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感染を低減するためオフィスに求められる非接触環境とは

感染を低減するためオフィスに求められる非接触環境とは

いまだ終息の見えない新型コロナウイルス感染症は、働き方を含めた私たちの生活様式に大きな変化をもたらしている。オフィスで感染を低減するために気を付けるべきことは何か?正解を求めて企業の模索が続くが、感染源との接触機会を減らすことが感染症対策に有効だとするのが、中央大学大学院戦略経営研究科教授、多摩大学大学院特任教授で医師でもある真野俊樹氏だ。専門の立場からオフィス空間で留意すべきポイントを説明した。

徐々に分かり始めたコロナウイルスの正体と感染のメカニズム

「当初、新型コロナウイルスはウイルス性の風邪の一種であり、普通の風邪とそれほど変わらないと認識されていました。発熱・のどの痛みを発症するせきが1週間前後続く、強い倦怠感を感じるなど、確かに発症から1週間程度はかぜと類似した症状が出て、8割ほどの人は軽症のまま治癒していきます。しかし、他方で2割ほどの症例で肺炎症状が増悪し入院(重症化)。最悪の場合は死に至ります」

改めて新型コロナウイルスの特徴をこうおさらいするのは、中央大学大学院戦略経営研究科教授、多摩大学大学院特任教授で医師でもある真野俊樹氏だ。この感染症で特に厄介なのは、軽症者で症状も自覚していない感染者からクラスターを引き起こしかねない点だ。高齢であったり基礎疾患があったりする方がこうした経路で感染すると大きなリスクになることが報道され、重傷者が増加すると、医療崩壊という大きな社会問題をも引き起こしかねない。ワクチンや治療薬がない今、新型コロナウイルスに向き合って、適切な対策を取ることは必須であり、気が抜けない日々が続いている。その上で真野氏は、感染経路についても基本を振り返る。

「そもそも一般的なウイルス感染症は、接触感染・飛沫感染・空気感染のいずれかによって起こります。接触感染は直接的に触れて感染すること、飛沫感染はくしゃみなどで飛散した唾液から感染すること、空気感染は空気中で蒸発した唾液がエアロゾルのような形でそのまま空気中を漂い、そこから感染するイメージです。コロナウイルスの場合は、接触感染・飛沫感染が多いとされています。国・行政がこまめな手洗い・消毒・マスク着用・換気・ソーシャルディスタンスなどを強く推奨するのはそのためです」

オフィスで行うべきコロナ対策

これをわれわれが多くの時間を過ごすオフィスに置き換えて考えるとどうなるのだろうか。真野氏は具体的な対策例を列挙する。

●人が集まる休憩室や食堂などの利用を制限する
●対面での業務を減らし、ビデオ会議などを利用する
●執務中、人との間の距離は2m以上に保つ
●不急の社内研修・セミナーなどのリアルイベントは延期・中止する
●会社主催の多人数の懇親会などは中止する
●消毒液(次亜塩素酸ナトリウム、消毒用エタノール)やマスクの配備
●非接触型体温計の配備
●空気が乾燥すると、のどの粘膜の防御機能が低下するため、加湿器などを使って適切な湿度(50~60%)を保つ
●社員の健康状態のモニタリングを行う

ただ一方で、これらの対策には一定の意義があるものの、接触感染・飛沫感染を完全に防ぐことには限界があると指摘する。

「特にオフィスビルであれば、エントランスの入退管理システム、あるいはトイレ・洗面所、エレベーター、エスカレーターなどが接触機会になります。自社のワークスペースに入っても、勤怠管理システム、パソコン、ドアノブ、回覧資料、照明・空調のスイッチ、共用会議室、ホワイトボード、机や椅子、ドリンクサーバーなど、リスクが潜む場所は数多く存在します。マスクを外さなければならない食事やたばこ休憩も同様です」

では、こうした危険なシチュエーションを少しでも減らすにはどうすべきか。また、実際に感染が起こってしまった時、その社員の行動履歴を追うにはどうしたらよいのか?多くの企業が未だ確固たる解決策を見いだせないでいる中、真野氏はテクノロジーの活用が欠かせないと指摘する。

「日本を含む各国においては、集団免疫の獲得やワクチン・治療薬の開発が今後の大きな課題となります。私個人の見解では、3年後くらいには自由に海外旅行ができるようになるのでは、と期待しています。ただ、たとえそれがかなっても、コロナと共存するウィズコロナ時代は長期化するでしょう。従って、ITやテクノロジーで補える部分は大いに活用すべきだと考えています」

統合型セキュリティシステムとセンサで非接触を実現

実際にテクノロジーを用いた“非接触”あるいは“接触機会低減”の取り組みがある。パナソニック株式会社 ライフソリューションズ社(以下、パナソニックLS社)では、これまで培ってきた技術の組み合わせでオフィスにおける感染リスクを低減する非接触ソリューションを提案している。

その核となるのが統合型セキュリティシステム「eX-SG」だ。これによって、オフィスビルの共用ゾーン・専用ゾーンにある入退室管理・映像監視・顔認証・エレベーター・無人QRなどの各種システムを統合でき、オフィス全体で非接触の環境を実現できる。システムに登録できる無人IDは10万件とほぼどんな規模の企業でも対応可能だ。ID統合管理と顔認証端末との連携も容易であり、履歴の統合管理をサーバーで集約できるため、例えば感染症の発症者が出た場合でも、濃厚接触者の行動履歴を追跡することができる。

統合型セキュリティシステム「eX-SG」を軸に連携するシステムの中でも、顔認証システム『KPAS』にフォーカスしてみると、システムは受付などに置かれているレジスター、エントランスのゲートアダプター、フロアや会議室入口に設置するチェッカーで構成されており、通常時にはハンズフリー(非接触)かつストレスフリーな入退出を実現でき、現在検討を進めている“検温”の機能も組み合わせて、今回のような非常時にも、感染者をスクリーニングする運用が可能になる。

さらにKPASと同様eX-SGと連携できる「顔認証によるエレベーター先行予約連携」についても検討が進んでおり、カードリーダーとの連携までは実現可能だ。他にも、来訪者予約システムと入退出システムの連携により、来場者の入退館管理・受付業務の効率化・無人化に寄与する非接触型入退室管理システム「QRコード」も、非接触なオフィス空間をつくるために寄与する。

一方、画像センサの微動検知を使った照明・空調のスイッチレス制御と、混雑度検知を組み合わせることで、検知エリア内の快適空調制御も可能となる。このセンサは熱を検知する一般的な人感センサではなく、1センチほどの人の動きを感知してオン・オフを切り換える「かってにスイッチ」(微動検知形)も活用可能であり、専用のスマホアプリとの連携によって、空調や照明をさらにパーソナルなニーズに合わせて操作可能だ。

このようにパナソニックLS社のさまざまなテクノロジーの活用で非接触を実現し、オフィス空間の感染リスクを低減を目指している。こうしたソリューションが、長期戦となる新型コロナウイルス感染症対策の大きな支えとなるだろう。

真野 俊樹氏

真野 俊樹氏

中央大学大学院 戦略経営研究科教授
多摩大学大学院特任教授
医師

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