地域への思いをかたちにしたライトアップと省エネ・快適性を両立させた照明計画
外観
まちの賑わいと、原爆ドーム・平和記念公園からの景観配慮を両立させた「光の塔」
鉄骨下面のみを正確に照らすことで、近景と遠景で異なる見え方を実現
広島の都心に建つビルとして、まちの賑わいに貢献するため、「風の塔」(エコボイド)のライトアップを行うことによって「光の塔」をつくりだした。その一方で、原爆ドームや平和記念公園からの景観への配慮も求められた。この相反する要求を両立させるために、鉄骨下面のみを照らし上げるライトアップ計画とした。こうすることで、建物近くから見上げた際には光の面がしっかりと連続して見えながらも、遠くからは光の面がほとんど見えないように工夫を行った。
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ライトアップ詳細イメージ図
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連続した光が華やかな印象
「光の塔」からの光漏れを抑制する器具を開発
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「光の塔」は最大約90mの高さを持つガラスの吹抜構造となっているため、各層に設置した照明器具から「光の塔」の外側への光漏れや、各層の光が干渉する懸念があった。
事前に実施したモックアップ試験において、「光の塔」に隣接する水平フィンへの光漏れが確認されたため、繰り返し検討実験を行いながら、ルーバ構造で配光制御を行い、横方向の光漏れを抑制することが可能な器具を開発した。 -
光の塔
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モックアップ風景
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検討後
「RGBW」チップ配置を考慮したルーバー設計で、綺麗な色混ざりと配光制御を両立
フルカラー照明は、色混ざりをよくするために赤(R)、緑(G)、青(B)、白(W)の配列が器具ごとに決まっている。この特性を考慮し、器具高さとルーバーピッチの検討を行った。比較実験を行うことにより、ルーバーピッチ81.2㎜、遮光角40度にすることによって横への光漏れを抑制しつつ、上方配光かつ綺麗な色混ざりを実現した。
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器具高さを最適化
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RGBWチップ配列とルーバーピッチの検討
照明制御(FreeFit MX)とコントローラ(コントローラA1タイプa)を組み合わせて、点灯時間をタイマーで制御することにより省エネを実現した。
採用照明器具
店舗・来客フロア
エリアごとに意匠が異なる天井面を引き立てるために、器具の存在を抑えた設計
1階:天井の照明器具の存在を抑えて、間接照明の光を際立たせる
1階はカフェや地元企業の特産品売り場、イベントスペースなどの商業エリアと、広島銀行のATMや保険プラザのある金融サービスエリアがあり、天井面の意匠はエリアごとに異なる。商業エリアは白を基調とした曲線による折り上げ天井、金融サービスエリアは木目を基調とした黒のラインスリットとなっている。どちらの天井も器具の存在感を抑え、曲線部の間接照明を際立たせるため、グレアレスダウンライトとシームレス間接照明を採用した。
水平面は視線をテーブルや商品へ引き付けやすくするため、什器位置に合わせた器具配置とし中角配光のユニバーサルダウンライトで照射し演出効果を高めている。
また、すべて調光仕様とし、タイマー子器・制御システムで時間帯に合わせた明るさを提供。
日中は調光100%、夜は調光70%、深夜は常夜灯として一部器具のみ70%点灯に設定している。
採用照明器具
ATM・両替機コーナーの壁面には単色カラーシームレスを採用
採用照明器具
2階:小口径ダウンライトを無線調光にして、将来のレイアウト変更にも対応
2階は広島銀行・ひろぎん証券の本店営業部フロアとなっている。1階の金融サービスエリア同様に木目天井を基調とし、黒のラインスリットを採用。天井意匠を引き立たせる為、連なる黒のスリットライン内にφ75の小口径ダウンライトを均等に配置している。
商談エリアのレイアウト変更が発生する為、照明環境においてもレイアウトフリーにフレキシブルに対応できるようWiLIA(無線調光)を採用した。
またロビー窓口、ATMコーナーでは、平日と土曜・日曜のそれぞれのエリア・時間帯に合わせた明るさを設定しスケジュール運転を行っている。
(営業中調光100%、準備・片付け調光50%、消灯)
商談エリア、証券窓口、事務室エリアは別途手動スイッチを設置し、シーン呼び出しができる。
■2階スケジュール設定イメージ
採用照明器具
3階:優雅で上質なおもてなし空間を天井と壁面の光で演出
3階は法人のお客さまをトータルサポートするフロアとなっている。「優雅で上質なおもてなしの空間」がテーマとなっており、落ち着いた雰囲気に。
照明器具の存在感を抑えるため、グレアレスダウンライトを2個セットで均等配置とし、折り上げ造作部分にはシームレス間接照明を設置して空間の広がりと優しい光を演出した。
ロビー窓口はWiLIA無線調光で時間帯に合わせた明るさを設定し、スケジュール運転を行っている。営業中は調光100%、開店前と閉店後は調光50%とし省エネ化をはかった。商談エリア、VIPエリアは別途手動スイッチを設置し、シーン呼び出しができる対応としている。
