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空港照明

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⾶⾏場灯⽕の種類

空港照明には、次のようなものがあります。

  1. (a)空港内に設置される進⼊灯・滑⾛路灯・誘導路灯・エプロン照明灯等(灯器は全て国土交通省の認定が必要)
  2. (b)空港周辺に設置される駐⾞場照明灯・道路灯等(灯器は国土交通省の認定を必要としない)
  3. (c)障害物の存在、位置ならびにその輪郭等を⽰すために設置される障害灯(灯器は国土交通省の認定が必要)
  4. (d)格納庫内に設置される灯器(灯器は国土交通省の認定を必要としない)

図1に⾶⾏場灯⽕の配置図を⽰します。

図1:⾶⾏場灯⽕の配置図

以上の灯器のうち、駐⾞場灯器(⼀括昇降式ハイポール)・格納庫照明⽤灯器・当社が国土交通省から認定されているエプロン灯器の設置⽅法についてご説明します。

エプロン照明

1.エプロン照明とは

エプロンとは、航空機に対する旅客の乗降、⼿荷物の積み降ろし、給油等を⾏う地域をいいます。
この地域に対する照明をエプロン照明といい、作業(上記作業およびパイロットが航空機を誘導する作業)に必要な照度を確保するとともに、パイロットにグレアを与えないようにする必要があります。

2.適⽤基準

空港照明の設置⽅法を定めた「空港照明施設整備計画要領」(空照第205号昭和57年12月 運輸省航空局)および「飛行場灯火設置要領」(国土交通省航空局)に基づき、エプロン照明の設計⽅法を⽰します。

3.設計条件

エプロン照明を設計するに際しては、次の点を考慮してください。(上記、適⽤基準の抜粋)

  1. (a)灯柱の⾼さは、原則として航空機上のパイロットの眼の⾼さの2倍以上とします。ただし、航空法第49条(物件の制限)に従う必要があります。
  2. (b) 灯柱の⾼さ及び位置の決定に当たっては、航空管制官と充分協議する必要があります。
    (※なお、⼀般的に灯柱⾼さ・位置は、航空局⼜は設計事務所より指定されます。)
  3. (c)1つのスポットは、原則として2以上の⽅向から照明します。
  4. (d)回路は、商⽤電源の停電⼜は夜間駐機のとき減光できることが必要です。
  5. (e)灯器は、市販のエプロン照明⽤⾼効率投光器とします(但し上記、適⽤基準の光学性能を満⾜すること)。

4.設計基準

図2に⽰す範囲を次の基準で照明します。エプロン区分ごとの標準⼨法を表1に⽰します。

  1. (a)スポット内は平均⽔平⾯照度20 lx以上、均⻫度4以下(平均/最⼩)とします。ただし、平均⽔平⾯照度は、別途指定されることがあります。
  2. (b)スポット外及びスポット間は、スポット内平均⽔平⾯照度の50%以上、均⻫度4以下(平均/最⼩)とします。
  3. (c)GSE⾞両通⾏帯等(サービス機材のパークエリア及び旅客通路も含む)は平均⽔平⾯照度10 lx以上とします。(均⻫度の規制はありません。)
  4. (d)夜間駐機の、スポット内の平均⽔平⾯照度は、保安上必要な照度(5 lx以上)を確保するものとします。
  5. (e)照明範囲全域を照射する全般照明とスポット内を照射するスポット照明を組合わせて各規定照度を確保します。
  6. (f)夜間駐機照明は、全般照明の⼀部を使⽤して必要な照度を確保します。

表1:エプロンの標準⼨法(⾶⾏場灯⽕設置要領による)

エプロン区分
(航空機コード)
機種 ノーズイン⽅式 ⾃⾛式(45°駐機)
Am Dm Bm Am Dm Bm Cm
コードA DHC-6/BN2A / / / 25(30) 20 ※1 4.5
ドルニエ228/N24A / / / 35 20
コードB SAAB340 / / / 55 40 20以上 7.5
コードC MD90 40.5 47.0 25以上 60 50 25以上 7.5
コードD B767-300 59.5 59.5 25以上 95 60 25以上 10
コードE B777-300 72.5 74.0 25以上 / / / /
コードF A380-900 87.5 87.5 25以上 / / / /

