電気工事会社様の人財育成への新たなお取り組み
東陽電気工事株式会社様 [福島県 西白河郡]

東陽電気工事株式会社

東陽電気工事様のインタビュー動画を1月中旬ごろ公開予定!
研修棟の内部や研修の様子などもご紹介いたします。

  • 石川 格子様

    東陽電気工事株式会社
    代表取締役
    石川 格子 様

  • 小松 孝行様

    東陽電気工事株式会社
    電気工事士
    グループマネージャー
    小松 孝行 様

  • 近藤 あゆみ様

    東陽電気工事株式会社
    工事部
    近藤 あゆみ 様

  • 高橋 治生様

    東陽電気工事株式会社
    工事部
    高橋 治生 様

  • 菊池 楓希様

    東陽電気工事株式会社 工事部
    菊池 楓希 様

福島県西郷村にある社員12名の東陽電気工事株式会社様は、現在、多方面から注目を浴びています。
「安心して失敗できる環境」を若者に与えたいと、2021年に敷地内に研修棟を建設され、自社の新入社員のみならず、高校生や外部の社員向けにも独自プログラムで受け入れておられます。ほかにも画期的なたくさんのお取り組みをご紹介します。

創業90年の電気工事会社を30歳で異業種から事業継承。
人材不足の壁に直面

福島県白河地区を拠点とされる東陽電気工事株式会社様。1933年に東光電気工事株式会社様の白河出張所として現社長の石川格子様の御祖父様が創業され、1965年に御父様が会社を設立。2013年に現社長の石川様が社長に就任されました。昨年は創業から90周年、来年は会社設立から60周年の節目を迎えられます。
石川様は三姉妹の末っ子。「父は息子が生まれたら継がせるつもりでいましたが、娘たちには継がせるつもりもなかったようで、私も特に家業を気にすることはなく、高校を卒業すると横浜の大学に進学しました」とおっしゃいます。
大学時代は心理学を専攻、卒業後は英語の塾講師の職に就かれていましたが、業績不振と体調不良から御父様が会社を畳むことを考えられていると知り、ご自身が継ぐことを決断。2010年に入社されました。
入社後は、経理や営業、現場も一通り経験されましたが、業界の知識も経験もなく、社内でも社外でもなかなか認めてもらえなかったと当時を振り返られます。そこで、電気工事士第二種、第一種を取得後、1級電気工事施工管理技士も取得。やっと周囲から認められるようになり、さらにはMBA(経営学修士)も取得されました。しかしながら業績が少しずつ上向いていく一方で、社員がなかなか定着しないという悩みに直面されました。中堅も、若手も、辞めていく。これではいけない、とグループマネージャーの小松様とともに考えられたのが、「研修」の在り方でした。

資材置き場の一角に最初に設けられた研修設備。

現場で必要なことがすべて詰め込まれた小松様お手製のブラックボックスタワー。

時代にあった研修の必要性を感じ研修棟の設立へ

「これまでの電気工事業界は、高校の電気科を卒業した人を採用し、入社してすぐに現場に同行させていました。ですが現場のことは全くわかりません。先輩は忙しいので何も教えてくれない。わからないからおもしろくない。そばで見ているだけでは覚えるまでに何年もかかり、それまでは指示された道具を運んだり、清掃などの雑用が多く、やりがいも感じることができず、やめていくのです。加えて、今の若者は学校教育の変化や情報化社会の影響などもあって、社会に出るまでに失敗する経験が少なく、失敗することを怖れる傾向があります。ですから『若者が安心して失敗を体験できて、そこから学べる環境』をつくりたいという思いがありました。まずは手始めに敷地内に小松が手作りで研修設備を設け、業務の合間に新入社員に指導を始めました」。
成果はすぐに表れました。小松様もご自身が新人の頃に失敗したことや現場でなかなか理解できなかったことなど、伝えたいことがどんどん増えていきました。そこで敷地内に「研修棟」の設立を計画。構想から約10年を経て2021年、現場を想定した鉄骨造の2階建てで延べ床面積は約70㎡の研修棟が完成しました。天井墨出、立板電気回路製作、ケーブルラック、レースウェイの研修や机上学習などができる機能を備え、電柱や信号機なども設置されています。「あれもこれもと考えているうちに予算が膨れ上がりましたが、幸い銀行から資金調達もでき、将来への先行投資として思い切ることができました」。

