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道路の照明

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道路照明の考え方

夜間における交通の安全性を確保し、道路の利用率を高めると共に、都市街路の美観を高める道路照明は、道路施設にとって必要不可欠なものといえます。優れた道路照明施設とは、交通安全に貢献するに十分な照明状態をより少ない電力と費用で実現し、しかも美しい施設であることといえます。
道路照明は夜間に自動車の運転者が、十分な時間的余裕をもって道路上の諸状況を視認できるものであることと、疲労も少なく、快適運転のできるようなものであることが必要で、基本的な要件としては次の諸点があげられます。

  1. (a)道路面の輝度が十分高く、その分布ができるだけ均一なこと
  2. (b)優れた誘導性をもっていること
  3. (c)不快なまぶしさが少ないこと

これらの照明要件は、使用器具が優れた性能をもち、ポールの高さ、配列、光源、照明レベルの決定など、適切な照明設計を行なってはじめて実現されます。

道路照明の必要性

自動車の運転者が道路を安全かつ快適に走行するためには、前方視野内の全体が、昼夜を問わず良く見えるとともに、次に示すような視覚情報が、安全走行上十分な距離から得られることが必要です。1)

  1. (a)道路上の障害物または歩行者の、存否およびその位置
  2. (b)道路幅員、道路線形など道路の構造
  3. (c)道路上の特殊箇所(交差点・分合流部など)の存否およびその位置
  4. (d)走行車線の路面状態、欠陥場所の存否およびその位置
  5. (e)他の道路利用者の存否およびその位置と動き
  6. (f)道路周辺の状況

これらの視覚情報は、昼間時には自然光により十分得られますが、夜間時には適切な人工照明がないとこれらの情報は全く得られなくなります。このため人工照明として、自動車前照灯や道路照明が使用されます。
また、良い道路照明は交通運輸機能を一層高め、夜間の交通事故を防止し、安全・快適な走行に大きな役割を果します。
道路照明の有無と夜間事故の発生とは密接な関係がありますが、道路照明を設置することによって夜間の交通事故がどのくらい減少するか、設置効果に関する国内外の報告を表12)3)に示します。

  • 表1:道路照明の設置または改善による夜間交通事故の減少率(例)

(有意水準95%)

道路の種類 国名 夜間交通事故減少率(%) 交通事故の種類
高速道路 日本(名神、豊中〜茨木) 62
46
56
全事故件数(乾燥路面)
全事故件数(湿潤路面)
全事故件数(全体)
アメリカ 40
52
全事故件数
死亡及び重症事故
アメリカ 62 全事故(人身事故を含む)
地方部
幹線道路
イギリス 76 全事故(人身事故を含む)
イギリス 38 全事故(人身事故を含む)
イギリス 53
61
全事故(人身事故を含む)
死亡及び重症事故
イギリス 44
30
38
全事故(人身事故を含む)
全事故(人身事故を含む)
全事故(人身事故を含む)
市街道路 イギリス 45
23
30
歩行者事故
人身事故以外の事故
全事故(人身事故を含む)
スイス 36 全交通事故
オーストラリア 57
21
29
歩行者事故
非歩行者事故
全交通事故
イギリス 30
33
全事故(人身事故を含む)
全事故(人身事故を含む)

道路照明の質

道路照明は、夜間時の安全運転に必要な視覚情報を安全停止距離以遠から運転者に与え、視覚情報の不足による夜間の交通事故を減少させることを主目的とするものです。したがって、道路照明の質は“それによって如何に多くの視覚情報が得られるか”によって評価すべきものであり、これは主として次の4つの要素によって決定することができます。

  1. (a)路面の平均輝度が適切であること
  2. (b)路面の輝度分布(均斉度)が適切であること
  3. (c)グレアが十分制限されていること
  4. (d)適切な誘導性を有すること

1.路面輝度

自動車の運転者から見た路面の平均輝度が最も重要で、路面輝度が十分でなければ、障害物の存在・形状・存在位置が識別できないだけでなく、障害物が存在しない場合にも確信ができず、安心して走行することができません。

(1)障害物の存在を知覚するために必要な路面輝度

路上障害物を知覚するために必要な平均路面輝度は、輝度分布の均一性と密接な関係があります。図1は輝度分布が全く均一で、視野内にグレアがない道路照明条件下における障害物の見え方実験の結果を示します。4)

通常、障害物と背景(路面)との輝度対比は、多くの場合45~50%になることが知られています。

輝度対比の数式:C=Lr-Lo/Lr×100

Lr:平均路面輝度(cd/m2) Lo:障害物輝度(cd/m2
したがって、上式にC=45% およびC=50%を代入しますと、路面と障害物の輝度比Lr/Loは1.8~2.0になりますので1.9としますと、図1から“輝度分布が均一な条件下”にある路上の障害物を知覚するためには、路面輝度Lrは0.2cd/m2以上でなければならないことになります。
自動車の前面ガラスの透過率を65%としますと、実際の照明施設で路面上の障害物を知覚するのに必要な路面輝度は、路面の輝度分布が全く均一である場合、