図2:エプロンの標準⼨法及び照度基準(⾶⾏場灯⽕設置要領による)

5.エプロン照明投光器

「エプロン投光器仕様書(LED型)仕様書」(国土交通省航空局保安部航空灯火・電気技術課)

(a)要求性能

(a-1)光学性能

投光器は表2に示す光学特性を有すること。

(a-2)電気的特性

(1)定格入力 単相 AC200V

(2)定格周波数 50Hz/60Hz

表2:光学性能

配光形式 広角形
光軸光度 1,200cd/1,000 lm以上
光軸から左右40° 120cd/1,000 lm以上
光軸から上方10° 200cd/1,000 lm以上
光軸から下方35° 120cd/1,000 lm以上

(3)絶縁耐力・電流容量

入力回路は、600V以上の絶縁耐力を有し、定格電流の1.5倍の電流容量を持つこと。
高圧発生回路を有する場合にあたっては、通常使用される電圧の1.5倍の絶縁耐力を有する回路構成とするとともに、1.5倍の電流容量を持つこと。

(a-3)環境条件

(1)防水・防塵

内部に正常な性能を阻害する雨水、塵埃等が入らない構造であること。

(2)周囲温度

-20℃〜+35℃の環境下において連続使用できること。

(3)熱衝撃

使用中の降雪等による熱衝撃に耐えること。

(4)高温・高湿

気温45℃、湿度90%の環境条件で長期保存して異常のないこと。

(5)腐食

JIS C 60068-2-52「環境試験方法-電気・電子-第2-52部:塩水噴霧サイクル試験方法(塩化ナトリウム水溶液)」の試験を96時間実施し、錆の発生がないこと。

(6)風圧

60m/秒の風速に耐えること。

6.⼀括昇降式ハイポールによる照明

⼀括昇降式ハイポールは、ポールの最上部に取り付けられている灯具を地上からの操作で簡単に、しかも安全かつスピーディに昇降することができ、灯具の清掃などの保守点検を容易に⾏うことができます。

(1)ハイポール照明⽅式の利点

  1. (a)⼀基あたりの照明範囲が広く、光束利⽤率が⾼い。
  2. (b)効率の⾼い⼤きなWの光源が使⽤でき、経済的。
  3. (c)ポール間隔が広く、均⻫度のよい照明ができる。
  4. (d)⼀基あたりの灯具数が多いので、均⻫度を害することなく深夜減灯ができる。
  5. (e)異種のランプを同じポールに取り付けても、照射⾯上の⾊の不調和がない。
  6. (f)ポールの数が少なくてすみ、交通の障害にならず、また美観上からも煩雑な照明とならない。
  7. (g)⾼い位置から照明されているので、陰影が⾃然の状態に近く、まぶしさが少ないあかりとなる。

図4:空港のエプロン照明施設例

図3:ハイポール全体参考図

(2) 機構の概要(バランスウェイト式)

(2)- 1 構造

ポール頭部に取り付けられた全体の灯体を、電動モーターにより、⼀括して昇降させるものです。ポール内部のバランスウェイトと昇降部とのバランスをとり、少しの⼒でバランスウェイトを上下させることにより昇降部が上下するようにしたものです(図6)。

(a)昇降部
昇降部は、アーム・昇降架台・位置決めスペーサーなどにより構成され、昇降はステンレスローラーチェーンなどにより⾏うもので、昇降に⽀障のある回転または旋回振れなどを防ぎ、安全かつ容易に昇降できる機構となっています。また、昇降中のポール損傷を防ぐためガイドローラーを設けています。

(b)上部(基台)機構
ポールヘッド基台・滑⾞・ヘッドカバー・避雷針などより構成されています。上部には原則として接点・ロック装置などの摺動機構・端⼦台を設けず、点検・保守不要の機構となっています。

(c)バランスウェイト部機構
バランスウェイト・動滑⾞により構成されます。なお、動滑⾞の使⽤により、バランスウェイトのストロークの2倍のストロークが昇降部に与えられる機構となっています。