  • 研修棟1階内部

  • 照明器具取付実習設備

  • ケーブルラック配線と盤内接続実習設備の確認表示灯

電柱や信号機も兼ね備えた内部。天井中央は小松様自作のペンダント。

壁・天井のモックアップ。アクリルを壁に見立て、内部が透けて見えるようにしている。

「当社に入社した新入社員は、2か月間まずここで研修を受けます。さらに1か月間、当社がパートナー企業として加盟している東光電気工事様のつくばセンターにて研修を受けさせています。初めて親御さんから離れて過ごす社員がほとんどで、ここで親のありがたみを知る良い機会にもなっています。
3か月も研修を受けると、初めて現場に立った時の理解度が全然違い、即戦力になります。研修棟が完成した翌年に思い切って6名採用しましたが、2年を経て5名が今も在籍しています。そしてそのうちの一人である近藤は、当社から初めて電気工事技能競技全国大会への出場が決まった女性社員です。彼女は電気科とは別の学科でしたが、高校時代に当社の研修を受講したことがきっかけで入社した社員です。現在、研修棟の一部を大会用に改造し、小松の指導のもと、本人自ら土日もここで練習しています」。
また、研修制度の導入には、思わぬ波及効果もあったと小松様は語られます。元々人と話したり説明をしたりするのが苦手だった小松様が、新入社員への指導を通じてコミュニケーション力がアップし、お客様との会話に対する苦手意識がなくなりました。ほかのベテラン社員の方々も小松様に協力してくださるなど、社内の結束力も高まったとのことです。
東陽電気工事様では、自社の新入社員だけでなく、外部の新入社員研修も受け入れておられます。また、地元高校生向けの研修もされています。「自社だけで使用するのではなく、業界の活性化のためにも、みんなで共有したいという思いは当初からありました。また、高校生に本格的な研修を体験してもらうことで、人材確保にもつながっています」。

高校生向け研修プログラムの様子

高校生向け研修プログラムを受講中の白河実業高等学校の生徒さん。この日は1年生2名と3年生1名が受講。3年生の生徒は東陽電気工事様に内定している。

毎回異なる内容のプログラムを年に10回実施。受講回数は自由。朝8時半~夕方4時まで行われている。

高校生に指導する入社1年目の渡辺様。ご自身も2年前、高校生の頃この研修棟で研修を受け、入社を決めた。

研修棟2階で研修中の1~2年目社員の様子

人感スイッチ付トイレ照明の配線工事練習風景。センサの有無でケーブルの本数が変わることを体感。
この日は入社1年目の社員が現場代理人役となり、2年目社員に指示を出す訓練。

現場作業は長期にわたることも。例えば何かの事情で担当者が現場に行けなくなったときに工事内容を引き継げるよう、誰が見てもわかるようにケーブルに何の配線かがわかるように書き込むことの大切さも研修期間中に伝えている。

離職率低下のための様々なアイデア。
そのひとつとして家族向け冊子を発行

研修以外にも、社員の離職を予防する方法はないか、考えをめぐらせた石川様は、社員のご家族にお仕事内容を伝えることを思い付かれました。「NEWS LETTERは一般的には社外に向けて自社をPRすることの方が多いかもしれませんが、当社では、社員の家族にアピールすることを目的に毎月1回発行しています。先月のできごとや、今月の予定などが主な内容ですが、イベントなどの全体行事だけでなく、誰がどこの現場でどんな工事をしましたといった詳細をお知らせすることで、ご家族に社員の活躍を伝えています。資格試験の日程表なども掲載することで、家族が勉強のサポートをしてくれるようになったり、今まではあまり快く思われていなかった残業に対しても応援してくれるようになったと聞いています。こうした家族の支援を得られることで、離職率の低下につながっていると感じています」。

