計画初期段階にVRを採用
広島駅前整備計画との関係性を検証日本郵政株式会社様 [東京都]

  • 武田 雅志様

    日本郵政株式会社
    施設部 開発設計グループ
    マネージャー
    武田 雅志

約100年にわたり広島駅前の郵便局として多くの方々に親しまれてきた旧広島東郵便局の跡地に、2022年8月に開業された広島JPビルディング。
パナソニックの環境計画支援VRとLED照明器具をご採用いただき、計画初期段階からVRを活用して照明設計や夜間景観を計画され、駅前整備の計画も見据えた検討を行われています。
基本設計を手掛けられた日本郵政株式会社の武田様にお話を伺いました。

約100年の歴史がある駅前郵便局を複合オフィスビルに

日本郵政株式会社施設部様は、130年以上にわたり日本郵政グループのインハウス建築集団として、郵便・銀行・保険の3事業を支える建築を手掛けてこられました。2007年の民営化後は、日本郵政グループが所有する不動産を活用した商業施設やオフィスビル、ホテル、集合住宅等の不動産開発にも事業を拡大されています。
JR広島駅前に2022年8月に開業された広島JPビルディングもその一つ。約100年にわたり広島駅前の郵便局として多くの方々に親しまれてきた旧広島東郵便局の跡地に、約10年の構想を経て完成した地上19階建の複合オフィスビルです。外観は「水の都ひろしま」の市内を流れる河川の水面やその周辺に整備された美しい河岸緑地をイメージ。1階に郵便局、1階と2階にテナント、3階~5階に駐車場、6階にテナント専用の食堂、7階~19階が賃貸オフィスとなっています。
「元々、郵便物は貨物列車を使って運搬していましたので、郵便局は駅前の一等地にあることが多かったのですが、輸送手段がトラックに代わり、大きな郵便局が駅前にある必要がなくなりました。そこで、駅前という地の利を活かして複合ビルへの建て替え計画を全国で進めています。その際に大切にしているのはまちづくりの視点です。郵政のビルがまちのランドマークになり、まちの魅力をアップさせながら、郵政としても収益を上げることが使命であると考えています」と、武田様は語られます。

※総合設計制度とは、敷地面積が一定規模以上で、敷地内に一般に公開された空地を確保するなど、市街地環境の整備改善に役立つと認められる建築物について、建築基準法による容積率、高さに関する形態規制の一部を緩和することができる制度のこと。

照明計画、行政との合意形成からテナント誘致まで幅広くVRをご活用

建物外観のライトアップ、外構から屋内空間に至るまで、照明にはパナソニックのLED照明器具をご採用いただきました。また、UR都市機構様が構築(パナソニック作成)されていたVR ( Virtual Reality System)を用いて、計画初期段階に隣接することとなる新駅ビルとの関係性や夜間景観をシミュレーションするなどパースでは検証できない点をご確認いただきました。
UR都市機構様のVRをベースに広島JPビルディングのVRを作成する提案をパナソニックより受けて、採用を決められましたが、当初は、広島市内の街が再現されているVRを、行政との合意形成に役立てようとお考えだったと武田様はおっしゃいます。「当ビルは、総合設計制度※を用いて計画しており、敷地内を歩行者が自由に通行したり利用したりできる公開空地を設ける必要がありました。パナソニックからVRをご紹介いただいた時に、行政との合意形成に役立つと思い採用させていただいたのですが、当社内での合意形成や、ライトアップのシミュレーションなど、幅広く役立てることができました。また、設計が終わった段階で完成予想に近い形のものをVRで作って、さらにデータを再編集して動画も作っていただき、テナント誘致の説明会の際に活用することができたことも、結果的にとても良かったと思っています」。
広島JPビルディングは、2025年に完成に向けて現在建設中の駅ビルの2階とべデストリアンデッキでつながる予定です。駅と直結することで、歩行者ネットワークによる回遊性とにぎわいの創出が図られており、テナントにとっては、集客が見込めるビルとなります。「どういう風につながるのか、動画でわかりやすく見せることで、テナント様とイメージ共有することができました」。

