GX ZEHの基準とZEHの未来

河村郷志様と荒川源様の写真

一般社団法人 ZEH推進協議会 理事
エルクホームズ株式会社 取締役

河村 郷志

一般社団法人 ZEH推進協議会 事務局長
株式会社アスクラスト 代表取締役

荒川 源

2027年4月より、新たなZEHの基準「GX ZEH」の適用が開始されます。
経済産業省は、住宅における省エネルギー性能牽引の担い手であるZEH・ZEH-Mについて、
今後、より高い省エネルギー性能を掲げることが期待できること、また、再生可能エネルギーの
自家消費の拡大の促進を行う必要性を踏まえ、新たに「GX ZEH」「GX ZEH-M」の基準を定義しました。
「GX ZEH」基準の導入で、お施主様のベネフィットはどのように進化し、
また住宅業界や電材業界を取り巻く環境はどのように変わるのでしょうか。
一般社団法人 ZEH推進協議会 理事の河村様と事務局長の荒川様にインタビューを行いました。

ZEH普及率は伸びつつも
なお残る課題とは?

はじめに、現状の新築住宅におけるZEH普及率と課題についてお聞かせください。

荒川様: 新築戸建て住宅全体におけるZEH化率(Nearly ZEH、ZEH Orientedなどすべての種類を含む)は2024年度では約30.5%と推計されています。内訳を見ますと、注文住宅が約42.6%で、建売住宅では8.6%前後となっています。年々増加しているものの、まだ5割には到達していません。特に建売住宅が低水準です。河村さんは、地域ビルダー様のお立場として、この状況をどのようにご覧になっていますか。

河村様: ハウスメーカー様のZEH化率は7割を超えていますが、一般工務店様では約17%ぐらいで、20%を切っているのが実情です。
ZEH化率の統計資料はSII(一般社団法人 環境共創イニシアチブ)から毎年12月に出ますので、ZEH・ZEH-M委員会でも一般工務店(地域ビルダー)様のZEH化率向上を今後どうしていくべきか話し合ったばかりですが、やはり、工務店様がそれぞれどう生き残っていこうとされているのか、そこだと思うんです。
ZEHに必要な要素は、「断熱」「省エネ」「創エネ」の3つですが、価格で勝負しようとしている工務店様であれば、コストアップにつながるこれらについては、いつまでも手付かずのままということになります。
工務店様は建築のプロなので、「断熱」については勉強されれば対応可能ですが、「省エネ」「創エネ」の部分は電気設備ですから、例えば太陽光発電は何キロ載せるのかとか、HEMSはどうすればよいのかなど、正直、難しいかもわかりません。それでも国の制度としてZEH水準に対応していかなければならない。自力での対応が難しいとなると、どこかの傘下に入るということも視野に入れていかねばならない時代になるのではないかと思っています。
そもそも年間の新築戸建て住宅の着工数が、30年前の約半数になっています。人口減少や住宅価格の高騰で需要自体も減っていますし、大工さんの高齢化と後継者不足で工務店様の数もかなり減少しています。委員会としては、工務店様の淘汰を決して望んでいるわけではありませんので、電気設備メーカー様と協力しながら、講習会などを開き、ZEHについて学ぶ機会をもっと増やしていかなければならないと考えているところです。

2027年からの新基準
GX ZEHとは?

2025年9月には、2027年4月からのZEHの新たな基準として「GX ZEH」「GX ZEH-M」がスタートすることが政府によって公表されました。「GX ZEH」とは、どのようなものでしょうか。

荒川様: GXとは、「グリーン・トランスフォーメーション」の略で、ZEHの断熱性能等級が「5」であるのに対して、GX ZEHでは「6以上」が必須となり、一次エネルギー消費量削減率も20%以上から35%以上に上がります。
また、太陽光発電だけでなく、蓄電池、HEMSの設置も必須となる見込みで、現行のZEHよりも断熱性能や省エネ性能を高めたZEH住宅であると言えます。実はまだ、具体的な要件や策については、国の委員会の中でも議論が続いています。