数式:Lr=0.2/0.65≒0.3cd/㎡

となります。実際の道路照明施設では、後述する総合均斉度Uoは0.3~0.5の範囲となり、仮にこれを0.4、0.5とすると、後述の2(2)のLrの式を用いて、

数式:Uo=0.4のときLr=0.2/0.65×1/0.4の2乗≒1.9cd/㎡、Uo=0.5のときLr=0.2/0.65×1/0.5の2乗≒1.2cd/㎡

したがって実際の照明施設では、平均路面輝度は1.2~2.0cd/m2が必要となります。

図1:障害物を視認するための平均路面輝度と輝度比との関係

グラフ:障害物を視認するための平均路面輝度と輝度比との関係

(2)交通過密な道路に必要な路面輝度

交通量が極めて多い都市内の道路においては、車頭間隔が著しく小さくなりますので、通常、路面は極めて限られた範囲が見えるにすぎません。このような道路においては、実質的に路面輝度はその価値を失うわけで、この場合の視覚情報は主として自動車または歩行者自体が十分明るく照明されることによって得られます。したがって、このような道路では、路面輝度よりも障害物そのものを明るくする“鉛直面照度”が重要となります。
鉛直面照度は今までの実験結果では、25~30 lx以上必要とされていますが、現在の一般的な照明施設においては、鉛直面照度と路面輝度の比Ev/Lrの値が大体10~20でありますので、平均路面輝度が1~2cd/m2であるような道路照明では、自動的に必要な鉛直面照度の条件も満足し得ます。

(3)運転手が主観的に必要とする路面輝度

運転者が、障害物が“存在しない”ことと“見えない”こととを自信を持って区別できるためには、運転者が主観的にこれだけの明るさがあれば十分であると考えられるだけのレベルで路面が照明される必要があります。
図2は、これを明らかにする1つの方法として、夕刻時路面が暗くなるにしたがって、運転者がどのように前照灯などを使用するかを調査したものです。
図2から車幅灯だけで走行する場合に、自動車の運転者の70~80%が主観的に必要とする路面輝度は0.7~1.2cd/m2であることがわかり(1)で得られた値にかなり近い値です。

図2:夕刻時における前照灯の使用状況

グラフ:夕刻時における前照灯の使用状況

(4)路面輝度と夜間交通事故

路面輝度が高いほど運転者は路面上に存在する障害物を識別できることは勿論、障害物が“存在しない”ことと“見えない”こととを確実に区別できるようになりますので、結果として夜間の交通事故件数も減少します。
図3は、これを明らかにするために、平均路面輝度が異なる道路照明施設において、夜間の交通事故件数を調査した例です。これによりますと、平均路面輝度が2cd/m2より低くなるにしたがい夜間の交通事故件数は増加し、逆に2cd/m2を超えた場合はそれほど減少しないといえます。すなわち、夜間の交通事故件数の関係からも、必要な路面輝度は1.5~2cd/m2であるといえます。

図3:路面輝度と夜間交通事故件数との関係(イギリス運輸省道路研究所)

グラフ:路面輝度と夜間交通事故件数との関係(イギリス運輸省道路研究所)

2.路面輝度の均斉度

(1)路面輝度の均斉度と障害物の見え方

輝度均斉度が悪い場合は、障害物の存在位置や形などの詳細および存在そのものがわからなくなることがあります。輝度均斉度の悪い道路照明における障害物の見え方は、特に輝度の低い部分で著しく低下します。背景の明るい部分にある障害物は容易に識別できますが、背景の暗い部分にある障害物は極めて識別しにくくなります。
これに対して“路面輝度の最も低い部分の輝度”が、なお障害物の存在を識別しうるだけの値をもつような道路照明では、障害物の存在と同時にその大きさ、存在場所、形などの詳細を明瞭に識別することができます。

(2)障害物の見え方に対する輝度均斉度の影響

一般に輝度分布が不均一になるほど、路面輝度を高くしないと障害物を識別することができません。道路照明の障害物の見え方は、平均路面輝度Lrと総合均斉度Uoとの関係で決まります。
図4は、同じ見え方を維持するために必要な平均路面輝度Lrと総合均斉度Uoとの関係を示す実験結果5)です。総合均斉度Uoが1.0、すなわち輝度分布が均一な場合に必要な平均路面輝度をLuとしますと、総合均斉度が低下してUoになった場合に必要な平均路面輝度Lrは、

数式:Lr=Lu/Uoの2乗[cd/㎡]但し、Uo=Lmin/Lr

で表されます。

図4:障害物を知覚するために必要な平均路面輝度と総合均斉度との関係

グラフ:障害物を知覚するために必要な平均路面輝度と総合均斉度との関係

前述のように、総合均斉度Uoが1.0のとき、平均路面輝度は自動車の前面ガラスの透過率を考慮に入れると0.3cd/m2以上とする必要があるので、総合均斉度Uoが低下するにしたがって所要平均路面輝度Lrは以下のようになります。

数式:Uo=1.0のときLr(=Lu)=0.3cd/㎡、Uo=0.7のときLr>0.6cd/㎡、Uo=0.5のときLr>1.2cd/㎡

3.グレア(まぶしさ)

グレアには、不快グレアと視機能低下グレアがあり、前者は観測者に心理的な不快感を与え、後者は観測者の生理的な視機能を低下させます。不快グレアと視機能低下グレアとの間に直接的な関係はありませんが、視機能低下グレアが適切に抑制されていれば、不快感は生じないと考えられています。そのため、道路照明施設設置基準などでは視機能低下グレアが規定されています。以下に視機能低下グレアの程度を示す相対閾値増加TIと不快感の程度を示すグレアコントロールマークGについて示します。

(1)視機能低下グレア

視機能低下グレアは、それに相関のある相対閾値増加によって数値化され、次式から計算できます。

数式:TI=ΔLmin’-ΔLmin/ΔLmin×100(%)

ここで、TI:相対閾値増加(%)

ΔLmin’: グレア源が存在する場合に障害物を視認するために必要とされる障害物と背景(路面)との最小輝度差(cd/m2
ΔLmin : グレア源が存在しない場合に障害物を視認するために必要とされる障害物と背景(路面)との最小輝度差(cd/m2