採用照明器具
応接室はグレード感と落ち着きを備えた空間にするため、優しい光で明るさを確保できるSmartArchiのフロートライトシリーズスクエア器具を中央に配置し、壁面をコーニス照明とした。
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採用照明器具
オフィスフロア
オフィスの性質に合わせた意匠としながら、明るさ感と快適性を確保した器具を採用
12〜15階:天井デザインが際立つシャープな照明で、大空間を開放的に演出
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12〜15階フロアの執務室は、大空間での快適性を求めたオフィスをコンセプトとしており、什器を自由なレイアウトで配置可能な間仕切りのないワンフロアとしている。空気放射空調パネルと設備プレートを複合させた天井の細いスリットに、スリムなライン照明を仕込むことで、天井デザインを際立たせつつ、開放的な照明環境を実現している。
器具設置後に、Feu測定を行いシミュレーション値と同等の空間の明るさ感を確保できていることを確認している。
採用照明器具
8〜11階:ロの字型の特注器具で、意匠性と最適な明るさ感を両立
8〜11階フロアは将来的な間仕切り変更を想定し、多様なレイアウトが可能な600グリッドのシステム天井を採用している。このシステム天井に対応した照明器具は、従来の二の字型のものを使用せず、上下配光のロの字型の発光面を持つ無方向性で意匠性に富むデザインの特注器具を採用した。器具中心部には約400角の設備プレートを備えており、従来の二の字型と同等の機能を確保し、設置された設備機器を極力目立たせない設計としている。
また、直接光源が見えない遮光角を確保すると共に、発光部であるパネル面輝度については、材質、光源からの距離、パネルサイズ等を変えた複数の試作品を製作し、関係者による目視評価や輝度画像を撮影。グレアのみならず、パネルの見えがかりや光の広がりを検証し、最適条件を設定した。
発光面を天井から離すことで浮遊感を持たせると共に、天井からの反射光により照度を抑えながら空間の明るさ感が確保でき、省エネと快適性を両立した。
LEDユニットの下にパネルを挟むことにより、光源からの直接光を拡散させ2枚目のパネルへ光を落とし込む。拡散光でパネルが照らされることにより、浮遊感を印象づけている。
また、2枚目のパネルに鏡面性をもたせることにより、拡散光を天井へ反射させ空間の明るさ感を高める効果をもたらしている。
■パネル輝度測定
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・下からのアングル
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・斜めからのアングル
一枚の乳白パネルを柔らかく光らせ、天井面にも反射させることにより空間の明るさ感を向上させている。計画段階で、従来器具と本器具の輝度シミュレーションを行い、同等の机上面照度500 lxで空間の明るさ感「Feu」の値が従来器具より高いことを確認した。また、納入後にもFeu測定を行い、シミュレーション時と同等以上のFeu値が確保できていることを確認している。
■空間の明るさ感「Feu」シミュレーション
また、1台ごとに個別制御が可能な通信機能付き照明器具を採用しており点滅区分や調光範囲を自由に設定できる。各種センサとの連動で外の明るさの変化や人の動きに合わせたきめ細かな自動調光で省エネが可能。照度を自由に設定できる為、明るさ感を確保しながらT&A照明の導入も可能である。(照明制御:FreeFit MX)
7階:室内意匠に合わせたペンダントで空間の統一感を演出
7階の来客エリアにある来客応接室には、SmartArchiのペンダントを採用。室内意匠に合わせて、会議室ごとに異なる器具を採用することで、空間の統一感を演出した。机上面照度を確保しながら、天井面にも照射する上下配光タイプのペンダントを使用し、空間全体の明るさ感も確保。フロートライトタイプは細かなレンズを施した導光パネルが天井面にもワイドに光を広げる仕組み。ルーバタイプは内部の反射板により天井面にも光を照射している。
採用照明器具
物件情報
所在地 | 広島県広島市 |
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施主 | 株式会社広島銀行 |
設計 | 株式会社日建設計 |
店舗インテリア設計 | 株式会社丹青社、株式会社東洋 |
施工 | 広島銀行新本店ビル新築工事共同企業体 |
電気工事 | 株式会社中電工 |
竣工 | 2021年2月 |
広島銀行など8社を傘下に置く「ひろぎんホールディングス」は、「銀行」「金融」という枠を超え、幅広いニーズや課題に対応できる〈地域総合サービスグループ〉として2020年10月に生まれ変わり、2021年5月に新本社ビルがグランドオープン。
ビルの1階にはカフェ、イベントスタジオ、地域産品等の販売など、にぎわいと多様な交流を創出する場として市民に親しまれている。
外観の特徴となっている、建物の四隅に配置した自然換気を促す「風の塔」(エコボイド)のライトアップを行うことによって「光の塔」をつくりだし、夜のまちの賑わいを演出した。
内部空間はさまざまな用途や機能に合わせ、省エネと快適性を両立させた照明計画となっている。