次世代照明制御システム「DALI」の現状とこれから
住友電設株式会社様[東京都港区]

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    住友電設株式会社
    施設統括本部 東部本部
    原価企画統括部
    設計積算部 設計課
    主席 谷沢 治之 様

LED照明の普及が進み、さらなる省エネ化をはかるための方法として、調光制御が推奨されています。
そこで注目されているのがDALI(Digital Addressable Lighting Interface)制御システムです。
DALIの現状とこれからについて、住友電設株式会社の谷沢様にお話を伺いました。

照明の調光制御に特化した
国際標準規格「DALI」

―はじめに、住友電設株式会社様の概要について、お聞かせください。

谷沢様:弊社は、1950年創業の総合エンジニアリング企業として、電気工事、情報通信工事をはじめ、電力、空調、プラント等の設備工事全般を国内外において手掛けております。また、蓄電池、再生可能エネルギー、グリーン水素製造設備給電などにも力を入れています。私の所属する部署では、主にビル、工場、倉庫、研究所、病院、商業施設、空港、駅などの内線工事の設計を行っています。

―「DALI」とはどういったものか、初めて聞く方にもわかりやすくご説明ください。

谷沢様:DALI(Digital Addressable Lighting Interface)は、1990年にヨーロッパの主要照明メーカーであるPhilips(オランダ)、Osram(ドイツ)、Helver(フィンランド)、Tridonic(オーストリア)によって、発表された照明制御用の国際規格IECに準拠したオープンプロトコル※1です。DALIはヨーロッパでは、すでに広く普及しており、2017年には市場シェアの70%を占め、2024年には80%近くに達すると予想されていました。また、アメリカやアジア地域でもDALIの普及が進んでいますが、日本国内でのDALIの普及率はごくわずかな状況です。その理由については後述します。
DALIによる照明制御の方法は、照明器具に通信チップを搭載し、双方向通信を通じて点滅、調光、調色を個別に制御する仕組みです。通信チップを持たない照明器具でも、DALIドライバー※2を介することで、回路ごとの制御が可能になる場合があります。ただし、互換性については、各器具の仕様や相性に依存するため、事前に試験や調査などの動作確認が必要となりますが、拡張性は高いといえるでしょう。一般的な照明制御システム(例えば、PWM調光)では、異なるメーカーの器具を組み合わせて調光や調色を行う場合、発火や故障のリスクが生じ、メーカー保証の対象外となるリスクがあります。保証対象となるのは、照明制御システムと照明器具が同一メーカーの場合のみです。一方、DALIは、準拠した器具であれば、どのメーカーの器具でも制御できる点が最大の特徴です。DALIを使用することで、異なるメーカーの器具を組み合わせても安全かつ、柔軟な照明環境を構築することができます。

―「DALI」には、どのような種類があるのでしょうか?また、それらの違いについて教えてください。

DALIには大きく分けて4つの種類がありますが、ここではDALI1とその進化版であるDALI2について説明します。DALI2の特徴は、調色対応の柔軟性が向上していることです。また、スイッチやセンサなどのコントロールデバイスの標準化と性能向上が実現されています。これにより、より多様な照明環境に対応できるようになり、使いやすさが向上しています。
信号の処理についても進化が見られ、DALI1では2色調色に2アドレス、RGBWなどの4色調色には4アドレスが必要でしたが、DALI2ではそれぞれ1アドレスで処理できるようになり、効率化が図られています。
互換性については、DALI1はDALI2の下位互換性を有しており、基本的にはDALI2の制御機器であれば、DALI1対応の器具も制御可能です。
DALI2の発足当初まで、DALIにはライセンス認定制度が存在しませんでしたが、近年では各メーカーがDALI2機器の動作試験を行い、その結果をDALIの国際協会であるDiiA(Digital Illumination Interface Alliance)に提出します。DiiAが独自に検証し、合格した機器のみライセンスが認定される仕組みとなっています。一方、DALI1には認定制度がないため、照明制御システムと照明器具との互換性を確認する際には注意が必要です。

  • どのメーカーでも使用することができる、仕様が公開されている通信規格のこと。
  • メーカーにより名称は異なります。

■DALIの種類と特徴

DALIの種類と特徴説明

■DALI2(DT8:調光、調色対応)システムによるオフィスの調光・調色制御の例

DALI2(DT8:調光、調色対応)システムによるオフィスの調光・調色制御の例

「DALI」の基本システム構成とは?