ただし、照明設計では計算の簡便化のために以下の実験式から相対閾値増加を求めます。

数式:Lr≦5cd/㎡の場合:TI=65・Lv/Lrの0.8乗(%)、Lr>5cd/㎡の場合:TI=95・Lv/Lrの1.05乗(%)

ここで、Lr:平均路面輝度(cd/m2)、
Lv:照明器具による等価光幕輝度(cd/m2

(2)グレアコントロールマークG

道路照明施設のグレアコントロールマークGは、照明器具の配光のほか、照明器具の発光面積F(m2)、観測者の眼の高さ1.5mから測った照明器具の取り付け高さh′(m)、平均路面輝度Lr(cd/m2)等によって決まり、次に示す実験式によって計算できます。

数式:G=13.84-3.31 logI80+0.97log Lr -0.08 log I80/I80+1.3[log×I80/I80]1/2乗+1.29logF+4.41logh'-1.46Iogn+△C

  • 但し、
    • I80:照明器具の鉛直角80°方向の光度(cd)
    • Lr:平均路面輝度(cd/m2
    • h’:(照明器具の高さ)-(眼の高さ)(m)
    • I88:照明器具の鉛直角88°方向の光度(cd)
    • F:鉛直角76°方向からの照明器具の見掛上の発光面積(m2
    • n:道路長1km当たりの照明器具数
    • △C:光源光色によるGの補正値
    • (a)低圧ナトリウム灯 +0.4
    • (b)高圧ナトリウム灯  0
    • (C)水銀灯・マルチハロゲン灯・蛍光灯 -0.1

グレアコントロールマークGの計算式は、延長300m以上の直線道路で、等間隔に照明器具が配置されている区間に対して、式中の変数が次の範囲にある場合に適用できます。

50≦I80 ≦7,000(cd)
1≦I80 /I88 ≦50
7×10-3≦F≦4×10-1(m2
0.3≦Lr ≦7(cd/m2
5≦h′≦20(m)
20≦n≦100

また、この計算式は片側配列の場合のものであり、その他の配列には適用できませんので、注意が必要です。

表2:グレアコントロールマークGと主観的な評価値との関係

G 主観的な評価値
1 Unbearable 耐えられないグレア
3 Disturbing 邪魔になるグレア
5 Just admissible 許容できる限界のグレア
7 Satisfactory 十分制限されているグレア
9 Unnoticeable 気にならないグレア

グレアコントロールマークGの計算例を以下に示します。

数式: I80 =433 → - 8.727 …-3.31 logI80 Lr =1.5 → 0.171 … 0.97 logLr I80 /I88 =1.63 → - 0.017 …-0.08 logI80 /I88  I80 /I88 =1.63  → 0.6 … 1.3(logI80 /I88)1/2乗   F  =0.77 → - 1.49 … 1.29 logF h′=8.5 → 4.099 … 4.41 logh′ n =29 → - 2.135 …-1.46 logn高圧ナトリウム灯使用 → 0 …△C 合計- 7.499+ 13.840=6.341

4.誘導性

道路の線形が変化するような場所や他の道路と交差しているような場所においては、それらを予知する必要があるため照明設備によって誘導性を確保します。誘導性には、視覚的誘導効果と光学的誘導効果の2種類があります。視覚的誘導効果は、適切な路面輝度と総合均斉度が得られていれば確保されます。一方、光学的誘導効果は、照明器具の高さ、間隔、配列によって影響されます。照明器具が高く設置されるほど遠方の道路線形の予知に効果があります。灯具配列は道路幅員や線形を考慮して選択され、曲線部では千鳥配列よりも片側配列の方が高い誘導効果が得られます。照明器具の間隔は、設置高さや道路幅員を考慮して設定され、曲線半径の小さな曲線部では、照明器具の間隔を短くすることで誘導効果を高めることができます。

図5:道路の曲線部における誘導性(千鳥配列)

イメージ画像:道路の曲線部における誘導性(千鳥配列)

道路の曲率に対して照明器具の取り付け間隔が広すぎ配列が不適当であると、路面上の輝度分布が不均一となると同時に、道路の線形を予知できなくなり、時には誤誘導を生じて重大な結果を招きます。

図6:道路の曲線部における誘導性(片側配列)

イメージ画像:道路の曲線部における誘導性(片側配列)

道路の曲率に対して照明器具の取り付け間隔が妥当であり配列が適当であると、路面上の輝度分布が均一に近くなり、道路の線形を正しく予知できるようになります。

照明設計

道路照明の設計にあたっては、与えられた道路の種類や交通状況、道路の立地条件によく適合するように光源や照明器具を選定します。さらに、平均路面輝度、輝度均斉度、視機能低下グレアおよび誘導性の規定を満足するように照明器具の配列、高さなどを十分検討することが必要です。

1.道路の調査

適切な道路照明を実現するには、次のような道路上の諸状況を正しく把握することが必要です。

  1. (a)道路の標準断面
  2. (b)路面の粗滑度、反射率(反射特性係数)
  3. (c)道路の平面図
  4. (d)設計速度
  5. (e)交通量
  6. (f)道路周辺の状況、他の道路の状況

2.道路照明の性能指標

前述の道路照明の4つの要素を確保するために、平均路面輝度、輝度均斉度、視機能低下グレアおよび誘導性の4つの性能指標が規定され、これらを満足するように道路照明の設計を行います。

(1)平均路面輝度

道路分類と外部条件に応じて表3に示す平均路面輝度を確保する必要があります。照明設計では、ポール照明方式の場合、舗装の種類によって決まる下記の平均照度換算係数を用いて平均路面輝度を平均照度に変換して路面の明るさを確保できる照明器具の配置計画を検討します。

