柔らかい間接光で大屋根を照らし上げたおおらかな空間
2階図書館
特徴的な大屋根の意匠性を強調する照明設計
2階図書館の中央に配置された8灯のアッパー照明は、弓状の天井を照らし上げ、そのバウンド光で全体のアンビエント照度平均200lxを確保。照度と明るさ感指標(Feu)の3Dシミュレーション検証により照明計画を実施し、明るさ感は「標準」を目指しながら、木材の特徴を生かした空間をダイナミックに演出している。弓状の天井は空間全体に光を拡散させ、陰影で木梁の存在感を際立たせている。全長100mの連続するこの空間は来館者を圧倒するとともに、木材を照射する柔らかな間接光で包み込んだ。
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輝度分布(3Dシミュレーションと実測)
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目安のFeu値
検証を繰り返し、グレア発生を抑制するアッパー照明の配光角度・設置角度を確定
屋根面を照らし上げるアッパー照明は、有害なグレアを生じる可能性があった。有害なグレアを防ぎ、必要照度の均斉度を確保するため、アッパー照明の配光角度と設置角度の限度を定めた。3Dシミュレーションによる照度検証と、現場実証・調整を行い、グレア発生を抑制した。屋根への照射によるバウンド光で照度を確保する必要があるため、高光束タイプの投光器(色温度:3,500K 光束:7,575lm Ra:85)を採用。また天井が高いため、アッパー照明を柱に取り付けることで、メンテナンス性を向上させた。
採用照明器具
2階テラスは日没後も屋内の漏れ光で、落ち着いた雰囲気の憩いの場に
リズミカルに点在する照明で、空間に軽やかな浮遊感を醸成
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低書架上部の球形照明(色温度:3,000K 光束:810lm Ra:84)は、おおらかな庭のポール照明との連続性があり、2階テラスとのつながりを深めた。書架の中に器具を1つ1つ埋め込み、一体化させて光が浮遊しているように見せている。子供が触れる可能性もあるため、安全性を考慮してアクリル製のグローブにした。
採用照明器具
階段
点光源をにじませて見せる演出で、木材の温かみを引き出した独創的な空間に
曲線が際立つ階段の建築化照明には、LED電球(色温度:2,700K 光束:430lm Ra:84)を採用。半透明のポリカーボネイトで覆うことで、煌びやかな点光源を生かしながらにじませ、木材の温かみを引き出した独創的な空間を演出している。汎用性の高いLED電球と建材を組み合わせて構成することで、低コストを実現した。
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建築化照明断面図
物件情報
所在地 | 熊本県天草市 |
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施主 | 熊本県天草市 |
設計 | 日建設計+TAKT PROJECT |
施工 | 吉永・金子・大昌特定建設工事共同企業体ほか |
電気工事 | 九電工・熊電特定建設工事共同企業体 |
竣工 | 2020年3月 |
熊本県天草市に開館した「天草市複合施設ここらす」は、図書館、保健福祉センター、市民活動の場と「おおらかな庭」を持つ、豊かな自然環境と一体となった複合公共施設。全長100mの湾曲した細長い平面形状は敷地南側の「おおらかな庭」を包み込み、四季の変化を感じることができる。建物中央ラインを頂部とした大屋根を支える梁には、地産のヒノキ・スギ材を使用。連続した頂部の採光窓と、南北面の窓から自然光を取り入れることができる設計としている。その自然光は弓状の大屋根で拡散され、2階図書館全体の照度を補い、1日の時間の移り変わりを感じることができる。夜間は、アッパー照明で空間全体のアンビエント照度を確保。さらに木梁天井を光の陰影で浮き彫りにし、来館者を圧倒するとともに、柔らかな光で包み込まれた魅力的な空間となっている。