選手や球場外に漏れる光に配慮しながら球場を劇的空間に演出

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ウインク球場(姫路市立姫路球場)

兵庫県姫路市が所有する野球場、ウインク球場。1959年の開場以来、市民に親しまれてきたが、球場を取り巻く環境や利用ニーズの変化を背景に、さらなる利活用が求められるようになった。その対応として、ナイター設備の新設やスコアボードのフルカラーLED化が進められ、地域全体のイベントスペースとしての期待を背負っている。

グラウンド

姫路のスポーツ文化を支える球場として、多目的にも使用可能な照明設備を備える会場に

ナイター設備には6基232台の投光器を設置し、プロ野球にも対応可能な照度を確保。スコアボードとして使用する大型ビジョンと連動し、試合の流れに合わせた照明演出も用意している。高校野球や社会人野球に加え、大型ビジョンを使用したパブリックビューイングやコンサートなどへの活用も望まれている。

プロ野球をテレビ放送できるレベルの照度を確保した、照度も演色性も高い球場に

新設したLED投光器は、TV放送対応基準をクリアした鉛直面照度と演色性を備え、プレイヤー・観客共に試合に熱中できる空間を創出した。全点灯時には維持照度で内野2000 lx、外野1500 lxを確保。ボールの視認性を高めるために、適度な空間照度を残しつつも、選手や周辺住民にまぶしさを感じさせないようグレア対策も施している。DMX制御による照明演出にも対応しており、0~100%までの連続調光が可能で、試合展開に合わせて球場全体をドラマチックに演出することが可能となった。

本件でクリアした照明設計水準

照明点灯モード 照明範囲 照明設計における要求水準値
照度値 均斉値(最小/平均) グレアレーティング GR
プロ野球モード バッテリー間 平均 2,500 lx 以上 - 50 以下
内野 平均 2,000 lx 以上 0.7 以上
外野 平均 1,500 lx 以上 0.5 以上
特定領域への光漏れ 最大 1 lx 以下 - -
公式競技モード 内野 平均 1,000 lx 以上 0.7 以上 50 以下
外野 平均 750 lx 以上 0.5 以上
一般競技モード 内野 平均 750 lx 以上 0.6 以上 50 以下
外野 平均 500 lx 以上 0.5 以上
レクリエーションモード 内野 平均 500 lx 以上 0.5 以上 50 以下
外野 平均 300 lx 以上 0.3 以上
薄暮モード 内野 平均 300 lx 以上 0.5 以上 50 以下
外野 平均 200 lx 以上 0.3 以上
内野練習モード 内野 平均 500 lx 以上 0.5 以上 50 以下
外野 - -

水平面照度分布シミュレーション図(プロ野球モード)

プロ野球仕様の照度を確認する、高精度のシミュレーション

ライトニングフローを用いたCG画像
ライト内野席から
鳥瞰
ホームベースから
バックスクリーンから
実際の写真
ライト内野席から
鳥瞰
ホームベースから
バックスクリーンから

建築 リアルタイム ビジュアライゼーション 「ライトニングフロー」を使用したCG画像を作成しご提案。球場照明全灯時のグレアカット効果と、球場外への光漏れをシミュレーションした。左がライトニングフローを用いたシミュレーション画像、右が実際の写真となる。シミュレーションと同等の光環境を実現し、高精度のシミュレーションを行うことができている。

リアルCGによるフライボールの視認性の確認

光漏れを抑制するためにカットオフ性能を高めた照明器具を採用すると、照明鉄塔より上部の光が完全になくなることで、高く上がるフライボールが見えなくなる可能性があった。そこで、より精度を高めた光環境の評価を行うべく、リアルCGによるシミュレーションを行った。シミュレーションの結果、空間の光散乱の影響が顕著であり、カットオフ性能を高めた光環境の方が、フライボールと背景のコントラスト(輝度対比)が大きくなることで、フライボールの視認性が高くなることが分かった。

