Panasonic

オフィスの照明

閉じる

オフィス照明の重要性

現在、オフィスにおける「知的⽣産性」が重要視されており、オフィス環境を快適で創造性が⾼い空間とするための設備が重要とされています。⼀⽅、環境への配慮や法規制の強化により、省エネルギーの重要性も増しています。快適性と省エネルギー性の両⽴を⽬指すために、オフィス環境全体に影響を及ぼし、また、オフィス全体での消費電⼒量に対する割合が⼤きい設備である照明について検討を⾏うことの重要性が増してきています。

考慮する事項

照明設計の際、考慮する対象を

  1. (1)視作業対象
  2. (2)環境

の2つに分けて検討します。

1.視作業対象

オフィス照明において考慮すべき重要な視作業対象としては、

  1. (1)書類
  2. (2)⼈の顔
  3. (3)VDT(Visual Display Terminal)

の3つが挙げられます。(3)のVDTとはPC画⾯などを指し、現代のオフィスワークでは⽋かせないツールとなっています。

2.作業環境

作業環境を快適なものとするためには、輝度分布を適正なものとすることが必要です。このうち、重要なものは次の2つです。

(1)室内の⽴体対象

室内の⽴体対象に当たる光の性質(指向性の光か、拡散性の光か)は、その部屋が晴れたような明るい感じになるか、曇天下のような暗い感じになるかに⼤きな影響を及ぼします。
なお⽴体対象として、重要なものは⼈の顔です。⼈の顔は対⾯している場合の視作業対象として重要であり、同時に、環境を形成する対象の⼀つとしても重要であるといえます。

(2)部屋を構成している⾯(光源・天井・壁など)

事務の途中であたりを⾒回すときに⽬に⼊る⾯のうち、重要なものは⽐較的輝度が⾼い⾯か⽴体⾓の⼤きな⾯です。これには光源・天井・壁などがあります。

照明上の必要条件

上に述べた各対象について照明上の必要条件をまとめます。

1.書類

(1)作業⾯照度

通常、「照度」と呼ばれているものです。実⽤上は現在の照明基準総則(JIS Z 9110-2010)1)を参照してください。
JISの照度基準に関する、種々の調査資料は⼤体⻘年を対象としています。これに対して「オフィス照明設計技術指針」(照明学会)では、照度と視⼒の関係と、執務者の年齢層の中⼼をわが国の実情に基づき40歳代前半として推奨照度を定めています(表2)。この基準では、⼀般的な書類などを作成する作業に必要な推奨照度は750 lx、また製図など細かい図形を⾒分ける作業に必要な照度は1,500 lxとされています。
「オフィス照明設計技術指針」では、推奨照度は作業区画内(オフィス内の、定常的に視作業が⾏われる領域。⼀般的には壁から1m以内を除く領域)の作業⾯の平均値を⽰しています。

(2)⽔平⾯照度分布

机の配置などが前もって決められないオフィスでは、⽔平⾯照度の変化はできるだけ少ないことが望ましく、⽔平⾯照度の均⻫度(最⼩照度/平均照度)は、0.6以上とする必要があります2)

(3)反射グレア

書類上にわずらわしい⼿暗がりや、光源による反射グレアを⽣じないために、光源は点光源でなく⽐較的⼤きな⾯積(⽴体⾓)を有する光源であることが望まれます。蛍光ランプを⽤いる場合はそれほど問題とはなりませんでしたが、昨今光源がLED化し、⾼輝度な点光源部を持つ照明器具が出現し始めています。そのような器具の場合は、以下の点を考慮することが推奨されます。
⼀般に⽔平な視作業は、図1に⽰すように⼤部分が鉛直⾓0〜40°の範囲で⾒られており、この視作業範囲に反射グレアが⽣じる天井の範囲には、照明器具を配置しないことが望ましいとされています。

図1:光源の反射が平たい作業対象のコントラストを低下させる不快な範囲3)

