京都の今と伝統を照らす、庭屋一如を味わうホテル
「市中山居」の居心地を追求
京都市の中心地、三条高倉に建つホテル。近代洋風建築の建ち並ぶまちなみの中で「ここにしかない京都らしさ」の際立つホテルを構想。市街地にいながら山中の自然と触れ合うような営みを求めた京町家の空間構成を見立て、「市中山居」の居心地を追求した。建物の照明計画も、この“市中山居の居心地“がテーマとなった。外装は現代建築の意匠としつつ、歴史的建築への敬意として石、鉄、煉瓦調タイルを纏っている。光の演出は石の列柱を照らすのみとし、ホテルの品格や魅力を伝えながら夕刻のまちなみをやさしく彩る計画とした。
「オモテ」から「オク」へのシークエンスを紡ぎ出す“あかり”





ホテルへのアプローチは三条通に面するパブリックな「オモテ」からホテルゲストのためのプライベートな「オク」までがシームレスに連続する空間構成となっている。その途中に存在する3つの中庭や動線の変化はその場所ごとに最小限かつ多様な光の演出によって特徴づけられ、様々なシーンを作り出す。そこに紡ぎ出されたシークエンスは、ゲストにとって豊かな体験の記憶となってゆく。
ラウンジ
ラウンジ: “市中山居”の居心地を生む“あかり”
グレアレスダウンライトでガラスへの映り込みを抑え、中庭と建物内部が視覚的に繋がる空間に
「オク」のシンボルであるロビーはゲストのためのセミパブリックな「リビングスペース」でもある。大きな開口部が、山中のように静かで季節感の豊かな緑とロビーに一体感をもたらし、京都の中心地にいることを忘れさせる。タイムスケジュールによって照度が自動制御されるグレアレスダウンライトがロビーに光だまりを散りばめ、心地よいいくつもの「居場所」を作り出した。中庭の緑にはアッパーライトとダウンライトを組み合わせ、一日を通して、非日常性を感じさせつつ落ち着きのある樹々の表情を演出している。
ライトニングフローを活用し、中庭とのつながりを阻害しないあかりをシミュレーション
ロビーラウンジは、中庭と建物内部を視覚的に連続させるため、リアルタイム照明シミュレーションツール「ライトニングフロー」を用いてきめ細かな照明設計が施された。グレアレスダウンライトを用いるとともに、中庭に対面する壁を極力照らさないことで、ガラススクリーンへの映り込みを抑え、中庭とロビーラウンジが視覚的につながる空間が実現した。
採用案
グレアレスユニバーサルダウンライトでソファ周りのみを照射
比較案
間接照明がガラス面に映り込み、中庭との一体感を阻害する
シンボリックな壁材の陰影でゲストを迎え入れるあかり
ゲストを迎え入れるレセプションへ誘導するシンボリックな光を設計。シームレスな光の広がりを重視しつつ、壁材に陰影を与え、表情を見せることができるコーニス照明の手法を採用。シームレス建築部材照明器具 C-Slim S15を使用することで、光源が目に入らない配慮とともに、印象的な空間を作り上げた。3台の自動チェックイン機はスプレッドレンズ付きのダウンライト1台で照射し、ノイズレス且つ機器の操作性にも配慮した。
「オモテ」から「オク」へ、ゲストを誘導する光だまり
器具の存在を最小限に抑えるグレアレスダウンライトによって、規則的に光だまりをつくり、お客様を奥のレセプションへと誘導している。
採用照明器具
外空間
中庭:豊かな樹々を美しく「みせる/そだてる」
植栽の生長を助け緑を鮮やかに演出する彩光色スポットを採用
中庭の樹々はロビーだけでなく、様々なアングルから眺められるように計画されている。この樹々をどの方角からも美しく見せられる健康な状態を保つために、演出効果と生育の面から照明計画を行った。緑を鮮明に映し出すよう580nm前後の波長を抑え、植物の生長に作用する600~700nmの赤色の波長を多く含む彩光色スポットを採用し、シミュレーションにより最適な配灯を計画した。
「オモテ」から「オク」へのシークエンス紡ぎだす多様な光の演出
「オク」へのシークエンスを構成するシーンの1つである中庭では、中央の石に上からスポットを当てつつ、背景の壁を下から間接照明でシルエットを浮かび上がらせることで陰影と奥行を強調したライティングを行っている。スポットと間接照明のバランスや中庭を囲む2面のガラスへの映り込みなど、ライトニングフローによる検証を行った。
ライトニングフローによるシミュレーション
壁面の間接照明には屋外用建築化照明器具LEDsバーを用いて下から照射。遮光板の高さや壁からの距離を変えた数パターンを比較するとこで、最適な光の広がりやカットオフラインを抑制した最適な照明器具の納まりを導き出した。
採用案
比較案
比較案
テラス:まちを照らす“あかり”
近代洋風建築の建ちならぶ通りに面するファサードは、1階列柱の花崗岩仕上を照らすように設けた軒下用集光型ダウンライトのみで控えめながら存在感のある光の演出を追求した。ノイズレスな小口径Φ65のHomeArchi軒下用ダウンライトを採用し、照度は床面の光だまりが通りを歩く人を穏やかにいざない親しみを感じられる「まちのあかり」となるように調整。ライトアップされた客室庭の樹々も、三条通に季節の移ろいを伝えている。
路地:ゲストをいざなう”光の打ち水”
ホテルのサブエントランスやBarに通じる路地は三条通と区切られた別世界となる。プランターボックスに埋め込んだフットライトで石畳に「光の打ち水」を放ち、アッパーライトで樹々を演出することによって「そのむこうにあるもの」への”気配”を感じさせる演出を意図した。
採用照明器具
滞在空間
アート・客室/誘導サイン:いろどりを照らす“あかり”
装飾性を排除したシンプルな内装デザインの格調を高める“いろどり”として、各種サイン、誘導サインやアート、着物ショーケースを計画。照度を抑えた内部空間の中では、“いろどり”を照らす光も抑制されたものとする必要があった。そこでSmartArchiの小口径グレアレスダウンライトを用い、最小限の光でそれぞれの豊かな素材感を感じさせるよう検討を行った。
配光や照度の検証により、顔の見え方やルームナンバーの視認性を確認
照度分布(1FL+700)
AM 9:00
PM 12:00
PM 15:00
客室サインはダウンライトひとつでゲストがサインを視認でき、カードキーにもアクセスできるようシミュレートし照明設計を行った。
また、時間帯による中庭からの自然光の変化も計算。照明設計に取り入れている。
大浴場:“くらやみ”をつくる
ゲスト専用の地下大浴場は「洞窟」に見立て、パブリックながらプライベートな雰囲気を漂わせる、密やかな空間を構想した。
視線を遮るように折り重なる壁に、アクアタイトシリーズのダウンライトでわずかな数の光を落とした。照度を均一化せずあえて“くらやみ”を生み出すことで、温かい湯に体を休めるゲストの心を静かに包み込む、居心地のよい空間をめざした。
配光検証のシミュレーション画像
客室(特別室):上質でプライベートな“あかり”
三条通に面する3つの特別室には専用庭を配し街を借景とするここだけのプライベートな空間を体験できるプランニングを行った。ローグレアなSmartArchiシリンダースポットによりライトアップされた緑は三条通にも季節感を与え、ホテルの存在感を高める効果を生み出している。
採用照明器具
物件情報
| 所在地 | 京都市中京区 |
|---|---|
| 施主 | 三井不動産株式会社 |
| 設計 | 株式会社竹中工務店 |
| 施工 | 株式会社竹中工務店 |
| 竣工 | 2024年4月 |

