光と陰影から生まれる居心地のよさ
これまで“小さな住宅”を多く手がけてきた、若原一貴氏。
光と陰影を操ることで、住まいの中に“気持ちのいい居場所”をつくる。
若原氏の光の空間哲学と、Archi
Designはどのように響き合うだろうか。
若原一貴
Kazuki Wakahara 一級建築士事務所 株式会社 若原アトリエ
1971年東京生まれ。1994年
日本大学芸術学部卒業。横河設計工房を経て、2000年に若原アトリエを設立。日本大学芸術学部
教授。日本大学第三中学校・高等学校 監事。日本建築学会
正会員。目黒区美術館 建築ボランティア班。一般社団法人
東京建築アクセスポイント理事。
第7回 WOOD
ONE実施作品コンペ 入選。第11回木材活用コンクール
部門賞(第一部門)。第30回 INAX デザインコンテスト
入賞。Hope & home アワード
受賞。第34回住まいのリフォームコンクール
優秀賞。日本建築学会賞
教育賞(教育貢献)。『LIXILメンバーズコンテスト2023』地域最優秀賞等を受賞。
居心地は、光でデザインする
ご主人の読書スペース。リビングの一角、あえて薄暗い中に読書灯としてのスポットライトを設置して、ひとりに集中できるような居場所に。板戸を閉めることで、大開口部からの光の量を自分たちでも調節できる。
住まいの中に、いかにたくさんの
“気持ちのいい居場所”をつくるかを大切にしています
小さい住宅を多く設計してきました。なるべく仕切らず、がらんとした空間をつくるのが住みやすさにつながると考えています。そして住まい全体をひとつの空間と捉え、その中に、住まい手が過ごしやすい“気持ちのいい居場所”を、どれだけたくさんつくるかを大切にしています。例えば、キッチンも囲わず、廊下もつくらない。たくさん気持ちのいい居場所があれば、生活は楽しくなります。
特に設計時に、大切にしているのは自然光です。朝、昼、夕方と時間によって変わる自然光をデザインすることで、居場所の質が変わります。
例えば、今回のお施主様は、お子様が独立したご夫婦です。ご夫婦ふたり、家で過ごす時間が増え、お互いが自由に好きなことや趣味に没頭できる住まいにしたいというご要望でした。そこでリビングの窓を実際よりも低く、あえて光をぐっと絞る方向でデザイン。ふんわりとした柔らかい光を取り入れ、心地良さを生み出しました。光を感じるためには、影も欠かせない要素なのです。さらに窓の影となる一角には、静かに集中できる、ご主人の読書スペースも設けました。
1日の終わりである夜は、照明器具で室内の光をデザインします。人は明るすぎる空間にずっといると本能的に疲れてしまうので、住宅の中に光と影をちゃんとつくる。影をどのようにつくるかが、照明計画のポイントです。夜だからといって、こうこうと照らすのではなくリラックスできるように、陰影や光のグラデーションをつくり出します。
もちろん読書や食事などシーンに応じた機能的な光も必要です。大勢で過ごす時は、自然と明るい光が欲しくなります。しかし、ひとりでくつろぐなら、明るすぎる光は孤独を感じさせやすくなるで、自分の周辺だけを柔らかく照らす光がいいでしょう。人が生活する住宅には、さまざまな役割が求められるので、それに応じた心地良さを光と陰影で設計するよう心がけています。
日本の住空間に合う重要性
ダイニングテーブル上のダクトレール+スポットライトは、ご夫婦ふたりで、お子様のご家族が集まった時、夜お酒を飲む時、奥様のキルト教室をする時など、いろいろなシーンに対応できるように。
朝から夜まで。いろんな生活シーンに対応できる
“心地良さ”を設計するよう心がけています。
日本の住空間は、ヨーロッパなどと比べると天井高も床面積も小さいです。だから照明器具も、小さな空間にあったサイズが求められます。その点、Archi Designはコンパクトで空間になじみやすい点がよいですね。1日の中で、照明を点けるのは主に夜。そう考えると朝昼など日中、点灯していない時間帯の方が長いので、存在感を主張しすぎないフォルムも好ましいです。もちろん、あえて印象的な形のペンダントライトを空間のアクセントとして選ぶケースもありますが、基本的には主張しすぎないコンパクトな照明が日本の住宅には合うと思います。