図の矢印の範囲の照明器具は反射グレアを生じ得る。オフィス作業の約85%は鉛直⾓0〜40°の範囲で⾒られています

2.⼈の顔

(1)必要照度

通常の輝度を有する壁の前の⼈の顔の場合、「⼈の顔の表情を」認めるのに必要な照度は、

  1. I.最適 2400 lx(1,000〜4,000 lx)
  2. II.許容できる 170 lx(100〜200 lx)
  3. III.識別ができる 10 lx

と⾔われています4)5)
また、当社の実験でも、机上⾯照度が750 lxの場合、

  1. I.最適 650〜850 lx
  2. II.下限 110〜200 lx

という値が得られています6)
⼀般に、オフィス向けのベースライトであれば、⽔平⾯照度を700〜1,500 lxに設計すれば、鉛直⾯照度は280〜600 lx得られることになり、上記の必要条件を満たします。なお、⼈の顔の背景が特別に明るい場合、例えば、昼間の窓のような場合の必要条件については、PSALIとして別の章に解説しました。

表1:机上⾯照度に対して必要な顔⾯照度(lx)6)

  1. (a)机上⾯の書類と顔を⾒⽐べる場合
カテゴリー 最適(lx) 下限(lx)

机上⾯照度
(lx)

750 800〜950 170〜270
1,000 870〜1,040 190〜290
  1. (b)机上⾯の書類と顔を⾒⽐べない場合
カテゴリー 最適(lx) 下限(lx)

机上⾯照度
(lx)

750 650〜850 110〜200
1,000 710〜900 120〜220

(2)光の⽅向性

⼈の顔を好ましく⾒せるために必要な光の⽅向性の条件については、別章「モデリング」で説明しました。その結論は通常の天井配置の照明設備では、照明器具はBZ6以下の配光のものを選び、作業⾯の等価的反射率を0.25〜0.3になるように設計することが望ましいということです。

3.VDT(Visual Display Terminal)

VDT作業が普及し始めた頃の画⾯はCRT(Cathode Ray Tube:ブラウン管)ディスプレイであり、画⾯への照明の映り込みが懸念されていましたが、昨今のPC画⾯はLCD(Liquid Crystal Display:液晶ディスプレイ)であり、その多くのディスプレイは表⾯にノングレア加⼯が施されているため映り込みが問題となるケースは減少しています。しかし、減少しているとはいえ、部屋の⽤途によっては映り込みを厳しく制限しなければならない場合があります。現在、照明基準総則(JIS Z 9110-2010)1)において、VDT画⾯への映り込みを防⽌するための基準として、映り込みを起こす照明器具の平均輝度の限界値を、表3のような区分で推奨をしています。垂直または15度傾いた表⽰画⾯を通常の視線⽅向(⽔平)で使⽤するところでは、照明器具の下半球光束による輝度の限界値は、照明器具の鉛直⾓65度以上の平均輝度に適⽤する、とされています。

表2:オフィス照明の推奨基準(照度、演⾊性 抜粋) 2)

区分 室の種類 ⽔平⾯照度[lx] 照度の均⻫度 照度の連続性 鉛直⾯照度[lx] 光⾊ 演⾊性

執務エリア

事務室(a) 1,500 0.6以上 1.5以内 150以上 中、涼 80以上
事務室(b) 750
役員室 750 暖、中、涼
設計室・製図室 1,500 中、涼
VDT専⽤室・CAD室 750 100〜500
研修室・資料室 750
集中監視室・制御室 750 100〜500
診察室 750 200以上
調理室 750
守衛室 500

コミュニケーションエリア

応接室 500 1.5以内 150以上 暖、中、涼 80以上
役員応接室 500
打ち合わせコーナー
会議室
750 0.6以上
役員会議室 750
TV会議室 750 100〜500
プレゼンテーションルーム 500 200以上 中、涼
⼤会議室・講堂 750 200以上 暖、中、涼
受付ロビー 750 200以上 60以上
ラウンジ 500 80以上
⽞関ホール 500 150以上 60以上

リフレッシュエリア

⾷堂・カフェテリア 500 1.5以内 暖、中、涼 80以上
役員⾷堂 500
喫茶室、休憩コーナー 150
リフレッシュルーム 500
アスレチックルーム 500 0.6以上 中、涼
アトリウム 500 60以上

