特別インタビュー EV充電設備の社会インフラへの実装をめざして

  • 吉田 成男様

    一般社団法人
    電動車両用電力供給システム協議会
    代表理事
    寺澤 章

  • 小池 武徳様

    一般社団法人
    電動車両用電力供給システム協議会
    事務局長
    海老塚 正行

2050年カーボンニュートラル達成に向けて、国は2035年までに新車販売で電動車※1率100%を目指しています。
それに伴い、EVの充電インフラの整備についても、従来の15万口から倍増させ、2030年までに30万口の設置を目標に設定しました。今回、一般社団法人 電動車両用電力供給システム協議会 EVPOSSA(イーブイポッサ)代表理事の寺澤章様と事務局長の海老塚正行様に、普通充電設備の普及状況や今期の補助金、今後の動向等について、お話を伺いました。
※2024年3月現在の内容です。補助金の額や時期などの記載内容は変更となる可能性がございます。

メーカー、施工業者など34社が参加する業界団体 EVPOSSA(イーブイポッサ)

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    はじめに、貴協議会の概要についてお聞かせください。

寺澤様:当協議会はEV充電設備の普及に向けて、国が業界団体の立ち上げを主導しパナソニックを含めた関連事業会社9社で立ち上げたのが始まりです。2012年4月に設立され、2024年で12年を迎えます。現在は機器メーカー、部品メーカー、施工業者、サービス事業者など34社で構成されています。会員の種別は、幹事正会員、一般正会員、賛助会員があり、パナソニックは幹事正会員5社のうちの1社です。
EV充電設備には、普通充電設備と急速充電設備があり、当協議会は普通充電設備の業界団体です。急速充電設備の業界団体に関しては「CHAdeMO協議会」があります。
当協議会の主な活動は「普及促進部会」と「技術課題検討部会」において進められています。「普及促進部会」では、EVへの電力供給システムをどのように普及させていくか、補助金施策や制度設計の建て付けをどうすべきか国に提言したり、展示会に参加していろいろなメーカーさんのEV関連製品をご紹介したりしています。
一方、「技術課題検討部会」では、国内でEV充電設備を製造する際や海外製品を国内向けにアレンジする際のガイドラインを策定し、有償で販売しています。当然ながら、電気安全法や内線規程に対応してガイドラインも都度変更していかねばなりませんし、トラブル事例を共有することもあります。
活動においては日本自動車研究所(JARI)との連携はもちろん、経済産業省、国土交通省、 CHAdeMO協議会、日本自動車工業会(JAMA)のほか、電気設備学会、住宅業界、電気工事業界とも必要に応じて連携しています。

2030年までにEV充電器計30万口の整備を目指す

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    現在の電力供給システムの普及台数について、教えてください。

海老塚様:下記の「交流普通充電装置」と「充放電装置(V2H、V2L)※2」の累計出荷台数の統計データをご参照ください(下グラフ)。
データについては、当協議会に所属されている企業様の実績数値ですので、国内市場全体のボリュームとは多少差異がありますが、補助金が出るタイミングで台数が伸びていることがデータからわかります。

―政府が掲げている目標値を教えていただけますか。

海老塚様:経済産業省が2023年10月に示した「充電インフラ整備促進に向けた指針」では、2030年に向けて充電インフラ30万口の整備を目指しています。これは従来の15万口から倍増した数字です。ちなみに充電設備を「口」とカウントするようになったのは2023年(令和5年)度からで、プラグ数(何台のEVを充電できるか)を指します。1基に2口以上の充電口をもつタイプが増えてきたことから、数え方が「基」から「口」に変わりました。

※1 電動車(xEV):BEV・PHEV・HEV・FCEVの総称。
※2 V2H:Vehicle to Homeの略で、EVやPHEVに搭載されているバッテリーで蓄えた電力を家庭で使用するシステムの総称。
V2L:Vehicle to Loadの略で、EVなどの大容量電池を搭載する電動車から家電機器などに給電を行うこと。

※3 引用元 電動車両用電力供給システム協議会(EVPOSSA)この統計はEVPOSSA加入企業の実績数値に基づく台数です。

設置場所が幅広く、口数も多い普通充電器

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    「充電」や「充電設備」の種類について教えてください。

海老塚様:まずEV充電には、「基礎充電」「経路充電」「目的地充電」の3つの分類に分けられます。
「基礎充電」とは、電気自動車の所有者の自宅や勤務先など、車両の保管場所で行う充電をいいます。
「 経路充電」とは、長距離ドライブや運送などを行う際に経路の途中で行う充電をいいます。
「目的地充電」とは、商業施設や宿泊施設など、長時間滞在する移動先での滞在中の駐車時間に行う充電のことをいいます。
EV充電設備には、大きく分けて「普通充電設備」と「急速充電設備」の2種類があります。

EV充電の種類

「普通充電設備」は、自宅や勤務先などで8時間以上の長時間かけて行う「基礎充電」や、商業施設などの滞在先で数時間かけて行う「目的地充電」向けの充電設備です。
一方、「急速充電設備」は、高速道路のサービスエリアや道の駅などでの「経路充電」を対象としており、高出力で30分~1時間程度の短時間の充電を行います。
経済産業省が発表した指針において、2030年までに整備を目指す充電設備30万口の内訳は、公共の急速充電設備が3万口で、それ以外の普通充電設備を27万口に設定しています。
電気自動車の普及には、EV充電設備が欠かせないわけですが、現在、基礎充電ができる普通充電設備の設置数が圧倒的に不足している状況です。

