全景を隠していた生け垣と木々が撤去され、大濠池沿いの遊歩道から新たなアプローチが設けられた福岡市美術館。
庭園灯や1階の新設カフェ、2階レストランからの光が人びとをいざなう

建築・設備・展示・運営を進化させ時代に即した「より開かれた美術館」

1979年、福岡市美術館は前川國男氏の設計によって、水景と調和する形で大濠公園の一角に建設された。長きにわたって市民に愛され続け、来館者数は約2,400万人を数えるが、開館から35年以上が経過し、施設・設備が老朽化。展示環境や運営サービスも改善するため、約2年半の休館期間を設けて改修工事が行われ、2019年3月にリニューアルオープンを迎えた。この改修は、全国の美術館で初めてのPFI方式によって行われた。
「PFI事業者の選定にあたり、福岡市が美術館のあるべき姿と活動方針を明確に提示。建築に関しては、市民から愛されてきた建物そのものも市民の財産であり作品の一つだと考え、前川氏の意匠を継承することを求めるとともに、時代に即した改修が必要だと判断した」と総館長の中山喜一朗氏は語る。「赤茶色の磁器質タイルの外壁やアーチ状の天井、はつり壁面など、建築意匠はしっかり残した。その一方で、新たに園路に面して広々としたアプローチやカフェを設けたように、誰でも気軽に楽しめる『より開かれた美術館』を改修のコンセプトとした。
以前の特別展示室は、自然光を取り入れるためのトップライトが設けられていた。しかし、作品の保存と安全を考えて吹き抜けを塞ぎ、均斉度の高い展示空間をめざして内部空間のデザインを大きく変えた。実施設計では、パナソニックの門真本社で高さ5mの展示室天井と壁面を再現し、照明実験によるテストや比較検討を行った。
当館は、20世紀以降の近現代美術の大作や黒田家伝来の大名道具、仏教美術など数多くのコレクションを有する。今回の改修は、これらのコレクションをより魅力的に見せる意味もあった。今後はさらに多くの人に見に来てほしい」と語る。

建築設計Report vol.33/2020年5月発行
※会社名、役職名などは掲載時のものです。

ベース照明が落ち着いた雰囲気を醸し出す古美術企画展示室ベース照明が落ち着いた雰囲気を醸し出す古美術企画展示室

均均斉度の高い空間となった近現代美術室C均斉度の高い空間となった近現代美術室C

メッシュ天井に照明器具が配置された近現代美術室Bメッシュ天井に照明器具が配置された近現代美術室B

寺院風のしつらえにした東光院仏教美術室寺院風のしつらえにした東光院仏教美術室

展示ケース照明は調光・調色機能を装備し、5000K(左)から3000K(右)までの演出が可能展示ケース照明は調光・調色機能を装備し、5000K(左)から3000K(右)までの演出が可能

スリットにダウンライトが配されたミュージアムホールスリットにダウンライトが配されたミュージアムホール

ステージの調光操作卓ステージの調光操作卓

一般市民が利用できる可動壁の設けられたギャラリー一般市民が利用できる可動壁の設けられたギャラリー

天井から電源にアクセスできるアートスタジオ天井から電源にアクセスできるアートスタジオ

福岡市美術館

■福岡市美術館リニューアル事業
所在地/福岡県福岡市中央区大濠公園
発注者/福岡市
PFI事業者/特別目的会社「福岡アートミュージアムパートナーズ株式会社」
リニューアル竣工/2018年9月

主な設備

● 展示ケース用照明器具(高演色・調光調色タイプ)● 特注ベース照明器具 ● シーンマネージャーG ● 調光システム ● 庭園灯