ユーティリティエリア

化粧室 500 1.5以内 150以上 暖、中、涼 80以上
便所、洗⾯所 300 中、涼
エレベータホール 300
エレベータ、階段、廊下 300
役員廊下 200 暖、中、涼
給湯室、オフィスラウンジ 300 中、涼
更⾐室 200
書庫 500 150以上
電気室、機械室 300 60以上
倉庫 200
宿直室 300
⽞関(⾞寄せ) 150
屋内⾮常階段、⾞庫 75

定めない

(備考)

  1. (a)⼀般の事務室としては事務室(b)を選択する。細かな視作業を伴う場合、および昼光の影響により窓外が明るく、室内が暗く感じる場合は(a)を選択することが望ましい。

表3:VDTを使⽤する視作業のための照明器具の輝度限界値1)

画⾯のクラス
(JIS Z 8517参照)
画⾯の特性 ⼀般オフィスに適する。 すべてではないが、殆どのオフィス環境に適する。 特別に制御された光環境を必要とする。
照明器具の
平均輝度の限界値
2,000 cd/m2以下 200 cd/m2以下
  • 注記影響を受けやすい画⾯や特別な傾斜の画⾯を⽤いる場所では、上記の輝度限界値はより⼩さい⾓度(例えば鉛直⾓55度)を適⽤することが望ましい。

4.部屋の各⾯

(1)光源

光源の問題は、輝度が⾼い場合に不快グレアを⽣じることです。この対策については別章「グレアの評価」において詳しく説明しましたが、グレア対策の講じられる照明器具を⽤いることが望まれます。

(2)壁

好ましい壁の輝度は、作業⾯照度によって変わり、また、壁⾯の反射率によっても異なります。なぜならば、反射率の低い壁に⾼い照度を与えた場合と、反射率の⾼い壁に低い照度を与えた場合では、輝度が同じであるからといって同じ⼼理的効果をもたらすとはいえないからです。
必要な壁の輝度を、⼀般の照明計算は照度の計算の形で⾏われることが多く、かつ便利なので、照度の形で表したものを図2に⽰します。これは、Fischerのデータ7)を変形したものです。
通常、壁の反射率は30〜50%程度に設計されることが多く、この反射率よ り壁⾯の必要照度が定まります。

図2:好ましい壁⾯照度7)

図:作業面照度(lx)や壁の反射率(%)によって異なる壁の照度

照明⽅式と照明設備計画

照明⽅式は、照明の⽬的に適したものを選択し、照明設備は光源・照明器具(安定器を含む)・制御システムなどの個々の効率だけでなく、照明システム全体の効率を考慮して決定するのが望ましいといえます。また、初期設備費だけでなく電⼒費、維持費を含めた設備稼動全期間の総費⽤が少なくなるように計画することが必要です。

1.照明⽅式

(1)全般照明⽅式

⼀つの部屋全体を⼀様に照明する⽅式です。この特⻑は、室内の什器、事務機器の配置の変更が⾏われても照明器具の種類や配置を変更する必要がないことです。

(2)局部的全般照明⽅式

視作業対象や作業場所に応じて照明器具を機能的に配置し、これらの器具で部屋全体の照明も兼ねる⽅式です。この特⻑は、作業に応じて最適の配置をすることにより光を有効に活⽤でき、影、直接グレア、反射グレアを防ぐことができることです。