社員の家族向けに月1回発行しているNEWS LETTER。
社員に1部手渡しすると同時に、家族に渡し忘れることのないよう、自宅宛にも郵送することで確実に届けている。
左の表紙は小学3年生(9歳)で第一種電気工事士に合格した石川社長のお嬢様である禾奈子さん。

社員のモチベーションアップにもつながった写真入り名刺

営業ツールとして、必須の名刺についても、石川様のアイデアが光っています。同社では官公庁のお仕事が多く、役所に営業に行かれることも多いのですが、近年は直接挨拶させていただける機会が減っています。名刺BOXに名刺を投函するだけになっているため、顔を覚えてもらうために顔写真入りの名刺を作成することを考案されましたが、「同じならカッコよく作ろう」と、カメラマンに撮影を依頼。名前だけでなく、プロフィールや趣味なども掲載することで、印象を残すことやイメージアップを図っています。
営業ツールとして作成した個性的な名刺は、思わぬ派生効果もあったようです。入社2年目の高橋様は「こんな名刺は誰も持っていないので友人にも自慢していて、仕事のモチベーションも上がります」とおっしゃいます。「こんな名刺を持ちたい」という人材確保にも効果がありそうです。

同社事務所の受付に並べられている社員の名刺。スイッチやケーブルなどの部品で作ったマスコットも添えてお客様をお出迎え。

横顔や後ろ姿など、さまざまなポーズで撮影して、本人が気に入ったカットを名刺に。

トレカを模したカードも作成。

SDGsにも力を入れ地域を巻き込んでイベントを開催。世界基準の認証も取得

同社では、SDGsにも力を入れています。きっかけは石川様の小学生のお嬢様が学校で学んできたSDGsに対する質問でした。「せっかくなら、地域でみんなで勉強しよう」と地域の会社や店舗に声をかけて、地域ぐるみでイベントを開催されました。SDGsに対する取り組みは高く評価され、世界的な認証制度である「B Corp」認証を受けています。2024年11月時点で日本法人のB Corp認証取得企業は48社で、東北では唯一の企業です。「東北の小さな村の企業でも世界が認める企業だと社員が誇りを持てる会社でありたい」と石川様は語ります。

研修棟に設けられたカウンターコーナー。軒下には社員が自作したペンダント。内部はミニキッチンになっており、イベントの際はここからドリンクや軽食をご提供。パナソニックのスピーカー付ダウンライトで音楽の流れる心地よい空間を演出している。

電気工事関連以外にもさまざまな資格を取得。

性別に関係なく、事業継承する時代へ

「人材確保や事業継承について、日本中のどこの電気工事会社様も悩んでおられると思いますが、採用の基準は、専門性だけでなくフィーリングも大切にしています」と石川様。
その結果、採用された入社2年目の菊池様は専門学校でIT関係を専攻されていましたが今では「小松さんを超える電気工事士になりたい」との意欲で日々仕事に励んでおられます。小学生のお嬢様は2歳の頃から会社に連れて来られ電気工事の仕事に触れていたことで、将来の夢は電気工事士。第二種電気工事士の資格も既に取得されています。また、同社では社員12名中、5名が女性社員です。性別や専攻に関係なく、幅広く人材を育てることが人材確保や事業継承につながる、というのが石川様の考えです。
「当社は社員数や売上高などの会社規模をもっと大きくしたいという目的でやっているわけではなく、事業を継続し、地域や業界全体を盛り上げたいという思いで、人材育成に力を入れています。皆様もそれぞれ抱えていらっしゃる課題があると思いますが、長い目で見て電気工事業界を盛り上げていけるような会社づくりをお互いにしていけたらなと思っております」とお話しくださいました。

左から東陽電気工事 石川様、小松様、高橋様、菊池様、田邊様、渡辺様、近藤様、我妻様、
右端:当社福島電材営業所 保田

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