脱炭素社会の実現に向けて、自社ビルをZEB化改修

1963年に木材業として創業。土木事業を手掛けられた後、高度成長期に建築事業に進出され、昨年、創業60周年を迎えられた株式会社松永建設様。本社ビルが築35年を超え、大規模修繕を迎えるタイミングで、ZEB化にチャレンジされました。
建て替えではなく、外皮の改修を行わず設備改修のみでのZEB化にあえて取り組まれた理由を、代表取締役社長の松永様は次のように語られます。
「当社ではビルや工場など大規模な建築を多く手掛けていますが、造って終わりではなく、きちんとメンテナンスをすることによって、長く使い続けることが大切だと考えてきました。そのような中、国をあげてカーボンニュートラルの実現に向けてZEB化が推進されるようになりましたが、なかなか進まないのが現状です。そこで、当社が長年培ってきたノウハウを基に本社ビルを自らZEB化改修し、さらにそのノウハウをお客様に展開していくことで、ZEB化を推進したいと考えました」。
松永建設様では、ZEB化の前段階としてSBT認証^※を取得されています。「埼玉県には大手企業様の製造拠点が数多く存在し、当社のお客様の中にもSBT認証を取得されている企業様が多いことから、当社もSBT認証を取得することでお客様と共に環境対策に取り組み、改修等を通じて、そのお手伝いができると考えました」。

※パリ協定における水準と整合するように企業が設定している、温室効果ガスの排出削減目標のこと。
企業自身だけでなく、原材料の仕入れや輸送、販売する製品の使用や廃棄も含めた、事業全体での排出量が対象となっている。通常版と中小企業向けの2種類があり、中小企業向けでは製品の使用や廃棄に伴う排出は範囲の対象外。

太陽光発電パネル

パナソニック京都ビル見学をきっかけにパナソニックをZEBプランナーに選定

ZEB化にあたっては、建物の外皮改修を行わない設備改修のみで既築ビルをZEB化した先行事例として、パナソニック京都ビルをご見学。「パナソニック京都ビルのZEB化改修はとても参考になりました。また、この見学がきっかけで、パナソニックにZEBプランナーを依頼しました」。設備機器の選定等のプランニングのサポートをパナソニックにお任せいただき、太陽光発電システム、高効率空調、熱交換気ユニット、エコキュート、LED照明、エネルギーマネジメントシステム（BEMS）等をご導入いただきました。結果、一次エネルギー消費量を大幅に削減。省エネ機器の導入により約48％削減、創エネによる自家消費でさらに約32％削減効果が生まれ、正味で75％以上の省エネルギーが見込まれ、高水準なNearly ZEBを達成されました。
「パナソニックはZEB化に必要な設備機器を取り揃えており、総合力があります。トータル設計で省エネ効果を最大限に発揮できるよう依頼しました。当社自身もお客様にご提案する際には、ワンストップが大切であると考えており、トータル提案を心掛けています」と松永様はおっしゃいます。
松永建設様では、ZEBリーディング・オーナーだけでなく、 ZEBプランナーにも登録されました。これまで培ってきた建築のノウハウに加え、ZEB化を自らご経験されたことによって、今後は新築・既築を問わず、ZEB化のプランニングから建築までをお客様へトータルでご提案していかれます。「特に既築の場合は、ビルを使用しながら工事を進めなければならないため大変ですが、今回、2,000㎡という規模の改修工事を短工期で成し遂げたことによって自信もつきました。また、経産省の補助金も申請し、書類の作成が大変でしたが、建築会社としての知識や経験があり、省エネシミュレーション等の計算はスムーズに行えたと自負しています」。
「日本には当ビルと同様の築30年～40年の建物がたくさんあります。本当の意味での環境保護というのは、電力の省エネだけではなく、こうしたストックを活用していくことであると考えています。スクラップアンドビルドではなく、改修して使い続ける。その際に、より省エネ効果が見込まれる改修プランと太陽光発電の導入等でZEB化することで、カーボンニュートラルの実現に近づけます。それが我々にできることと考えています」と抱負を語ってくださいました。

ロビーに太陽光発電モニターを設置し、お客様に太陽光による発電効果を「見える化」されています。