アスファルト舗装 15 lx/cd/m2
コンクリート舗装 10 lx/cd/m2

表3:平均路面輝度

(単位:cd/m2

外部条件 A B C
道路分類 高速自動車国道等 1.0 1.0 0.7
0.7 0.5
一般国道等 主要幹線道路 1.0 0.7 0.5
0.7 0.5
幹線・補助幹線道路 0.7 0.5 0.5
0.5

(2)輝度均斉度

路上障害物の視認性に影響する総合均斉度を0.4以上とする必要があります。総合均斉度は逐点法による輝度計算6)から求めた1スパン内の輝度分布を用いて次式から求めます。

数式:総合均斉度Uo=Lmin/Lr

表4:車線軸均斉度

(単位:cd/m2

道路分類 車線軸均斉度
高速自動車国道等 0.7以上
一般国道等 主要幹線道路 0.5以上
幹線・補助幹線道路

ここで、Lmin:最小部分輝度(cd/m2)、Lr:平均路面輝度(cd/m2
また、性能指標で規定されていませんが、視覚的な不快感に影響する車線軸均斉度も確保することが望ましく、道路分類に応じて表4に示す値以上とします。車線軸均斉度は総合均斉度と同様に逐点法による輝度計算から求めた1スパン内の輝度分布を用いて次式から求めます。

数式:総合均斉度Uo=Lmin(ℓ)/ Lmax(ℓ)

ここで、Lmin():車線中心線上の最小部分輝度(cd/m2)、Lmax():車線中心線上の最大部分輝度(cd/m2

(3)視機能低下グレア

道路分類に応じて表5に示す視機能低下グレアを数値化した相対閾値増加の値以下とする必要があります。

表5:相対閾値増加

(単位:%)

道路分類 相対閾値増加
高速自動車国道等 10以下
一般国道等 主要幹線道路 15以下
幹線・補助幹線道路

(4)誘導性

光学的誘導効果により誘導性が得られるように照明器具の高さ、配列、間隔などを考慮する必要があります。

3.照明方式

道路照明の方式は、基本としてポール照明方式が採用されますが、道路構造、交通状況および設置場所などによっては、低位置照明方式やハイマスト照明方式が優れた照明効果を発揮する場合があります。

(1)ポール照明方式

(1)-1 取付高さ(H)

一般に取付け高さを高くするほどグレアが減少し、視認性と快適性が向上すると同時に、照明器具による輝度分布の広がりが大きくなるので、同じ輝度均斉度を得るのに必要な照明器具の数を少なくすることができます。反面、これによってポール等のコストが高くなり、路面以外の部分に向う光も増加して全体の効率が低下します。このことから取り付け高さは、輝度分布の検討を行い、全体の照明効果や経済性を比較して最終的な値を決定します。

図7:照明器具の取り付け基本寸法

寸法図 W:車道幅員 Wt:道路幅員 H:取り付け高さ、Oh:オーバーハング、OR:アウトリーチ、θ:取り付け角度、ℓ:発光部分の長さ
(1)-2 オーバーハング(Oh)

オーバーハングを大きくするに従い、路面が乾燥している場合の平均輝度は高くなります。しかし、雨天時に路面がぬれていると、路面の両側端(路肩)の輝度が極端に低くなり、歩行者・駐停車中の自動車等の多い路肩の視認性が低くなります。
反面オーバーハングを小さく設計しますと、路面が乾燥した時の平均輝度が僅かに低くなりますが、雨天時における路面の輝度分布は著しく良好となります。
オーバーハングは照明器具の配光特性に基づいて下記の値とすることが望ましいとされています。

横方向に配光のピークがある照明器具:-1≦Oh≦1(m)
横方向よりもやや前方に配光のピークがある照明器具:-3≦Oh≦1(m)

(1)-3 取付角度(θ)

照明器具の取り付け角度θを大きくとると、ある程度までは平均輝度、輝度均斉度は増加しますが、角度が大きくなるにつれて運転者の視野に強い光が入りやすくなり、グレアが大きくなり、視認性や快適性が低下します。このため取付角度は5°以内とすることが望ましいです。

(1)-4 配列方式

ポール照明方式の基本的な配列は、図8に示す3種類があります。道路によってはこれらの配列がさらに複合されることもあります。中央帯に2灯式のポールを設置する中央配列は、片側配列が2組あるものと考えます。

図8:照明器具の配列の種類

照明器具の配列の種類:片側配列の図、千鳥配列の図、向合せ配列の図、S:取り付け間隔、W:車道幅員、H:取り付け高さ、L:照明器具
(1)-5 曲線部の配列

曲線半径1,000m以下の曲線部における器具配列は、図9(イ)、(ロ)に示すように曲線の外縁に片側配列とします。また、向合せ配列や中央配列の直線部に続く曲線半径300m以下の曲線部では、図9(ハ)に示すように配列を変更せずに照明器具の間隔を短くします。もしくは、図9(ニ)に示すように各車道の外縁に片側配列とします。

図9:曲線部の照明器具の配列

曲線部の照明器具の配列の図:(イ)片側配列に続く曲線部の図、(ロ)千鳥配列に続く曲線部の図、(ハ)向合せ配列に続く曲線部の図、(ニ)中央配列に続く曲線部の図
(1)-6 交差点

T字路・十字路・Y字路などの交差点では道路照明の一般的な効果に加えて、これに接近していく自動車の運転者がその存在を十分に遠くから知ることや進路変更にとまどわぬよう、交差点附近の状況がよくわかるように、地形に応じて照明器具を設置します。
実際には、たとえば次例(道路照明施設設置基準・同解説より)などを参考に十分検討されることをお奨めします。

