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波長制御技術

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波長制御技術とは

近年、LED光源は急激な技術進歩により、オフィスや住宅、店舗等の一般照明へと普及が進んでいます。LED光源は、一般光源に比べて分光放射分布の制御が容易であるという特徴を持っています。その特徴に着目し、当社では照射対象物に最適な分光放射分のLED光源の開発を行っています。そのことを波長制御技術と言い、この技術について説明します。

色の基礎

1.光の本質

光とは、電波やX線などと同様に電磁波の一種で、波長380nm~780nmの電磁波は目に入射して明るさを感じさせることから、光または可視光といいます。図1に電磁スペクトルを示します(電磁スペクトルとは、各波長領域ごとの電磁波の呼称を波長の順序に表したもの)。図2に可視光でのスペクトル例を示します。

図1:電磁スペクトル 1)

このように光源ごとにスペクトルの特長が異なり、スペクトルの違いで物の色の見え方が異なります。

図2:スペクトル例 2)

昼光と人工光源の場合、昼光(北空曇天空)・白熱ランプ・蛍光ランプ(白色)それぞれの分光強度(相対値)と波長(nm)を表したグラフ
人工光源の場合、LED・白熱灯・蛍光ランプそれぞれの分光強度(相対値)と波長(nm)を表したグラフ

2.物体の分光反射率

分光反射率とは、波長380nm~780nmの各スペクトルそれぞれ100%に反射する白い物体の反射光に対する、この物体の反射光の比を各波長ごとに求めたものです。図3に各種塗色の分光反射率の例を示します。

図3:塗色の分光反射率曲線 3)

白・黄・黄赤・赤・青・紫・緑・黒それぞれの分光反射率(%)と波長(nm)を表したグラフ

3.色の知覚

色を認識するためには、前項で説明した光のスペクトルと物体の分光反射率と人間の目の3つの要素が必要です。人間の目は、3種類の視細胞(錐体)を持っています。錐体は明るいときに作用し、青に反応するS錐体、緑に反応するM錐体、赤に反応するL錐体があります。その3つの錐体の反応のバランスで人間は色を知覚しています。図4に基本感度曲線を示します。

暗い場所では、桿体が作用します。桿体は色には反応せず、明暗に対する視細胞です。

図4:Smith and Pokornyによる基本感度曲線 4)

L 錐体・M 錐体・S 錐体それぞれの感度(対数値)と波長(nm)を表したグラフ

波長応用技術の例

1.肌を美しく見せる照明『美光色』

(1)肌の見えの好ましさ指数、PSについて

PSとは、Preference Index of Skin Colorの略で、日本人女性がイメージするキレイな肌の色度点を明確にし、その理想的な肌の色にどの程度近いかを数値化したものです。理想的な肌の色度点を図5に示します。

PS値は最大値を100とし、標準光D65(昼光の代表)を80として、導出されています。現段階ではPS100の光源はなく、当社が開発した『美光色』はPS95と非常にPS値が高い光源であり、肌の色を美しく見せます。

図5:理想的な肌の色度点5)

D65対応色のν’D65とμ’D65を表したグラフ

(2)肌色のメカニズムについて

肌を構成する色素としてメラニン、ヘモグロビン、カロテン等がありますが、寄与が大きく、かつ変化しやすいものがメラニンとヘモグロビンです。図6にメラニン、ヘモグロビンの分光反射率を示します。メラニンは蓄積していくと「しみ」、「そばかす」の原因になります。ヘモグロビンの分光反射率は550nmの部分に大きな吸収があります。とくに540nmと580nmに大きな吸収があります。 メラニンとヘモグロビンの分光反射率の関係で肌の見えは異なりますが、一般的な日本人女性の肌では、540nm~580nmの間でヘモグロビンの分光反射率よりメラニンの分光反射率が上回るため、その部分の波長をカットすることで、肌のくすみを見えにくくします。

