2024年4月より、建築物省エネ法に基づいた「省エネ性能表示制度」がはじまりました。
「誰もが省エネ性能を考慮した上で、建物を選べる」ことを目的としたこの制度。
多くの事業者に関係があるため、内容を正しく理解することが大切です。
今回は、漫画「工務店の日報」のキャラクター達と共に、建築物の省エネ性能表示制度と、これからの住まいづくりについて学びましょう。
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建築士・
関 計太(せき けいた)設計一筋30年。住宅の設計を得意としているが、商業施設など幅広い分野で設計を担当しており、省エネ設計に関しては業界内では先駆者的存在。
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新人設計士・
細見 千(ほそみ せん)工務店勤務。店舗のデザイン設計をするのが夢で工務店で働き始めた。社会人1年生で家ではオカメインコを飼っている。生まれて初めの家づくりはオカメインコの小屋作り。
省エネ性能表示制度って、
どんな制度?
省エネ性能表示制度とは、販売・賃貸事業者が建築物の省エネ性能を広告等に表示することで、消費者等が建築物を購入・賃借する際に、省エネ性能の把握や比較ができるようにする制度です。
改正建築物省エネ法(2022年6月公布)に基づき、建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度が一部見直され、2024年4月から施行されました。
見直し
内容
- 省エネ性能の努力義務に関して表示ルールを新たに告示
- 告示に従って表示しない事業者への勧告等の措置の追加
※勧告等は、当面は社会的な影響が大きい新築に対して実施する予定
建築物の販売・賃貸事業者※1は、販売等の際に省エネ性能の表示が求められます※2。
- 販売・賃貸事業者は、売主・貸主となる事業者を指します
- 努力義務
関係事業者の皆様へ
(設計・仲介・賃貸管理等)
ラベルの発行や伝達・広告掲載について、
販売・賃貸事業者から依頼を受ける場合があります。
最終的に目指しているゴールは「2050年カーボンニュートラルの実現」。
そのための重要な一歩として、今回の省エネ性能ラベルの表示があります。
住宅・建築物に関するCO₂排出量は、全体の約3分の1を占めます。これからの住まいについて考える上で、エネルギー消費やCO₂排出量のさらなる削減は、避けることのできない課題ですよね。
省エネ性能表示制度で、
何が分かる?
新築建築物の販売等の際は、所定のラベルを広告等に表示する必要があります。(既存建築物についても表示を推奨)
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2024年4月1日以降に確認申請を行った物件
(新築建築物)
販売・賃貸を行う場合には、広告等へ所定のラベルを表示する必要があります。 -
2024年4月1日より前に確認申請を行った物件(既存建築物)
省エネ性能が判明している場合には新築と同様に表示することを推奨しています。
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❶エネルギー消費性能
星の数が増えるほど、
省エネ性能が高いことを示しています。 -
❷断熱性能
家のマークが増えるほど、
断熱性能が高いことを示しています。 -
❸目安光熱費
年間にかかる光熱費の目安を
記載しています。 -
❹自己評価・第三者評価 BELS
省エネ性能の評価が販売・賃貸事業者に
よる自己評価か、評価機関による第三者
評価かを示します。
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❶ エネルギー消費性能とは?
国が定める省エネ基準からどの程度のエネルギー消費量を削減できているかをみる指標(BEI ビーイーアイ)を、星の数で示しています。
「BEI(ビーイーアイ)」とは、国が定めるエネルギー消費量の基準値を1とした際に、当該建築物のエネルギー消費量がいくつになるかを示したもの。
BEI=0.80であれば削減率は20%となり、星の数は3つ(0%で1つ、さらに10%ごとに星1つ)で表現されます。建物の断熱性を高め、省エネ性の高い設備を導入し、太陽光発電等の再生可能エネルギー利用設備を導入することで、削減率は高まるということですね。
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❷ 断熱性能とは?
「建物からの熱の逃げやすさ」と「建物への日射熱の入りやすさ」の2つの指標により、建物の断熱性能を評価しています。日本全国を8区分の地域に分け、各地域の気候条件等を基に基準値が定められており、1~7段階で評価されます。
住宅の外皮性能は、UA(ユーエー)値とηAC(イータエーシー)値により構成されます。
いずれも、地域区分別に規定されている基準値以下となることが必要。構成要素となる窓・ガラス・サッシ・断熱材の組み合わせが水準達成のポイントになるね。
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- 室内と外気の熱の出入りしやすさの指標
- 建物内外温度差を1度としたときに、
建物内部から外界へ逃げる単位
時間当たりの熱量※を、外皮面積で除したもの - 値が小さいほど熱が出入りしにくく、断熱性能が高い
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- 太陽日射の室内への入りやすさの指標
- 単位日射強度当たりの日射により建物内部で取得する熱量を冷房期間で平均し、外皮面積で除したもの
- 値が小さいほど日射が入りにくく、遮蔽性能が高い
出典:国土交通省資料より
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❸ 目安光熱費とは?
住宅の省エネ性能に基づき、算出された電気・ガス等の年間消費量(設計二次エネルギー消費量)に、全国統一の燃料等の単価を掛け合わせて算出した1年間の光熱費を目安として示しています。実際の光熱費とは異なりますので、ご注意ください。
目安光熱費を算出するにあたっての設定条件があります。
実際の光熱費とは異なりますので、ご注意を。
居住人数
住戸面積30㎡当たり1人で設定。120㎡以上の場合は4人で設定されています。
生活スケジュール
一日の中の冷暖房、給湯、照明などの運転時間帯を設定する際、昼間は平日と休日で異なるスケジュールとし、休日は一定の外出時間があること等を想定しています。
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❹ 自己評価・第三者評価 BELS とは?
第三者評価を受けると、「第三者評価 BELS(ベルス)」と「ネット・ゼロ・エネルギー」の表示が追加されます。
省エネ性能の評価が販売・賃貸事業者による自己評価なのか、評価機関による第三者評価なのかが示されます。「BELS(ベルス)」とは、一次エネルギー消費量や外皮の断熱性能を表示する第三者認証制度の一つ。ZEH支援事業においてはBELSにおいて『ZEH』であることを示す証書の取得が必要です。
「BELS」は「Building-Housing Energy-efficiency Labeling System」の略称です。