(d)下部(開⼝部)機構
モーター減速機・スプロケット・リミットスイッチ・モーター台・地震対策⽤ターンバックルなどから構成され、昇降中の照明器具が急降下および平常状態で不⽤意に落下しない安全構造となっており、昇降はポール内蔵のモーターで電動昇降する機構となっています。

(2)- 2 主な特徴

  1. (a)灯具下限高さの制限がありません。動滑車を使用することにより、バランスウェイトのストロークが昇降部のストロークの半分ですむため、灯具下限高さを任意に設定することができます。また、バランスウェイトの径も細くなり、ポールも細くできます。
  2. (b)灯具の保守が容易です。メタルコンセントの切り離しが不要になり、保守が容易です。また、メタルコンセントの切り離しが不要になったため、遠隔操作も容易になります。
  3. (c)昇降スピードを約3〜7m/分までに設定できます。インバータ(三相電源使⽤)により⾃動的に上部および下部では昇降スピードを遅くし、中央部分では早くすることができるため、架台の昇降が安全かつ早く⾏えます。
  4. (d)電気部品(接点など)・摺動機構が上部になく保守が容易です。
  5. (e)昇降ワイヤーは2本または3本使⽤しており、1本でも⼗分な強度を有しているので安全です。また、ステンレスチェーンなどが万⼀滑⾞からはずれても、バランスウェイトの⽅が重く昇降部がゆるやかに昇降しますので安全です。

図5:⼀括昇降様式ハイポール(バランスウェイト式)昇降機構戦略図

図6:昇降部詳細図

空港内道路・駐⾞場照明

空港内は⼀般的に図7のように区分されています。
また、道路・駐⾞場照明施設は、空港としての特殊性を考慮して次の点に注意を払うことが必要です。

  1. (a)照明器具から上⽅向(天空⽅向)に向かう光が、パイロットに対して視覚障害あるいは誤誘導の原因にならないようにします。
  2. (b)空港道路は、道路線形が⼀様でなく、かつ駐⾞場、横断歩道、バスターミナル等の諸施設が混在するため、照明施設はドライバーに対してこれらの施設の存在を明確に⽰し、また道路線形の誘導効果も⼗分に与えられるようにします。

図7:空港内道路・駐⾞場平⾯図

1.道路照明

(1)適合基準

「空港内道路・駐⾞場照明施設設置基準」
(運輸省航空局管制保安部照明課、昭和53年3⽉)に準じます。

表3-1:空港の等級と基準平均輝度

空港の等級 基準平均輝度(cd/m2)
幹線道路 ⼀般道路 構内道路
2.0 1.5 0.7
1.5 1.0 0.5
1.0 0.7 0.5
1.0 0.7 0.5

(2)照明基準

照明設備が維持すべき基準平均輝度および総合均斉度(最⼩輝度/平均輝度)を⽰します。

総合均斉度(最⼩輝度/平均輝度)0.4以上

  • 平均照度
    • 輝度換算係数
    • アスファルト15 lx/cd/m2
    • コンクリート10 lx/cd/m2

3-2:空港の等級

空港の等級 該当空港
東京、⼤阪
那覇、福岡、⿅児島、熊本、⻑崎、名古屋、新千歳
釧路、函館、仙台、新潟、⼩松、松⼭、広島、⼤分、宮崎
その他の空港

(3)照明器材の選定

(a)照明器具
照明器具は、セミカットオフ形およびカットオフ形を原則とします。
なお、照明器具の配光規制の⽅法および数値については、JIS C 8131(道路照明器具)によるものとし、光源光束1,000 lmあたりの光度が⽔平⾓90°において表4-1に適合し、しかも表4-2⽔平⾓65°95°の範囲のいずれかに存在するものとします。

表4-1:照明器具の形式と配光規制(⽔平⾓90°)

器具の形式 光度(cd/1,000 lm)
鉛直⾓90° 鉛直⾓80°
カットオフ形 10以下 30以下
セミカットオフ形 30以下 120以下

表4-2:照明器具の形式と配光規制(⽔平⾓65°〜95°の範囲)

