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特殊環境用照明設備:クリーンルーム用照明器具

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クリーンルームについて

通常の人間の生活空間である大気中には、表7に示すように種々の塵埃の粒子が数多く浮遊していますが、日常生活では当別な不都合は生じません。

しかしながら、電子機器や精密機械・医療品・医薬品・食品などの分野の作業空間においては、製品の品質確保や安全性の観点から、特別な清浄環境が求められてます。

クリーンルーム専用の空調機器を用いて、室内の空気中の塵埃粒子の数をコントロールした気密性の高い部屋をクリーンルームといいます

表7:大気中の塵埃粒子の寸法

煙霧、塵、永久浮遊大気塵埃、沈降性大気塵埃、重工業塵埃、ビールス、バクテリア、カビ、油煙、煙草の煙、霧、噴霧、雨の粒子直径(μ)を説明した寸法図

クリーンルームの設計と種類

クリーンルームは、室内の”ちり・ほこり・微粒子”の数に加えて、”温度・湿度・気圧・気流の分布・速さ”などを一定の範囲にコントロールする必要があります。

このため、高度な空調設備を導入するとともに、正確な空質管理や長期運用の観点から、

  1. (1)出入口・窓・点検口・部屋全体の気密性
  2. (2)室内に長時間にわたって蓄積した ”ちり・ほこり・微粒子” の清掃性

が重要になります。したがって、天井面から部屋(天井材)を貫通して通線および締結設置する照明器具においても特別な配慮が必要になります。

クリーンルームは、使用用途により

  1. (1)機械・電子工業などに用いられる「インダストリアルクリーンルーム(ICR)」
  2. (2)医療・薬品関連に用いられる「バイオロジカルクリーンルーム(BCR)」

に大別されます(表8)。

ICRは主に室内加圧(陽圧)することで塵埃侵入を防ぎます。BCRは室内加圧(陽圧)して無埃・細菌侵入を防ぐ場合と室内減圧(陰圧)により危険物質・細菌などの室外流出を防ぐ場合があります。さらに、それぞれのクリーンルームには業種や取り扱う対象物により清浄度(クリーン度のクラス)が分けられています。

表8:クリーンルームの種類

種類 主な用途 業種
インダストリアルクリーンルーム 塵埃混入による不良率の低減 半導体、電子部品、精密部品など
バイオロジカルクリーンルーム 塵埃、カビ、細菌による汚染の防止 製薬、食品、手術室など

クリーンルームの清浄度

クリーンルームの清浄度(クラス)は、室内における単位容積(m2)あたりの粒子の大きさ毎の塵埃数によって規定されます。

主流のISO規格と旧米国連邦規格Federal Standard 209D)のクラス分類を併記して紹介します(表9)。

また、クリーンルームの用途と清浄度の目安を表10に示します。

清浄度は、空調能力・時間当たりの換気回数・フィルター性能を中心に照明設備や部屋の構造なども加味して、総合的に設定されるものです。

  • 米国連邦規格は2001年に廃止されていますが、慣習表現として称呼される場合があります。

表9:清浄度の基準

ISO
清浄度
クラス
指定粒径以上の許容粒子濃度(個/ m2 (参考)
Fed Std
209D清浄度
クラス
0.1µm 0.2µm 0.3µm 0.5µm 1µm 5µm
1 10 2 - - - -
2 100 24 10 4 - -
3 1,000 237 102 35 8 - 1
4 10,000 2,370 1,020 352 83 - 10
5 100,000 23,700 10,200 3,520 832 29 100
6 1,000,000 237,000 102,000 35,200 8,320 293 1,000
7 - - - 352,000 83,200 2,930 10,000
8 - - - 3,520,000 832,000 29,300 100,000
9 - - - 35,200,000 8,320,000 293,000 1,000,000

