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特殊環境用照明設備:クリーンルーム用照明器具

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クリーンルーム用照明器具について

通常の人間の生活空間である大気中には、表7表8に示されるように、種々の塵埃の粒子が数多く浮遊していますが、日常生活には特別な不都合は生じていません。

しかし、現在の最先端技術である超LSIを使用する電子応用機器の分野や、精密機械・医療品・医薬品・食品などの分野の作業空間においては、製品の品質向上や歩留り向上などの為、特別に清浄環境であることが強く求められています。

表7:大気中の塵埃粒子の寸法

X線、紫外線、可視光、赤外線、電子顕微鏡、光学顕微鏡、肉眼、煙霧、塵、永久浮遊大気塵埃、沈降性大気塵埃、重工業塵埃、ビールス、バクテリア、カビ、油煙、煙草の煙、霧、噴霧、雨の粒子直径(µ)

表8:大気汚染濃度の比較

塵埃数(0.5µ以上)個/ft3 細胞数コロニー/ft3
オフィス 100万 5
駅・店頭 200万 40
デパート 100万 25
学校 200万 8
住宅内 60万 10
住宅地外気 50万 6
工業地外気 200万 15
診察室 15万 1
薬局 100万 6
病室 15万 1

クリーンルームとその種類

前記の清浄環境の作業空間では、空気中の”ちりやほこり・微粒子”の数や温度・湿度・気圧・気流の分布や速さ等を一定の範囲にコントロールする必要があり、そのために高度な空調設備を導入するとともに、人の出入や窓・ドアなどの密閉、および室内に長時間のうちに蓄積したちりやほこりの清掃などに積極的な措置を施さなければなりません。そしてこのような措置を施した部屋をクリーンルームと呼びます。

このクリーンルームは、用途により次の工業用クリーンルームとバイオクリーンルームの2つに大別され、さらにそれぞれのクリーンルームは、業種や取り扱う製品対象により清浄度(クリーン度のクラス)が分けられています。

クリーンルームに関する規格

現在、日本ではクリーンルームの空気清浄度の評価方法がJISで規定されております。

しかし、従来から準用している米国の連邦規格やNASA基準とは清浄度の評価方法が異なっています。ここでは米国の連邦規格(Federal Standard 2096)に基づいて説明します。

関連規格

(1)JGMP基準

日本製薬工業協会が設定した、「医薬品の製造と品質管理に関する実践規範」Japan Good Manufacturing Practicesの略で、従来諸外国には各々GMPが定められていましたが、W・H・Oより1969年に製薬工場の施設はGMPに基づくようにとの勧告を受けて昭和48年に設定された、日本の製薬工場の施設規範です。

(2) 米国連邦規格 No.209

クリーンルームと清浄作業台の基準

(3) 米国軍用規格 MIL-STD-1246A

製品の清浄度のレベルと汚染防止計画

(4) 航空宇宙局 NHB5340

微生物学的に制御されたクリーンルーム及び清浄作業台
NASA基準

(5) JIS B 9920

クリーンルーム中における浮遊微粒子の濃度測定方法及びクリーンルームの空気清浄度の評価方法

表9:クリーンルームの種類

種類 用途 業種
工業用クリーンルーム 塵埃混入による不良率の低減 半導体、電子部品、精密部品など
バイオクリーンルーム 塵埃、カビ、最近による汚染防止 製薬、食品、手術室など

※業種や取り扱う製品対象によりクリーン度のクラスが異なる。

表10:清浄度の基準(米国連邦規格209bの要旨)類

クリーンルーム
清浄度クラス
粒子
粒径
µm
累積粒子数
個/ft3(個/ℓ)
クラス 100 0.5以上 100(3.5以下)
クラス 1,000 0.5以上 1,000(35以下)
5.0以上 7(0.25以下)
クラス 10,000 0.5以上 10,000(350以下)
5.0以上 65(2.3以下)
クラス 100,000 0.5以上 100,000(3,500以下)
5.0以上 700(25以下)

