2024.8.8
# 設計のヒント
インテリアを演出するパーツとして、タイルに注目。
色味や表情を引き出す照明との組み合わせで、ワンランク上の空間に。
住まいのこだわりの場所に設置することの多い「タイル」と「照明」。この二つは、どちらも住まいづくりにおける重要なパーツですが、これまではそれぞれ独立して語られてきました。
しかし、タイルと照明はとても関係の深いものなのです。目的や部位に応じてタイルを使い分け、その質感や色味を最大限に引き出すような照明を選ぶことで、より豊かで心地よい住空間を演出することができます。
近年はおうちを建てる際に、SNSで参考情報を収集される方も増えています。これからご紹介するタイルと光による空間演出も、同様に参考にしていただける内容となっています。
では、見ていきましょう!
「タイル×照明」の可能性
住まいでタイルを使うと、カフェやホテルのようなお洒落な雰囲気をつくることができます。
ではそもそも、このようなタイル使いの本場はどこなのでしょうか?デザインや技術の面で「タイル先進国」といえば、真っ先にイタリアが挙げられます。
建築において、日本が「木」を中心とした文化であるのに対して、イタリアなど欧州は伝統的に「石」を活用してきました。
日本の住まいでは、タイルはバスルームやトイレといった水廻り建材の近くで、機能性や合理性を求めて使われることが多かったのに対して、イタリアではより広範囲に、家具やカーテン、クロスや照明といったインテリアを演出する素材としてタイルが親しまれてきました。
一口に「タイル」と言っても種類は様々です。
今回は様々なタイルの種類に注目し、そこに適切な照明器具を組み合わせることで、洗練された住空間を演出するための工夫をご紹介します。形状や塗料などの違いによる3つのグループに分けて見ていきましょう!
01. ツヤのあるタイル×照明
ガラスモザイクタイルは、色変化を楽しむ
まず一般的によく使われるのが、ツヤのあるタイル「ガラスモザイクタイル」です。このようなガラスとエナメルを原料とするタイルは、ステンドガラスと同様、少し波打ったような表面と複雑に入り組む目地のラインが印象的です。
表面に光沢があるので、環境によって見え方が大きく変わります。その分、どのような照明器具と組み合わせるのが適切かを考えるのも楽しそうです。
このようなタイルは、高級感を演出しやすいので洗面ミラーの下部などに使われることが多いようです。そのほかにも、壁面のアクセントとして使うなど、面積が小さい限られたスペースに使うのがおすすめです。
照明のポイント
ガラスモザイクタイルは、色変化を楽しむ
多用な色味が混在してるため、照明の色温度によって色味が大きく変化します。
表情の変化を出しやすいこのようなタイルには、色温度を変更できる「シンクロ調色」がフィットしそうです。
色温度を変化させることで、一日の中でも時間帯ごとに異なる表情のタイルを楽しむことができます。
色温度の変化の影響を受けやすいタイルだからこそ、自由に色温度をコントロールできるシンクロ調色で楽しむのがおすすめです。
サブウェイタイルは、表情を楽しむ
「サブウェイタイル」と呼ばれる小さい長方形のタイルは、使いやすいサイズ感のため住まいのインテリアでも親しまれています。ニューヨークの地下鉄構内で使われていたことが名前の由来です。
生活感を少し抑えたカフェ風インテリアなどを演出する際に便利な素材です。注目すべき点として、最近はこのタイルを「縦向き」に使うことがデザイン的に多くなっています。
釉薬の透明感やゆらぎのある表面、そしてパターン貼りをできる点がサブウェイタイルの強みです。波打っている表面が美しいですよね。
住まいで使う場合は、洗面ボウル周りの水が当たってしまう箇所などに部分貼りをすることが多いようです。掃除がしやすいというタイルの特性を活かした使い方です。
照明のポイント
サブウェイタイルは、表情を楽しむ
ダウンライトのような「点」で照らすあかりだと、映り込みが起きてしまい、きらめき感というよりはギラっとしたグレアになってしまう恐れがあります。
ギラつきを抑え、直下への光を際立たせる「ソフトグレアレスダウンライト」を用いることで、タイルの表情を際立たせながら、明るさも確保することができます。
釉薬たっぷりのタイルは、映り込みを楽しむ
さらに繊細なタイルも見てみましょう。表面がたっぷりの釉薬の層で、きれいな映り込みを楽しめます。
照明のポイント
釉薬たっぷりのタイルは、映り込みを楽しむ
このように鏡のような艶のあるタイルには、魅せるあかりのペンダントをあえて映り込ませるのも手法の一つです。クリア電球のようなきらめきの強い光源だとグレアが強くなってしまうため、眩しさが気になる場合は、乳白セードで拡散するものもおすすめです。
美しいタイルを使うと、どうしてもタイルそのものを照らしたくなりますが、そうなると映り込みは避けて通れません。
たとえば、タイルを貼った壁面と正対する側にあかりを当てる場所があれば、そちらを照らすというのも良い方法です。反射光を映り込ませることで、直接タイルを照らすのとは違った雰囲気を演出することができます!
