リニューアルコンテスト2024 脱炭素貢献賞地元専門家集団と連携して取り組んだ
三股町カーボンニュートラル実現計画

株式会社九南 リテール事業本部 都城リテール 次長 河野 孝洋様

地球温暖化対策実行計画の実現について相談を受け、
「民間提案制度」を活用してアイデアを募ることをご提案

弊社は昭和23年に宮崎県で創業し、今年で創業77年を迎えます。現在の従業員数は472名で、本社は都城市にあり、本店は宮崎市にあります。
公共事業から民間の電気工事まで幅広く受注していますが、九州電力様のお仕事が売り上げの約半分を占めています。私の所属しているリテール事業本部では、一般のご家庭向けに電気工事はもちろんのこと、リフォームなどの建築工事も請け負っています。
また、「エネルギー管理士」「一級建築士」「測量士」「宅地建物取引士」などの資格を持った社員も在籍しており、中でも国家資格である「エネルギー管理士」を取得している社員が3名いるのが強みで、省エネ診断やCO2削減のコンサルティングを行うことを得意としています。
さて、今回のリニューアル事例のテーマ「地元専門家集団と連携して取り組んだ三股町カーボンニュートラル実現計画」について、ご紹介させていただきます。
お客様は宮崎県の三股町様です。三股町は都城市に隣接しており、ベッドタウンとして発展。近隣都市に自動車で通勤する家庭が多いことから、「部門別排出量の中で運輸部門のCO2排出量が最も多い」「家庭部門のCO2排出量が全国平均を上回る」「自動車の使用率が宮崎県の平均を上回り、CO2排出量の要因となっている」という課題が生じていました。
三股町様からは、継続的に町立施設の電気設備のメンテナンス等のお仕事をいただいており、日ごろからおつきあいがありましたが、令和4年の秋に、「地球温暖化対策実行計画の実現」についてのご相談を受けました。自治体の政策に関わるとても大きなお話なので、正直、どうしていいのか悩み、不安感もありました。パナソニックの宮崎電材営業所の甲斐さんと相談しながら、いろいろと調べていたところ、他の地区で「民間提案制度」というものに取り組んでいるという情報を得て、「公募」という形で民間からアイデアを募ってみませんか、とご提案しました。これが、宮崎県初の民間提案「三股町脱炭素化推進に関する民間提案」の実現につながりました。
令和5年の秋にプロポーザルが実施され、5団体からの応募がありましたが、われわれ九南と、米良電機産業、パナソニックエレクトリックワークス社の3社で組織した「脱炭素きゅうなん隊」による提案が見事最優秀提案者に採択されました。

複数の補助金を組み合わせて町の財政負担を軽減し設備を導入。脱炭素化に貢献

採択後の令和6年春には、三股町様と脱炭素きゅうなん隊が連携して環境省の「重点対策加速化事業」に申請し、採択されました。交付金が6億円あり、交付期間は令和6年度から令和10年度までの5年間です。
令和6年には三股町様と「地球温暖化対策実行計画」の実現に向けた「包括連携協定」を脱炭素きゅうなん隊が締結し、7つの事業の実行に向けて推進することとなっています。今事業において活用する交付金は、再エネ交付金、重点対策加速化事業、地域レジリエンス交付金、学校環境改善交付金、脱炭素事業債等で、これらの補助金を組み合わせて活用することで町の財政負担の軽減に成功。総事業費は16億7000万円に上ります。初年度にあたる令和6年度の庁舎の事業では、再エネ交付金を活用して太陽光発電を導入。V2XスタンドとELSEEVも設置しました。町立体育館は照明をLED化しました。
今回のご提案では、自営線の設置についても提案いたしました。今後、他の町有施設においても、太陽光発電を設置していきます。これら太陽光で発電した電力の自家消費率を向上させる目的と、万一の災害時のレジリエンス対策として、自営線を新設し、役場庁舎・中央公民館エリア、総合文化施設・福祉施設エリアをつなぐことで、電力を融通しあうことをねらっております。

■自営線で公共施設をつなぎ、電力を融通

今回の成果は、脱炭素化、電気代削減、レジリエンス強化に貢献し、お客様の信頼をアップできたのはもちろん、若い社員がスキルアップし、提案力が向上したことは、何物にも代えがたいです。県内の他の自治体からも注目されたことで今後の水平展開も期待できます。
今後の課題の一つとして、太陽光発電設備によって発電した電力を平常時にいかに自家消費していくかというものがあります。三股町はベッドタウンであるため住宅に太陽光発電を設置して昼間にいくら発電しても自家消費ポテンシャルがありません。解決策の一つが、おひさまエコキュートの普及と考えています。太陽光発電の余剰電力を活用して昼間に沸き上げることにより、自家消費率の向上につながり、三股町の課題にフィットし、卒FIT対策にも効果的です。

5か年で5事業を順次脱炭素化。令和10年までにCO2排出量32,655t削減目標
5か年で5事業を順次脱炭素化。令和10年までにCO2排出量32,655t削減目標

さて、ここに至るまでには、実は長い道のりがありました。中でも大きかったのは、省エネルギーセンターの鈴木先生との出会いです。鈴木先生から省エネ診断の手法を学んだことで、弊社が自治体や企業に対する省エネコンサルを強みとするきっかけになりました。省エネ診断にはEMSが欠かせませんが、弊社が宮崎県内で唯一のエネマネ事業者となった背景には、パナソニックの支援がありました。
また、EV普及に欠かせないEV関連設備、V2X・V2Hへの取り組みにも弊社は力を入れています。社用車を順次EV車にしており、三股町・都城市・日南市の三市町とは弊社と日産自動車が災害連携協定を締結し、災害時は避難所の電源として社用車を提供します。従業員にもEV車を推奨しています。
今後もこうしたノウハウを生かし、脱炭素化に貢献していきたいと考えています。

お施主様の声

池田 大助様

三股町
環境水道課環境保全係 係長
池田 大助

九南さんは施設単体ではなく“町ごと”脱炭素の提案をしてくれただけでなく、プラスαの提案までしてくださいました。自営線で公共施設をつないで電力を融通するアイデアは九南さんならでは。複数の補助金や交付金を組み合わせる方法も教えてくださったおかげで財政的にも助かりました。地元での実績が豊富な九南さんと、全国で実績があるパナソニックさんのタッグは最強の組み合わせ。今後ともよろしくお願いします。

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