(3)局部照明⽅式

作業対象ごとの狭い範囲を個別に照明する⽅式です。この特⻑は、必要な対象に希望の条件で照明が⾏え、点滅も容易なことです。

(4)タスク・アンビエント照明⽅式

局部照明と全般照明を機能的に組み合わせる⽅式です。ここではオフィスにおけるタスク・アンビエント照明について説明します。タスク・アンビエント照明⽅式の詳細な説明については「タスク・アンビエント照明」の章を参照してください。
昨今、省エネのために、この⽅式をとるオフィスが増えています。タスク・アンビエント照明⽅式とは作業を⾏う領域には所要の照度を与え、その他の領域には、これより低い照度を与える照明⽅式を指します。アンビエント照明(全般照明)は控えめに点灯し、タスク照明を⽤いることで作業領域だけを必要な照度に引き上げる⼿法です。これにより全般照明⽅式と⽐較して30〜50%の⼤幅な省エネが可能となります。ただし、単純にこの⽅式を⽤いた場合、空間全体の明るさ感が低下し、陰鬱な空間となり、好ましくありません。当社実験より、オフィスにおいては明るさ感評価指標であるFeu値が8以上必要という結果が得られています8)が、例えば⼀般的な照明器具でアンビエント照度を300 lxとした場合、Feu値8以下となってしまいます。アンビエント照度を下げながらFeu値8以上を確保する⼿法として天井や壁⾯を照らすといった⼿法が考えられます。
⼤規模オフィスでは天井⾯が視野領域を占める割合が⼤きいので、空間の明るさ感を向上させるためにパネル付きのベースライトや上下配光ペンダント器具を⽤いて天井⾯を明るくすることが効果的であり、⼩規模オフィスでは壁⾯が視野領域を占める割合が⼤きいため、ウォールウォッシャを使⽤して壁⾯を明るくすることが効果的です。これらについてまとめたものを図3に⽰します。
以上のことを考慮することで快適性を維持しつつ、省エネを実施することができます。

図3:⼀般照明器具の場合と明るさ感を考慮した照明器具の場合の⽐較

⼀般の照明器具 Feuアップ照明器具
⼤きな部屋の場合
(天井⾯を明るくする)

照度:300 lx Feu:6

照度:300 lx Feu:8

⼩さな部屋の場合
(壁⾯を明るくする)

照度:300 lx Feu:6

照度:300 lx Feu:8

2.光源の選定

昼光が多く⼊射する執務エリアでは⼈⼯光と昼光の光⾊の差を考慮し、⾊温度が4,000K以上の光源を⽤いることが⼀般的です。⼈が⻑時間働いたり、滞在したりする場所には、Ra80以上の光源を⽤いることが望ましく、また、印刷やデザイン関係の仕事など、⾊が正しく⾒えることが求められる空間ではRa90以上が望ましいといえます2)

3.照明器具の選定

オフィスは快適かつ創造的な空間として、環境⾯の充実が必要であり、照明機能と雰囲気の両⾯でふさわしい照明器具を選択する必要があります。また、省エネ性も考慮する必要があります。照明機能上からみた配光、あるいは空間デザインの観点で、その空間にふさわしいものを選定する必要があります。表4に使⽤器具例を⽰します。
また、レイアウト変更が発⽣する場合やテナントビルにおけるテナント変更に対応する器具として、フリーコンフォートがあります。フリーコンフォートは、レイアウトや⽤途が未定の段階で基本灯具を配置し、レイアウトや⽤途が決定後、光学系のオプションとしての最適なプラスユニットを組み合わせる⽅式を採⽤しています。空間それぞれに適応するフリーコンフォートのプラスユニットも表4に⽰します。

表4:照明器具の推奨区分

空間 ポイント 照明器具例 プラスユニット例
⼤規模オフィス 照明器具の輝度制御
空間のグレア制御
空間の明るさ感確保
⾼省エネ性能(⾼効率)
スクエア型システム天井⽤
LED照明器具
⼩規模オフィス ⼀体型LED照明器具
直管LED照明器具
スペースコンフォート
OAコンフォートCLASSⅢ
マルチコンフォート
OA専⽤室 VDT画⾯への映り込み防⽌ OAコンフォート OAコンフォートCLASSⅠ
OAコンフォートCLASSⅡ
会議室 会議が進む雰囲気作り
時々に応じた明るさの切り替え
スクエア型LED照明器具
上下配光ペンダント照明器具
乳⽩パネル
プリズムパネル
応接室 ⾼級感のある落ち着いた雰囲気 建築化照明
グレアレスダウンライト
ペンダント照明器具
乳⽩パネル

4.照明器具の配置

照明器具の取り付け間隔があまりに⼤きい場合、作業⾯の照度均⻫度が低くムラが⽣じる場合や⼈の顔の照度が低くなる可能性があります。特に顔⾯照度は、その部屋の雰囲気に⼤きく影響を及ぼします。現在の⼀般オフィスの天井⾼さは、2.7m前後の場合が多く、遮光⾓15°のコンフォート15であれば、取り付け間隔は3.6m以下とするのが望ましいといえます。