―「DALI」の基本システム構成について教えてください。

谷沢様:DALIは、制御装置から通信配線を通じて、照明器具に搭載された通信チップを介して点滅、調光・調色を行うシステムです。このシステムは双方向通信を実現しており、動作指示信号に対して「調光率 〇〇%」などの応答を受信することで、動作確認や故障検出が可能となります。また、ソフトウェアの設定を活用することで、各照明や部門ごとのエネルギー使用量の計算も行えるなど、効率的な運用が可能です。
通信速度は、フル2線(多重伝送)式の10kbpsと比較した場合、1,200bpsと比較的低速であるため、大規模空間の器具を同時制御する場合、回路末端の点滅に遅延が発生することがあります。配線については、電源線と信号線を照明器具に配線し、個別に通信を行うため、部屋の間仕切り変更に対しては、照明器具やスイッチ類の位置、台数の変更がない限り、制御機器の設定変更のみで配線替えが不要です。
さらに、オプションを追加することで、スマートフォンやタブレットによる操作や他の設備との連動が可能になります。HelverやWAGOの例を挙げると、最小で1台の制御機器(DALIマスター)で64アドレス、16グループ、16シーンの設定が可能です。それ以上の規模にはルーター等を用いて複数の同システムをLAN接続することで大規模システムにも対応可能で、Helverの例では最大520,000アドレス、16,384グループ、128シーンまで対応しています※3
日本国内のパナソニックや東芝ライテックは、DALI規格に準拠しているものの、自社開発の要素が強く、先に述べたDALIシステムとは異なる独自の制御システムを展開しています。それらのシステムは、システム構成、拡張性、対応機器、制御内容、配線方法などの特性が異なるため、導入する場合は、仕様の詳細確認が必要です。
ここでは、パナソニックの統合監視システム「ESU-BA」で説明します。
谷沢様:「ESU-BA」は、1台のコントローラーで照明、電気、空調、動力、防災、入退出設備など、すべての建物内設備の監視・制御が可能な統合型センター装置です。照明制御にはDALI2を採用しており、調光や調色のコントロールができます。照明器具はESU-BAからDALIアダプターを経由して接続します。スイッチやセンサにはエヌマスト接続を使用します。センサは明るさや人を検知する空間環境センサを使用しています。壁スイッチは、通常のリモコン型に加え、液晶ネームタッチスイッチ(パネル型)も選択可能です。
1システムあたりの照明器具数は204,800台まで対応しており、グループ数は256グループ×2系統、シーン数は72パターン×2系統まで対応可能です。外部機器、システムとの接続には、建物管理用のプロトコル(BACnet)を利用したネットワーク接続が可能です。スイッチ類の設定には専用の設定器を使用します。

  • 本来のDALIの機能を重視している会社の製品の場合。メーカーにより最大の拡張数の表記は異なります。

■パナソニック「ESU-BA:照明制御機能(DALI方式)」のシステム構成と各ユニット・アダプタの役割

パナソニック「ESU-BA:照明制御機能(DALI方式)」のシステム構成と各ユニット・アダプタの役割

DALIを採用するメリットとは?

―「DALI」を採用するメリットは何でしょうか。施主側と施工側それぞれについて教えてください。

谷沢様:施主側のメリットとして、個別分散型と比較してコストを抑えられる可能性があります。以前、電気設備学会の照明制御委員会に参加した際、設計事務所やゼネコンの委員の方々からも同様の意見がありました。また、同じ部屋で複数のメーカーの照明器具を採用する際に、調光器を統一できる点も挙げられます。
さらに、回路単位ではなく個別制御が可能で、細かな点滅や調光・調色制御ができるため、省エネ性や快適性が向上します。施工者側のメリットは、工事途中や改修時に間仕切りを変更する場合でも、配線を変更することなく設定変更のみで対応できる点です。

選定・施工・設定の主なポイントは?

