照明超入門
照明器具の構造・仕組み

LED(Light Emitting Diode)は電流を流すことで発光する半導体素子です。世界的な地球環境問題に対する意識の高まりとともに、省エネ光源としてLEDへの社会的な関心は急速に高まっています。20世紀終盤、LEDの白色化やフルカラー化、高輝度化、高出力化、高効率化が実現※1したことで、一般照明用光源として使われるようになりました。
ここでは、LEDの基礎と施設向け照明器具について解説します。

1.LEDの基礎

(1)LEDの歴史

LEDの基本原理は20世紀初頭に発見されていましたが、現在のような技術が確立されたのは、1960年代以降のことです。光の三原色(RGB)のうち、最初に赤色、続いて緑色が開発され、70年代に黄色、90年代に青色が開発されました。これらを組み合わせることによって1996年には白色LEDが開発され、表示用のみならず、一般照明用としても応用分野が拡大しました※2。この白色LEDの登場によってガス灯、白熱灯、放電灯(蛍光灯)に次ぐ、照明分野での第4の「あかり」といわれるようになりました。

(2)LEDの構造

LED(パッケージ)の形態は、砲弾型(リードフレーム型)と表面実装型(SMD型:Surface Mount Device)に大別されます(第1図※3 ※4
また、第2図のように多数のLEDチップを金属基板などに実装したものをCOB形(Chip On Board)といい、1つのパッケージから大光量を得る方法として活用されています。
COB形は一体型の蛍光体で光路長を均一化し、ムラのない白色光を実現しました。複数のチップを一括封止しているため、蛍光体全体が発光し、まぶしさを抑えます。

  • 第1図 砲弾型と表面実装型
  • 第2図 COB形の構造

(3)LEDの発光色

LEDは純度の高い光色ですが、一般照明用としては白色光が必要となります。そこで、単色LEDの光を混合して白色光を作ります。
LEDを発光色によって分類すると、従来から表示用などに使われている赤、橙、黄、緑、青などの単色LEDと混色した白色LEDとなります。また、センサに使用される赤外線LEDもあります※3

(4)白色LED

第3図にLEDの白色化の方式を示します。一般に用いられる方式は以下の3種類です。

①青色LED+黄色蛍光体
青色LEDを用いて、黄色の蛍光体を励起させるものです。他の方式に比べて効率がよく、最も普及しています。蛍光体の塗布量等により色のバラツキが目立ちやすくなります。演色性はRa70程度ですが、最近では赤色や青緑の成分を補って演色性を高めたものも開発されています。
②紫色(近紫外)LED+RGB 蛍光体
近紫外LEDを用いて、赤、緑、青色の蛍光体を励起させるものです。
一般にLEDの発光波長は、温度や電流に依存して変化し、蛍光体の塗布によるバラツキで白色光の色合いも変化します。しかし、この方式は発光波長が変化しても蛍光体による発光のバランスは変化しにくいので、色のバラツキを小さくすることができます。
高演色性が最大のメリットですが、寿命改善の課題や赤色蛍光体の効率の悪さなどのデメリットがあります。
③赤色+緑色+青色の蛍光体
3色のLEDチップから放射される光を混合して白色光を作ります。見た目には白色光が得られていても、スペクトルでは放射エネルギーのない波長域の影響で、照明したときに物の色の見え方が不自然になることもあります。
第3図 白色LEDの発光方式

(5)LEDの効率と寿命

LEDの効率は年々向上しています。しかし実際の製品は、温度上昇によるLEDの効率低下、電源回路の電気的効率、照明器具の光学的効率などによって、LED単体の効率よりも30~40%低下するので、比較する場合には注意が必要です※4
また、LEDは従来の光源のように断線によって故障することはほとんどありませんが、使用している材料の劣化によって光束が減衰していきます。蛍光ランプでは初期光束の70%に低下した時点を寿命としていますが、LEDにおいても同様の定義が一般的に用いられています。
実際のLEDの寿命は放熱条件によって大きく異なり、古典的な砲弾型白色LEDでは、定格電流で点灯した場合に10,000時間以下となります。これに対して、セラミック容器に耐久性の優れたシリコン樹脂で封止された素子の場合、40,000時間以上の寿命が得られています。

(6)LEDと熱の関係

LEDは赤外線をほとんど含まないため、熱の出ない光源のように捉えられることも多くあります。しかし、実際には光に変換されなかったエネルギーは熱となります。第4図に、LEDに供給された電力のエネルギー配分を示します。これは青色LED+黄色蛍光体方式(効率100lm/W)を例にしていますが、電気的入力に対して光として利用できるのは30%で、残りの70%が損失となり、熱を発生させることがわかります※4
また、外部環境に関しては、LEDは周囲温度の影響による光束減衰があまりなく、従来光源では課題であった低温時の光束減衰もないため、寒冷地や冷凍庫内の照明など用途展開が期待できます。

第4図 LEDのエネルギー配分

(7)LEDの応用

LED照明は、常夜灯や足元灯のような低光束の照明から普及が始まり、ダウンライトやスポットライトなどの局部照明的な用途で使われてきました※4
しかし、現在では高効率化と高出力化によって、適切な明るさや均斉度(照度分布の均一性を示す値)の求められる全般照明にも展開されるようになり、住宅用シーリングライト、施設用ベースライトをはじめ、道路灯、街路灯、防犯灯など幅広い分野で用いられています※2
また、従来光源をLEDに置き換えていくだけでなく、波長制御による照射物の色味の改善や演色性の向上などLEDならではの光環境の提供により、照明市場が拡大していく展開も有望です。

2.施設向け照明器具

ここでは施設向け照明器具の代表的なものについて説明します。

(1)ベースライト

ベースライトは室内全体を広く、明るく照らす照明器具です。オフィスや病院など幅広い設置環境、用途に対応します。

(2)システム天井用照明器具

ライン状またはクロス状に設置した「Tバー」と呼ばれる下地材の上に「天井板」「照明器具」「空調設備」などを配置して施工します。
経済性、施工性に優れているため、オフィスビルの多くで用いられています。

(3)建築化照明器具

建築物の一部として壁や天井に照明器具を組み込み、光のグラデーションにより上質な空間を演出する間接照明器具です。

(4)非常用照明器具

非常灯(非常用照明器具)は火災などによる停電時に避難経路の照度を確保する防災照明器具です。

(5)誘導灯

誘導灯は災害や停電時、建物にいる人々が速やかに、かつ、安全に避難できるように、避難口や避難方向を表示する防災照明器具です。
消防法施行令第26条および地方自治体の火災予防条例などにより、各種施設、劇場、ホテルなど人の多く集まる場所に設置が義務づけられています。

(6)高天井用照明器具

大型ドームや体育館、工場、倉庫など、天井高さが8m以上の空間に適した高天井照明器具です。

ここで挙げたもの以外にもさまざまな照明器具がありますが、それぞれの特徴を理解し、上手に活用していくことが重要です。

〔参考文献〕

  • LED推進協議会編:LED照明ハンドブック(改訂版)(2011)
  • 小柴正樹:総論 LED照明の現状と将来,照学誌 vol.94 No.4(2010)
  • 照明学会 普及部編:新・照明教室 光源(改訂版・第2刷)(2007)
  • 照明学会編:新編 照明基礎講座テキスト第34 期(2013)
  • 照明学会編:照明ハンドブック(第2版)(2003)
電気と工事2021年6月号

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