図10:T字路における器具の配列例

図11:十字路における器具の配列例

図12:幹線の道路照明が中央配列の場合の配列例

図13図12のように配置した場合の透視図

図14:幹線の道路照明が向合せ配列の場合の配列例

図15図14のように配置した場合の透視図

図16:横断歩道のある十字路における器具の配置例(d<0.3Sの場合)

図17:Y分岐(右分岐)における器具の配置例

図18:Y分岐(左分岐)における器具の配置例

(2)低位置照明方式

路上約1mの高さに照明器具を配置する照明方式で、周辺への光漏れがほとんどなく、ポールを用いないため昼間における景観が良く、高い誘導性が得られることなどの利点があります。ポールの建柱に制限を受ける場合や後方への光漏れが問題になる場合などにこの照明方式が採用されます。しかしながら、建設費と維持費が比較的高く、ドライバーの目の高さに近い位置に照明器具が設置されるため、特に勾配がある区間や曲線部では、ドライバーにグレアを与えないように十分配慮する必要があります。
照明設計では、その設置条件や配光の特性を考慮して、平均路面輝度の計算に用いる平均照度換算係数には20~25 lx/cd/m2(アスファルト舗装)7) 8)の値が用いられます。また、照明器具からの直射光によるグレアおよびちらつきを抑制するために、路上1.2mの助手席の位置において鉛直面照度を100~150 lx以下7) 8)にする必要があります。

図19:低位置照明方式による照明

図20:低位置照明方式の照明器具

(3)ハイマスト照明方式

少ない基数で広い範囲を照明するために、通常20m以上のハイマスト上に高出力の光源を多数設置する方法で、規模の大きいジャンクション、インターチェンジ、料金所広場、駐車場などの照明に適しています。
ハイマスト方式で良い結果を得るためには、以下の条件を考慮する必要があります。

  1. (a)一般の輝度均斉度に関する通常の原則を保つこと。
  2. (b)照明施設の幾何学的構造と照明器具の配光を考慮して、器具高さと取り付け間隔の比を適切に選択すること。
  3. (c)良好な誘導性を確保するための設置をすること。
  4. (d)霧の多発地帯では、空気中での光の吸収が大きくなることがあるので注意すること。
  5. (e)全施設によって照射される面積中に占める車道部分の割合が余り小さくないこと。
  6. (f)道路に隣接した周辺をも照明するので、人家・農作物等への影響を考慮すること。

図21:ハイマスト照明方式の事例

●ハイマスト照明方式の特徴
  1. (a)昼間における“照明柱の密林”という感じを除き、ハイマストの威容がその地域に近代的な景観を与えます。
  2. (b)夜間に“光を一面にばらまいた”ような感じにならず、lightpointを整然とさせます。
  3. (c)通常ハイマストは道路外に建柱されるので、保守に際しての交通規制は不要で、作業は安全に随時できます。
  4. (d)ほとんどのものが保守時に光源を昇降できるか、または作業員が容易にマストを昇降できるよう設計されており、保守が容易です。
  5. (e)光源が高位置にあり、よごれが少なくなります。
  6. (f)自動車が照明柱に衝突する危険がほとんどありません。
  7. (g)インターチェンジの全域が明るく照明されるので、運転者は走りやすくなります。
  8. (h)多数の光源が比較的低い位置に散らばっていることからくる煩らわしいまぶしさを除きます。
  9. (i)一本一本の道路の合流、分岐の情況を光源の並びで表現することはできないが、巨視的な誘導効果を与えることができます。

4.照明器具

ポール照明方式の照明器具の種類は光源(HIDランプ(拡散形)、HIDランプ(透明形)、低圧ナトリウムランプ、LEDモジュール)、光特性およびランプ制御装置の有無の組合せによります。9)光特性はカットオフ形とセミカットオフ形があり、それぞれの特徴を下記に示します。水平角90°においてランプ光束(LEDモジュールの場合は器具光束)1,000 lmあたりの光度が表6のように規定されています。

(1)カットオフ形
運転者に対するグレアを厳しく制限した配光です。水平光を厳しく制限し、周辺が暗い場所でもまぶしさをあまり感じません。反面、横方向への光の広がりは抑えられ、均斉度を高めるためには灯具間隔を短くする必要があります。一般に高速道路や一級国道等の郊外の要点など、周辺が暗く、明るくする必要がある路線に適しています。

(2)セミカットオフ形
運転者に対するグレアをある程度制限した配光です。水平光を制限し、横方向への光の広がりを持たせた照明器具で、一般的に広く採用されています。

表6:配光形式による光度の制限

光度(cd/1,000 lm)
鉛直角90° 鉛直角80°
カットオフ形 10以下 30以下
セミカットオフ形 30以下 120以下

表7はポール照明方式の器具の種類10)の例を示します。

表7:ポール照明方式の器具の種類

種別 形式 配光 適合ランプ 備考
アーム取付形 KSN-2(-H) セミカットオフ 高圧ナトリウムランプ
(透明形)
形式の末尾に-Hを付けたものは直線形ポールに適合する。
KSN-3(-H)
KSC-4

高圧ナトリウムランプ
(拡散形)

高圧水銀ランプ
(蛍光形)

KC-4 カットオフ
KSC-7 セミカットオフ
ポールヘッド形 KSH-2 セミカットオフ 高圧ナトリウムランプ
(透明形)
形式の末尾にCを付けたものは交差点の隅切り部に配置して使用する。
KSH-3
KSH-2C