私の場合、照明はブラケット、ダクトレール、スポットライトを中心にデザインします。ブラケットは壁の照らし方次第で、空間の奥行や陰影をつくりやすいからです。壁の素材や色合い、照明の角度や調光で、同じ場所でもさまざまな居心地をつくり出すことができます。
またダクトレールは、ペンダントやスポットライトなど照明器具を自由に交換できるのでよく使います。例えば、ダイニングテーブルも暮らすうちに場所を変えたくなることや来客時に移動させることもあるので、ダクトレールを採用することが多いですね。
壁面のスイッチプレート。形がシンプルで白の壁との相性もよく、空間になじんでいる。
キッチンの調理台は、若原氏のオリジナル。スイッチをテーブル上に配置したのはリビング側から見えづらいように。水平に設置すれば、たとえ見えたとしても、リモコンか何を置いているような印象。
奥様のアトリエ。いずれは作品を壁に飾り、スポットライトで照らせるようにダクトレールを採用。
あえてシンプルなフォルムをデザインとして主張させるために、スポットライトを2つ並べて配置。存在感が増すだけでなく調理中の手元を照らす機能性も両立。
住宅設計者は誰もが、分電盤は隠すものという発想で設計しています。「分電盤を“選ぶ”」という発想がなかったからです。フレキシードのような見せられる分電盤の誕生によって、これから私たちの選択肢はおおいに増えると感じています。まず実利的な面では、特にワンルームなど小規模の住宅の場合、見えてよい場所に設置できるなら、限られた収納空間を分電盤が占領する必要がなくなります。隠そうとするから設置場所に困るのであって、見せてもよいなら設計時にさまざまな可能性が生まれるでしょう。特に最近は「隠す」よりも「見せる」ことが好まれる傾向にあります。場合によっては旧タイプの分電盤も見せたいと言う人も出てくるかもしれません。いずれにせよ、フレキシードの登場は、私たち設計者の「分電盤の世界観」を変えてしまうのではないでしょうか。
背景になじみ、調和するArchi Design
差異自体はあってもいい。
いかにひとつの空間として調和させるか。
壁、床、調理台、ダイニングテーブル、椅子、すべて木材だが、微妙に風合いが異なる。あえて差異を出しながら、全体の調和をはかり、心地良さを生み出す。
最近の住宅空間は、いろいろな素材や質感が混ざり合い、いかにバランスがとれているかが重要になっています。統一感より、バランスや調和が好まれるのです。今回の事例でも、テーブル、椅子、壁、床などすべて木材を選びましたが同じものはなく、少しずつ差異があり、かつ調和しています。住空間自体も、和室然とした和室は今やほとんどなく、リビングの中に和の要素を取り入れるなど、インテリアデザインはどんどん自由になっています。
そういう意味では、Archi Designシリーズは、分電盤をはじめすべてシンプルで、かつしっかりとした質感やモノ感があるので、どんな空間にもバランスがいいと感じます。特にモノ感は重要かもしれません。スポットライトなどはコンパクトでサイズ感がいいとお話しましたが、単純に小さければいいというわけではありません。軽すぎるとチープな印象になってしまうからです。Archi Designシリーズは表面仕上げも丁寧で、壁材や床材などの素材感に負けない存在感があります。つまりモノ感があることで、どんな素材ともなじむのではないでしょうか。
設計者から
Archi
Designへのメッセージ
Designer's Insight for Archi Design
日本の住まいの、新たなスタンダード
分電盤を見せるという発想がなかったとお話しましたが、昔はスイッチプレートも選ぶ対象ではありませんでした。ある時期から、メーカー各社がいろいろなデザインのスイッチプレートを発売するようになり、今では多くの製品の中から選ぶのが一般的になりました。
そういう意味では、分電盤などの電気設備と照明器具も別々のものではなく、シリーズで選ぶというのは、いまは非常に新しい発想だと感じていますが、今後、私たち住宅設計者や一般のお客様にとってもスタンダードになるのかもしれません。
「隠していたものを見せる」という発想の転換が、新たな住まいの設計アイデアをこれから生み出していくのではないかと可能性を感じます。私自身がどう設計するのかもそうですが、日本の住まいがこれから、どのように進化していくのか。それも楽しみですね。
若原一貴 一級建築士事務所 株式会社 若原アトリエ