02. マットなタイル×照明
テクスチャーのあるタイルは、陰影を楽しむ
ツヤのあるタイルに続いて、表面に凹凸のテクスチャーが施されているタイルをご紹介します。
このようなタイルは、表面の凹凸に応じて影が落ちるので、照明と組み合わせることで、壁面にタイルの陰影をどのくらい落とすかがコーディネートのポイントになってきます。
照明のポイント
テクスチャーのあるタイルは、陰影を楽しむ
リビングのテレビの背面や壁面のアクセントとして目立つ場所に使われるケースが多く、照明との組み合わせはとても重要です。
とは言っても、柄がそれほど派手ではなく、プレーンに近いものであれば、ダウンライトの集光・拡散の配光は分かりやすく、あかりとの相性としては、通常のクロスに近い感覚で使えるのが嬉しいポイントです。シンクロ調色と組み合わせる場合も、色温度の変化をきちんとひろってくれるので、色温度の変化を空間に反映させたい時にも安心です。
凹凸に向きがあるタイルの場合、上下で貼り替えると影の出方に違いが生まれます。どちらの向きを選択するかによって、空間のイメージにも違いが出るので、意識してみましょう。
また、タイルの色味で空間の明るさ感も変わるため、考慮してください。
クラフト感のあるタイルは、凹凸を楽しむ
ハンドメイドならではのクラフト感あふれるタイルも魅力的です。不揃い感や大きな凹凸を自由に楽しみましょう。凹凸が大きいと、光との関係で影が大きく出たり小さく出たりするのがポイントです。
照明のポイント
クラフト感のあるタイルは、凹凸を楽しむ
表面の凹凸を揃えたり、ランダムにミックスしたりして、壁面をデザインすることができます。光との関係で影が大きく出たり小さく出たりするのがポイントです。
凸凹の高い方を水平に持ってくるか、垂直に持ってくるかで、影の出方が大きく変わります。また、外光と違って上から照らすダウンライトは、集光と拡散で、影の濃さも変わります。特に、集光と組み合わせて使う場合は、下の方に行くほど影の出方が大きくなるので、壁に近い位置から照らしてしまうと、下側は影が大きく出てしまうので注意が必要です。
ランダム貼りの場合は、強い影と弱い影の混在を楽しめるのがおもしろい点です。あえて職人さん任せで、パターンを決めずに不揃いに並べるのも楽しいですよね。
03. 特徴的なタイル×照明
ツヤ+ランダムな表面の混在を楽しむ
これまでになかったような新しい特徴を持つタイルも続々と登場しています。
細かい六角形のピースで構成されるタイルは、表面がピース毎に様々な方向に傾いており、ツヤもあります。光の受け止め方が複雑で、光沢もあるため、キラキラと反射するのが綺麗です。
サイズが小さいので柱巻きに使ったり、ニッチなど印象的なポイントに採用されるケースが多いようです。
照明のポイント
特徴を活かす|ツヤ+ランダムな表面の混在を楽しむ
表面が少しずつ違う方向に傾いているので、すべて同じ色味でありながら、照明のあたり方に応じて色々な明度のピースが組み合わされているように見えます。こちらのタイルは映り込みのグレアがランダムな表面でキラメキに変換されるのも特徴的です。
拡散・集光でも表情がガラッと変わるので、タイルからの距離の取り方がポイントとなります。
印象的な柄を楽しむ
ナチュラルな素地に印象的な柄が施してあるタイルは、デザイナーの個性が活かされたモダンな柄をどのように使うか、想像が膨らみます。
照明のポイント
特徴を活かす|印象的な柄を楽しむ
集光で絞った範囲にあかりを当てるよりも、拡散で広い範囲を照らした方が、特にホワイトに関しては生地のマットな部分と釉薬の艶の部分の明暗がはっきりして、柄が見えやすくなるのでおすすめです。
タイル製品・写真提供:株式会社平田タイル
タイルメーカー・平田タイル様との特別セミナーを実施
今年、創業105周年を迎えたタイルメーカー・平田タイル様と合同でセミナーを実施しました。展示什器での実演も行ったセミナーの様子も、動画にてチェックしてみてください!