2022.5.16
# 設計のヒント
もう照明設計のときにドキッとしない?
「準耐火構造対応ダウンライト」に関する情報を分かりやすく解説!
「『準耐火』で照明プランお願いします!」と、依頼されたことはありませんか?
2019年6月、建築基準法の改正にともない耐火建築物にも部分的に「準耐火構造」が取り入れられるようになり、お仕事で耳にすることも増えてきたかと思います。
そのような流れをうけて、パナソニックでも「準耐火構造対応」のダウンライトをご用意しております。では改めて、「どのような場合に使用すれば良いのか?」「設計で注意することは何か?」「品番選定の仕方はどうすればいいのか?」。
今回はこうした点について振り返っていきたいと思います。
どんなときに「準耐火構造」が必要?
まず、どんな条件が揃うと「準耐火構造」が必要なのか、確認していきましょう。
たとえば家を建てる時に、「この場所は『防火地域』または『準防火地域』ですよ。」と言われる場合があります。主には「駅前」や「建物の密集地」、「幹線道路沿い」などが多く、そうしたエリアに建築する場合は、耐火建築物や準耐火建築物を求められるケースがあります。
火災が起きた際に、「建物の密集地」などは近隣への延焼を防ぐこと、「幹線道路沿い」は消防車などの緊急車両の通行を妨げないようにすることが目的です。
どのエリアが該当するのかは、各自治体のホームページから確認することができます。ぜひご確認ください。
防火地域と準防火地域
■ 防火地域・準防火地域
市街地における火災の危険を排除するために、都市計画によって定められた地域。
■ 建築基準法22条指定区域
防火地域・準防火地域外の市街地で火災の危険を排除するため、特定の行政庁により定められた地域。
「準耐火構造」は面積や階数で決まる
防火地域、準防火地域に建てる際の条件は、「建築物の延べ面積」「階数」に応じて決められています。
例えば、防火地域で3階建以上を建てる場合は、「耐火構造」を適用したRC構造や鉄筋モルタルのマンションといった「耐火建築物」である必要があります。
防火地域で2階建であれば、今回テーマとしている「準耐火構造」の適用が求められます。こちらは、構造躯体はゆっくり燃えはしますが、一定の時間は崩壊しない「準耐火建築物」が必要です。
- ※1:附属建築物の場合。
- ※2:火災時に倒壊しない寸法の柱・はり、防火構造(外壁・軒裏)などの防火措置が必要。
- ※3:木造建築物の場合。
- 注)建築基準法上の要求性能に上乗せして耐火建築物とすれば建蔽率の限度を10%引き上げ可能。
- 出典:国土交通省ホームページを元に作成 https://www.mlit.go.jp/common/001205298.pdf
建築物の防耐火性能の違い
■ 耐火建築物
耐火性能に関して、建築基準法で定める技術的基準に適合する建築物。万一の火災時には収納可燃物は燃えるが、構造躯体は燃えない。火災時に消防活動がなくても火災終了後も建物が崩壊せず、自立し続ける。
■ 準耐火建築物
準耐火性能に関して、建築基準法で定める技術的基準に適合する建築物。万一の火災時には収納可燃物、構造躯体の順で燃える。火災により加熱を受ける間、ゆっくり燃えるが、一定の時間は崩壊しない。
- 出典:日本木造住宅産業協会ホームページを元に作成
木造戸建でも可能な「準耐火構造」
「準耐火構造」は、熱から守るために耐火性の高い材料で覆う「耐火被覆」などの基準をクリアすれば「木造」でも可能となります。
鉄筋などより予算も抑えて、短工期で建てられる「木造戸建」はお施主様のニーズが高く、パナソニックでも木造戸建で「準耐火構造ダウンライト」のお問い合わせやご採用が多くなっています。
「準耐火構造対応」の照明器具を選びやすく
耐火建築物を立てる際に参照される日本建築センター発行の「準耐火建築物の防火設計指針」というマニュアルがあります。
「照明器具」については、「主たる部分が鋼製」という指定のみ記載されており、「どれがその器具にあたるのか?」「選定がしづらい…」といったご相談を、以前より多くいただいていました。
そこで、パナソニックは2022年4月に発刊した、住宅照明の総合カタログ「EXPERT(エキスパート)2022」より、「準耐火構造対応ダウンライト」というマークを設け、選定しやすい工夫をしています。
「準耐火構造対応」のラインアップも続々
2022年の春、「準耐火構造対応ダウンライト」のラインアップに、LED一体型器具の「100形」や「軒下用」、LEDフラットランプ型の「屋内用センサ付」を追加しました。
特に、住宅で準耐火構造を求められる部位には、手軽にランプ交換ができる「フラットランプ」がおすすめです。器具本体が準耐火構造対応しているので、単色タイプだけでなく「シンクロ調色タイプ」「光色切替タイプ」「FreePa(センサ)タイプ」といった高機能のフラットランプを自由に組み合わせることができます。後から、お施主様自身で、フラットランプを取り換えることもできるので、満足度の高いあかりの空間をご提案いただけます。
提案ができるか迷いがちな「半埋込型のペンダント」についても、対応商品の品番一覧に今年から新たに掲載しております。新商品の「ワイヤレススピーカー対応ダウンライト」も対応しているので、準耐火構造の住宅でも、天井から降り注ぐ「音を楽しむくらし」をおすすめいただけます。
- ※スピーカー付ダウンライトは対象外です
フラットランプ
半埋込型のペンダント
ワイヤレススピーカー
「準耐火?」「省令準耐火??」
ここで、「『準耐火』でプランをお願いします!」と、依頼を受けられた場合の注意点を一つ。
実は、よく似た名称で「省令準耐火構造」という「住宅金融支援機構」によって定められた基準があります。
火災保険や税制面での優遇があるため、お施主からご指定が来る場合がありますが、このコラムでお伝えしている「準防火構造」とは関連が少なく、全く別の規定です。設置できるダウンライトも、開口部に不燃性断熱材を覆えば材質を問わず、開口部に不燃性断熱材がなくても「本体が金属製のプレート等により被覆した器具」であればOK」とされています。
「準耐火構造」は建築基準法で決められていてるため、建築確認を取得するためには、必ず守らなければなりません。同じ「準耐火」という言葉が入っているので、間違いやすいですよね。
「省令準耐火」に対応した照明設計をご依頼をいただくときに、どこかの段階で「省令」という言葉が図面や依頼書から抜け落ちて「『準耐火構造』と勘違いしていた!」となるケースもよくお聞きします。
「準耐火」なのか「省令準耐火」なのか。まずはご確認をいただき、照明設計を進められると良いかと思います。
パナソニックでは「準耐火構造対応ダウンライト」のラインアップの追加や、選びやすい工夫をこれからも進めていきます。
準耐火の照明設計でお困りの際は、ぜひパナソニックのカタログやホームページをご参照ください。
- ※本コラムは、2022年5月時点の建築基準法に基づいて作成しています。