970ページもある、電気工事の分厚い辞書ともいえる民間規格の内線規程。日々の業務の土台となる大切な規格の改定ですが、「何が変わったのだろう?」「ポイントはどこ?」と思うことはありませんか?
漫画「工務店の日報」の設計士・細見さんが、電材業界の最新情報に詳しい田丸先輩
に、内線規程改定のポイントを聞いていきます。
50年の歴史あり!
電気工事や住宅設計の必携書
「内線規程」とは?
省令※として制定されている電気工作物の技術基準について、電気設備の保安確保及び電気の安全な使用を目的として、電気工作物の設計、施工、維持、検査の技術的事項を定め、分かりやすく記述した代表的な民間規格です。
※この「省令」とは、電気事業法に基づき、制定されている「電気設備に関する技術基準を定める省令」です。
「工務店の日報」とは?
「工務店の日報」はSNSで話題を集めている四コマ漫画です。大阪に実在する工務店を舞台に、建設現場の「あるある」や現場の人たちのゆるいやりとりが描かれています。TAMARIE(タマリエ)で描き下ろし連載中!
田丸先輩
電気設備一筋30年。
電設現場を知り尽くした叩き上げの仕事人。趣味はラジコン作りでラジコン歴は約40年。最近はドローンにも興味が湧いてきたという。
細見
工務店勤務。
店舗のデザイン設計をするのが夢で工務店で働き始めた。社会人1年生で家ではオカメインコを飼っている。生まれて初めの家づくりはオカメインコの小屋作り。
今回の改定の重要ポイントは2点!
それ以外にも覚えておいた方が
よいポイントも…!
特定場所への接地極付き
コンセント施設が義務化!
接地(アース)とは、電気製品や電線路における金属製の筐体や管路・ボックス類を大地と同電位にすることを指します。接地をすることで、漏電していても接地線を伝わりアース棒へ電気が流れるため、感電や火災などの事故を防ぐことができます。
接地極付きコンセントのさらなる推進が図られ、特定機器用および特定場所以外の住宅に施設する100Vコンセントは「勧告」へ、特定場所に施設するコンセントは「義務」へと変更になりました。
電気冷蔵庫用など、特定機器用コンセントは既に接地極付きコンセントの施設が義務化されております。
通常のダブルコンセントでは接地ができないため、故障・漏電時に感電や火災の原因となるおそれがあります。
今回の改定で「勧告」から「義務」に変更となった、「特定場所に施設するコンセント」「特定場所」とは、以下の場所です。
こうした改定の背景には、接地が必要な電気製品の利用シーンが広がっていることがあるんや。
たとえば、洗面所でサーキュレーターや除湿器を使っている家庭も増えてきてる。屋外や水気のある場所に施設する規定は、これまで「勧告」やったけど、「義務」に見直された。 業界団体による要望、感電に対する更なる保安の向上を踏まえた見直しということやな。
日本と同じ100V圏の米国・台湾では、既にコンセントの接地極付きが義務化されているよ。
電気自動車(EV)6kW
充電設備の施設方法が追加!
6kW充電というのは、電気自動車(EV)を通常の3kW充電のおよそ2倍のスピードで充電する方法。
これにより、今まで200Vコンセントでの充電では夜間にフル充電ができなかったEVユーザーでも、6kW充電設備を使うことで夜間にフル充電することができるようになるのです。
※6kW充電対応の40kWhバッテリー搭載車を充電する場合
既設住宅において引込口装置の電源側に配線用遮断器を追加し、屋外配線で40A分岐配線用遮断器を増設、40A分岐回路の規定電線サイズ8m㎡を用いる方式で、さらに本方式にはSPD(避雷器)を施設することとしています。
今回の改定で、既設の住宅分電盤は、主幹ブレーカなどの中の組み換えは不要で、そのまま使用できるようになりました。
※すべてのご家庭に適応できるものではありません。くわしくは、施工業者様にご確認ください。
既に建っているお宅に、 6kW充電対応の充電設備を設置するのは、実はとても大変な電気工事が必要だったんや。
これまでなら、家の中から外に電気を引っ張るため、既に設置している住宅分電盤の主幹ブレーカなどを改造し、さらに配線用の穴を壁にあける必要があった。でも今後は、配線用の穴を壁に開ける必要がないんや。大部分の工事を外でできるから、家の中での工事を最小限に抑えられるね。
この改定で、より効率的に充電することができるようになって、環境にも優しい電気自動車(EV)の利用がより一層身近になるというわけや。
そして、政府の指針として2030年半ばには新車のガソリン車の販売禁止が視野に入っていることを知ってるかな? いよいよEVの時代がくるで~。
そのほかに覚えておいた方がよい改定ポイント
情報機器専用の分岐回路
情報機器の普及に伴い3605-5表のとおり、個別に加算するよう追加されました。
現代社会では、一人当たり複数台のモバイル端末を所持していて、一般住宅でも常にバッテリー充電がされるため、多数の充電器が常時コンセントを占有している状況下にあるからね。
テレビやPCの周囲では情報機器類が種類・数量とも増加の一途を辿ってるんや。負荷機器の充電接続が集中し、コンセントの口数が大幅に不足しているため、テーブルタップによる複数台縦続接続などの過度な使用が誘発されてしまうんや。
普及が進んでいるUSBコンセント
埋込形コンセントや露出形コンセントと同様に施設するよう新たに規定が追加されました。
「引込口」の定義が見直されました
引込取付点から計器への配線を隠ぺいするケースが多くなったため、引込口の場所を明確化するためです。
抜止式コンセントの施設
電動車両の充電など、頻繁にプラグを挿抜する用途には、抜止式コンセントは施設しないよう、注意書きが追加されました。
抜止式コンセントとは、コンセントを指す際に回すコンセントのこと。挿抜の頻度が高いと壊れるおそれがあるため、このような注意がされています。
コンセントを上向きに施設する場合
ホコリの堆積によるトラッキングを防止するため、カバー付きを推奨する注意書きが追加されました。
トラッキング現象とは?
電源がOFFの状態でも、コンセントにプラグが差さっているだけで、火災の原因となってしまうことがあります。これが、「トラッキング現象」と呼ばれるものです。
差し込まれたままのプラグとコンセントの間は、埃が溜まりやすい状態になります。湿気が加わると、プラグの接触部分で火花放電が繰り返されます。この熱によってコンセントの絶縁部が加熱され、プラグの接触部分に「トラック」と呼ばれる電気の通路が形成されます。その結果、放電が起こり、最終的には火災が発生してしまうことがあります。