器具の形式 光度(cd/1,000 lm)
鉛直⾓65° 鉛直⾓60°
カットオフ形 200以上
セミカットオフ形 190以上

(b)ポール

ポールは、照明器具を所定の位置に保持し、その性能を⼗分発揮させ、道路の種類に応じて経済的かつ美観を損なわない構造とし、鋼製テーパポール(テーパ率1/100)が標準とされています。
また、本体およびアームとその先端に照明器具を取り付けるアダプタからできており、ポール本体には安定器取り付け⼝、電源引込孔、安定器取り付けフック、端⼦盤取り付け台および接地端⼦が設けられています。
強度は、最⼤瞬間⾵速60m/secに耐えられるようにします。

表5:照明器具の取り付け⾼さ、オーバーハングおよび傾斜⾓度

器具1灯当りの光源光束F(lm) 器具の取り付け
⾼さH(m)
オーバーハング
oh(m)
器具の傾斜⾓
(度)
12,500未満 8以上 ー1台≦oh≦1 5
12,500以上 10以上
25,000未満 12以上

(4)照明⽅式

道路照明は原則として、ポール照明⽅式で⾏われます。
ただし、施設の性格、構造、その他の諸条件によっては他の⽅式(⾼欄照明⽅式、ハイマスト⽅式等)を採⽤することができます。
ポール照明⽅式の照明器具取り付け⾼さは、8m10m12mが標準的なものとされています。

(a)照明器具の⾼さ、オーバーハングおよび傾斜⾓度
道路照明の器具は建築限界外に設置するものとし、照明器具の取り付け⾼さ、オーバーハングおよび傾斜⾓度は原則として表5によるものとします。

(b)照明器具の配列
照明器具の配列は、⽚側配列、千⿃配列および向き合せ配列の3種類とし、⾞道幅員(W)に対する器具の取り付け⾼さ(H)の⽐、〔H/W〕に応じて表6によるものとします。

表6:照明器具の配列

器具の形式 取り付け⾼さH/幅員W 器具配列
カットオフ形 1.0以上 ⽚側 千⿃
0.7以上 千⿃ 向き合わせ
0.5以上 向き合わせ
セミカットオフ形 1.2以上 ⽚側 千⿃
0.8以上 千⿃ 向き合わせ
0.6以上 向き合わせ

(c)照明器具取り付け間隔
照明器具取り付け間隔は、形式に応じて表7によることを原則とします。地形その他の状況により局部的に表7を満⾜しない場合は、取り付け間隔を縮⼩させます。ポール照明⽅式の基本的な配列を図8に⽰します。

表7:照明器具の取り付け間隔

器具の形式 器具の取り付け間隔
カットオフ形 3H以下
セミカットオフ形 3.5H以下

図8:照明器具の配列例

片側配列の図、向き合せ配列の図、千鳥配列の図、中央配列の図。(注)中央配列は片側配列として考えます。

(d)⽴体交差部
⽴体交差部の照明は、交差する道路相互の間に悪い影響がないように、よく考慮しなければなりません。
図9に配置の⽅法を⽰します。
なお、照明器具A、Bと構造物との間の距離がLを守れない場合は、Lを10m程度まで縮⼩することができます。また、これらの条件が満⾜できない場合は、構造物の下⾯に照明器具を取り付けます。

(e)横断歩道
横断歩道は、横断中および横断しようとする歩⾏者をよく視認できるようにすることが必要です。
所要照度としては、30 lx以上とすることが望ましい値です

図9:⽴体交差部の照明器具の配置

2.駐⾞場照明

(1)適合基準

「空港内道路・駐⾞場照明設置基準」(運輸省航空局管制保安部照明課、昭和53年3⽉)に準じます。

(2)照明基準

照明設備が維持すべき平均⽔平⾯照度は、20 lx以上とします。

表8:照明器具の取り付け⾼さと照明範囲

器具取り付け⾼さH(m) 照明範囲:半径R(m)
20 40以下
25 50以下
30 60以下

(3)照明⽅式

駐⾞場照明はポール照明⽅式またはハイポール照明⽅式で⾏われますが、保守性・経済性を考慮し、⼀括昇降式ハイポールを⽤いた⽅式が多く採⽤されています。

なお、⼀括昇降式ハイポールの機能・特徴は、「6 ⼀括昇降式ハイポールによる照明」を参照願います。

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