なお、JIS B 9920では1m3あたりの0.1µm粒子濃度で、クラス1~クラス8まで規定されており、上記クラス100が、JIS規格クラス5に相当する。

表11:クリーンルームの用途別照明器具の選定例

用途 工程 清浄度クラス
100 1,000 10,000 100,000
半導体
工業
●結晶精製 ●フォトレジスト ●拡散 ●エッチング工程 ●位置あわせ
●表面処理 ●組立 ●金属蒸着 ●検査
●原材料 ●研磨 ●梱包 ●半製品ストック
電子機器
電子
計測器
●ブラウン管 ●高信頼管
●リレー類組立 ●プリント板製版 ●コンデンサ ●精密計測器
●一般計測器組立 ●試験 ●検査 ●調整
コンピュータ ●磁気ドラム ●磁気テープ ●機構部品
●周辺機器加工組立 ●部品保管 ●総合組立 ●試験
カメラ、写真
光学機器
●レンズ研磨 ●目盛彫刻 ●医学用カメラ加工・組立
●カメラ組立 ●シャッター組立 ●露出計組立
●試験 ●検査 ●大型機器組立
時計、精密機械 ●電子時計、部品組立 ●べアリング挿入 ●ミニチュアベアリング
●時計組立 ●精密測定器組立
●普通ボールベアリング ●測定器具の組立
薬品関連 ●注射液 ●アンプル挿入
●製薬工程
医療(病院)関連 ●無菌手術室 ●手術用器具保管
●ICU ●CCU ●術後回復室 ●新生児室、未熟児室
●一般手術室 ●分娩室
●無菌病室 ●薬剤室
●一般病室 ●診療所
●血液、血清(血液センター)
食品関連 ●牛乳、酒、乳酸菌飲料
●食肉加工
●加工工程
その他 ●無菌動物室 ●細菌実験室
●放射能研究室、RI関係 ●感染動物室
●無塵衣クリーニング

クリーンルームの空調方法

クリーンルームでは空調により塵埃粒子を吸い込み、フィルターでろ過した空気を吹出すことにより、室内の塵埃数を減少、制御していますが、その吹出方法により、クリーンルームのグレードが違ってきます。

クリーンルームの空調では、気流の分布や速さに乱れがないことが重要で、クリーンルームのグレードに応じて垂直層流方式と非層流方式の2つに大別されます。

(1)垂直層流方式

空気の流れに渦を作ることなく吹出口から吸込口へ流し出す方式で、塵埃は滞留することなく吸込まれるため、グレードの高いクリーンルームに向いていますが、吹出口と吸込口が多くいるためコストがかかります。

(2)非層流方式

一般の空調と同じような方式で行うもので、グレードの比較的低いクリーンルームに適し、コストが安く行えます。

また、この2つの方式を組み合せ、作業部だけを効率よくハイグレードにするクリーントンネルやクリーンベンチの方式があります。

図1:クリーンルームの空調方式

垂直層流クリーンルームと非層流クリーンルームの絵。照明、吹出口、吸込口、ダクトがある。

クリーンルーム用照明器具

クリーンルームという厳しい清浄環境で使用される照明設備は、快適で能率的な作業環境をつくり、かつ経済的であることはもちろんですが、クリーンルームのグレード(清浄度)に応じた専用照明器具として、空調設備や建屋、施工と一体となったトータルシステムで、クリーンルームの目的を達成するものでなければなりません。

なお、クリーンルーム用の照明設備については、米国の連邦規格No209B.40.設計資料「クリーンルーム照明設備の設計」に記載されていますので、次に抜萃を示します。(Federal Standard No.209B.April 24.1973)

●40.1 非層流清浄室

40.1.7 清浄室の照明装置

清浄室の照明装置は、清浄室内における作業の必要性に応じて設けなければならない。作業面で100~150fc(1076~1615 lx)の照度で、無影で均一な照明をすれば大概の清浄室に対して満足されるものである。天井付照明器具は天井面と同一平面状の取り付けで、かつ空気のもれがないように密閉されてなければならない。

●40.2 層流室

40.2.6 清浄室の照明装置

標準の作業レベルにおいて、満足できる照度で、無影で均一な明るさを必要に応じて設計しなければならない。天井付照明器具は、気密に対する配慮をしなくてもよいように清浄室に吊り下げることも可能であるが、しかしこのような器具は気流分布を乱さないようにできるだけ流線型とすべきである。もし天井高さが特に低いときは、天井と同一平面状に取り付けることおよび器具を密閉することが必要である。

