人と環境にやさしい明るく、木に包まれた庁舎
執務室
木架構現しの明るく開放的な空間。業務に必要な照度を確保した快適な作業環境
地域産木材をデザインに取り込み、木架構現しの意匠になじむ特注ペンダント照明
実作業の場となる執務室も、木架構や木天井のぬくもり感のある空間にしあげるべく、作業性も考慮した照明設計が求められ、建築に使用した地域産木材を器具デザインに取り込む特注ペンダント照明を開発。標準品の器具をベースに検討した2パターンのデザイン、新規で考案したデザインの3種で照度実験を行い、絞り込んでいった。
地域産木材を組合わせるにあたり、標準品に木材を想定した遮光板を取り付け、照度減衰を実験により検証。また原寸モックアップにより、意匠性・機能性の検証を重ねて製作を進めた。
導光板と木材を組み合わせたシンプルな形状となり、1階から4階の事務エリアに設置した。
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採用となった特注ペンダント
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ベースとなった標準品
原寸モックアップによる検証
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パネルと遮光面の距離
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設置方法
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A B C ノーマル 104 110 89 遮光高さ 6mm
(ノーマルとの差)82
(79%)88
(80%)75
(84%)遮光高さ 22mm
(ノーマルとの差)84
(81%)94
(85%)82
(92%)
導光板で上下に配光制御し空間全体の明るさ感をアップ
導光板で上下に配光制御することで天井面も照射でき、必要な照度を確保するとともに、空間の明るさ感をアップ。木梁にも光が回り込み、素材を引き立たせるとともに均斉度の高い空間となった。
5000Kの爽やかで活気のある光で、JIS照度基準の750lx以上を確保した。
■特注ペンダントによる照度計画
エリア | ||
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全体 | 執務エリア | |
平均照度 | 804 lx | 816 lx |
最小照度 | 366 lx | 366 lx |
最大照度 | 1158 lx | 1127 lx |
G1(最小/平均) | 0.455 | 0.448 |
G2(最小/最大) | 0.316 | 0.325 |
★推定照度分布図
自然光を効果的に取り込む窓廻りと昼光センサを組み合わせて、約20%省エネルギー化。自然光を取り込むことで器具台数を軽減し、センサを加えることでランニングコストを抑えるように考慮した。
5層吹き抜けの待合ロビーはトップライトから自然光を取り込む設計。
自然採光・通風を促し快適性の向上を図った。照明器具は必要最小限とし、木ルーバーの間に納めるなど、自然素材と調和させた。
市民ロビー・議場
照明器具を木材と一体化。「木に包まれた空間」を保ち、落ち着いた雰囲気に
自然の素材でつくられた建築を美しく照らし、来庁者をあたたかく迎える市民ロビー
1階の市民ロビーのダウンライトは直接光源が見えないように、木梁や木ルーバーの間に設置。それにより遮光角を深くとることで、グレアの軽減を図った。木架構を照らすコーブ照明を加え、コーニス照明でフローリングや左官壁の素材を照射。ロビー全体が灯となって、来庁者をあたたかく迎え入れる空間とした。
外から見ると、市民ロビーの木架構や木天井が浮かび上がったように見える。
採用照明器具
木の素材のおおらかさと繊細さを際立たせたまちに開かれた議場
「木に包まれ、まちに開かれた議場」を体現すべく、壁面と天井を木で覆う設計。必要照度は天井の木ルーバー間に配したダウンライトで確保し、奥まった空間は間接照明により木の表情を浮かび上がらせた。
床面照度は580Lxで、JIS照度基準の500lx以上を確保。市民ロビーと議場は3000Kの温かみのある光色で設計した。
全体 | |
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平均照度 | 580 lx |
最小照度 | 208 lx |
最大照度 | 777 lx |
G1(最小/平均) | 0.359 |
G2(最小/最大) | 0.268 |
リフレッシュ空間として、白を基調に設計した明るく清潔感のある水まわり
トイレ・洗面はリフレッシュのための空間として、白を基調にした。ダウンライトや間接照明は平均演色評価数85以上の高演色LEDランプを使用。化粧鏡背面のしっくい壁や、鏡にうつる顔を照らす光として、色再現性の良い光を選択した。
鏡背面に照明器具を設置して、しっくい壁を照らした光がやわらかく反射し、空間全体の明るさを高めた。
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化粧鏡背面の壁は地元の左官職人によるしっくい仕上げ。バックライトの光をやわらかく反射し、空間全体を明るく照らす。
採用照明器具
物件情報
所在地 | 山口県長門市 |
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施主 | 長門市 |
設計 | 東畑建築事務所・藤田建築設計事務所・ M.DESIGN ASSOCIATES 一級建築士事務所 設計共同企業体 |
施工 | 熊谷組・安藤建設 特定建設工事共同企業体 |
電気工事 | 栗原工業・山角電気設備 特定建設工事共同企業体 |
竣工 | 2019年8月 |
長門市役所本庁舎は、昭和38年に建築された旧庁舎から、令和元年新庁舎に移転。市民の「安全・安心」の拠点として利用しやすく、親しみやすい庁舎となった。地域産木材を活用し、国内最大規模の耐火木造とRC造の混構造で、今後の積層型大規模公共建築物の木造化をけん引するモデルプロジェクトとして計画された。
木架構現しの意匠に加え、内装材や家具・照明器具にも長門市産材を適材適所に活用。「木に包まれた庁舎」を体験するとともに、自然光を積極的に取り込むことで、木と光が調和した空間を実現した。