特殊環境用照明設備:低温用照明器具
低温倉庫及び低温中では、一般照明器具の場合ランプがつきにくく、光が充分出ないなどの問題が生じることがあります。蛍光灯の場合が特に問題となりますので、充分検討しておかなければなりません。
低温用蛍光灯器具
一般の蛍光灯の光出力は、ランプの周囲温度によって著しく変化します。ランプの周囲温度が常温(25℃)のとき、ランプ管壁温度が最適となり、この時が光出力、ランプ効率とも最大になる様に設計されており、これより温度が上っても下がっても光出力は減少します(図5)。また、周囲温度が常温より低くなるほど、始動電圧を高くしないと点灯しません。
低温用蛍光灯器具は、ランプの保温のために保温シリンダー・保温カバー等を使用しています。
図5:蛍光灯の周囲温度と全光束の関係例
蛍光灯器具の照明特性(配光特性)は25℃・無風で測定されますが、低温用蛍光灯器具のように常時特殊な低温領域でしか使用されない器具では、25℃・無風で測定した配光データをそのまま低温領域での値として使用してもあまり意味がありません。
そこで低温用蛍光灯器具の照明設計を行う時には、25℃・無風状態での器具光束を基本とし、その値に対して低温における各実使用温度での器具光束比を、補正係数として照明計算式に導入します。なお冷凍庫内は、冷気の循環のため常に微風が吹いていますので、補正係数にはこの風による冷却作用も含めておかなければなりません(図6、図7)。
図6:低温用照明器具の周囲温度による補正係数
図7:密閉型照明器具の周囲温度による補正係数
低温用HID照明器具
弊社の低温用HID照明器具は、-40℃~+10℃(アンナイトなしのタイプは-60℃~+10℃)の温度範囲まで使用できますので、一種類の器具でF級(-20℃以下)とC級(-20℃~+10℃)の低温倉庫で使用することができます。アンナイトとは、HIDランプの光束立上りの間の光を白熱電球で補償するもので、こまめに照明を入切される場合には、アンナイト付器具の採用が便利です。
又、結露しやすい場所(エアーロックが充分でない予備室など)には、防湿型を使用する必要があります。
代表的な低温用HID照明器具の光束立上り特性を図8に示します。
図8:光束立上り特性
低温用LED照明器具
LEDは、蛍光灯のように、周囲温度によって光束が大きく変化することはなく、低温時でも定格以上の光束を維持します(図9、図10 ※低温用直管LED照明器具の場合、同じ器具であってもランプにより温度特性が異なるのでご注意ください)。また点灯後の光束の立ち上がりが早く、-40℃の低温でもすぐに明るくなります(図11)。さらに、光源寿命が40,000時間と省メンテナンスであり、LEDは低温環境に適した光源であるといえます。
図9:低温用LED照明器具の周囲温度と光束の関係(200V時)
図10:低温用直管LED照明器具 ランプ別の周囲温度による補正係数
図11:低温用LED照明器具の光束立ち上がり特性(200V時)
低温用器具の使用温度による分類
倉庫業法施行規則では、F級(-20℃以下)とC級(-20℃~+10℃)に分けられており、低温用器具を設置する対象施設の温度範囲も-60℃~+10℃と大幅になるため、一種類の器具でこれらの温度範囲に適合させようとしますと、蛍光灯器具では効率の低い温度範囲が生じます。そこで弊社の低温用蛍光灯器具は、使用周囲温度に合せて図12のように分けております。白熱灯器具やHID器具、LED器具の使用温度範囲も図12に示します。
図12:低温倉庫別おすすめ照明器具