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P.L.A.M. | LIGHTING STYLE Vol.5

LightingStyle

アーバンドック ららぽーと豊洲/東京都江東区

アーバンドック ららぽーと豊洲メイン写真
省エネリニューアルの灯り
建物種別:
商業施設
竣工(リニューアル):
2009年
12月
地域:
関東
所在地:
東京都
施主:
三井不動産
電気工事:
福西電機
施主様インタビュー 照明設計の立場から ディテール紹介 ライティングデータ

User's Voice/施主様インタビュー

山本様
山本 敬一様

三井不動産株式会社
商業施設本部
商業施設運営事業部
運営企画グループ 統括

LEDへの照明リニューアルの背景

東京都条例をクリアすることが直接の契機
 今回の照明リニューアルの目的は、第一義的には2010年から第一計画期間がスタートする、東京都環境確保条例への対応です。これにより、CO2排出8%削減が義務付けられます。大型商業施設管理者としては、電力やガスなど多面的な対策が必要となりますが、まずエネルギー消費に大きなウェイトを占める照明の電力削減に取り掛かりました。
とくに施設共用部にはハロゲン電球、HIDなど約4000台近い照明器具が設置されています。これを順次、低消費電力型の器具に置き換えていきたい。そこで注目したのが、従来光源と比べて約80%の消費電力削減ができる、すぐれた省エネ性を持つLED光源です。
今回「省エネ照明デザインモデル事業」に選ばれましたが、この事業は過去の事例では新設物件が採択されていました。「ららぽーと豊洲」は既存からのリニューアルです。これだけの規模の大型商業施設で共用部をLEDに全面的に取り替えるケースは今までになかった。そこで共用部を全部LEDにリニューアルすることのインパクトが認められたと思います。

新しい照明計画のコンセプト

Feuによる明るさ感で照度を下げた空間へ
 さらにもう一つの着眼点は、現状の共用部の照度設計自体を見直すことです。「ららぽーと豊洲」はオープン後約4年を経過しますが、開業当時考えていた「明るい店にしたい」という方針で設計した照度が、本当に正解だったかという根本から考え直しました。
そこで役立ったのが、Feuにより評価可能な「明るさ感」の概念です。従来の床面照度だけの基準ではなく、店舗空間として適切な明るさ感を得られるようにしたい。
この方針決定にあたっては、パナソニック株式会社の協力を得て、事前に「ららぽーと豊洲」のほか、ララガーデン川口、ららぽーと横浜などで現状のFeu値実測を行い、数値的な検証作業を行いました。結果、「ららぽーと豊洲」のFeu値は25〜35、床面照度は平均600〜800 lx。かなり明るさを重視した設計感を反映しています。
一方、時代はお客様の考え方も含めて、環境に配慮し、心地よく落ち着いて過ごせる明るさが求められるように変わってきています。したがって、従来明るすぎた床面部分の照度は下げ、代わりに壁面や柱など鉛直面照度を上げることで、充分な明るさ感を確保することを決定しました。数値的には、Feu値20、床面照度300〜400 lxという計画目標でした。
改装前後Feu値比較

照明手法への不安について

現場段階での実験検証が大きな確信となる
 照度を下げる、また、従来の使い慣れた光源ではなくLEDを導入する、この二つの新しいチャレンジを同時に行う決断は、正直なかなか難しいものがあります。そのため、事前準備としてかなり綿密なシミュレーションと現地検証をパナソニック株式会社と共同作業で行いました。
実際に最初1ゾーンでサンプル設置を行い、実施前と実施後の比較評価で、現実の明るさ感を実感として認識。各現場でも、ここは少し暗く、ここはもう少し明るく、と光の当て方を微調整しながら施工段階へと進めました。
せっかく改修工事をしても、お客様の目から見て暗いという評価が出ると意味がない。また、LED光源そのものへの悪いイメージが付くのも困ります。慎重に各部ごとに検証しながら進めていった結果、お客様からは暗いという声は全くありません。多分、以前と明るさは変わらないと思っていらっしゃるでしょう。

今後の省エネ照明の推進方針

大規模施設が率先することで時代は動く
 共用部の照度を下げることで雰囲気もよくなりました。全体がまんべんなく明るいと平面的で奥行感がないのですが、店舗の手前側の共用部を少し落とすことで、かえって店舗側が明るく際立ってきます。奥への視点の広がり感が出て、店舗が目立つようになったと感じています。
さらに、共用部を率先してリニューアルすることで、各テナント店舗様の意識も変わってくると考えています。より環境に配慮した照明器具として、LEDが充分に演色性を持つ光源という認識が一気に進むと思います。それにより、さらに施設全体の省エネ化につなげていきたい。
LEDを積極的に使うことは、実際の省エネ効果にプラス、企業イメージの向上面のプラスもあります。デベロッパーとして新規物件については、まずオールLED化を基本に考えます。
東京都条例は2010〜2014年はCO2削減8%目標ですが、2015年からさらに17%削減が上積みされる予定です。この厳しいハードルをクリアしていくためにも、Feuによる効率的な照明計画の推進、LEDなど省エネ型照明器具の導入を一層進めていく考えです。時代はもうそこまで来ています。もう一歩ではなくあと半歩まで、世の中は動いています。