5.オフィスの機能と照明要件

オフィスビルの⼤きな機能の⼀つは、その企業の成否を左右する情報処理のレベルとスピードを⾼めることです。
このために、作業に適した照明が必要です。また、作業者の快適性を損なわないことも、効率よく業務が実⾏される要因となります。オフィスにおける主な⼈の⾏動と、照明の働き、照明要件の例を表5に⽰します。

表5:オフィス照明の機能例9)

部位 主な機能 視作業の特⻑ 照明の狙い(タスク) 希望イメージ 照明要件 照明⼿法
環境の特⻑ 照明の狙い
(アンビエント)
執務エリア デスクワーク
OA作業
コミュニケーション
書類、⼈の顔、VDT
など多様
書類が⾒やすい
⼈の顔が⾒やすい
VDTが⾒やすい

ニュートラル〜
ややクール

ややソフト〜
ややハード

  • ⽔平⾯照度
    750 lx(500〜1,000 lx)1)
  • ⾊温度
    4,200〜5,000K
グレア規制形
VDT作業⽤照明器具
落ち着きがある
すっきりしている
まぶしさ対策
VDTへの映り込み防⽌
会議室エリア 議事進⾏
ディスカッション
決議、会⾷
集中〜リフレッシュ
司会者、相⼿の顔
書類、スクリーン
料理
状況に応じた照明状
態が設定できる

かなりウォーム〜
かなりクール

かなりソフト〜
ややハード

  • ⽔平⾯照度
    500 lx(300〜750 lx)1)
  • ⾊温度
    3,000〜5,000K
ダウンライト〜光天井
調光機能が必要
活動的〜落ち着き
幹部エリア 応接⾯談
意思決定
ステータス
リッチ
ゆとり
書類、⼈の顔
絵画、観葉植物
書類が⾒やすい
⼈の顔が⾒やすい
ややウォーム〜
ニュートラル
  • ⽔平⾯照度
    750 lx(500〜 1,000 lx)1)
  • ⾊温度
    3,000〜5,000K
グレア規制形
⼤型パネル付
光天井・間接照明
やすらぎ〜威厳 ステータスの表現

6.オフィスの空間⽤途別ウォーム・クール感と影の濃さ

オフィス空間の雰囲気を⼤きく左右する要件にウォーム・クール感と影の濃さがあります。前者は、光源の⾊温度で対応でき、後者は、光源のみかけの⼤きさ、すなわち照明器具の種類や照明⼿法で実現できます。
快適性を実現するために、空間別に望まれるウォーム・クール感に基づく光源の⾊温度と、空間別に望まれる影の濃さから決定した照明⼿法を図4に⽰します。

図4:オフィスでの部位別推奨⾊温度9)

オフィス照明の節電・省エネ⼿法

2011年3⽉に⽇本を襲った東⽇本⼤震災以降、省エネの意識が⾼まっており、多くの企業において、オフィス照明の節電が実施され始めました。節電⽅法として以下の3つが挙げられます。

  1. 1.ランプの間引き点灯
  2. 2.⾼効率照明器具への交換
  3. 3.照明制御の利⽤

1.ランプの間引き点灯

1つ⽬として、ランプの間引き点灯の実施が考えられます。電⼒需給緊急対策本部がまとめた「⼩⼝需要家の節電⾏動計画の標準フォーマット」における具体的な⾏動として、執務エリアの照明を半分程度間引きするということを推奨しています。この⼿法を⽤いると、建物全体の電⼒量に対して13%の節電となります。簡便かつ節電効果の⾼い⽅法ではありますが、⼀律半分に間引きしてしまうと視作業に⽀障が出てくる可能性があるので、場所によって間引きの程度を変え、トータルで半分程度の間引きにすることを推奨します。照明学会が発表した照明電⼒緊急節電対策10)では、オフィスの間引き⽅法として以下のような例を紹介しています。