表10:クリーンルームの用途と清浄度の目安

用途 工程 清浄度クラス
100 1,000 10,000 100,000
半導体工業 ●結晶精製 ●フォトレジスト ●拡散
●エッチング工程 ●位置あわせ
●表面処理 ●組立
●金属蒸着 ●検査
●原材料 ●研磨
●梱包 ●半製品ストック
電子機器
電子計測器
●リレー類組立 ●プリント板製版
●コンデンサ ●精密計測器
●一般計測器組立 ●試験
●検査 ●調整
コンピュータ ●周辺機器加工組立 ●部品保管
●総合組立 ●試験
光学機器 ●レンズ研磨 ●目盛彫刻
●医学用カメラ加工・組立
●試験 ●検査 ●大型機器組立
時計、
精密機械
●電子時計、部品組立 ●べアリング
挿入●ミニチュアベアリング
●時計組立 ●精密測定器組立
●普通ボールベアリング
●測定器具の組立
薬品関連 ●注射液 ●アンプル挿入
●製薬工程
医療(病院)
関連
●無菌手術室 ●手術用器具保管
●ICU ●CCU ●術後回復室
●新生児室、未熟児室
●一般手術室 ●分娩室
●無菌病室 ●薬剤室
●一般病室 ●診療所
●血液、血清(血液センター)
食品関連 ●牛乳、酒、乳酸菌飲料
●食肉加工
●加工工程
その他 ●無菌動物室 ●細菌実験室
●放射能研究室、RI関係
●感染動物室
●無塵衣クリーニング

クリーンルームの空調方式

クリーンルームは空調により塵埃粒子を吸い込み、フィルターでろ過した空気を吹出すことにより室内の塵埃数を減少させる制御を行いますが、空調方式により清浄度が異なります。

クリーンルームでは、気流の分布や速さに乱れがないことが重要で、清浄度クラスの実現に応じて垂直層流方式と非層流方式の2つに大別されます。

(1)垂直層流方式

空気の流れに渦を作ることなく吹出口から吸込口へ流し出す方式で、塵埃は滞留することなく吸込まれるため、清浄度の高いクリーンルームに向いています。しかしながら、吹出口と吸込口を天井面と床面に均一に配置する必要があるため高コストとなります(図1)。

(2)非層流方式

一般の空調と同じような方式で行うもので、清浄度の比較的低いクリーンルームに適し、低コストで導入できます(図1)。

また、上述の2つの方式を組み合せ、作業部だけを効率よく高い清浄度にする「クリーントンネル方式」や「クリーンベンチ方式」があります。

図1:クリーンルームの空調方式

垂直層流クリーンルームと非層流クリーンルームの絵。照明、吹出口、吸込口、ダクトがある。

クリーンルーム向け照明器具

クリーンルームに使用される照明設備は、必要な視環境(作業照度)を経済的に確保しつつ、クリーンルームの清浄度クラスに応じて、空調設備や建屋(内装)施工と一体となった全体システムとして機能する必要があります。照明設備の主な条件は以下の項目になります。

  • 所定の作業に対し十分な明るさを確保する(一般的なクリーンルームでは、作業面で約1,0002,000 lx
  • 安全面に配慮され、無影で均一な明るさの分布とする
  • 室内の空気モレがないよう、照明設備のために設けられた天井面の開口部や貫通穴は再密閉する
  • 照明器具は天井面と同一平面状(気流分布を乱さない)の装置とする
  • 保守メンテナンス時に、クリーンルームの性能(清浄度)に影響を与えないこと

(1)クリーンルーム用照明器具の必要機能

上記に照らし、クリーンルーム における照明器具の主な要件は以下の6項目になります。

  1. 1:高光束でエネルギー能率の高い器具であること
  2. 2:室内の気密性(密閉性)を損なわず施工できること
  3. 3:器具内や器具外殻に塵埃の付着や堆積がない構造であること
  4. 4:気流を乱さない形状であること(外殻に突出物や凹凸が少ない流線型の形状であること)
  5. 5:部品交換や清掃の保守管理が容易であること
  6. 6:(紫外線カットなど)クリーンルーム の用途に応じた機能を持つこと