なぜ「GX ZEH」という基準が新たに設けられたのでしょうか。

荒川様: 2021年10月に閣議決定された第6次エネルギー基本計画において、「2030年にZEH基準の水準の省エネルギー性能の確保を目指す」「2050年のストック平均でのZEH基準の水準の省エネルギー性能の確保を目指す」という2つの目標が示されている中で、省エネ性能牽引の担い手であるZEHには、今後、より高い省エネルギー性能を掲げることが期待されています。
また、再生可能エネルギーの自家消費拡大を促進するため、2024年度にZEH・ZEH-M委員会が開催され、ZEH・ZEH-Mの定義見直しについて検討が行われました。検討した案については、基準を活用した事業が始まる2027年度までに委員会やパブリックコメント募集などを経て定義が定められるようです。

河村様: ご承知の通り、今の日本の電力は東日本大震災以降、ひっ迫しています。その不足を補うためにもエネルギーの地産地消を住宅で実現させる目的が大きいですね。ZEH基準以上の先導的な取り組みでZEH化の遅れを底上げしようという段階に来ているからではないかと考えています。

蓄電池を必須とすることで
自家消費率を高めることが最大の狙い

河村様: 今のZEHの基準では蓄電池が必須でないため、日中の太陽光発電で生まれた余剰電力は売電に回ります。GX ZEHは蓄電池を必須とすることで、余剰電力を蓄電池に貯めて夜間や雨天時に使用するなど、自家消費することが可能になります。
エコキュートは必須ではありませんが、太陽光発電で生まれた余剰電力を利用して昼間にお湯を沸き上げるおひさまエコキュートを導入することでも高い自家消費率を実現できます。おひさまエコキュートは、夜間の安い電力を利用して効率的にお湯を沸かし、タンクに貯めて昼間に使う一般的なエコキュートよりもさらに省エネで効率的です。
それでも電力が足りなければ、電気自動車を蓄電池代わりにして余剰分を貯めて使用すれば、自家消費率をさらに上げることができ、電力会社から電気を買うことなく十分に電気の地産地消が可能となります。V2HはGX ZEHの必須要件ではなく、住宅を建てる際の建築士からの説明義務にとどまっていますが、地方であればぜひセカンドカーに電気自動車を所有してV2Hを設置していただきたいと思っています。
ZEH基準が高められたもうひとつの理由は、住宅が長寿命化していることとも関係があります。かつてはスクラップ&ビルドが良しとされる時代もありましたが、今は国が長期優良住宅を推進しており、住宅には50年以上の耐久性がありますから、50年後の省エネ基準に合わせるためにも、現時点で断熱性能を上げておかなければならないと考えています。
GX ZEHでは一次エネルギー消費量削減率の最低ラインを35%としていますが、この数値ですと断熱性能を上げて、HEMSを使って家庭内の電力消費を最適化することで、電気自体をあまり使う必要がなくなってきます。というのも、家庭での電力消費の最大の要素は空調なので、断熱性能を上げれば上げるほど、外に逃げていく熱が減り、空調への負荷が減っていくからです。そういう意味でGX ZEHの断熱性能は、ZEHよりもさらに上の等級6となっています。

ZEH普及率を高めるカギとなる
既築住宅のZEH改修

脱炭素社会を目指すには、新築のみならず既築住宅のZEH化がカギであると言われています。建築費の高騰に伴いリフォーム市場はますます伸びていくと思われます。

荒川様: 既築住宅は住宅ストックの大多数を占めるため、カーボンニュートラルの達成には既築住宅のZEH化が不可欠だと思っています。しかしながら、リフォーム投資に対する費用対効果の見える化が一般の方には難しいのが実情です。さらに断熱・設備一体設計が難しく、業界で標準化できていないことも普及を阻む一因となっていると思います。

河村様: ZEHリフォームについては、委員会でもこれまで何度も話し合ってきました。リフォームといえば、設備の入れ替えや内装の張り替えなどが一般的で、断熱性能を上げるリフォームに着目している人は、これまではあまりいなかったと思います。ですが断熱改修は人の健康面にも影響しており、断熱改修にお金をかければ住宅の寿命を延ばすだけでなく、人の寿命も延ばすことを研究されている研究者の方もたくさんおられます。冬場に起こるヒートショックや夏場の熱中症のリスクも、断熱性能を上げることで、大幅に軽減することができます。
断熱改修は外壁を触らないといけないため、隣家との距離があまりない都市部では難しいかもしれませんが、内側から行うこともできますし、技術的には可能で、取り組むべきであると考えています。サッシについては、樹脂サッシに入れ替えるだけですむことなので簡単です。今後、断熱改修の重要性の認知度を上げていくことが重要だと考えています。

