大規模災害が少ない奈良市では、将来の停電や
インフラ途絶に備え、学校に蓄電システムを整備
奈良市は「災害に強いまち」「脱炭素を実現していくまち」を施策に掲げ、教育委員会では学校施設の防災力向上に取り組まれています。これまで大きな災害や長時間停電の経験は少ないものの、全国各地では豪雨や台風による停電が相次ぎ、想定を超える被害が生じています。こうした状況を踏まえ、突発的な停電やインフラ途絶への備えが重要と判断され、太陽光発電システムが設置されている小中学校17校にパナソニックの蓄電システムが導入されました。採用の決め手は「各校の条件に合わせた迅速な設計提案と信頼できる実績」であると、教育部教育施設課課長の村上様はおっしゃいます。
平常時には一部の電力を蓄電池からまかなうことで、CO₂排出量の削減にも寄与し、脱炭素とレジリエンスの両面で効果が見込まれています。
停電時を想定した防災訓練では、非常用電源を
体験する場を設け、避難所としての安心感を高める
蓄電システムの導入校では、平常時に蓄電容量の約60%を日常利用に充てることを想定。継続的に運用することで、光熱費やCO₂排出量の削減といった効果を今後さらに実感できると期待されています。一方で、停電時の効果は実際に経験してこそ理解が深まります。停電が発生しても蓄電システムからの電力供給により、普段と同じように照明が点灯し、携帯端末の充電ができる。こうした体験を通じてこそ設備の有効性が実感できると考えられています。そのため奈良市では、地域の防災組織が毎年1回、避難所に指定されている小中学校で実施する防災訓練において、停電時を想定した状況を地域住民に体験してもらえるような訓練内容も検討されています。訓練を通じて得られた経験は、非常時の対応への理解を深め、避難所としての安心感の向上につながると期待されています。
老朽化への対応と防災力強化を両立し、
未設置校への導入展開も
今回の蓄電システム導入は防災力強化の大きな一歩となりましたが、まだ課題も残っています。「市内の公立小中学校の校舎の約半数は築40年以上を経過し、老朽化が進んでいます。本来であれば学校施設の長寿命化計画を具体化し、計画的に更新や改修を行うことが望まれますが、災害への備えも急務です」と課長の村上様はおっしゃいます。避難所としての役割を確実に果たすためには、防災機能の強化を長寿命化の取り組みと並行して進める必要があります。また、統廃合が行われる場合でも、地域の避難拠点として体育館などを残すケースがあり、施設をいかに維持・活用するかも今後の検討課題として挙げられています。さらに、今回の17校をモデルケースとし、太陽光発電システムの未設置校へPPA事業を活用して整備を進めるとともに、蓄電システムの導入拡大も計画されています。









