Panasonic

照明制御の必要性

1.照明に必要とされる機能

照明の目的は、次の2つに要約できます。

(1)対象物が正しく十分によく見えること

オフィス作業での書類や、計算機の端末、人の顔、工場の工作物や機械の操作部、店舗での商品など、視作業対象物の見え方が重要です。

(2)周囲の環境や状況がよく分かること

天井、壁、床など作業者の周辺がよく分かることによって、安全性や快適性が保たれます。

2.照明専門化の必要性

(1)作業目的の複雑化、高度化

PC作業、アイディア考案など作業形態が多岐化、高度化しており、それに対応できることが必要とされます。

(2)感性の時代における好みの多様化

現在は感性の時代といわれ、多様化の時代といわれています。すなわち、人々は同じ物や状態を一斉に好ましいと判断するのではなく、好ましいと考える状態は多岐に分化し、幾つもの選択肢が並立し、少人数ごとのクラスに分かれてきています。したがって各種の空間を設置運営する立場の方々に望まれることは、空間使用者の多様な欲求に応じて、専門化、個性化されたそれぞれに最良の空間を創造することです。

3.照明変化の必要性

(1)同一空間の多目的使用

上記のような、空間の使用目的の多様化に対応して、それぞれ専用の使用目的に対応した空間を建設することが望ましいことですが、土地の有効利用やコストの見地から、それは難しいといえます。したがって空間をなるべく多目的に使用できるように準備することが望まれます。各地で建設されている多目的ホールなどはこの主旨にかなうものです。スポーツ、ファッションショー、コンサートなどジャンルの異なる各種の催しが同一の場所で開催されます。

(2)使用目的の個性の強調

ホテルの宴会場のようなホールは、上記の多目的ホールほど、行事の内容分野が異なるほどの大きな差はありませんが、宴会といっても結婚披露宴を始め、ファッションショー、ディナーショーなどがあり、各種の会議、講演会、商品発表会、展示会など多種多様に使用されており、しかも、その一つ一つが個性を強調しますので、宴会のスタイルや演出は、同種同形のものであってはなりません。

したがって、多目的に実施される千差万別の宴会に対応するためには、変化のある演出が可能なように、ニュートラルな空間を基準とすべきです。ここでいうニュートラルとは、お客様の要望に合せて、どんな雰囲気にも演出できることです。

(3)空間使用者の時間的変化

喫茶店やパブの兼業店などのように、時刻によって業態が変わり、空間使用者すなわち客層が異なる空間もあります。例えば昼間は主婦や学生が主体、夜間はサラリーマンという場合、客層が異なれば当然、感性の時代にふさわしく、照明演出を変えることが望ましいと言えます。

(4)個人の好みへのフィットネス

多様化の時代において、なるべく個人個人の好みも尊重し、更にその個人においても作業時間の経過に伴って、好ましいと考える状態も変化してきますので、可能な範囲で個々に環境調整ができることが望ましいと言えます。

(5)省エネルギー

上記のように、空間の使用目的と使われ方の微妙な変化に対応して、きめ細かな照明演出を行う必要がありますが、必要な場所に、必要なときに、重点的に目的の照明を用いることは、常時全設備を使用する場合と比較して、省エネルギーとなることは明らかです。

4.演出照明のニーズ増大

変化する照明の典型的なものは、舞台照明を始めとする演出照明です。所得や余暇の増大など社会の豊かな時代を迎えて、人々は現実の場の日常性を離脱し、強い非日常性を求めて、生産の場からリゾートの空間と時間を歴訪しています。舞台やホテルの盛況がこれを示しています。

以上のように、空間の演出制御の必要性は一層強まっていますので、目的に合致した適切な照明制御システムの採用が必要です。

照明制御システムの概要

1.制御方式の種類

照明器具の明るさを変化させるためには、大きく分けて次の3方式があります。また、最近では明るさだけでなく、光色(相関色温度やカラー)を変化させる調色制御も増えてきてます。

(1)点滅方式

(2)段調光方式

段調光方式は、その調光比があらかじめ固定の値に設定されている調光比固定式と、比較的任意にプリセットできる調光比可変式があります。

(3)連続調光方式

連続調光方式には、調光範囲が0~100%と制限を受けないタイプと、器具の特性やその用途によって調光範囲が5~100%25~100%など制限を受けるタイプがあります。

調光器と照明器具間の配線については、主に次の2種があげられます。

①位相制御式について

電源から取り出すことができる電圧は交流となっており、周期的な波形となっています(一定周期で繰り返される波=位相を持つ)。この位相を制御して調光を行うのが位相制御式調光方式です。後で述べる信号線式と違い、電源線のみで調光制御を行うことができます。調光器では半導体(トライアック)を使用し、電源の0V位相(ゼロクロス)に同期して通電する時間を制御(位相を制御)することで調光を行っています。以下に配線図と調光時の電源からの電気量と光波形の関係を示します。

図1:位相制御式の配線図とシステム図

このシステムは、2本の電源線のみで接続されており、別の場所から電源のON/OFFを操作できるように設計されており、3路スイッチや4路スイッチを利用可能。入力電源にはAC100Vが使用され、LED照明器具には調光用の電源回路が内蔵されている。また、調光制御はノイズフィルタ回路やトライアックを含む回路によって行われ、これによりLEDの明るさを細かく調整することができる。

図2:位相制御式による調光時の電気量と光波形の関係

左側は位相制御方式による電気量の変化を表しており、ONとOFFを切り替えるタイミングによって電気の供給時間を調整している。供給時間が長いほど明るさが増し(調光率100%)、短いほど明るさが減少する(調光率30%)。右側はLEDの光波形の変化のイメージを示しており、電気量の変化に応じて光の出力が変化する。調光率100%の場合、光波形は一定で明るい状態を維持する。一方、調光率が低い場合(調光率30%)、光波形の出力は減少し、LEDの明るさが低下する。

