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看板の照明

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看板の照明の考え⽅

屋外広告は⼀般に30〜120m離れた場所の動いている⼈々が⾒るものとして計画されることが多いため、単純かつ明快であることが求められます。⼀般的に、⽂字数が少ないほど、絵が⼤きいほど、⾊彩がはっきりしているほど、背景がシンプルであるほど、そして広告物の特徴が明快であるほど、広告の効果が発揮されます。
屋外広告の照明・サインにおいても設置地域の条例やガイドラインなどを参照し、制限(⾊、明るさなど)がある場合に対し配慮することが必要となります。関連する屋外広告物法は、屋外広告物⾏政における規制の基準を定めており、実際の屋外広告物規制は、地⽅公共団体(都道府県、政令市、中核市、景観⾏政団体である政令市及び中核市以外の市町村)が屋外広告物法に基づく条例、規則等を定めて独⾃に⾏われています。
よって、地域差はありますが、屋外広告物法の運⽤に関するベースは、国⼟交通省が屋外広告物条例ガイドライン(案)1)として、地⽅公共団体への参考に、技術的助⾔として⽰されています。
以下は⼀般論として看板の照明に対する解説を⽰しますが、設置地域の屋外広告における照明に関わる規制やガイドラインの実情に合わせた適⽤が必要です。

1.看板照明(外照式)の設計ポイント

屋外広告の中で、塗り看板は⾃発光の電気サインなどと⽐較して、絵や表⽰の塗り替えなどの⾃由度が⾼く、⾃発光表⽰に伴う昼間の電⼒使⽤が不要なメリットがあります。この看板の夜間における⾒え⽅と宣伝効果をより効果的に⽣かすために外照式の看板照明が⾏われます。

表1:⼀般的な看板照明の推奨照度

看板表⾯の平均的な反射 推奨照度
周囲が明るい場合 周囲が暗い場合
⾼い 500 lx 200 lx
低い 1,000 lx 500 lx

(a) 適切な明るさであること
照明された看板の⾒え⽅は、同じ明るさの看板でも設置場所の周辺条件によって異なります。看板の背景や周辺の明るさとコントラストをつけて、看板を⽬⽴たせるような明るさにしなければなりません。
また、同時に看板⾯の反射を考慮しつつ、環境に配慮することが必要です。⼀般的な看板の表⾯の推奨照度を表1に⽰します。

(b) 明るさのムラが少ないこと
広告看板は、建築物などの⽴体的なものの投光照明とは異なり、平坦なものであるため、看板表⾯に明るさのムラがあると、宣伝効果を失うばかりでなく、美観をも損なうことになります。看板全体を均⼀に照明することが理想ではありますが、最⼤照度と最⼩照度の⽐(G)の望ましい値は次のようになります。

G≦4

(c) 照明器具の取り付け位置および照射⽅向が適切であること
光源からの直射光や反射光が、看板を⾒る⼈に対してグレアを与えないようにしなければなりません。そのための器具取り付け位置および照射⽅向を、照明器具の配光を考慮した上で適切なものとする必要があります。

(d) 照明器具が看板の視認性を損なわないこと
照明器具は、看板を⾒る際にじゃまにならないような位置に取り付けなければなりません。また、昼間に看板の視認性を損なうような影ができないように配慮する必要があります。

(e) 照明器具の保守・点検が容易であること
照明器具が必要最⼩限の保守しか必要とせず、保守・点検の費⽤を抑えるように配慮する必要があります。また、保守作業は設計照度を満⾜するように適切に⾏われなければなりません。

2.照明器具の取り付け位置の設定

照明器具を看板の上側に取り付けるか、下側に取り付けるかにより、次の⻑短所がありますので、これを考慮して取り付け位置を決定する必要があります。

(a) 看板の上側に照明器具を取り付ける場合

  1. (イ)照明器具が広告を隠すことはありません。
  2. (ロ)反射グレアが不快感を与えやすくなります。
  3. (ハ)昼間に照明器具が看板に影をつくることがあります。
  4. (ニ)照明器具の保守が困難になる場合があります。

(b) 看板の下側に照明器具を取り付ける場合

  1. (イ)照明器具に広告が隠れることがあります。
  2. (ロ)反射グレアが最⼩限に抑えられます。
  3. (ハ)昼間に照明器具が看板に対して影をつくりません。