(1)クリーンルーム用照明器具の必要機能

  1. 快適で能率的な作業環境をつくり、かつ経済的であること
  2. 室内空気の密閉性を損なわないこと
  3. 塵埃の付着・堆積がないこと
  4. 天井から器具の突出が少ないこと
  5. ランプ交換や清掃の保守管理が容易であること
  6. 用途に応じた機能を持つこと

クリーンルーム用照明器具の主な必要機能は上記の6つです。次に具体的な器具の説明・特長を述べます。

(1)-1 快適で能率的な作業環境をつくり、かつ経済的であること

クリーンルーム用照明器具の光源としては、取り扱いが容易で、高効率・長寿命で、かつ視対象物の色彩の見え方が充分満足できるものとして、蛍光灯がよく使用されますが、現在ではLEDも使用されます(図2)。

図2:クリーンルーム用LED照明器具の例

NNFJ42850 LH9の画像

NNFJ42850 LH9

NNFJ42848 LH9の画像

NNFJ42848 LH9

(1)-2 室内空気の密閉性を損なわないこと

クリーンルームは、室内と室外を隔離し、汚れた空気が室内に入り込むのを、防がなければなりません。

一般にクリーンルームでは、大気圧に対して1.5~3㎜Aq程度加圧し、外気が浸入しにくいようにしていますが、部屋の隔壁や天井での漏れが大きいと圧力維持が困難になりクリーン度が保たれにくくなります。特にクラス100程度の部屋で、天井裏全体をエアブースとして必要な部分フィルタ吹出口をとる垂直層流方式などでは、照明器具背面に吹出圧がかかるため、さらに密閉度が要求されます。

図3

室内(クリーンルーム)、照明器具、天井内の絵

(1)-3 塵埃の付着・堆積がないこと

クリーンルームでは、空気をろ過して一定以上の塵埃が空気中に存在しないようになっていますが、壁面に付着したり、水平部に堆積したりして、清浄さを損なう場合があります。照明器具も、室内に露出した部分に塵埃が堆積しないように、不要な突起部分をなくさなければなりません。また、静電気による塵埃の付着を防止するため、強化ガラス又は特殊な帯電防止アクリルパネルを使用する必要があります。

(1)-4 天井から器具の突出が少ないこと

クリーンルームは、空気の吹出、吸込によって空気の浄化を図るわけですから、そこに空気の流れが生じます。この空気の流れが室内の突起物などによって乱されると、空気の浄化がさまたげられることになります。特に層流式の場合には、流れに渦が生じないことが重要な条件となっています。

従って埋込型が最善ですが、直付型のクリーンルーム用器具は、流れを乱しにくく塵埃がたまりにくい構造としていますので、埋込穴があけられない場合や天井裏にスペースがない場合におすすめします。

図4:天井からの突出による層流の乱れ

スムーズな気流

(1)-5 ランプ交換や清掃の保守管理が容易であること

クリーンルーム内の保守作業は、空気の汚れを少なくするため、少人数で手早く行えなければなりません。なお保守作業としては、ランプ交換や、強化ガラス・アルミ枠の清掃などがあります。

室内でのメンテナンスの場合には、ネジの締付けなどで新たに塵埃を生ずるようなことがなく、容易にランプ交換やパネル枠のとりはずしが行えるような配慮が必要です。

(1)-6 用途に応じた機能を持つこと

半導体工場などでクラス0、クラス10等のハイレベルのクリーン度が要求される場合、天井はほとんどの面積がフィルターで占められます。その為照明器具は、最小面積で、かつ流れを乱さないなどの特殊形状が必要です。クリーンベンチやクリーントンネルにおいても、同様に特殊構造の照明器具が必要です。

バイオクリーンルームでは、消毒剤に耐えるために特に耐蝕性が必要です。また、クリーンルーム専用の防湿タイプの殺菌灯を使用する場合もあります。

※クリーンルーム用照明器具のクリーン度のグレードについて

クリーンルームのクリーン度は空調能力、換気回数、フィルターの性能を中心に、照明器具等の設備や部屋の構造等、総合的に設定されるものです。
照明器具には、選択の目安として照明器具のグレードに合わせてクリーン度を記載していますので、天井構造や空調条件に合わせて総合的に判断して選択する必要があります。

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