「MODIFY」 デザイナー
深澤直人さん インタビュー
もっともふつうな照明の定番をつくろう。
そんな想いから、MODIFYの開発が始まったのは20年ほど前。
空間をやわらかく包み込むような光で生活を照らしてきました。
そしていま、MODIFYに新しい仕上げが加わります。
新たなMODIFYはどのように進化したのか。生みの親である
デザイナーの深澤直人さんにお話を伺いました。

深澤直人/デザイナー
デザイナーの個性を主張するのではなく、生活者の視点にたって人の想いを可視化する静かで力のあるデザインに定評がある。これまで数多くの世界を代表するブランドや、日本国内のリーディングカンパニーのデザインを手がけている。世界で最も影響力のあるデザイナーの一人とされている。「イサム・ノグチ賞」、「The Collab Excellent Design Awards 2024」「German Design Award 2026 ‒ Personality of the Year」など受賞歴多数。2022 年、デザインと科学の繋がりの探究に取り組むことを目的に一般財団法人THE DESIGN SCIENCE FOUNDATION を創設。多摩美術大学副学長。日本民藝館館長。
1 〡 MODIFYの成り立ち
“明るさ”を追い求めるのではなく、
シンプルに街や空間を
照らしてきた“日本の美しい光”を
取り戻そうという試みだった

MODIFYとは、どのようなプロダクトシリーズでしょうか?
照明について考える時、「光そのもの」と「光をつくる形」つまり照明器具の2つの視点があります。開発当時は、「いちばん定番的な照明器具とは、どういうものか」というところから考えはじめました。
最初に取り上げたのは、真球型と半球型と円錐台型。これは世界中にある照明器具の定番の形です。パナソニックが提案するなら、まずもっとも標準的な定番の形を揃えていなければいけないという気持ちがありました。
ただ技術的な視点でみると、当時すでに光源自体も進化しているし、好まれるインテリアの形も変わり始めていたので、時代に合わせて伝統的な定番の形を「モディファイ=(改良/修正)」、つまり「見直し」しましょうとなったんです。MODIFYという名前もそこから生まれました。
MODIFYは、定番の照明器具に使われている定番の形を用いながら、最新の光源を搭載したり、デザイン上のノイズをとったりとさまざまな試みを行いました。一見、よくある定番の照明に見えて、実は、探してもなかなか同じものはない照明。そこを目指したんです。


プロジェクトがスタートした当時、
深澤さんご自身は、どのような使命感をおもちでしたか?
光というのは、人間の気持ちに作用するものです。戦後、私たちの生活にとって光は欠かせない重要な要素になりました。「生活にあかりを」という強い想いが、パナソニックの始まりにもあったと思います。
しかし、その後、照明器具の普及とともに、世界は明るくなりすぎてしまう。ろうそくの光を含むアンビエントライトのような、生活空間を取り囲む柔らかな光が、逆に少なくなってしまいました。
谷崎潤一郎が『陰翳礼讃』で、近代的な明るさが日本古来の「陰翳」の美しさまで損なってしまうと嘆いたように、私も「明るければいい」ということ自体、見直す必要を感じていました。
さらにLEDの登場もありました。LEDは直進性の光なので、アンビエントライトをつくりにくいという弱点をもっていました。ただ、小さくて明るいLEDは、天井などに埋め込むのに非常に相性がよかった。日本では天井に埋め込んだLEDのダウンライトが、急速に伸びて、当たり前の照明になってしまいました。
天井や壁に埋め込む建築構造と一体化させるアーキテクチャーライトの一つであるダウンライトの普及は、技術的には進化に見えましたが、逆にアンビエントライトがつくりにくくなってしまったんです。
そのような想いが重なり、私自身、ちょうど照明器具や照明自体を考えなおそうとしていたタイミングでした。MODIFYのプロジェクト自体のきっかけも同じではないでしょうか。新しいものを追いかけるのではなく、シンプルに丸いガラスの玉のような光や、伝統的なドーム状の光など、もともと美しく街や部屋を見せていたものを、インテリアの要素として重要だと捉えていたからこそ、プロジェクトに発展したのだと思います。


2 〡 MODIFYを「MODIFY」する
定番の形にこだわりながら、
質感、色の深みのバリエーションを追加。
より多くの空間を豊かに照らす
今回のアップデートでは、
MODIFYを、どのように「MODIFY(改良/修正)」したのでしょうか?
MODIFY自体も約20年が経って定番化してきたので、もう少しバリエーションを増やし、住宅だけでなく様々な空間で使っていただけるように再設計しました。
まずカラーについては、これまで黒と白がベースでしたが、今回はグレーやグラデーションを施したアンバー色も増やしました。また初期のMODIFYは“つや消し”がテーマでしたが、今回は、つやのあるタイプも追加しました。質感や色の深みなどをあらためて見直しています。さらにSサイズのペンダントライトやブラケットライトを追加しました。