充電設備の種類

2024年(令和6年)度予算案に360億円の補助金を計上

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    EV充電設備の普及を促す政府の政策について、お聞かせください。

寺澤様:EV充電設備の設置を後押しする政策として大きなものに、経済産業省の「クリーンエネルギー自動車の普及促進に向けた充電・充てんインフラ等導入促進補助金」があります。 募集対象は、「急速充電器」「普通充電器(基礎)」「普通充電器(目的地)」 です。「急速充電器」は50kW以上のみが対象です。 「普通充電器(基礎)」の対象は、既築集合住宅に限ります。これは、戸建住宅や新築集合住宅に比べて既築集合住宅での設置が進まないことに対する対策です。マンション等の既築集合住宅に設置するには、管理組合で決議する必要がありますが、自動車自体を所有していない住民の方も多く、設置が進みづらい背景があり、それを後押しするための補助金要件です。既築集合住宅に限定さ れるのは第1期のみの予定です。
口数に関しては、戸建住宅なら通常は1口ですが、商業施設や企業、集合住宅では1基に2口つける事例が増えてきています。コストパフォーマンス面から考えても2基設置するより1基に2口つけたほうが効果的です。
補助金の額については、2023年(令和5年)度の予算は約175億円でしたが、4月に申請受付をスタートしたところ5月~6月に申込が殺到し限度額に達して満了となりました。2023年(令和5年)度補正予算で105億円が追加され、2024年(令和6年)度当初予算では255億円が投入される予定です。 補助金では、工事費の100%と機器代金の50%が助成されますので、電気工事会社様にはぜひ活用ご提案いただきたいと思っています。

補助金の内訳グラフ
令和5年度補正・令和6年度当初案の予算配分内訳グラフ

申請期間が3期に分かれ年間を通して補助金申請が可能に

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    2024年(令和6年)度の補助金の特徴は?

海老塚様:スケジュールが3ターム制になることが大きな特徴です。おおよそのスケジュールの目安をまとめたものが下記の表です。
2024年(令和6年)3月から第1期の申請を受け付け、交付決定が5~6月。その2ヵ月遅れで、それぞれ第2期、第3期が実施されるというスケジュールです。 従来は4月に受付をスタートし限度額に達した時点で終了でしたので、3期に分かれたことで年間を通して申請が可能になり、補助金を受けるチャンスが増えますので、ぜひ活用をご検討いただければと思います。

令和6年度の補助金スケジュール(目安)

海老塚様:こうした補助金のルールづくりなどの政策に対し、当協議会は会員企業様や一般ユーザーの皆様の意見を集約して、提言を行っています。政府はこの提言や意見を適宜取り入れて、予算案やルール改定の参考にしていただいています。

協議会では施工に関するガイドラインなどの最新情報を共有

当協議会の一般会員になっていただくと、補助金についての最新情報を入手できるほか、施工に関するガイドラインや、EVと充電設備の互換性に関する技術資料なども無償でご覧いただくことができます。また、電設工業展(JECA FAIR)など各種展示会にも、当協議会のブース内で無償で出展もできます。
既に数社の電気工事会社様には、会社の規模にかかわらずメーカー様やサービス会社様等と同様に一般会員になっていただいております。先見性をお持ちの電気工事会社様は、EV充電設備の可能性を敏感に感じ取られ、既に多くのビジネスチャンスを掴もうとされています。
ぜひこの機会に多くの電気工事会社様に当協議会にご入会いただき、EV充電設備の普及に向けて、共に取り組んでいただければと思っております。

EV充電器は右肩上がりの“旬”のビジネス

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    最後に電気工事会社様にメッセージをお願いします。

海老塚様:EV充電設備はひと言でいえば“旬”のビジネスです。2050年カーボンニュートラル達成に向けて、電動車の普及はマストであり、並走するかたちでEV充電設備も2030年までに30万口を目指して整備計画が練られ、実現に向けた補助金も投入されていきます。人口減少や過疎化、高齢化などで既存のビジネスに先行きを見通せない中で、V2Hなど電力の自家消費やレジリエンス性を可能とする商品も含めて、これほど先行きに需要が期待できる市場は少ないと思います。電気や水道と同じく、不可欠なインフラ設備として今後加速化して社会に実装されていくものと考えています。
全国の電気工事会社様には当協議会と共にEV充電設備の普及に取り組むことで、ビジネスチャンスを拡げていただきたいと願っています。

寺澤様:EV充電設備は今後ますます高容量化、高出力化と共に従量課金を実現する特定計量制度の活用や遠隔制御など高機能化していきます。メーカーおよび協議会としては、電気工事会社様が安全に施工していただけるよう、ガイドライン策定に努めて参ります。電気工事会社様におかれましては、補助金も活用いただきながら、積極的なご提案にお取り組みいただきますようお願いいたします。

一般社団法人電動車両用電力供給システム協議会

ご入会について詳しくはHPをご覧ください。

https://evpossa.or.jp/

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