ZEH-Mの普及には、設備開発や
認知拡大の手段も課題に

集合住宅のZEH化にはどのような取り組みが必要でしょうか。「ZEH-M」「GX ZEH-M」の現状と課題について、お聞かせください。

荒川様: まず新築の場合、低層、中高層で難易度が変わってきますが、ZEH同等の性能を各住戸・住棟全体で実現する技術が必要です。外皮性能や一次エネルギー性能のZEH基準達成のための設計も求められます。そして、住棟全体での創エネ・蓄電・エネルギーマネジメントといった知識や技術が必須となります。ここがデベロッパー、住宅会社によって得手・不得手が分かれるところだと思います。

河村様: ZEH-Mの普及については分譲、賃貸を問わず取り組んでいかなければなりませんが、やはり乗り越えなければならない課題がいくつかあると考えています。
ひとつはエコキュートの問題。マンションに設置できるサイズで高性能なタイプの開発が望まれます。ここはパナソニックを始めとするメーカー様に頑張っていただきたい。もうひとつは、アパートやマンションのオーナー様、不動産業の方、管理組合の方たちへ、いかに認知・理解していただくかです。
2025年の12月に神奈川県からZEH推進協議会に講師の依頼があり、地域の中小工務店の方たちを主な対象としたZEHセミナーを開催しましたが、そこには不動産業の方々も来られていました。ほとんどの方がZEHについてはこれから勉強していくということでした。全国の地域の不動産業の方々への認知についても、協議会がしっかり広めていかなければならないと考えています。

HEMSで得たデータを提示することで
お客様へのコストアップの説得材料に

「GX ZEH」が普及するために必要と思われる要素について、社会への浸透、技術面、補助金等、さまざまな観点からお聞かせください。

河村様: ZEHは快適な生活をご提案できてもイニシャルコストがアップするのでなかなか売りにくいと考えている工務店様にぜひ取り組んでいただきたいと思うのが、イニシャルのコストアップ分は、長い目で見るとランニングで十分に元が取れるということを「データでお客様に示す」ことです。GX ZEHの要件にHEMSがありますが、HEMSの費用を工務店様がご自身でご負担されてでもお客様に提供されて、そのお客様の1年間のデータを得ることで、次のお客様への説得材料となり、十分に元が取れるはずです。そういったノウハウの共有の積み重ねがZEHやGX ZEHの認知を拡大していく近道になると思います。
ただ、やはりそれだけでは不十分で、例えば不動産業の仲介で建売住宅を売買する場合は、宅地建物取引士にお客様への説明義務を持たせるべきですし、そのためにはわれわれ協議会も前述のような講習会を開くなどさまざまなご支援をどんどんしたいと思っています。
また、GX ZEHに対する補助金制度も望まれます。補助金の額については、私も委員会で提言をしています。現行の国土交通省の補助金額は、グレードに応じて55万~110万円ですが、多くの方が利用できるように国には検討していただきたいと思っており、ZEH・ZEH-M委員会としてはしっかり提言していきたいと思っています。

電気工事会社様の役割とは?

「GX ZEH」における電気工事会社様の役割についてお聞かせください。

荒川様: ハード面では、高度エネマネの中核となるHEMS、太陽光発電・蓄電池、EV充電設備などの設計や提案を積極的にお願いしたいです。ソフト面では、エネルギーデータの可視化プラットフォーム、住宅全体の運用支援サービスといった、データの収集や活用を含め、電気設備メーカーと住宅会社の間での仕様の策定やノウハウ共有が新たな関係性を生むことになると思います。電気工事会社の皆様も共に発展していくビジネスチャンスと捉えていただきたいと思います。

河村様: 工務店様が苦手とされている電気設備について、ぜひ積極的にご提案、サポートしていただきたいですね。それがGX ZEHの普及につながると確信しています。

他の記事一覧へ

パナソニックの電気設備 SNSアカウント