図6:メラニン、ヘモグロビンの分光反射率6)

メラニンと血液それぞれを相対反射特性率と波長(nm)で表したグラフ

(3)光源のスペクトルについて

美光色のスペクトルイメージを図7に示します。前項で説明したとおり、人の肌のくすみの原因は570nm~580nmにあります。ですから、『美光色』では、その部分の波長をカットすることで、肌の見えを美しくします。

図7:美光色のスペクトル

美光色LEDと従来LEDそれぞれを分光パワーと波長(nm)で表したグラフ。※スペクトルはイメージです。

2.色が鮮やかに見える照明『彩光色』

(1)目立ち指数、FCIについて

FCIはFeeling of Contrast Indexの略で、光源の色再現の目立ちや鮮やかさの程度を表す指標です。標準光D65ではFCI100になり、D65よりも鮮やかに目立たせる光源はFCI100以上の値になります。RaとFCIは考え方が異なるため、RaとFCIとを補完することで光源の演色性を適切に評価できます。

(2)FCIの算出方法

一般に、テスト光源の目立ち効果は、基準光源・基準照度のもとでの目立ち感と等しい目立ち感となるテスト光源の照度との比で表すことができます。つまり、等目立ち感照度比の大小は、光源の目立ち効果の大小を表すことになります。テスト光源の等目立ち照度比は、観測実験により求められますが、観測実験を行わずとも、下記式のように4つの配色サンプル(図8)の色域面積で表すことができます。
FCI=[GLAB(T)/GLAB(D65)]1.5 ×100・・・・(1)

図8:4色配色サンプルの色域面積7)

(3)光源のスペクトルについて

当社が開発したFCIを高め、食材や植物を鮮やかに演出するLED照明器具『彩光色』のスペクトルイメージを図9に示します。『美光色』のスペクトルと同様、570nm~580nmの波長の光を減少させ、加えて赤色成分のピーク波長を長波長側にシフトさせることで、色を鮮やかに演出します。

図9:彩光色のスペクトル

美光色LEDと従来LEDそれぞれを分光パワーと波長(nm)で表したグラフ。※スペクトルはイメージです。

3.夜道が明るく見える照明『明光色』

(1)プルキンエ現象

明所視から薄明視または暗所視へ経過すると、人の目の明るさへの感度特性(視感度)が短波長側に移動しつつ上昇する現象のことです。この現象は、桿体の視感度が錐体に比べて短波長にあたるために起こります。図10に明所視および暗所視での感度の変化を示します。

図10:明所視および暗所視での感度

暗所視での感度・明光色・薄明視での感度・明所視での感度それぞれを絶対視感度(lm/W)と波長(nm)で表したグラフ

(2)光源のスペクトルについて

前項で説明したプルキンエ現象を応用し、防犯灯が設置されるような「薄明視」環境において、目の光への感度がピークとなる波長に近い光を多く含むことで、空間を明るくみせています。

(3)薄明視について

薄明視とは、物の色と形がいくらかわかる0.01 lx~10 lxぐらいの明るさの状態です。明所視と暗所視の中間状態の視覚であり、錐体と桿体が活動しています。

(参考文献)

  1. 1)色彩科学ハンドブック第3版p.4
  2. 2)照明学会編 屋内照明のガイドp.29
  3. 3)照明学会編 屋内照明のガイドp.29
  4. 4)色彩科学ハンドブック第3版p.72
  5. 5)矢野 正,橋本健次郎(1998):照明光下での日本人女性の肌色に対する好ましさの評価方法,照学誌,82(11),895-901(色彩科学ハンドブック第3版p.1194)
  6. 6)日本色彩学会誌 29(3), 238-241, 2005-09-01
  7. 7)Hashimoto,K. et al.(2007):New method for specifying color-rendering properties of light sources based on feeling of contrast,Color Res.Appl.,32:361-371(色彩科学ハンドブック第3版p.633)

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