INTERVIEW 器具一台一台を自在に制御して多彩に表現する演出プログラム 照明デザイナー 近田 玲子氏

色がまちまちな石を表現できる光を探す

玉泉院丸庭園という名所は、織田信長の四女で、前田利長の正室だった永姫の院号から来ている。永姫の死後、1634年に前田利常が作庭に着手した。明治期以降、いったん庭園は廃れたが、5年間の遺跡発掘調査を経て、2015年3月に再現された。
「玉泉院(永姫)は金沢にとって大切な人物です。利長亡きあとの彼女の余生に思いを巡らせたとき、西の空を染める夕日を眺めて暮らしていたに違いないと、ふと思ったんです。そこから夕焼けというテーマが湧いてきて、今回の照明デザインに発展しました」。照明デザインを手掛けた近田玲子氏は、照明デザインのきっかけをそう説明する。また、同じ金沢城内では、すでにプロジェクションマッピングによる演出を実施していたこともあり、「この庭園ではLEDによる自然な光の演出をしたいと考えました」と話す。
演出する素材として近田さんが着目したのが、現存していた石垣だった。「印象に残る石垣で、これを生かさなければもったいないと思いました。ただ、複雑な凹凸の付いた形状で、横方向に長く広がり、大きな高低差もありました。しかも、石の色も赤系から緑系、灰黒色計までまちまちでした。最初の課題は、そんな石垣のどこにどのように光を当てればよいのかを探ることでした」と、近田氏は振り返る。少しずつ色味が違う石を積んだ石垣を、全体としてまとまりのある色で演出するには、位置によって異なる色の光を照射する必要がある。その色を探すのが最初の課題だった。

色がまちまちな石を表現できる光を探す

RGBの各色を、255段階から絞り込む

照明デザインの検討では、まず100分の1の石垣の模型をつくった。「パソコンで作成したいろいろな配光データを出力して模型に貼り付け、全体の見え方から、器具の配置や照射角度、予算のなかで使える器具の数などを検討しました。とても手間と時間がかかる作業で、パソコン上で色をつくるところからパナソニックに参画してもらいました」(近田氏)という。
近田氏が示す色をもとに、パナソニックではR(赤)・G(緑)・B(青)の各色で、255段階から適切な値を選び、最終的に7色のベースカラーを設定した。
「もちろん、その7色は机上でつくった色なので、これを足掛かりのようにして、最終的には現場で微調整する必要がありました」と近田氏は話す。現場では、実際に186台のLED照明器具を点灯して一台ずつ色を確認し、必要に応じて微調整を加えていった。
現場では、歴史的な庭園ならではの難題もあった。起伏がある地形で、ただでさえ照明器具を固定しにくいところに加えて、景観保全上できるだけ目立たないように設置することも求められた。そうした制約を乗り越えて、近田氏の思い描く演出を実現するために、パナソニックの担当者は、現場で186台の演出調整をしていった。

提案書に読み取れたデザイン意図への理解

配光データを出力して模型に貼り付け、
照度分布を検討

ゼロ・コンマ秒単位で186台を個々に制御

一方、夕焼けに着想した演出の基本テーマは、「夕焼けの庭(あかね色)」、「宵の庭(こがね色)」、「月見の庭(白色)」の三部構成へと発展していった。徐々に色温度が高くなっていく演出で、その色の実現には、「RGBだけでなく白色系のDWを加えたことがとても有効でした」という。
そして、光の演出はさらに発展して、動的な光の演出を見せる2つの特別演出が加わった。ラストを飾る特別演出には和楽器の演奏が加わり、光と音とが連動する演出が求められた。「音が加わってくると、光の演出も全く違ったものになります」と話す近田氏は、まず演出の基本プログラムを組んだ。音楽の流れに沿った時間軸で、186台の照明器具一台一台の点灯パターンを一覧にしたものだ。
そのプログラムをもとに、パナソニックでは独自のカラー演出シミュレーションソフト「カラーワークス」を用いて、照明演出プログラムを作成。光が動くスピードやリズム、色の変化などを、音楽と合うように調整していった。「186台が一気にパッと華やかに点いたり、全体がふわっと動いたり、パナソニックの演出プログラムは、ゼロ・コンマ秒という単位の繊細な演出を実現できます。今回は本当にうまくいきました」と、近田氏は評する。

近田 玲子氏

PROFILE

  • 照明デザイナー
  • 近田 玲子
  • 株式会社 近田玲子 デザイン事務所代表

1970年から照明デザインの仕事に従事。石井幹子デザイン事務所を経て1986年に東京に近田玲子デザイン事務所を設立。都市照明、公共施設、景色、博物館、病院、ホテル、商業ビル、住宅と、広範囲にわたる照明デザインから、中国、台湾、韓国、ベトナム、ドイツ、米国など、海外の仕事まで手がける。こうした仕事に対し日本だけでなく海外からも数々の賞を受賞。

金沢城公園 玉泉院丸庭園 LED技術紹介ページへ