2030年照明器具LED化100%達成に向けた
現状と取り組むべき新たな課題


一般社団法人 日本照明工業会
会長
熊澤 龍也様
一般社団法人 日本照明工業会
企画部長
森川 直紀様
2024年12月の「水銀による環境の汚染の防止に関する法律」の改正により、
2028年1月1日以降一般照明用の蛍光ランプの製造・輸出入が全面的に禁止となる予定です。
一般社団法人日本照明工業会の熊澤会長と森川企画部長に
東京スカイツリーイーストタワー会議室においてインタビューを行い、
活動内容とともに、現状の課題とお取り組みについて、お話しいただきました。

あかり文化の向上と地球環境への貢献を目指す日本照明工業会
はじめに、日本照明工業会の概要についてお聞かせください。
熊澤様:
日本照明工業会は、2013年に日本電球工業会と日本照明器具工業会が合併したことにより設立されました。
設立目的は、照明機器(光源類、照明器具類、制御装置類及びこれらの構成部品)の製造及び関連する事業の健全な発展、産業の振興、並びに国民生活における安全性の確保と生活文化の向上に寄与することです。
地球環境に配慮したやさしい“あかり”の普及を通じて、より安全で快適な生活環境の実現と地球環境の向上を目指して推進しています。
主な活動としましては、①普及活動 ②標準化活動 ③認証事業 ④国際活動を行っています。会員構成は主に照明機器製造事業者で、会員数は約190社(内正会員160社)となっています。
喫緊の課題は2028年1月1日
蛍光灯生産終了の業界あげての周知拡大
照明業界を取り巻く喫緊の課題は、何でしょうか。
熊澤様:
やはり、2028年1月1日までに蛍光ランプを生産終了することに伴う、早期LED化への問題です。
一般照明用蛍光ランプの製造・輸出入禁止については、2023年11月に開催された「水銀に関する水俣条約第5回締約国会議(COP5)」で決定され、国内においては2024年12月に「水銀による環境の汚染の防止に関する法律施行令の一部を改正する政令」が閣議決定されました。
2028年1月1日以降は、一般照明用の蛍光ランプは製造・輸出入ができなくなりますが、ご家庭においても、様々な施設においても、未だ多くの蛍光灯照明器具をご使用になられている現状にあります。2028年以降は、使用や販売に対する規制はありませんが、蛍光ランプの入手が困難となることが想定されますので、終了間近になって混乱が生じることがないよう、業界をあげて広く周知啓発を行い、蛍光ランプ搭載器具をご使用の皆様には、早めにLED化を進めていただけるよう促していく必要があると考えております。まずは認知していただくこと、そして計画的にLED化を検討していただくことを目的に、テレビ、新聞等での広告、SNSやホームページでの呼びかけを行っています。
蛍光灯が生産終了することについての認知度はどれくらいでしょうか。
森川様: 半年に一度、認知度調査を実施しておりますが、2024年2月時点では13.6%だったのが、2025年8月時点では40.8%となりました。9月には一部においてテレビCMも行いましたので、もう少し上がっているかもしれませんが、まだまだ認知度は高いとは言えない状況ですので、引き続き、経済産業省等とも連携しながら、啓発活動を進めてまいります。
日本照明工業会が発行している蛍光ランプ生産終了啓蒙チラシ