②信号線式について

デューティ制御、PWM制御方式と呼ばれます。電源線2本、信号線2本の計4本が照明器具に配線されるので4線式とも呼ばれています。照明器具内部の電源に信号線から情報を送り、調光制御します。位相制御方式に比べ電源変動の影響を受けにくいため、安定した調光が可能です。調光範囲は起動方式により異なります。以下に配線図と電源からの電気量と光波形の関係を示します。

図3:信号線式の配線図とシステム図

このシステムは、調光器はデューティ(PWM)制御方式を採用しており、100Vを一定に保ちながら照明器具の明るさを調整している。別の場所から電源のON/OFFを操作できるように設計されており、3路スイッチや4路スイッチを利用可能。入力電源にはAC100~242Vが使用され、調光器から出力されるデューティ信号(S1)は、制御回路に送られ、照明器具の調光を行う。なお、信号を取り外すと接続された照明器具は100%点灯状態になり、動作に問題が生じないような設計がされている。

図4:信号線式による電気量と光波形の関係

左側では信号線式による電気量の変化を表しており、位相制御方式とは異なり、供給時間によって入力電気量は変わらない。中央では、デューティ制御方式の入力信号が示され、一定周期数の間にONとOFFの割合を変えることで電気の供給量を調整している。右側では、LEDの光波形の変化のイメージが描かれており、供給電気量の変化に応じてLEDの明るさが調整されている。調光率が100%の場合、光波形は安定し明るさが最大となるが、調光率が30%の場合には光波形が弱まり明るさが低下する。

2.制御装置と負荷との接続方式

負荷の点滅(開閉)あるいは調光を行う際に、負荷の接続されている電源線に接続されている制御装置を直接に操作する方式と、信号線あるいはワイヤレスリモコン方式などのように、制御信号を伝送して間接的に制御する方式があります。

間接的に制御する方式のうちには以下のようなものがあります。

(a)多重伝送方式集中制御システム
(b)調光信号方式
(c)光線式ワイヤレスリモコン方式

3.分野別に適合する照明制御システム

制御すべき負荷の規模は、用途や分野により大小がありますので、適切な制御システムを用いる必要があります。

(1)大規模施設

照明制御盤が大型の中央監視盤のサブシステムとして構成される場合が多い。中央監視盤とはBACnetなどの汎用プロトコルで接続を行う。

中央監視盤は、空調サブシステム、動力サブシステム、電力サブシステム、そして照明サブシステムの4つのサブシステムを管理している。照明サブシステムには、照明コントローラ、照明用センター装置、そして複数の端末器(照明)が含まれている。

(2)中規模施設

照明用センター装置を設置し、一元管理をする場合が多い。

照明用センター装置から複数の端末器(照明)が接続されており、それぞれの端末器が個別の照明を制御している。

(3)小規模施設

制御の単位で200回路程度の施設では、照明制御盤(主操作盤)を置き、集中監視と集中制御を行う場合が多い。但し、この場合は主操作盤というより、オフィス内に設置された点滅範囲可変パターンSWの役目を果たします。最近では、無線通信技術を用いて、端末機(照明)、壁スイッチ、操作機器(タブレット)などを制御信号線を使わずに制御するシステムが増えています。

照明制御盤(主操作盤)から、端末器(照明)と壁スイッチが接続されており、これらを通じて照明の操作と制御が行われている。

4.オフィス照明の調光制御システム

オフィスでは用途目的にあわせたレイアウトの変更が必要で、快適な執務空間を演出するためには、照明方法や照度を変える必要があります。また時間帯にあわせた適切な照明の点灯状態に変えていく必要もあります。

例えば省エネのために時間帯に応じてきめ細やかなスケジュール運転を実施する場合があります。また、窓際では昼光の入射量に連動して適切な照度を維持するためには調光制御が必要です。

以上のような点滅及び調光制御を行うためには、下記のような明るさセンサ、熱感センサ等を利用したシステムを活用することが考えられます。

また、直近では照明器具を1台1台制御するという個別照明制御のニーズが高まっています。これは照明器具に通信モジュールを内蔵し、それらの照明器具を通信線で接続することで可能となります。レイアウト変更の際に実配線を変更する必要がなくソフト上で1台1台のグループ、パターンの変更が可能となるので大掛かりな工事が発生しません。

図5:スケジュール調光制御

調光装置(TU)は12:00に調光信号を送信し、12:00から13:00の間、照明が50%の明るさに調光される設定になっている。

図6:昼光利用制御

中央の制御盤からリレー装置(TU)を通じて電源が供給され、調光信号が明るさセンサ付きの調光装置(調光TU)に送られている。この調光TUが接続された照明器具に調光信号を伝え、明るさを調整している。

図7:熱感自動スイッチ連動制御

中央の制御盤からリレー装置(TU)を通じて電源が供給され、調光信号が調光装置(調光TU)を介して照明器具に送られる。熱感自動スイッチにより、必要なときだけ照明が点灯し、無駄な電力消費を抑えることができる。調光TUは、送られた信号に応じて照明の明るさを調整している。

図8:個別照明制御システム

中央の制御ユニットを通じて、明るさセンサや人感センサ、リモコンスイッチ、液晶スイッチが照明器具に接続されている。通信機能を備えた照明器具は、これらのセンサやスイッチからの信号を受け取り、効率的に制御されている。

関連ページ

パナソニックの電気設備のSNSアカウント