高負荷作業の限界に挑むSmart BL ベクトル制御技術

毎日の仕事に欠かせない電動工具。
パナソニックのプロ向け電動工具開発は、2019年で40周年を迎えました。長い歴史の中で、世界に先駆けて様々な革新的技術を開発してきたパナソニックの電動工具事業。この度2019年秋に発売したインパクトドライバーとドリルドライバーには、新開発のベクトル制御技術「Smart BL」が搭載されています。作業用途に応じてモーターのスピード、パワーを最適にコントロールして、ハードな作業に追従する最新技術について、商品技術課と基盤技術開発課のお二人に話を聞きました。

Smart BL
パワーツールSBU 商品技術部 商品技術課 沢野 史明
パワーツールSBU
商品技術部
商品技術課
沢野 史明
パワーツールSBU 商品技術部 基盤技術開発課 辻本 直生
パワーツールSBU
商品技術部
基盤技術開発課
辻本 直生

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まずは、パナソニックにおける電動工具事業の歴史についてお聞かせください。

沢野:電動工具事業の歴史は1979年までさかのぼります。電動の髭剃りに使っていた充電技術を、充電式工具にも応用できるのではないか、というところから事業がスタートしました。その後、「手締め機構」といった新技術の開発なども経て、1984年には宇宙空間での作業用としてNASAに工具を提供しました。
また、1986年に開発した「キーレスチャック」や、1999年開発の「マルチインパクトドライバー」※1は、いずれも当時世界初の技術でした。その後、電池がリチウムになったり、モーターがブラシレスモーターになったりという進化を経て、現在はブラシレスモーターを搭載した商品が定番になっています。2008年には充電インパクトにトルク推定制御機能を搭載した商品も開発し、工場分野へ展開しました。そしてパナソニック電動工具発売からちょうど40年となる2019年に、ブラシレスモーターをさらに効率よく回転させるための商品として、インパクトドライバーとドリルドライバーを発売しました。

  • ※1:力を生み出すメカニズムがまったく異なるインパクトドライバーとドリルドライバーという2つの工具を1つに合体。スイッチの切り替えだけで、作業範囲が大幅に拡大。

1979年

充電工具事業の幕開け

内蔵型ニッケルカドミウム電池&1時間充電。

1984年

電動工具が宇宙へ

NASAに工具を提供し、スペースシャトルに搭載。

1986年

工具を変えた技術を開発

「キーレスチャック」を世界で初めて開発。

2008年

さらなる技術の発展

充電インパクトにトルク制御機能搭載。

2019年

電動工具事業40周年

「Smart BL」ベクトル制御技術搭載の商品を発売。

新開発の技術「Smart BL」を搭載したインパクトドライバーとドリルドライバーが、2019年秋に発売されました。「Smart BL」とはどのような技術なのでしょうか?

辻本:まず、従来の工具に比べて、制御速度が100倍以上速くなっています。結果的に、軽負荷のところで速度を上げることができて、作業全体をスピードアップできると思います。ベクトル制御を使った電動工具は、これまでになかったと思います。

沢野:軽負荷の時は速く、高負荷の時は遅く、という制御を機械が自動でしてくれるので、より効率的に作業をしていただけます。

「Smart BL」により、高力ボルト締めや長いネジ締めなど、
作業用途に応じてモーターのスピード、パワーが最適コントロールされる。

「Smart BL」はどのような経緯で開発に至ったのでしょうか?

辻本:当社の家電事業の商品に搭載されていたモーター制御技術を電動工具に展開することで、スピードやパワー、作業効率が向上するのではないかという期待から始まりました。

沢野:社内の商品企画や営業、品質保証部署などからいただいた電気工事士様のお声から、スピード、パワー、作業効率という要素を重点課題としていました。今回開発したベクトル制御技術「Smart BL」がそれらをさらに向上させるということで、商品化に至りました。

「Smart BL」の搭載以外で、今回のインパクトドライバーやドリルドライバーはどのように変わったのでしょうか?

沢野:「Smart BL」が搭載されたのは、インパクトドライバーとドリルドライバーの2商品です。インパクトドライバーは、スイッチを押すことによりスピードコントロールができるという従来の機能がついています。ただ、これまではスピードコントロールのみだったのですが、即座にフルスピードで立ち上げたいという作業者様もいらっしゃるため、設定で切り替えができるようになっています。

トリガーを引くと、即座に最大パワー「強」モードで始動。正逆同トルクなので、ボルト緩めなどにも速さを発揮する。

また、ドリルドライバーは、タップモードを搭載しています。通常はスイッチで正転と逆転を切り替えるのですが、長時間の作業で切り替えを繰り返していると手が痛くなってしまいます。また、切り替えスイッチの寿命が早くきてしまい、修理に出す周期が短くなってしまうという課題がありました。そこで今回の商品では、「タップモード」を搭載しました。このモードでは、正転から逆転への切り替えにスイッチ操作が不要で、自動で切り替えることが可能です。スイッチの寿命も伸ばし、手の痛さも改善した商品となっています。

タップ立ての途中、正転から逆転への切り替えにスイッチ操作が不要。
自動で切り替えるので、ドリルタップ穴あけがより簡単、より正確。

「Smart BL」を搭載したインパクトドライバーとドリルドライバーを使われる電気工事会社様へ、メッセージをお願いします!

沢野:「Smart BL」を搭載した新商品は、まだ作業に慣れていない作業者様でも、工具本体が自動で制御してくれるため、使い勝手が向上しています。また、作業効率の向上に重きを置いて開発した商品なので、昨今の業界の課題でもある人材不足、人手不足の改善に対しても、何らかの貢献ができるのではないかと思います。
私たちは電動工具の設計・開発という立場ですが、営業や商品企画担当から電気工事会社様のお声を聞いています。今回の新商品に対しても良い点や足りない点など、何でもいいのでお声を聞かせていただければ、今後の商品開発の展開に繋げられるかと思います。また、今回開発した「Smart BL」を、今後は他の商品にも応用できるように取り組んでいます。今後ともパナソニックの製品をよろしくお願いいたします。

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