  1. 執務エリアなどは、JIS 推奨照度750 lxの通りに設計している場合には、推奨照度範囲は500〜1,000 lxであるので、下限値500 lxに低減するとすれば、3台に1台程度間引く。やむを得ずさらに多くのランプを間引く場合、または、間引き点灯のために500 lxが確保できなくなった席には、作業性を維持するために、執務者にスタンドなどのタスクライトを提供する必要がある。
  2. 執務エリア内にある打ち合わせコーナーやコピー周辺などは、JIS では300 lxが推奨されているので、個別に消灯できない場合には、2台に1台程度間引く。
  3. 執務室内の通路や荷物置場など消灯しても⽀障のない部位は、優先的に間引く。
  4. 常時使⽤しない会議室、応接室、休憩室は、使⽤時間以外は消灯する。
  5. 通路は、昼光が⼗分利⽤可能ならば消灯する。昼光が利⽤できない場合は、安全確保のために、照度をチェックして推奨照度下限値の75 lxが確保できるように間引く。

これらの実施例を図5に⽰します。

図5:間引き点灯の事例10)

2.⾼効率照明器具への交換

現在、世界中で広く利⽤されている銅鉄式蛍光ランプ器具から、Hf蛍光ランプ器具への交換で約20%、直管LED照明器具へと変更することで約40%の省エネとなります。
近年、LED照明技術が急速に発達し、それに伴い直管LEDも普及し始めていますが、直管LEDへの交換には多くの注意点があります。⼀般的な直管形蛍光ランプはG13と呼ばれる⼝⾦であり、ここ数年流通を開始した直管LEDランプもこのG13⼝⾦を有しており、あたかも蛍光ランプと互換性があるような印象を与えています。しかし、安全性などに問題があり、⼀般社団法⼈⽇本照明⼯業会から「LED照明適正使⽤ガイド」として誤装着時の発煙や感電、光学性能、重量、品質⾯といった懸念事項が報告されていました。これらの問題を解決するために、⼀般社団法⼈⽇本照明⼯業会の規格を制定しました。更に直管LEDランプの規格として、JIS C 8159-1:2013 「⼀般照明⽤GX16t-5⼝⾦付直管LEDランプ-第1部:安全仕様」及びJIS C 8159-2 :2013「⼀般照明⽤GX16t-5⼝⾦付直管LEDランプ-第2部:性能要求事項」が制定されています。また、電気⽤品安全法でもLED照明器具を適⽤することとなっています。ただし、2013年8⽉現在、直管LEDランプ単体の場合は電気⽤品安全法対象外となっています。

3.照明制御の利⽤

器具の変更に加え、スケジュール制御やセンサを⽤いて照明器具をきめ細やかに、また適切に制御することで更なる省エネを図ることが可能です。⼀例を⽰しますと、⾊温度と照度を同時にスケジュール制御することによって、照度を下げて省エネを⾏いながらも作業効率や覚醒感を維持できます(省エネ率約10〜15%)。センサについては「センサによる照明省エネ制御」の項で詳しく説明しますが、例を⽰しますと、最新の⼈感センサを利⽤することで約30〜60%の⼤幅な省エネを⾏うことができます。

(参考文献)

  1. 1)照明基準総則(JIS Z 9110-2010)
  2. 2)オフィス照明設計技術指針 JIEG-008(2002)
  3. 3)IES Code for Interior Lighting, IES London(1977)
  4. 4)Fischer, D.:Beleuchtungsstarken, Leuchtdichten und Farben in Arbeitsraumen. Lichttechnik 24(1972)411
  5. 5)De Boer, J, B. and Fischer, D.:Interior Lighting, Philips Technical Library.
  6. 6)⽥淵義彦,松島公嗣:在室者に必要な顔⾯照度に及ぼす壁⾯照度と机上⾯照度の影響,照学誌,77-6,pp.355-363(1993)
  7. 7) Fischer, D.: Bevorzugte Leuchtdichten von Wanden und Decken. Lichttechnik 28(1976)92
  8. 8)藤野,⽮澤,⻄村:オフィスにおけるタスク・アンビエント照明に関する検討,照明学会全国⼤会(2011)
  9. 9)松島公嗣:光源の特徴と使い分け,電気設備学会誌,15-1,pp.11-21(1995)
  10. 10)照明学会:照明電⼒緊急節電対策(ピーク時間帯での照明電⼒の節減)(2011)

パナソニックの電気設備のSNSアカウント