これらを踏まえたクリーンルーム 向け専用照明器具の特長を解説します。

1:高光束でエネルギー能率の高い器具

高光束・高効率で演色性(対象物の色見え)にも優れたLED光源を採用したクリーンルーム向けLED照明器具があります。代表的な器具を図2に示します。

図2:クリーンルーム用LED照明器具の例

NNLK42850の画像

NNLK42850

NNLK41530Jの画像

NNLK41530J

2:室内の気密性を損なわない

クリーンルームは室内と室外を隔離し、汚れた空気が室内に入り込むのを防がなければなりません。

一般的なクリーンルームは大気圧に対して1.5~3㎜Aq程度を加圧し、外気が浸入しにくい仕様としていますが、天井面での空気の漏れが大きいと圧力維持が困難になり清浄度が保たれにくくなります。

LEDクリーンルーム向け照明器具では、直付型器具において電源挿入部とボルト施工部に対しブッシングやパッキンを採用することによって、埋込型器具においてはパネル枠部にパッキンを施すことによって、気密性の維持に配慮した構造を有しています(図3)。

図3:気密性の確保に配慮したクリーンルーム向け照明器具の構造

<直付型>

ボルト施工部、電源穴施工部のイメージ図

<埋込型>

室内(クリーンルーム)、照明器具、天井内の絵

3:塵埃の付着や堆積がない構造

クリーンルームは空気をろ過して一定以上の塵埃が空気中に存在しないようになっていますが、照明器具の内部や外殻部のくぼみに堆積した塵埃が、器具メンテナンス時に放出され、一時的に清浄度を損なう場合があります。

このため、器具は室内に露出した部分に塵埃が堆積しないよう不要な突起部分や凹み部分をなくす形状工夫が施されています。

また、静気による器具表面上の塵埃の付着を防止するため、強化ガラス又は帯電防止アクリルパネルを使用した器具があります。

加えて、天井裏からの保守メンテナンス作業を前提とし、補修品に付着したチリやホコリと人の出入りによる雑菌などが室内に侵入することを減らす構造的工夫を行った器具もあります(図4)。

図4:天井裏でのメンテ作業に配慮したクリーンルーム向け照明器具

4:気流を乱さない形状

クリーンルームではフィルターで濾過された清浄な空気が一定方向に流れています。照明器具でこの気流の流れを乱さないよう、直付型クリーンルーム向け照明器具においては流線形のデザインを採用しています。

特に「垂直層流方式」の場合は、流れに渦が生じないことが重要な条件となっています。

図5:器具形状の違いによる層流の乱れの違い

①クリーンルーム用照明器具:スムーズな気流。②・③一般的な照明器具:乱れた気流。

5:部品交換や清掃の保守管理が容易

清浄度維持のため、照明器具の保守メンテナンス作業は、その回数や人手を介した直接的な清掃作業が少ないことが望まれます。

クリーンルーム向け照明器具では光束維持時間の長いLED光源を採用した器具であることに加え、器具下面からの水の直接噴射による洗浄に対応した防噴流型器具も存在します(図6)。

器具部材には、錆びにくいステンレス材や劣化しにくいガラスパネル材を採用した器具を採用することも有効です。

図6:防噴流性能を有した器具と直接洗浄のイメージ

埋込型ステンレス W220

防噴流タイプ

直接噴射で洗浄しているイメージ図

6:用途に応じた機能を持つこと

半導体工場などで清浄度の高い垂直層流方式が用いられる場合、器具幅は最小の流線形とし層流を乱さない形状工夫の器具が必要です。また、感光材料を使用するフォトレジスト工程では紫外線(短波⻑)による影響が懸念されるため、500nm以下の波⻑を遮断した専用光源と組み合わせます(図7)。

図7:紫外線を遮断する光源を搭載した半導体工場向け器具

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