照明設計の立場から

EC長谷川
長谷川 一兵衛

パナソニック株式会社
名古屋商業照明EC

 「ららぽーと豊洲」共用部の照明リニューアルに先だって、関東圏で施主様が運営管理されている同様の業態・規模を持つ複数の大型店舗をピックアップし、事前調査を行いました。そこで得られた照度やFeu値などのデータをご提供し、今後の大型商業施設の照明省エネ化はどう考えるべきかを施主様と一体となって検討しました。
従来の照明計画では照度が基準値となるため、どうしても床面を明るく照らしすぎる方向に向かいます。そこで照度だけでなくFeuの考え方を取り入れ、適正なFeu値を得ることで充分な明るさが確保できる照明計画をご提案し、消費電力が大幅に削減できるLEDとの相乗効果で省エネ化を図ることとしました。
既存照明をLED光源に置き換えるリニューアル工事なので、実際に現場で実験スペースを設け、空間の明るさ感がどう変化するのかを事前検証。ダウンライトを従来光源からLEDに取り替え、光の回り方をテストしています。これにより既存の間接照明と組み合わせることで、充分なFeu値=明るさ感を得られることが確認されました。
こうしたFeuによる照明手法とLEDによって、約85.2%のCO2削減効果が得られ、使用電力量も約1/7にダウン。環境省の平成21年度省エネ照明デザインモデル事業に採択されたことで、今後、全国の大型商業施設の省エネリニューアル推進につながると確信しています。

事前テストによる明るさ感検証比較

3階通路で比較実験。LEDダウンライト設置後も間接照明を入れることで充分な明るさ感が得られることを確認した。
改装前後Feu値比較

ディテール紹介

Lighting Data

コンセプト

LEDの大量導入による大幅な省エネ効果、Feuによる明るさ感を取り入れた照度ダウンの相乗効果で、CO2排出量85.2%削減を実現。省エネ性と快適性に富んだ商業施設の新しいあり方が評価され、環境省主催の「平成21年度省エネ照明デザインモデル事業」に採択された。
今後はさらに、共用部の率先した環境配慮対策を軸に、各テナント店舗への省エネ照明波及が期待されている。
「アーバンドックららぽーと豊洲」は東京都江東区豊洲地区の再開発計画の一環として、2006年10月オープン。
IHI(旧 石川島播磨重工業)の造船ドック跡の広大な敷地は、銀座エリアから約6分の好立地でありながら、海に面した絶好のロケーション。190の文化施設やショップ、レストラン、シネコンが集まる複合型大型商業施設となっている。
開業後4年を経過した、今回の照明リニューアルのポイントは大きく2点。
【POINT1】ベース照明のLED化でCO2排出量削減を推進。
 年間8%のCO2削減が求められる東京都環境確保条例のスタートに伴って、一層の省エネ対策が必要となる中、共用部の照明を従来のハロゲン電球やHIDから、より低消費電力のLEDに取り替えを図った。
今回の第1期改修では、ベース照明に一気に300台以上のLEDを導入。商業施設としての雰囲気作りを考え、すべて高演色・電球色が選択された。内訳はLEDダウンライト150形269台、LEDユニバーサルダウンライト150形16台、LEDユニバーサルダウンライト60形20台となっている。
【POINT2】Feuの照明手法で明るさ感を保ちながら照度を抑制。
  オープン当初の明るさ重視、床面照度を基準とする従来の照明手法を全面的に見直し、Feuを取り入れることで、落ち着いた気分で長時間滞在できる雰囲気作りを目指した。目標数値はFeu20(従来25〜35)、床面照度300〜400 lx(従来600〜800 lx)とし、壁や柱など鉛直面を照らし明るさ感を得る照明設計を行った。
全体をまんべんなく明るくせず、共用部と店舗側の照度差を出すことで、テナントスペースへの奥行感が生まれるシアター効果の演出性も加味している。

Feu

改装前と改装後に同地点での現場実測を行い、Feu値及び照度を確認。改装により照度を下げても、空間の明るさ感が充分に確保されている。また、共用部の照度が下がったことで店舗側の明るさ感が引き立ってきている。
改装前後Feu値比較

納入商品