注)種別は、JIS C 8105-2-3による。

5.ポール

ポール照明方式に用いるポールは、経済上かつ美観上により1/100テーパーをもつ鋼製テーパーポールが標準的に使用されます。
ポールは、本体およびアームとその先端に照明器具を取り付けるアダプタからできており、ポール本体には安定器取り付け口、電源引込孔、安定器取り付けフック、端子盤取り付け台および接地端子が設けられています。強度は最大瞬間風速60m/secに耐えられるよう強度計算されており、標準的な寸法を表811)に示します。

表8:標準ポールの形状

(単位:mm)

形状 形式 地上高 ポール出幅
直線型 基本形(1灯用) S8(B) 8,000
S10(B) 10,000
S12(B) 12,000
Y形(2灯用) S8Y(B) 8,000 180
S10Y(B) 10,000 180
S12Y(B) 12,000 180
曲線型 長円形 基本形(1灯用) 8-18(B) 8,000 1,800
10-21(B) 10,000 2,100
10-23(B) 10,000 2,300
10-23(B) 12,000 2,300
12-28(B) 12,000 2,800
Y形(2灯用) 8-18Y(B) 8,000 1,800
10-21Y(B) 10,000 2,100
10-23Y(B) 10,000 2,300
10-23Y(B) 12,000 2,300
12-28Y(B) 12,000 2,800
折線形 基本形(1灯用) 8-8(B) 8,000 800
10-8(B) 10,000 800
12-8(B) 12,000 800
Y形(2灯用) 8-8Y(B) 8,000 800
10-8Y(B) 10,000 800
12-8Y(B) 12,000 800

備考
1.()内は、基部の構造がベースプレート式を示す。
2.ポール出幅寸法には、灯具の挿入寸法(120mm)は含まない。

照明計算

一般的なポール照明方式における照明設計では、平均路面輝度は以下に示す光束法の計算式を用いて求めます。

数式:Lr=F・M・N・U/W・K・S

  • 但し、
    • F:光源の光束(lm)
    • S:照明器具の間隔(m)
    • W:車道幅員(m)
    • K:平均照度換算係数(lx/cd/m2
    • L:基準輝度(cd/m2
    • N:器具の配列による係数
      片側配列・千鳥配列はN=1
      向合せ配列は  N=2
    • U:照明率
    • M:保守率

1.輝度計算

一般に、路面に入射する光(照度)は同一であっても、図22に示すように、観測者の視線方向と光の入射方向によって観測者の方向へ反射する光(輝度)は異なり、観測者より遠方へ投射された光(A)より、近い方へ投射された光(B)の方が多くの反射光を目に送ります。

図22:観測者の視線方向に向かう光源の反射光

このため、道路照明器具1灯によって路面にできる輝度パターンは図23に示すように手前側に長く伸びたT形となります。
このT形のパターンは路面の反射特性や照明器具の配光によって変化します。

図23:路面における等輝度分布曲線の透視図形

図24:道路照明器具の1灯あたりの輝度分布図例(参考)

このように光の入射方向や観測方向、および路面の反射特性などによって路面輝度は変化しますので、道路照明の計画・実施にあたってその効果を十分発揮させるためには、路面の反射特性をよく知る必要があります。
図25において、観測者Oが見ている路面上の一点Pの輝度をLp(cd/m2)、この部分の水平面照度をEp(lx)、照明器具Lの取り付け高さをH(m)、照明器具から点Pに向かう光度I(cd)、Iの鉛直角をγとしますと、路面が極端に濡れていないときには、次のような関係が成り立ちます。

数式:Lp=qp. Ep=I/Hの2乗・qp・cosの3乗γ

図25:路面輝度

【路面輝度の図】α:観測角β:入射面と観測面のなす角γ:光の入射角δ:道路の軸と観測面のなす角0:観測者L:光源

ただし、qpはP点におけるこの路面の輝度係数であり、qp cos3γは輝度換算係数です。
輝度換算係数qp cos3γは、図25においてα、β、γ、δの関数となります。αは運転者の視線方向が多くの場合0.5°~1.5°であり、この範囲内ではαの変化はほとんど輝度に影響を与えませんので、これを1°とします。δは路面に特別な方向性のある縞模様があるときを除き無視できますので、したがって路面の反射特性は路面の種類ごとに光の入射方向(β,γ)に対する輝度換算係数(qp cos3γ)の分布として表わすことができます。路面上の各点の輝度換算係数が明らかになりますと、照明器具の配置と配光から路面の輝度分布を遂点計算によって求めることができます。

しかし、実際の道路照明の設計において、そのつど対象となる道路の路面反射特性を測定し、これから輝度分布を求めることは多大な手数や時間を要しますので、あらかじめ使用ひん度が多いと考えられる何種類かの路面の反射特性を求めておき、新しく照明設計しようとする道路と類似したものをこの中から設計者が選択して計算します。
国際照明委員会(CIE)では路面を光学的に分類し、標準的な路面として表9に示すような2つに分類12)しています。したがって、輝度計算にあたっては、対象とする道路の路面が表9のどのクラスに属するかを決定し、CIEで推奨する輝度計算方法にしたがって行います。

表9:CIE標準路面の反射特性係数

標準路面 Q0 S1 S2※1 適用路面の例
C1 0.10 0.24 1.30 コンクリート
C2 0.07 0.97 2.13 アスファルト

注)※1 CIEの反射テーブルより計算した値

路面の反射特性は、路面の色彩的な明るさを示す平均輝度係数Q0と路面の光沢度を示す2つの鏡面係数S1、S2によって分類されます。ただしQ0、S1、S2は次式によって求められる値です。

数式:QO=∫qp(β.γ)dω/∫dω、S1=γ(0,2)/γ(0,0)、S2=Q0/γ(0,0)