なお、いずれの場合も交通に影響を与えないよう配慮が必要です。
また、下部から上⽅に照射する⽅向に対しては特に、照射範囲外の天空などへの漏れ光の抑制に配慮します。

図1:光源(器具)の配列⽅式(推奨例)

(1)方式(器具を上<下>に取り付ける)、(2)方式(器具を上下に取り付ける)、S:照明器具の間隔(m)、S':看板端から照明器具までの距離(m)

3.光源の選定

看板照明の光源の選定においては、⾊の⾒え⽅も重要な要素であるため、寿命・効率などに加え演⾊性を考慮することが⼤切です。⼀般に⽤いられる光源としては、⽔銀ランプ、メタルハライドランプ、⾼圧ナトリウムランプ、蛍光ランプ、LEDなどがあります。
この中から、看板広告の⾊彩を考慮して、その⾊彩を表現するために適した光源を選択します。⼀般的には、暖⾊系の⾊彩が主たる対象の場合には相関⾊温度の低い光⾊、寒⾊系の⾊彩が主たる対象の場合には相関⾊温度の⾼い光⾊が適しています。
⾊の⾒え⽅を重視する場合は、平均演⾊評価数Raが80以上の光源を⽬安とすると良いでしょう。
また、看板の広告が頻繁にリニューアルされる場合は、デザインの変更に対応できるように、極端に相関⾊温度が⾼くも低くも無いニュートラルな光⾊を選定したり、⽐較的広い範囲で相関⾊温度の光⾊バリエーションを有するLEDや蛍光ランプを光源とし、後々の切り替えに対応しやすいような⼯夫を、あらかじめ組み込むこともよいでしょう。

4.看板照明(⾃発光式)の設計ポイント

⾃らは光を発せず、外部からの照明の明るさによって看板の表⽰を⾒せる外照式の看板と異なり、看板⾃体に光源が組み込まれ、⾃ら発光するものは広義には⾃発光式の看板と⾔えます。
⾃発光式の看板照明は古くはネオンサインとしてネオン管などの光源が看板に組み込まれ、光源⾃体の発光を直接⾒せる直射式の看板が代表的ですが、⾃発光の看板の中でも、半透明のガラスやプラスチック板などの背⾯に光源を設置し、その透過光によって表⽰を⾒せるバックライト形式の内照式看板などもあります。
看板の表⽰や表現スタイルは新規性やデザイン性を⾼めるため多様に進化しており、分類のされ⽅や呼称のされ⽅も、それに伴い多様です。⾃発光の看板として、LEDなどの発光を⾒せることで⽂字表⽰や映像表⽰を⾏うディスプレイも広義には⾃発光式の看板の⼀種とされることもあります。また、デジタルサイネージとも⾔われる、広告⽤の⼤型液晶ディスプレイなどの表⽰板もバックライトを伴う⾃発光式の看板の⼀種とされることもあります。加えて、内照式の看板の外側に⾃発光式の光源を直視できるように⼀体化したような複合型など、多様な形態が存在します。
ここでは、LEDを使⽤したチャンネル⽂字の看板を事例に述べていきます。
凹形状の溝形(チャンネル)の中に光源を配置し、⽂字サインを形成したものであり、図2に⾃発光式のチャンネル⽂字看板の構造図を⽰します。便宜上、前⾯に光透過パネルを有す内照式と、光源⾃体の発光を⾒せる直射式、背照式に⼤別しています。

図2:⾃然光式のチャンネル⽂字看板の構造図

看板の構造 特⻑

内照式

前⾯にパネルがあり透過光で⾒せる

発光面の明るさが非常に均一直射式に比べて、低輝度

⼩・中型看板
(2.5m未満)
に効果的

直射式(LED・ネオン菅)

