賑わいの創出と啓発を両立するアウェアネスカラーで天守をライトアップ
照明シミュレーション
様々な角度からのシミュレーションと色味の検討により天守を引き立てるライトアップを実現
見る角度によって、そのシルエットや印象が異なると言われる岡山城天守。ライトアップにあたっては、前段階で環境計画支援VRとシミュレーションソフトを用いて照明シミュレーションを行い、照射位置による見え方の検討を行った。
次に、ライトアップの色味の検討にあたっては、岡山城の白と黒が引き立ち、より美しく見えるように独自プログラムにより細かく色味を調整した。
3Dシミュレーションを使ったライトアップ検討
■城郭建築に最適なライトアップを実現
これまでの城郭建築に対するライトアップは事前検証が困難だったが、シミュレーションソフトを用いることで事前にリアルなライトアップ検討を行うことが可能となった。3Dシミューレションによる立体的なファサードに対する検討や、カラー照度分布による明るさの均一性の検討を行うことで、最適なライトアップを実現した。
立体的なファサードに対するライトアップ検討
カラー照度分布を使った明るさ検討
■照射ポイントの検証
シミュレーションソフトを用いることで器具一台ごとに照射検討が可能となり、最適な器具、最適なシューティングを検討することができた。
器具ごとの照射ポイント
■角度調整時も照射ポイントの共有で簡単調整
これまでは電気工事作業者様と共に器具を実際に設置して時間をかけて角度調整を行う必要があった。シミュレーションソフトを用いることで事前に照射ポイントの検証と共有が可能となり、スムーズに角度調整をすることが可能となった。
照射ポイントを確認しながらの角度調整
カラーライトアップ
アウェアネスカラーにより1年を通じてライトアップ
一年を通じて夜間の賑わいの創出と啓発を兼ねる、アウェアネスカラーによるライトアップを計画。細かい計測と調整により、色味の再現性を高めつつ、人々が集まった際に心地よく感じられる色を表現している。
■パナソニック独自調査における「好適な色度」によるアウェアネスカラーライトアップ
近年は特定の啓蒙活動への賛同をテーマカラーに沿ったライトアップで示す“アウェアネスカラーライトアップ”と呼ばれる運動が盛んに行われている。訪れた人に夜間景観の楽しさと、社会啓蒙をさりげないかたちで伝えることができる。
パナソニックでは各地で行われているアウェアネスカラーライトアップの色を測定する実態調査と主観評価実験により、人が“好ましいと感じる色”を検証。その上で、岡山城は人が好ましいと感じる色でアウェアネスカラーのライトアップを行っている。
「好ましい色」を求める主観評価実験の様子
■測定器を用いて定量的に「好適な色度」を確認
被照射面(お城)の色彩によって色味が異なってしまうため、分光放射輝度計を用いて定量的に評価を行いながら、カラー調整を実施。納入後に好適な色度値を基準に岡山城をライトアップし、お客様のニーズを取り入れながら細かい調整を行った。
シミュレーション
ソフトによる
カラー検討
測定器を用いて青の好適な色度値
(u’:0.18、v’:0.17)に調整
■隣接する櫓と同じ色度でライトアップ
岡山城本丸跡に現存する唯一の櫓で国指定重要文化財に選ばれている月見櫓。月見櫓と岡山城は異なった投光器でライトアップをしていたため、光の色度が異なっていた。(月見櫓:LED投光器、岡山城:カラーライトアップ器具)
そこで、岡山城と月見櫓の色度が合うよう、ライトアップコントローラを用いて細かく調整。2つの建物の色度が統一されたライトアップを実現した。
左:岡山城 右:月見櫓
月見櫓
物件情報
所在地 | 岡山県岡山市 |
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施主 | 岡山市 |
設計 | 株式会社GEN設計、有限会社スリーエス電気総合事務所 |
電気工事 | 株式会社橋本電気工業所・大日電気興業株式会社・特定建設工事共同企業体 |
竣工 | 2022年11月 |
日本三名園のひとつとして知られる後楽園と旭川を挟んで隣接する岡山城。約1年半におよぶ令和の大改修を終え、2022年11月にリニューアルオープン。かつて国宝だった天守は戦災で焼失し、今の天守は戦後に建て直されたもので、今回、岡山市出身の歴史学者の監修のもと、城内の展示が一新された。
天守をライトアップしていた投光器はフルカラーLEDに更新。独自プログラムで色味を細かく調整し、白と黒のコントラストをより美しく見せるとともに、アウェアネスカラーによるライトアップも可能とした。