水素の流通量増加と低コスト化を想定し、
発電・エネルギーへの活用拡大を検討。五洋建設株式会社 様[東京都 文京区]

  • 吉田 成男様

    五洋建設株式会社
    建築部門担当(建築技術)
    常務執行役員
    吉田 成男

  • 小池 武徳様

    五洋建設株式会社
    建築部門 建築本部 建築設計部
    設備設計2グループ長
    小池 武徳

国内トップのマリンコントラクターである五洋建設株式会社様は、2050年カーボンニュートラルを見据え3つの重点施策を推進されています。同社の脱炭素の取り組みについて、再エネ100%工場の建設に携わられた常務執行役員の吉田様とグループ長の小池様にお話を伺いました。

2050年カーボンニュートラルを見据えた3つの重点施策とは

1896年、広島県呉市で「水の土木の水野組」として創業し、明治・大正・昭和と業績を伸ばし続けてこられた五洋建設株式会社様。
戦後、ゼロから再出発し、1961年のスエズ運河改修工事への参画、1964年のシンガポール進出など、いち早く海外進出を果たした進取の精神にあふれた社風が特長です。長い歴史の中で陸上土木や建築分野にも進出。「国内土木」「国内建築」「海外」を3本柱に据え、現在では3分野の事業をバランスよく展開。2014年より6期連続で過去最高益を更新し、真のグローバル・ゼネラルコントラクターを目指して成長を続けておられます。
近年、同社が力を入れておられるのが、脱炭素を見据えた経営体制の整備です。その施策は、「①現場でのCO2排出の抑制」「②自社の技術を生かした社会的な脱炭素への貢献(洋上風力発電施設の建設や建物のZEB化など)」「③水素やアンモニアなどを活用するインフラや設備の整備」の3つです。
2021年7月に代表取締役社長を委員長とするカーボンニュートラル推進委員会を設置。脱炭素に対し、「①現場でのCO2排出の抑制」では、代替燃料の使用、ZEB現場事務所の運用などへ取り組まれています。
「②自社の技術を生かした社会的な脱炭素への貢献」に関しては、洋上風力建設に注目が集まりますが、同社が洋上風力建設を開始したのは2002年、北海道瀬棚港でのこと。以後、北九州響灘など大型プロジェクトを受注する一方、洋上風力発電施設の建設に欠かせない大型クレーン搭載のSEP型多目的起重機船を建造。現在2隻を所有、もう1隻も予定しており、欧州の洋上風力建設の有力企業との協働など、洋上風力のフロントランナーとしての地位を固めつつあります。
また、建物のZEB化にも取り組み、全国の設計施工などの工事でこれまでに17のZEB認証を取得。ここで紹介する室蘭製作所もそのひとつです。
「③水素やアンモニアなどを活用するインフラや施設の整備」についても、室蘭製作所に太陽光発電に加えて純水素型燃料電池を導入。製作所全体の電力を再生可能エネルギー100%で賄っておられます。
「水素に関しては当社も初めての試みでしたが、やるからには自社で設計し、施工まで行うこととしました」と、吉田様は振り返られます。 「需給バランスも可能な限りシミュレートして、上手く組み合わせながらシステムを組み立てていきました。乗り越えなければならない課題が多くありましたが、水素発電に取り組むことで我々も新たな知見を得て、視野が広がったと感じています」。設計を担当された小池様もその運用工程を次のように説明されました。「水電解装置を使って生成したグリーン水素と運搬した副生水素を同じ配管に通して、パナソニックの純水素型燃料電池へと送り込むのですが、配管をどのように切り替えるのか、水素が漏れたらどうなるのか、空調設備がどれくらい必要なのかなど、全体コーディネーションを自社で詳細に行いました。水素の専門企業にお願いすることもできたのですが、“自社内で悩んだことが知恵になる”と考え、設計・施工でやり遂げました。パナソニックの平井さんと早川さんには何度も室蘭までお越しいただき、ご協力いただきました」。

発電だけでなく、エネルギーとしての水素活用を目指す

今後の再生可能エネルギー利用の世界的な潮流について、吉田様は「太陽光発電や洋上風力発電だけでなく、水素をどのように調達し、どのように運ぶかが直近の課題」とおっしゃいます。小池様もまた、「オーストラリアには水素原料である褐炭が大量に埋蔵されており、日本で使用する250年分に当たるといわれています。これをどのように船で運び、国内で流通させるのか、流通量が増えれば需要も増え、水素のコストが下がるのではないでしょうか」と推察されます。
さらに、吉田様は「グリーン水素を生成する大型の水電解装置を開発されている企業は国内外で少なくありません。水電解装置の価格が下がれば、技術革新が一気に進む可能性があります」と指摘。「私たちは発電だけでなく、エネルギーとしての水素に着目しています。実は当社が多く所有する作業船はCO2排出量が多いのですが、将来的に水素を燃料に利用することで、CO2排出量を大幅に削減できる可能性があります。水素のコストが下がり、エネルギー源として利用する未来を見据えて、我々は知見を蓄積しております」と語られました。

左から五洋建設 小池様、吉田様、当社マーケティング本部 平井

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