カットオフ性能の低い照明器具を採用した場合、空間の光散乱により、フライボールのコントラストが低下してボールが見えづらくなる。

カットオフ性能の高い照明器具を採用した場合、空間の光散乱が減り、フライボールのコントラストが大きくなることでボールが見やえやすくなる。

昆虫を駆除しないことで生態系保護に貢献する、地球環境に配慮した虫対策機器を採用

夜間の屋外照明にはつきものになる虫問題に対して、SDGsの観点から生物多様性保全に貢献する製品を採用。通常の電撃殺虫器とは異なり、LED誘虫器「ムシキーパー」は紫外・青色のLEDにて虫を誘引、保持することで虫害を低減するため、虫を殺さずに自然へ戻すことができる。生態系の保護につながるだけでなく、虫の死がいの清掃作業も不要となった。また、電撃殺虫器のような高圧電流を流さないため、ジリジリという運転音もなくなり、閑静な周辺への配慮も両立することができる。

採用照明器具

光害対策

地域の賑わいをつくる球場として、光害対策で近隣との調和を図る

プロ野球の興行にも使用できる照度を確保する必要があったが、球場外には医療施設や田畑があり、光害に配慮する必要があった。そこで球場内のみを明るく照らし、球場外の特定の領域に漏れる光が、最大照度で1 lx以下となるように配光を制御。球場内は選手のパフォーマンスに配慮し、不快グレアを抑えた視環境となっている。

光害(ひかりがい)について詳しく見る

パナソニックの独自技術が詰まった投光器で、ナイターでも最大限のパフォーマンスを発揮できる球場に

照明鉄塔を直視した際のまぶしさを抑えるため、高輝度光源が塊にならないように配慮する必要があった。パナソニックは独自の配光技術により、狭角配光のLED投光器を実現。加えて、ウインク球場では照明器具全数にカットルーバーを装着し、配光角を更に絞ることで、グレア源の不要な重なりを減らし、照明鉄塔を直視した際のまぶしさを低減させている。球場内でプレーする選手が、ナイター環境でもまぶしさを感じることなく、競技に影響が出にくい快適な視環境を整えることができた。

高輝度光源が塊となり、選手のパフォーマンスを阻害する。
高輝度光源の塊がなく、本来のパフォーマンスを発揮できる

スコアボード

試合展開を盛り上げるだけでなく、地域の賑わいづくりなど、多目的に対応できるスコアボード

磁気反転方式からフルカラーLEDへリニューアル。用途に合わせてスコア表示と映像表示を切り替えることが可能であり、演出効果を高めるアニメーションも7種用意。ナイター照明6基とスコアボードの表示を連動させ、試合に付加価値をつけている。また流動文字によるメッセージ表示、カメラ映像表示、テレビ放送なども可能のため、様々なイベントに対応できるスクリーンとなっている。

 
大型ビジョンでのアニメーション演出。
ナイター照明との連動動作により、
演出照明とともに会場を盛り上げる。

3in1素子による、優れた混色性による色表現。
広視認性範囲に対応した、SMD仕様のスコアボード

赤・緑・青のLEDチップを1つの素子内に実装

赤・緑・青のLEDチップを1mm以下の間隔で素子内に実装されているSMD素子を採用。混色性に優れているため、至近距離からの視認に向いている。

1つのLED素子の中に赤・緑・青のLEDチップが全て入っている3in1タイプのLED素子

SMDならではの広い視認角度

SMDは視認角度が広いのが特徴。
砲弾型LEDと比較して、見上げ角度が厳しい設置条件にも対応できるようになった。

採用されたスコアボード

表示部 フリーボード部仕様
画面サイズ 横18.56m×縦5.76m 画面解像度 1,160×360
表示面積 106.9㎡ 画面輝度 6,000cd/㎡
発光方式 高輝度発光ダイオード
(SMD 3in1)
視認角度 水平±80°、
垂直上50°下70°
ピクセルピッチ 16㎜ 素子寿命 100,000時間
水平走査線数 360ライン 表示階調 65,536階調

物件情報

所在地 兵庫県姫路市飯田
施主 姫路市役所 観光経済局 スポーツ振興室
設計 株式会社 二神建築事務所
施工 株式会社 ハマダ
電気工事 株式会社 北山工商
竣工 2024年6月

採用照明器具

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