質感については、特にどのような点にこだわったのでしょうか?
あれだけの美しい形が環境に現れると、インテリア全体の雰囲気や見映えに大きく影響します。それだけMODIFYはインテリアの重要なエレメントなんですね。さらに、つやが有るかないかで、空間の印象はガラッと変わってしまいます。その点に配慮して、つやのあるタイプも追加しました。
同時に質感は、「シックな空間をつくりたいか」「輝きのある空間をつくりたいか」にも関係します。多灯使いの場合は、反射する面が増えるので、空間の輝き自体も変わってくるでしょう。バリエーションが増えたことで、さまざまな空間づくりが可能になりました。
また光沢があると照明器具自体の主張が強くなり、きらびやかな印象になります。光自体は包囲光でやさしいけれど、光源を取り囲む照明器具自体がキラキラと輝き、言葉でいうのは難しいのですが、リッチな空間に仕上がります。
より広い空間で複数灯で照らす前提でデザインしている点も、以前のMODIFYとは異なる、新しい試みですね。
また均一な光を出す点にもかなりこだわりました。半球型の下面はディフューザー(※)を被せることで、均一の光を拡散することにトライしました。ただ、その際、シェルの厚みが増してしまうとデザイン自体が野暮ったく見えてしまうので、ディフューザー自体の技術も開発時には、大きな課題でした。

また、MODIFYのようなペンダントタイプは、非常に揺れにデリケートです。日本の場合、地震も多く、多灯吊りの場合はぶつかりあって、特にガラスの場合は割れてしまう可能性があります。
そこでMODIFYは割れにくい素材を採用して、細いケーブル部分も強度を維持できるよう工夫しています。伝統的な定番の形だけれど、実は非常にデリケートな設計がなされている点は、こだわりでもあり、特徴的な部分でもあります。


- ストロボ、LED、電球などの光源に取り付け、光を柔らかくする乳白色や半透明の板・布・フィルターのこと
3 〡 MODIFYをどう「生ける」か?
幸せに至る道は、
「何を選ぶか」ではなく、
「何を選ばないか」。
そして、その先にMODIFYがある

MODIFYは住宅空間で、
どのように「生ける」のが理想でしょうか?
今は少なくなりましたが、日本の住宅空間、特にマンションなどの窓は青く白い光が非常に多く、冷たい印象でした。しかしこの数年、多くのマンションの窓が温かみを感じさせるリッチな、いわゆる電球色に変わったことで、街の光の印象は大きく変わりました。
室内で何が起きていたかというと、以前は天井に張り付いていた蛍光灯のあかりが、ペンダントライトなど天井から吊り下げる形になり、空間全体を包み込むように照らすというスタイルに変わったのです。
特にMODIFYシリーズは、頭にあたるギリギリの高さに設置することを推奨しています。天井も含めた縦横の空間に対して、ちょうど真ん中あたりに生けるようなイメージではないでしょうか。空間の中央から拡散して柔らかく包み込む、空間を生かすような光に変わったんですね。
谷崎の『陰翳礼讃』が大切にする日本の重厚感や美しさとは、まさに、そのように生まれたリッチな空間ではないかと思います。


ホテルや商業施設、オフィスなどの空間では、
どのように「生ける」と魅力が増しますか?
最近は、住宅・非住宅という境目が次第になくなり、商業施設や職場、店舗などでも家のような温かみのある光が求められています。むしろそういった空間でも、MODIFYが求められているのではないでしょうか。
特にホテルやカフェなど落ち着ける空間づくりに照明は必須条件なので、ぜひMODIFYを使ってほしいですね。例えば、広い空間での多灯付けをおすすめします。球体の光が並んでいる光景というのは、落ち着きがありながら、とても美しい空間を演出できます。
また、かつて天井に張り付いていた青い光に変わって、空間の中の少し下がった位置に設置される。ちょうど空間の縦と横の真ん中あたりに生けられたように光が灯され、それが全体を包み込むように照らす。長い時間をかけて、空間を生かす照明本来の使い方に戻ってきたような気がします。
これからはむしろ住宅・非住宅の境目がなくなり、ありとあらゆる環境で、豊かな光に包まれるリッチな時代が来るのではないかと思っています。


設計者やインテリアコーディネーターの方々へ、
MODIFYを使ううえでどんなことを伝えたいですか?
一般のお客様は「どのような光が生活を潤わせるか」という専門的な知識はないと思います。ですから、ご提案の際には、「MODIFYなら、生活を潤わせるように設計されているから間違いありませんよ」と、ぜひ、ひと言添えていただきたいですね。
MODIFYは、もともと空間をリッチできれいに見せるようにデザインしているので、その点は間違いありません。細かく説明するよりは、自信をもって「間違いないので、ぜひ使ってみてください」と伝えていただければ、お客様も安心していただけるのではないでしょうか。
最後に、まもなく20周年を迎えるMODIFYブランドへの
想いを教えてください。
世界が混沌とし、先行きの見えにくい時代です。今は、幸せの形のようなものを無意識に探し求めている人が多いと思います。
では、どうすれば「幸せ」あるいは「心地の良い」生活を見つけられるのかというと、次々と新しくモノを生み出すのではなく、必要不可欠な最低限のモノさえあれば生活が潤うという考え方こそが重要になるのではないでしょうか。
肝心なのは「何を選ぶか」ではなくて、「何を選ばないか」。そのような生き方の行き着くところに、MODIFYがあります。私たちはそのような想いでMODIFYをデザインしました。ぜひ、その想いに共感していただき、多くの方に使っていただけると嬉しいです。




