現場のお役立ちツール
2022年12月号 照明事業・電気設備における「BIM」への取り組みライティング事業部 エンジニアリングセンター 中央エンジニアリング部
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照明環境解析課
福島 -
照明環境解析課
亀井 -
照明環境解析課
山河 -
照明環境解析課
藤岡
日本の建設業界でも普及し始めたBIM。BIM対応ソフト向けにパナソニックの照明器具のデータ提供やソフトウェア開発を行っているエンジニアリングセンターの取り組みをご紹介すると共に、BIMの特長やメリットについても解説いたします。
照明空間のご提案からソフトウェア開発まで行うエンジニアリングセンター
―エンジニアリングセンターの主な事業を教えてください。
エンジニアリングセンター(EC)は、設計者様に様々な照明空間のご提案を行う部署です。その中でも中央エンジニアリング部は、提案に用いる理論構築や、データ、各種ツールのご提供を行っています。当課ではパナソニックの照明器具カタログに掲載されている配光データの配信や、ルミナスプランナーなどのソフトウエア開発を行っており、最近ではBIM関連の業務が増えて参りました。
BIM関連では、BIMソフト上で設計者に当社の照明器具を採用していただけるように、BIMで使用できる3D形状、器具写真や配光、光束値などの「データ」や、照度分布図作成などの「ツール」をご提供しています。
BIMと従来CADとの違い、BIMでできること
―BIMとはどのようなものでしょうか。従来のCADとの違いは何でしょうか。
BIMとは「Building Information Modeling」の略称で、建築の意匠、構造、設備(電気設備・機械設備)のすべての設計データを見ることができる3次元のモデルです。作成には専用のソフトウェアが必要です。BIMには1つの建築物に関わるすべての情報を集約できるため、設計から施工、維持管理までのあらゆる工程で活用することができます。あらゆる人々が同じデータを活用することで関係者間の不整合や手戻りを防ぎ、業務の効率化をはかることを目指しており、これから日本でも主流になっていきます。従来CADで作れるのは図面とCGパースくらいであることに対し、BIMではそれらに加えて、機器に付随する属性データを活用して、解析に用いたり、発注書、見積書、確認申請書類などの様々な資料を作り出すこともできます。なお、電気設備設計においては、この属性情報が最も重要であるため、BIMの属性情報に対応した「設備CAD」が広く使われ始めています。照明器具を例にあげると、属性情報にはメーカー名、品番、価格、商品写真、配光データ、材質、サイズなどのあらゆる情報を付加できます。従来であれば図面の作成者がそういった各データをWEBなどからダウンロードしたり別の資料から引用して貼り付けていく手間がかかっていたのですが、BIM・設備CADの属性データにはあらかじめそういった情報が含まれているため手間を省くことができます。
BIMにおける照明環境解析課の取り組みとは?
―データ制作と設計ツール開発とは具体的にどんな取り組みをされているのですか。
現在、約35,000品番の照明器具BIMデータを作成し、ご提供しています。これは施設屋外店舗照明カタログのほぼ100%にあたり、一部は当社ホームページからのダウンロードも開始しています。毎年新商品が発売され、終了品番も出てきますが、当課ではサーバを通して各社のBIM・設備CADで自動的に更新されるシステムを構築しています。また、当課にはルミナスプランナーのような照明設計ソフトウェアを自社で開発してきたノウハウがあるため、BIM・設備CADに向けても照度計算や所要照度配置といった設計ツールを提供しております。
BIMのメリットとは?ZEBやZEHでは活用が欠かせないものに。
―BIMは現在どの程度普及しているのでしょうか。電気工事会社様や施主にとってのメリットは何でしょうか。
BIMが日本で扱われるようになったのは2000年代に入ってからのことですが、本格的に普及しはじめたのはここ数年です。国土交通省が普及に向けて実証事業を積極的に行っており、国土交通省が発注する案件は今後すべてBIMデータを提供する必要があります。そういった流れで昨年あたりからゼネコン様やサブコン様が扱うCADソフトの約4割がBIMソフトと連携できる設備CADになり、その連携機能も日々進化を遂げています。
BIMを施工側の立場から見ると、配管や配線がすべて建物の中で立体的に可視化して検討することができるので、事前に工程や工数の把握が容易になりますし、自動化・省力化にも必要不可欠です。施工面だけでなく、建物全体の消費電力量や換気量、風量などの情報も盛り込めるのでZEBやZEHの設計には大変有効で今後欠かせないものとなるはずです。
また、施工結果をBIMデータに反映することで、その後の管理・運用には欠かせない有用なデータとして活用できる可能性も生まれます。電気工事会社様はこのようなメリットをBIMによって享受できるお立場にあります。
日本でBIMがなかなか定着しなかった理由のひとつに、日本の施工業者がとても優秀で、図面ではわからないことや図面と現場が食い違うことがあっても、これまでの知識や経験で対応できたことが挙げられます。アメリカなどBIMが既に主流になっている国では、現場にそのような対応力がなく、BIMを利用することで細部まで情報を付与し図面が完璧である必要があります。
日本も少子高齢化の影響で、人材不足や経験不足の問題が深刻化しつつあります。電気工事業界にとっても同様であり、 そういった点を補えるBIMの普及は電気工事会社様にとっても活用次第で好機となります。
施主様にとってもメリットはあります。BIMデータがあれば建物の改修や設備更新時に現況を把握しやすくなり、リノベーションがしやすくなったりコストダウンにつながる可能性があります。例えばマンションの場合、マンションの購入時にBIMデータも付随すれば、リノベーションする際にデータを更新して常に最新の状態を保つことができます。そういったことがマンションの付加価値をあげることやライフサイクルコストの低減につながると考えられます。
公共工事を扱っておられる電気工事会社様に限らず、今後はすべての電気工事会社様にとって、BIMの動向把握は欠かせないものになってきます。ぜひご注目いただきたいと思います。
お問い合わせ先
ライティング事業部 エンジニアリングセンター 中央エンジニアリング部
照明環境解析課
E-mail: support2@ml.jp.panasonic.com
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