納入事例

沖縄地域の課題解決を目指す
産官学金連携ZEH研究開発プロジェクト

国立大学法人 琉球大学様[沖縄県那覇市]

理学部教授
産学官連携部門併任

眞榮平 孝裕

有限会社 フロンティアーズ
[沖縄県那覇市]

代表取締役

伊藝 直

有限会社 翁長電気工事様[沖縄県那覇市]

代表取締役

翁長 秀樹

新光産業株式会社様[沖縄県那覇市]

代表取締役

新里 正志

このプロジェクトは産学官金が連携し、琉球大学様と有限会社フロンティアーズ様を代表とする沖縄県内の設計・施工・土木企業チーム20社の協業により、地域の課題解決を目指すプロジェクトです。
沖縄の風土に合った、快適で低価格なZEHの研究開発をおこなう目的で、令和元年7月にRC・コンクリートブロック造によるZEH実証実験棟を学内に建築されました。
大学内では複数の学部と連携し、様々な実験データを5年間かけて計測・解析し、様々な分野に応用、さらに企業チームがこれらの研究結果を元に、沖縄ならではのZEHを商品化していくご予定です。

琉球大学キャンパス内に建つゼロエネルギーハウス(ZEH)実証実験棟。延床面積68.87平米の2LDKの平屋。

県内でのZEH認知度の低さに危機感。
地元企業が大学に啓発活動を働きかけ

プロジェクト発足のきっかけは2014年、ZEHに関する国の方針をお知りになったフロンティアーズの伊藝様と翁長電気工事の翁長様が、うるま市の商工会を通じて琉球大学の眞榮平様に対し、ZEH、ZEBの普及・啓発活動についてのご相談をされたことがきっかけでした。
当時の沖縄県では、ZEHやZEBについて知らない人がほとんど。国策として新築におけるZEHやZEBの標準化がすすめられる中、県外のハウスメーカーやゼネコンは確実に実績を上げており、「やがてZEHの義務化が現実となった時、県内の建築業界が対応できずに衰退する」と危機感を感じたお二人が、大学に働きかけたのでした。
「琉球大学は国立大学ですから、国策のZEHやZEBを推進するのは当たり前です。それ以上に大切なことは、琉球大学の理念に『地域の課題解決』があり、地元の企業からの要望にお応えすること。これは国際的な取り組みである持続可能な開発目標「SDGs※1」にも関係します。そこですぐに大学をあげて取り組みを始めました」と眞榮平様はおっしゃいます。
勉強会の参加者は延べ約350人に達しましたが、県内の企業にはまだZEHのノウハウが十分になく、施工ノウハウの確立と県内業者向けの研修指導を行うことを目的に、琉球大学のキャンパス内に産学官金連携で実証実験棟を建てることとなりました。
実験棟は木造ではなく、沖縄で一般的なRC・コンクリートブロック造によるZEHです。沖縄の文化や気候風土にあった住宅とすること、県内で最も一般的なRC・コンクリートブロック造の住宅をリフォームでZEH化することが可能であるかを実証すること、県内企業の手で新築できることを前提とすること、などがその理由です。

実験棟内に掲示されているプロジェクト説明パネル。視察に訪れる方々の説明に使用されています。

それぞれにメリットがある
産官学金連携プロジェクト

「大学のメリットとしては、地元企業のお役に立てること以外にも、このプロジェクトを通じて様々な研究ができることがあげられます。琉球大学には様々な学部があるため、工学部だけでなく、理学部・医学部とも連携した学部横断研究ができます。また、地域に開かれた大学として、体験宿泊を行ったり、教育学部による環境教育も計画しています。行政においては、ZEH・ZEBの啓発・普及のほか、県と内閣府との連携によるSDGsや省エネ建築に関する講演会活動などに発展しています。銀行においても、ZEH・ZEB向けの融資などの商品開発につなげていきたいと考えています」と眞榮平様。
「地元企業のメリットとしては、大学との共同研究を通じて、沖縄の風土にあったZEHを県内の企業の手で開発できることや、それをデータとしてお客様にも提供できること、沖縄のZEH普及活動に寄与できることなどです」と伊藝様。
翁長様は「ZEHは気密性をいかに高めるかがポイント。当社はこれまでの工事経験でZEHに即したノウハウを培ってきましたが、この実証実験でさらに技術力を高めたいと思っています。電気工事の仕事は年々高度化、複雑化しているので、プロジェクトを通じて学生さんが当社に興味を持ってくださり、優秀な方が当社に入社してくれることにもつながらないかな、と期待しています」とおっしゃいます。
新里様は、「われわれ電材代理店の仕事は、いわば目利きの商売なのですが、他メーカーとの違いが目に見えない商材はたくさんあります。このプロジェクトでいろんなメーカーの様々な設備を、設置段階から稼働中まで見ることができ、商品知識が深まると同時に、社員教育にもなりました」と語られました。

学生による手作りのセンサー。温度や湿度を計測。

省エネ基準地域区分8地域での
ZEHを目指す意義

建築物省エネ法では、全国を8つの地域に区分しており、沖縄県は8地域にあたります。地域ごとに外皮性能の基準は異なりますが、沖縄県には基準値が設けられていません。
「外皮性能の基準値は前提として、『寒い地域を断熱して暖かく』という発想だと思います。ですが、暑さをやわらげる際にも同様にエネルギーが必要なのです。暑い地域も断熱すればエアコンの電力使用量が抑えられ、省エネになります」と眞榮平様。
伊藝様も「寒い地域には高齢者が『ヒートショック』で亡くなられる問題がありますが、近年の地球温暖化により、夏場に室内でも熱中症で亡くなるケースが出てきています。光熱費の上昇を嫌いエアコンを使用しない高齢者も多いですが、ZEHで高効率設備を導入し、太陽光発電システムによる創エネで光熱費を削減すれば、快適な住環境を構築できます。ですから、沖縄でのZEH化には意義がありますし、沖縄だけの問題ではないとも思っています」と述べられました。