  • 但し、
    • γ(0,0):照明器具直下の輝度換算係数(qp cos3γ)
    • γ(0,2):照明器具直下を通る道路軸に平行な直線上で、照明器具直下から観測者の方向に向かって2Hだけ離れた点の輝度換算係数
    • Q0道路照明で起こりうるあらゆる方向に対する輝度係数の平均値
    • ω:路面上のP点(微小部分)が光源に対して張る立体角

図26:輝度換算係数y(0.0)、y(0.2)の観測者に対する位置

路面の反射特性係数S1、S2、Q0のうち、S1、S2は路面輝度の分布の特徴を示し、Q0は特定の路面輝度分布に対する平均輝度の程度を示します。

2.照明率の算出

照明率とは、照明器具の中の全光源または照明器具の光束の何%が道路面に達するか、即ち(道路面に達する光束)/(全光源または照明器具の光束)の比で表したもので、図27のような図で表されています。道路断面と照明器具の高さ、およびオーバーハングが定まると図のようにして求められます。

車道側の照明率(U1

数式:(車道幅)-(オーバーハング)/(器具取り付け高さ)=W/H…※3

歩道側の照明率(U2

数式:歩道側の照明率(U2)(オーバーハング)/(器具取り付け高さ)=Oh/H…※4

図27:照明率の求め方

【照明率曲線(取付角度α)のグラフ】W/H、Oh/Hに対する照明率U1、U2を照明率曲線のグラフより読みとれば、照明率U=U1+U2の式で照明率が求まります。【道路照明の寸法図】Oh=オーバーハング、W=車道幅、W’=車道幅オーバーハング、H=器具取り付け高さ

3.保守率

照明施設は、光源の光束の低下と灯具の汚れなどによって平均路面輝度(平均路面照度)が設置当初の値より減少します。この減少の程度を設計時点で見込む係数が保守率です。
平均路面照度は、保守管理を行っている期間中、つねに維持しなければならない下限値です。
器具から出る光束は、光源の発光効率の低下や器具の内外の汚れなどによって初期の値より次第に減少します。また、光源の交換時間と交換方式、灯具の清掃頻度などによって異なりますので、これらを考慮して保守率を設定する必要があります。表10-113)表10-214)に示す保守率が採用されています。

表10-1:保守率(設計要領 第7集 電気施設より)

本線交通量(台/日) 保守率
50,000以上 0.6
20,000以上 50,000未満 0.65
20,000未満 0.7

表10-2:保守率(道路照明施設設置基準・同解説より)

区分 保守率
連続(局部)照明 0.65〜0.75

4.照明設計手順

前述の必要とされる照明の質を満たすように性能規定の値を確保できるように照明設計を行います。下記は連続照明の設計手順14)を示し、各性能規定は所定の計算手法により求めるものとされています。

図28:設計手順の例(連続照明)

始め → ①・設計条件の設定・性能指標の決定。 → YESなら②へ → ②使用する照明器材等を選定(照明方式、灯具等) → YESなら③へ → ③・照明率の算出、保守率および 平均照度換算係数の決定・「光束法」により平均路面輝度を満足する。灯具間隔(最大)を算出する。 → YESなら④へ → ④「逐点法による輝度計算」により(総合均斉度、車線軸均斉度)を算出し、規定値が満足されているか? → YESなら⑤へ → ⑤「グレアの計算」により相対閾値増加(TI)を算出し、規定値が満足されているか? → YESなら⑥へ → ⑥評価:照明要件を満足する。経済的な組合せを検討して選定する。 → YESなら終り

5.計算例

下記の条件において照明率と照明器具の間隔の計算例を示します。

●計算条件

  • ・道路分類   :主要幹線道路
  • ・道路構造   :次の図参照
  • ・照明器具   :セミカットオフ形(照明率曲線は図29を参照)
  • ・光源     :LEDモジュール
  • ・器具光束   :10,000 lm
  • ・平均路面輝度 :
    主要幹線道路の外部条件B、
    アスファルト舗装として0.7cd/m2
    (平均水平面照度10.5 lx)
  • ・照明器具の配列:片側配列
  • ・取り付け高さ :10m
  • ・保守率    :0.65
道路照明器具と道路構造の図

●照明率の算出

車道側の照明率(U1

(車道幅)-(オーバーハング)/(器具取り付け高さ)=7.0-(-1.45)/10=0.85

照明率曲線より、照明率U1=0.72

歩道側の照明率(U2

(車道幅)-(オーバーハング)/(器具取り付け高さ)=1.45/10=0.15

照明率曲線より、照明率U2=0.14

したがって、照明率Uは
照明率(U)=U1-U2=0.72-0.14=0.58

図29:照明率曲線の例

照明率曲線のグラフ

●照明器具の間隔

平均路面輝度0.7cd/m2を確保できる照明器具の間隔を求めます。

S=F×U×N×M/L×W×K= 10,000×0.58×1×0.65/0.7×7.0×15=51.2m

逐点法による輝度計算から、総合均斉度、車線軸均斉度の規定値を満たす器具間隔を求め、相対閾値増加が規定値以下かを確認します。これらの性能規定を満足しない場合は灯具や光束などを見直し、上記の計算手順を繰り返します。

6.歩行者に対する照明

(1)明るさ

人が夜間の道路・公園・広場などを安心して歩けるようにするためには、路面の明るさ、人の顔の明るさ、背景の明るさなどの考慮すべき要件が多くあります。表11は、JIS照度基準(Z9110)15)、JIS道路照明基準(Z9111)16)及び照明学会関西支部の「街路照明の適正化に関する調査分析」17)などをもとに、国際照明委員会の都市照明のガイド19)との整合を図るとともに、周囲の明るさや場所の使用頻度なども考慮に入れて、照明学会において設定された「歩行者のための屋外公共照明基準」19)による推奨照度です。
また、表12は日本防犯設備協会が規定する生活道路を対象とした防犯灯の照度20)を示します。光源にLEDを用いる場合、配光の指向性が強いため道路端で明るさが不足する場合があることから、道路両端の鉛直面照度の最小値を規定する表12-2が適用されます。