照明設計にも広島らしさを表現
VRやモックアップでシミュレーション

広島JPビルディングには、建物の外観デザインだけでなく、照明設計にも、広島らしさが随所に表現されています。駅前のシンボルとして地域に親しまれるように、との思いから、夜間は3000Kの暖かみのある色温度でライトアップ。低層部分には、旧広島東郵便局を想起させる建築意匠である水平方向に伸びる庇が採用されており、ライトアップすることで強調され、夜間景観を特徴づけています。また、最上階のフィンにも横方向に照明器具を組み込み、動きのある照明演出で広島らしさを表現されました。
「パナソニックにはいろいろな部位で原寸大のモックアップを使って検証を重ねていただいたり、VRによるシミュレーションも行っていただいたことで、色温度、光の当たり方、影の出方、器具の形状などをしっかり確認することができ、精度の高い照明設計が実現できたと思っています。外観のライトアップに関しては、最終的にパース通りになりました。ビルの前の緑化スペースは、市民の方が昼間も夜間もくつろいでいただけるような空間を目指して設計しており、樹木を照らしたりして良い雰囲気になるような照明計画を考えていただきました。今回、スマートアーキのまぶしさを抑えつつも照度を確保できるシャープなデザインの照明器具を提案していただき、市民の方への安全性にも配慮することができました」と武田様は語られます

更新を重ねることで様々な用途に活用できるVR

VRの魅力は、更新を重ねることで、計画段階の様々な場面で幅広く活用できること、と武田様はおっしゃいます。「今回はVRを約5年間、更新を重ねて活用しました。まち全体からビルがどう見えるか、ビルからまちがどう見えるかといった大きな範囲での検討から、ビルに設備やモノを配置したときの検討まで、VRは様々なシミュレーションができます。設計が専門外の方とはイメージ共有ができ、話の潤滑油として合意形成に役立つだけでなく、専門家が設計の精度を高めるのにも非常に役立つことがわかりました」と武田様。「郵政の所有する土地・ビルは全国にあり、各地で再開発が続きます。今後もVRの採用を検討し、地域の人々に親しまれるビルの設計に役立てたいと考えています」と語られました。

左は日本郵政 武田様
右は当社 上田

広島JPビルディングにて採用されているパナソニックの照明器具

6~19階の高層部はフィンに建築化照明アーキライン(特注品)を仕込んだ縦の光で上昇感が与えられている。

低層階ではセットバックによる公開空地の植栽を照らし、中層部は軒下へのライトアップにより横基調の意匠を強調。

公開空地では軒下を照射して明るさ感を確保し、人々が夜間に訪れて寛げる雰囲気を醸成。
ベンチの間接照明が滞留を促している。

エントランスには下への配光でまぶしさを抑え、建築に溶け込むシンプルなデザインのSmartArchiシリーズの
フットスタンドライトを採用。
植栽をライトアップするスポットライトや階段を照らすフットライトもSmartArchiシリーズで統一。

2階のテナントエントランスには、 18万2千枚もの切手サイズの手漉き和紙を貼りあわせ、
瀬戸内海の多島美の風景を印象的に表現した内照式の壁を設置。
壁面内にダウンライトを連灯設置し、1灯ずつ細かく調光制御をかけることで明暗をつけ、
光のゆらぎで瀬戸内の海や雲を表現。

エレベーターホールは広島の戦国武将毛利元就が提唱した「三本の矢」がモチーフ。
建築化照明器具で照らすことで、三本のラインが浮かび上がり、美しい光を放つ演出に。
天井にはSmartArchiのグレアレスダウンライト採用。

6階のテナント専用食堂では時間帯に応じて適切な調光制御を行い、テナント入居者が快適に過ごせる空間を提供。

食堂とつながる屋外カフェテリアは、夜間に落ち着いた雰囲気を醸し出すライトアップ演出を行い、
屋内外の連続性を持たせた憩いのある空間を創出。

廊下は建築化照明器具C-Slimを採用。壁面の照明のみで最低限の照度と空間の明るさ感を確保。
空間の明るさ感指標Feuを用いた輝度設計を行うことで快適性と省エネを両立。

7階~19階のテナントオフィスフロアにはシステム天井用照明器具を採用。
床面照度と机上面照度のシミュレーションを提出し、ご検討いただいた。昼間は昼光利用で照度を70%に抑え省エネ化。
壁際をTOLSOのコンフォートタイプのダウンライトで照らし反射光で輝度をアップすることで、
落ち着いた雰囲気を演出するとともに明るさを補っている。

環境計画支援VRについて

https://www2.panasonic.biz/jp/lighting/vr/

広島JPビルディングの照明演出動画や、照明設計の詳細がご覧いただけます

照明設計事例 LIGHTING STYLE「広島JPビルディング」»

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