手前左から国立大学法人 琉球大学 眞榮平様、有限会社翁長電気工事 翁長様、新光産業株式会社 新里様、後列左から当社営業、有限会社フロンティアーズ 伊藝様

台風や地震に強いコンクリート造の
ZEHに各地が注目

このプロジェクトは、東京ビッグサイトで開催された「エコプロ2019」にも出展され、注目を浴びました。全国的に各種メディアにも取り上げられたことから、各方面から様々な反響があったと眞榮平様。
「コンクリート造の住宅は、台風の多い沖縄において、倒壊しにくいといったメリットもあります。昨年は全国的に台風が多く、これまで台風の経験があまりなかった地域で大きな被害にあわれたケースがあり、そういった地域の方々からも問い合わせがありました。将来的にはこの実験棟が災害時の避難拠点となるよう、蓄電池も設置し、『ZEH+R』とする予定です」。
伊藝様は「4年後には琉球大学に実験棟を引き渡します。それまでにLCCM住宅※2認定も取得したい。コンクリート造なので木造住宅に比べるとデメリットがありますが、その分エネルギー消費量をできるだけ減らします」と語られました。

琉球大学として「エコプロ2019」に出展。子供たちへの環境教育も進め、沖縄における未来の住環境やライフスタイルの提案も実施。

電気工事会社がZEHや
ZEBに取り組む意義とは

翁長様は「ZEHやZEBの仕事をマスターすれば、電気工事会社が家まるごと企画して、建築会社のコンサルタントとして優位になることも可能になります。当社はそれを目指しています」と展望を語られました。
新里様も「ZEHやZEBに関わる商材を代理店が扱うには専門知識が必要ですが、身に付けることでお客様への情報発信が可能になり、差別化につながります。逆にそういったことができなければ衰退していくと思っています」とお話しくださいました。

パナソニックが提供している
電気設備機器

AiSEG2
HEMS対応住宅分電盤スマートコスモ
EV・PHEV充電用屋外コンセント
LEDダウンシーリング
LEDポーチライト
天井埋込換気扇
Q-hiファン

⼯琉球大学ゼロ・エネルギー・ハウス
(ZEH)実証実験

バルコニー側から見たとき。右側が沖縄の一般的な住宅であるRC・コンクリートブロック造、左側はコンクリートブロックの上から外張り断熱を施している。

屋根の上と屋根裏の計9か所に測定装置を設置し、計測する準備を進めています。

沖縄の気候特性にあったRC・コンクリートブロック造によるZEH実証実験

沖縄の住宅は、歴史・文化的な特性から、RC造やコンクリートブロック造が7割以上を占めます。そこで、新築だけでなく、リフォームによるZEH化も見据え、RC・コンクリートブロック造によるZEH実証実験棟を建築されました。
また、沖縄は亜熱帯気候であり、太陽の日射しが強いこと、四方を海に囲まれているため風が強いこと、さらに湿度が高いといった特徴があります。こうした沖縄の気候風土にあったZEHの実証実験がスタートしました。
設計・施工は県内企業と協賛メーカーが資材や資金、人材の提供を行うことで、補助金に頼り過ぎない自律的な社会解決を促進。計測・データ収集・解析を大学が行います。実験棟の構造は左半分と右半分で分け、片方を沖縄の標準住宅モデル、もう片方をZEHモデルに。標準住宅モデルでは、単板ガラスを使ったアルミサッシを使用。第三種換気※3と床下で換気をし、天井材もコンクリート。ZEH仕様側には外張り断熱を施し、アルゴンガス入りLow-E複層ガラスを使った樹脂サッシ、換気は全熱交換器。屋根材は木材を使用しています。「樹脂サッシはアルミサッシに比べ遮熱性が高く、夏の熱い外気や冬の冷たい外気が家の中に伝わりにくいのが特長です。また気密性が高く、隙間風が入り込むのを防ぎます。コンクリートには、熱容量が高く一度蓄熱するとなかなか熱が抜けないという性質があり、外断熱にした方が熱をコントロールしやすいと考えました。屋根を木造にしたのは屋根の断熱性を向上しやすく低コストを実現できるからです。エアコンを使用しない春の時期に、二つの部屋の温度差が8℃も違うときがありました」と伊藝様。
まず1年間のデータを計測し、1年ごとに設備や条件を変え、エネルギーの使用量の違いを計測。また、医学部との連携により、温度・湿度の違いによる人の快適性や健康状態まで調査されるとのこと。「仮に軟弱地盤であれば、建物が傾くことがないよう、通常地下10~30mのところまで杭を打ちます。その杭に配管を通して熱を伝える液体を地下と地上で循環させれば夏は床冷房、冬は床暖房に活用する試みも今後挑戦したい」と眞榮平様。また、翁長様は「換気も重要です。沖縄のように湿度が高い地域でZEHをするには全熱交換器の方が良いのですが、トイレや浴室、キッチンの三種換気とのバランスを考えた換気計画が大事になります。工夫によりこの問題を解決したいですね」とお話しくださいました。

  1. 「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称。エス・ディー・ジーズ。2015年9月の国連サミットで採択されたもので、国連加盟193か国が2016年から2030年の15年間で達成するために掲げた目標。
  2. ライフサイクルカーボンマイナス住宅…トータルエネルギー消費量(建設から廃棄までの一生涯のCO2収支)をマイナスにする住宅のこと。
  3. 排気のみに換気扇を使用し、給気は各部屋の給気口から自然に行うこと。

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