表11:推奨照度

場所の分類 区分 推奨照度(lx)
使用状況 他 周囲の明るさ 水平面照度(Eh 半円筒面照度(Eac)または
鉛直面照度(Ev
夜間の使用が大 明るい 20 4
中程度 15 3
暗い 10 2
夜間の使用が中 明るい 10 2
中程度 7.5 1.5
暗い 5 1
夜間の使用が小 明るい 7.5 1.5
中程度 5 1
暗い 3
階段、急なスロープ 明るい 20 4
中程度 15 3
暗い 10 2

備考

  1. 水平面照度は歩道の路面上の平均照度とし、均斉度(最小/平均)≧0.2とする。
  2. 半円筒面照度は、路面上1.5mの高さの道路の軸に平行な線に直交する面の表裏、双方向の測定値のうちの最小値とする。なお、この値は次式にて鉛直面照度から求めても良い。

    ESC≒4Σi=1 Evi/4+(Ev1-Ev3)/π

    ここにEvi:互いに直交する4方向の鉛直面照度(第1方向及び第3方向を道路軸に一致させる)

  3. JIS道路照明基準との整合性により、鉛直面照度を併記した。鉛直面照度は歩道の中心線上で、路面上1.5mの高さの道路の軸に直交する鉛直面上の最小照度とする。
  4. 場所の分類は、地域的および時間的特性を考慮に入れる。

表12-1:防犯灯の照明基準(クラスA、B)

クラス 照明の効果 平均水平面
照度
道路中心線上の鉛直面照度の最小値
A 4m先の歩行者の顔の概要が識別できる 5 lx以上 1 lx以上
B 4m先の歩行者の挙動・姿勢が識別できる 3 lx以上 0.5 lx以上

表12-2:防犯灯の照明基準(クラスB+

クラス 照明の効果 平均水平面
照度
道路中心線上
および
道路両端の鉛直面照度の最小値
B+ 4m先の歩行者の挙動・姿勢が識別できる 3 lx以上 0.5 lx以上

(2)半円筒面照度

他人の意図や行動を把握し、もし危険な場合には回避できるようにするためには、人の顔の明るさが重要になります。必要とされる顔の明るさは、輝度値で規定されるべきですが、計算や測定の簡便さから、これまで鉛直面照度が採用されてきました。しかし、最近、鉛直面照度よりもむしろ半円筒照度の方が適切であるという研究があり、表11では半円筒面照度と鉛直面照度を併記されています。鉛直面照度(Ev)は「垂直に立てた平面に入射する単位面積当たりの光束」で、(1)式で表わされ、一方、半円筒面照度(Esc)は「垂直に立てた円筒側表面に入射する単位面積当たりの光束」と定義され、(2)式で表わされます。

Ev=En・sinθcosφ・・・・・・・・・・・・・・・・(1)
Esc=En・sinθ(1+cosφ)/π・・・・・(2)
En:法線照度、θ:鉛直角、φ:水平角

図30:鉛直面照度および半円筒照度の説明

観測者の目線から見た鉛直面照度および半円筒照度の説明の図

(参考文献)

  1. 1)成定, 吉川:高速道路照明の所要条件(その1), 照学誌, vol.56, No.2, PP.8-17(1972).
  2. 2)西森 栄:名神高速道路本線照明と交通事故率, 日本道路会議論文集(1973).
  3. 3)J. T. Duff:Road lighting and the role of central government, Light. Res. Technol., vol.6, No.4, pp.183-196(1974).
  4. 4)J. B. de Boer:Fundamental experiments of visibility and admissible glare in road lighting, Proceeding of CIE Stockholm Session, pp.N1-    N6 (1951).
  5. 5)K. Narisada:Influence of non-uniformity in road surface luminance of public lighting installation upon perception of objects on the road surfaceby car-drivers, Proceeding of CIE Barcelona Session, p_71.17 pp.1-20(1971) .
  6. 6)CIE Publ. No.30-2: Calculation and Measurement of Luminance in Road Lighting 2 nd (1982).
  7. 7)首都高速道路株式会社:電気通信設備設計要領 (2012).
  8. 8)関西国際空港株式会社, 建設電気技術協会:空港連絡橋道路照明設備検討報告書 (1989).
  9. 9)日本規格協会:JIS C8131 道路照明器具 (2013).
  10. 10)建設電気技術協会:道路・トンネル照明器材仕様書 (2008).
  11. 11)建設電気技術協会:電気通信施設設計要領・同解説(電気編)(2008).
  12. 12)CIE Publ. No.66: Road Surfaces and Lighting (1984).
  13. 13)東日本高速道路株式会社, 中日本高速道路株式会社, 西日本高速道路株式会社:設計要領 第七集 電気施設編 (2013).
  14. 14)日本道路協会:道路照明施設設置基準・同解説 (2007).
  15. 15)日本規格協会:JIS Z9110 照明基準総則 (2010).
  16. 16)日本規格協会:JIS Z9111 道路照明基準 (1988).
  17. 17)照明学会関西支部:街路照明の適正化に関する調査分析 (1986).
  18. 18)CIE Publ. No.92: Guide to the lighting of urban areas (1992).
  19. 19)照明学会:歩行者のための屋外公共照明基準 (1994).
  20. 20)日本防犯設備協会:SES E1901-3 防犯灯の照度基準(2012).

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