―「DALI」の選定・施工・設定の主なポイントについて教えてください。

谷沢様:
選定のポイントは
①スイッチ類以外の制御機器は、LAN接続部分を除き、基本的に同じメーカーで統一すること。
②スイッチ類は照明器具との組み合わせや仕様、台数に制限が多いため、特に注意が必要。
③照明器具はDALI1およびDALI2に準拠しているか調査し、動作の適合性を確認すること。
施工のポイントは
①信号線のサイズはCVVS 2mm?など、1.5mm?以上とすること。
②信号線1系統の配線長は300m以内に収めること。
③各機器への配線ルートは、送り配線やスター配線を採用し、ループ配線は避けること。
設定のポイントは
①設定専用の機器は存在しないため、大型物件の場合は連動の総合試験も求められるので、十分な時間を確保して計画すること。
②調光率の設定は、照明器具の種類ごとに光の強弱の変化が異なり、上限および下限値も異なるため、それぞれに共通する最適設定値を見つけ出して設定を行うこと。
となります。

DALIが日本で普及しない理由は?
今後の普及のカギとは?

―欧米に比べ、DALIが日本でなかなか普及しない理由は何でしょうか。

谷沢様:日本では、パナソニックが開発した「フル2線(多重伝送)」が広く普及しており、非常に便利なことも評価され根強い人気を誇っています。他社製の照明器具を選択した場合、上位の照明制御側では調光ができませんが、ローカル側の部屋内に調光器を設置すれば、調光は可能になります。一方、欧米などでは、私の知る限りフル2線に匹敵する照明制御機器は存在しないと言えます。従来の照明操作の大半は、小規模の照明制御機器や壁スイッチ、調光器のみで行われていたと思われますが、DALIの操作性や拡張性が評価され、大規模システムでの浸透と普及率の向上が見られます。
DALIが日本で普及するためには、フル2線(多重伝送)に近い競争力を持つことと考えており、価格面、機能面、信頼性の向上が必須です。時間はかかるかもしれませんが、普及率が上がるにつれてコストも下がると予想されます。機能面では、主装置の使いやすさ、設定器の機能充実、スイッチ・センサ類のバリエーション、多様な連動、拡張性(アドレス数、グループ数、シーン数)の高さが重要です。それぞれの対応数が多ければ多いほど、魅力的に感じられます。
パナソニックをはじめとする国内大手メーカーが、価格面や機能面を充実させることが普及につながり、信頼性の向上にも寄与します。海外メーカー製品でも問題なく動作することや、代理店が適切に対応していることは理解していますが、万が一不具合や故障が発生した場合、国内メーカーの方が安心感があります。以上の点がクリアできれば、日本国内でDALIの普及が進むと考えています。

―貴社においてDALIを設計・施工された事例がありましたら教えてください。

谷沢様:弊社でもDALIの導入事例は少ないですが、西部本部で1件、東部本部で1件、施工中の現場があります。西部本部での1件をご紹介します。

仮称)淀屋橋駅西地区第一種市街地再開発事業の写真

仮称)淀屋橋駅西地区第一種市街地再開発事業

【概要】

  • 所在地:大阪府大阪市中央区
  • 延床面積:約132,330㎡
  • 建築工期:2021年10月1日~2025年12月15日
  • 建築主:淀屋橋駅西地区市街地再開発組合
  • 設計:株式会社 日建設計
  • 施工:株式会社 大林組

【DALIの概要】

3~9階、11~26階テナントオフィス専有部の照明制御
パナソニック製ESU-BA(DALI)、マルチセンサを使用
(総アドレス数 約22,000点)

―最後に、全国の電気工事会社様へメッセージをお願いいたします。

谷沢様:日本でのDALIへの取り組みは、まだ始まったばかりです。この普及と発展には、かなりの時間がかかるでしょう。LEDが浸透するまでに10年以上かかったことを考えると、DALIについても10年後を見据えて期待しています。
日本でDALIを普及・発展させるためには、先ほども申し上げたように、フル2線(多重伝送)を超える、海外製品に対抗できる商品をメーカーに求めるだけでなく、電気工事に携わる我々の設計・施工力を磨き、商品知識を深めることも不可欠です。皆様、一緒に取り組んで参りましょう。

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