有者の屋根に太陽光発電設備を無料で設置し、発電した電⼒を建物所有者に売電することで投資を回収するビジネスモデルのこと。
  4. 利⽤者がモノを買い取るのではなく、利⽤する期間に応じて利⽤料を⽀払うビジネスモデルのこと。

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