2050年カーボンニュートラルにも欠かせないLED化率100%
2050年カーボンニュートラル実現にもLED化は欠かせませんが、現状のLED化の進捗状況についてお聞かせください。
熊澤様:
出荷ベース(フロー)ではほぼLED化は実現できていますので、既設(ストック)への取り組みが課題です。日本国内の照明器具設置数(ストック)は18.1億台と推定していますが、そのLED化率は2025年9月現在で65.3%です。34.7%の約6.3億台は蛍光ランプや白熱電球など既存光源が使用されている状況にあります。
当会での調査によると、照明器具を交換する理由について、約40%の方が「壊れたから」と答えており、照明器具の適正交換時期は約10年と当会では定めているのですが、実際には多くのご家庭や施設において、それ以上ご使用になられているケースが多いと思われます。当会やパナソニックをはじめとする当会会員メーカー様のホームページ、SNS等を活用して、2028年1月1日までに蛍光ランプが生産終了となることに加えて、照明器具の長期使用について省エネ性や安全面の観点から注意喚起も含め積極的に発信し、早く取り組むべき合理性について認識を高めていきたいと考えています。
LED化する際の二つの方法と注意点
従来光源からLED化する際の注意点について、お聞かせください。
熊澤様:
LED照明への切り替えには、照明器具ごと交換する方法と、ランプだけをLEDへ交換する方法の二つがありますが、後者の場合は特に注意が必要です。
蛍光灯照明器具は蛍光ランプ用に設計されており、LEDランプは指定のランプではありませんので、器具製品保証の対象外となります。
また、蛍光ランプをLEDランプに変更する際、不適切なランプ交換が行われた場合は、発煙・発火など不安全な事故が起こる可能性があります。実際に事故が発生しており、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)でも注意を呼びかけています。
さらに、古い照明器具を使い続けることによる事故も発生しています。使用年数が10年を過ぎると、内蔵されている電気部品や安定器、ソケット等の劣化により故障率が急激に増加し始めます。そのため、照明器具ごと交換によるLED化を推奨しており、LEDランプへの交換時の注意喚起や照明器具には耐用年限があることも含めて、広く情報発信を行っております。
電気工事会社様からもお客様へ適切なLED照明への切り替えをおすすめいただけますよう、よろしくお願い致します。
くらしや職場環境の質が変わる新しいLEDを用いた照明手法
最新のLEDと照明手法が、人々の生活や仕事にもたらすメリットについてお聞かせください。
森川様:
最新のLED照明器具では、省エネ性だけでなく、従来光源とは異なる機能性によって豊かなくらしに貢献する照明が増えています。
LED照明の特長の一つとして調色機能がありますが、光色や明るさを変えることで、時間帯やシーン・用途に応じた快適な空間を瞬時に自在に演出することができます。
また、近年、各社より無線照明制御システム商材のラインアップが拡充されています。調光信号線工事が不要で、照明器具を取り換えるだけで調光機能による省エネを実現できるとともに、調色機能や音響機器等との連携により、時間帯やシーンに応じた快適な空間を演出することができます。
近年、人手不足対策として、Well-Beingな職場環境づくりが注目されていますが、こうしたLED照明は、リラックス効果や集中力向上などをサポートし、快適で働きやすい環境の提供に貢献します。
Society 5.0に対応する次世代照明「Lighting 5.0」 とは?
「Lighting 5.0」 について、お聞かせください。
熊澤様: 日本照明工業会が提唱・定義する新時代のあかりの概念が「Lighting 5.0」です。「第5世代の照明」という意味で、当会において、2022年10月にあかりの歴史を「第1世代:炎、第2世代:電球、第3世代:放電灯、第4世代:LED」とし、次世代=第5世代のあかりを「Lighting 5.0」と定義しました。1~4世代は「明るさ」を得るためのあかりでしたが、「Lighting 5.0」は「健康」「安全」「快適」「便利」というさらに進化した4つの価値・機能をもち、国がめざす新たな社会「Society 5.0」の実現に寄与すると考えています。「Lighting 5.0」は分野や業種を超えた様々なモノ、コトにつながることで、多様な環境やライフスタイルに合わせたより豊かな暮らしを、照明を通して創造します。
官民で、国内の標準化活動(JIS)と国際標準(IEC)との整合を担う
海外の照明市場の動向について、お聞かせください。照明工業会はどのような国際活動をしていますか。
森川様:
海外各国においてもLED照明の普及は進んでおり、2024年の世界のLED化率は約8割※と推定されています。
当会の国際活動としましては、日本の規格・基準の国際規格(IEC)整合とともに、日本の技術を取り入れた国際規格の実現を目指し、照明事業分野に関連する国内外の規格制定・改正等のための標準化活動を推進しています。
特に国際標準化活動では、直接的に規格・基準の策定組織「IEC TC34(ランプ類及び関連機器)」に参加し、規格の制定・改正に関連する活動において日本の意見を適切に反映するよう努めています。
グローバル化が進む中、国内の標準化活動(JIS)も国際標準(IEC)と整合を得ることが重要となっており、国内の関連省令の改正審議についても国際標準化の動向を踏まえて、当会としての意見集約と積極的な参画に努めています。
電気工事会社様にご支援をお願いしたいことは?
電気工事会社様に果たしていただきたい役割や、ビジネスチャンスについて、お聞かせください。
熊澤様:
前述の通り、国内の照明器具ストックのうち、約6.3億台が蛍光ランプや白熱電球等の既存光源を使用されている状況であり、2030年に向けてそれらをLED化していく需要が顕在化してくると想定しています。さらにLED照明が普及し始めてから10数年が経過し、LEDからLEDへの交換需要も出てきています。
いずれにしましても、照明リニューアルは、快適性や省エネ視点でも他の商材を一緒にご提案するビジネスチャンスでもありますので、ぜひ電気工事会社様には、お施主様との接点を生かしてお取り組みいただきますようお願い致します。
照明メーカー各社より省施工タイプの商品も発売されていますので、ぜひご採用いただき、お役立ていただけますと幸いです。LED化100%に向けて、引き続きご一緒に推進いただけますようお願い致します。
10月21日は「あかりの日」
全国小学生ポスターコンテストが今年も実施されました
毎年10月21日を「あかりの日」と定め、照明のもつ意義をあらためてご確認いただくとともに、正しい照明知識の普及と啓発推進の一環として「あかりの日」全国小学生ポスターコンテストを開催。25回目の今年度は全国から447点の応募をいただきました。
CLOSE