直射光を⾒せる

⼤型の看板にも対応しやすい内照式に⽐べて、⾼輝度

中・⼤型看板
(1m以上推奨)に
効果的

背照式

表⽰をシルエットで⾒せる

背⾯の仕上げや⾊の影響を受ける
内照式に⽐べて、低輝度

⼩型看板
(1m未満)に
効果的

図2の⽂字看板の事例に対し、さらに例えば、内照式と背照式の複合型で⽂字前⾯の輝度を得ながら、背照式で⽂字の後⽅に異なる光⾊を照射し、壁⾯から⽂字が浮いたような演出を⾏うなど、演出⼿法には広いバリエーションが考えられます。
また、LEDを背照式に⽤いる場合には、光源のイメージが直接、取り付け外壁に写りこむことを抑制するためにも、背⾯にも保護⽤の背⾯パネルの設置が望まれます。

図3:内照式と背照式を組み合わせたチャンネル⽂字看板の構造図

5.⾃発光式の⽂字看板の留意点

(a)照度と輝度との混⽤に対する留意点
旧来から内照式看板において、その明るさを計測評価する場合、看板表⾯に照度計を向けて、照度計の受光⾯が、ほぼ接触するような位置で照度を測定し、看板の明るさを照度(lx)で評価するという慣例があります。多くの他の照明分野では、このような表⾯の明るさは、輝度計を使⽤し輝度(cd/m2)で評価されるため、意図せず照度と輝度が混⽤されることがあり意思疎通には留意が必要です。前記の測定法による照度を、輝度の⽬安とするに当たり、拡散板表⾯の光の出射を、およそ均等拡散する光放射源と仮定すると、前記照度(lx)をπ(約3.14)で割ったものが輝度(cd/m2)相当の⽬安の値となります。

看板パネル⾯輝度(cd/m2)相当≒ 均等拡散(lx)÷ 3.14

現実的には看板表⾯は理想的に均等拡散する光放射源ではないため3.14より僅かに⾼めの数値がよりフィットすることもあります。また、光源がLEDの場合などで発光⾯内の明暗のムラを少なくし、輝度分布の均⻫度が⾼い場合、平均輝度が低めの設定でも暗く感じにくいという傾向もあります。

(b)⾼彩度な⾊光の輝度設定
⽩⾊光や僅かに⾊づいた光⾊と異なり、鮮やかな⾊光を内照式⽂字看板に使⽤する場合、同⼀輝度では⾼彩度な光⾊の⽅が明るく感じることがあります。これは⼈間の⽬が有する特性で、ヘルムホルツ・コールラウシュ(Helmholtz-Kohlrausch)効果とよばれるものです。
例えば、⽩⾊の内照式⽂字看板と、鮮やかな⻘⾊の内照式⽂字看板が隣接して、同⼀輝度で配置されていると、鮮やかな⻘⾊の⽂字の⽅が明るく⾒えるというような現象です。⾼彩度な⾊光を使⽤する場合、⽩⾊光と類似の明るさの感覚を得ようとするなら、より輝度を減じて使⽤する必要があります。
また、表⾯をカラーパネルとし、昼間に光源が⾮点灯な状態でもカラー表現ができる内照式⽂字看板において、表⾯⾊に類似した有⾊LEDを光源として使⽤することがあります。この場合、有⾊LED固有の⾊再現となるため、例えば企業のロゴなどのように⾮常に厳密に⾊彩が規定されている場合には⾊の確認が望まれます。

(c)光源の相関⾊温度
旧来は内照式看板の光源には蛍光ランプが多く⽤いられていました。その場合、前⾯プラスチックパネルの⽩⾊部が、⻩ばんだ印象になることを抑制し、⽩さを強調するため、⼀般的に昼光⾊6,500Kより⾼い相関⾊温度、例えば8,000K近傍などの光⾊が採⽤されていました。また、使⽤する光源が前⾯プラスチックパネルを透過する際に、短波⻑側の光が減衰する割合が⾼い傾向があるため、⼀般的には使⽤する光源の直接的な相関⾊温度より、前⾯プラスチックパネルを透過した後の相関⾊温度は低下します。したがって、前⾯プラスチックパネルとLEDを使⽤した内照式看板と、先のような、異なる光源を使⽤した看板類が混在し、対⽐して⾒られる場合、僅かに⻩ばんだ印象になる場合もあり、このような場合は、LEDの相関⾊温度を⾼めのものに設定するとよいでしょう。

(参考文献)

  1. 1)国⼟交通省:屋外広告物ガイドライン(案)(2006)

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