住まいは文化

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2008年4月24日更新

先人たちが遺してくれた住まいづくりの知恵 「住まいは文化」

東京都 千駄木の近代和風住宅 旧安田楠雄邸

大震災、戦争を経て生き残った旧安田財閥の住まい


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近代和風建築の粋を凝らして建てられた住宅です。文京区千駄木は東京の山の手文化の中心地とも言え、伝統的でありながら斬新な意匠は大正、昭和初期のロマンが色濃く漂います。

応接室。天井は「落とし塗り」で塗られ、四周の花飾り(石膏)は寒天の型でつくられた。造作材にはクルミが使われている。

関東大震災、大戦を“生き”抜き、
山の手に残った近代和風住宅の粋

旧安田邸は、関東大震災や第二次世界大戦の空襲を免れ、大正、昭和、平成の80余年間にわたり住み続けられた近代和風の粋を集めた木造住宅です。

大正8(1919)年、東京文京区千駄木に、旧三十八銀行神戸支店支配人などを勤めた藤田好三郎氏の依頼で清水組(現・清水建設)が建築しました。大正12(1923)年旧安田財閥の女婿である安田善四郎氏が購入。その後、平成8(1996)年まで住み続けられてきました。閑静な住宅街の中、東西に細長い敷地(約1500m²)に雁行して建てられた木造瓦葺き2階建て住宅(建築面積約650m²)です。

邸宅は、伝統的な和風建築に西洋の建築様式や技術を取り入れ、玄関から展開する応接部分と奥の住居部分で構成されています。

庭側外観。2階客間を見上げる。


玄関は、江戸時代の大名屋敷に見られた大床(おおどこ)、靴脱ぎ石などの武家様式を採用。内装も、杉柾目の格天井、漆塗りの建具で格調高く仕上げています。

応接室は、東側壁面の中央にはマントルピース(造り付けのガス暖炉)を配置。飾り棚上の壁面には洋画が組み込まれています。椅子やテーブルなど家具調度も当時の物が残されており、大正後半期から昭和初期の暮らしと文化の奥行きがうかがえます。

応接間の庭側外縁はサンルームとなっており、籐製の応接セットを配置。応接間の重厚さとは対照的に明るく開放的な雰囲気で庭園の緑を楽しめるようになっています。

玄関内側。威風堂々と武家屋敷の格式を持って建てられた玄関。上がって右手に書生部屋、電話室がある。

住居部分へ続く廊下は畳と板張り。廊下の北側面は4間(約7.3m)すべてに4枚引きのガラス戸が用いられています。

応接室に続く1階和室は、客間「残月の間」(12畳)、付書院、次の間(6畳)、茶の間(10畳)で構成され、格式の高い応接のしつらいを見せています。

1階和室(残月の間)。表千家の残月亭を模してつくられた。床柱は北山杉のしぼり丸太を使用。安田家では2畳敷きの高床に雛人形や五月人形が飾られたと言う。

茶の間。押し入れの中に水屋が設けられ、障子戸だけで外部と仕切られている。

廊下は、板敷き部分を案内の者が歩き、客は畳を歩いた。


2階は、12畳半と8畳の客間などで構成。南側のガラス戸を開け放つと庭園の枝垂れ桜など巨木が間近に迫ってきます。

2階客間(12畳半と8畳)。 床の間は一間半の本床で、畳が敷かれている。床柱は4面柾の栂柱、壁は聚楽壁、床の天井は和紙が貼られている。畳は備後表の中継ぎ表と言われる最高級品が使われた。

2階廊下のブラケット照明。

台所は、当時の最新式のシステムキッチンと言われた鈴木式台所に改造されています。
鈴木式は、わが国の台所が「座り流し」から、現代の「立ち流し」式台所へと変わる過程で昭和初期に提案されたシステムキッチンの原型とも言えます。アメリカ式台所を基に、伝統的な台所で不規則に並んでいた設備を、楽に作業ができるように流し台、コンロ台、洗い物置き台、配膳台の4つにまとめて連結して配置。ほぼ現代のシステムキッチンと同様の構成にしています。洗い物置き台の下には棚、米びつ、貯蔵庫などが納められ、水切り棚はガラス製、床は大半が床下収納となっています。

台所。台所奥の天井はトップライトが設けられ、明るい。中央には銅張りの流し台、ガスコンロ、氷納式の冷蔵庫が集めて配置されている。


西側の住居部分は、奥に化粧室(4畳半)、浴室、仏間(8畳)を配置。仏間は建てられた当時は寝室として使われていましたが、後に床の間に仏壇がはめ込まれました。

化粧室。正面奥が浴室。正面右の洗面・洗髪台、化粧鏡は当時、手前になる南の廊下側に置かれていた。洗面・洗髪台にはガスのボイラーからお湯が供給され、水と混合して適度な湯温にして使われた。

仏間。かつて炉が切られ、茶室としても使われていたらしい。床の間は安田家の時代に仏間に改造された。円窓は薄くつくられている引き違い戸で、数奇屋風な材料がふんだんに使われている。

浴室。浴槽のまわりは石敷で、蒸気は天井裏に抜くように設計されている。


※旧安田楠雄邸は、平成8(1996)年に財団法人日本ナショナルトラストに寄贈され、現在、貴重な文化財として管理され、一般公開されております。

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